潰瘍性大腸炎・クローン病 症例報告 組織の分類法

潰瘍性大腸炎、クローン病完治の症例報告Part16-④(コメントあり)更新2022.3.26

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前回分は下記となります。まだ読まれていない方は是非是非読んで下さい!!
潰瘍性大腸炎、クローン病完治の症例報告Part16-①(コメントあり)
潰瘍性大腸炎、クローン病完治の症例報告Part16-②(コメントあり)
潰瘍性大腸炎、クローン病完治の症例報告Part16-③(コメントあり)

それではこんな悲劇を避けるにはどうすればよいのでしょうか?クロストリジウム・パーフリンジェンス(ウェルシュ菌)を殺すことです。ウェルシュ菌を殺すことができる抗生物質には、ペニシリンとメトロニダゾールが一番効果的であります。皆さんはペニシリンのことはよくご存知ですが、メトロニダゾールは聞き初めでしょう。メトロニダゾールはフラジールという名前で売られています。クローン病や潰瘍性大腸炎で、ガスが腸管で大量に作られ、腹部膨満感で苦しむ患者さんがいます。しかもそのガスが特に臭いのです。このような時に、私はフラジールを使うと良くなると同時に痔瘻も少しは良くなることを知っています。今後は、痔瘻や皮膚瘻や膀胱瘻や膣瘻には、大量のフラジールを飲ませれば良くなると考えています。これまで男性のクローン病で、もちろん膣瘻はないのですが、膀胱瘻も見たことはありません。やはり圧倒的に女性が多いのですが、今後そのような女性の患者さんにはフラジールの長期投与を考えています。一方、腹部の皮膚瘻は、女性は見たことはないのですが、男性になりやすい印象があります。男性の皮膚瘻にもフラジールの長期投与をする予定です。なぜならば瘻孔は全てウェルシュ菌が作り出す毒素であることが分かったからです。今後は痔瘻の患者さんにも長期にわたってフラジールを投与すればもっと良くなると考えています。これほど大事なメトロニダゾールについて、以下にまとめて述べてみましょう。

メトロニダゾールは殺菌性で主に嫌気性菌およびある種の原虫に対して使用されます。ウェルシュ菌は嫌気性菌であるので、つまり酸素がなければ生きられるのですが、元来、酸素を嫌う絶対的嫌気性細菌ですから、使われるのです。経口メトロニダゾールは吸収が良好です。静脈内使用は、一般に経口的に治療できない患者に対して使われるべきでありますが、膀胱瘻や膣瘻や皮膚瘻が生じている重傷のクローン病の患者さんには使うべきです。メトロニダゾールは体液中に広く分布するので、酸素の少ない組織にいるウェルシュ菌にも効くのです。メトロニダゾールは肝臓で代謝され、主に尿中に排泄されますが、腎不全患者において排泄が低下することはないので、腎機能の悪い患者さんにも使えます。肝臓で代謝されるので、重篤な肝疾患患者においては量を減らしたほうがいいでしょう。メトロニダゾールは、全ての偏性嫌気性菌およびある種の寄生原虫(例,腟トリコモナス,赤痢アメーバ,ランブル鞭毛虫)に対して用いることができます。ウェルシュ菌はまさに偏性(絶対性)嫌気性菌の代表です。

それでは偏性嫌気性菌とは何でしょうか?英語の専門用語でobligate anaerobe(オブリゲート・アナエローブ)といいます。obligateは、「必須な」とか「絶対的な」という意味があります。anaerobeは嫌気性菌という意味です。従って、obligate anaerobeは絶対的嫌気性菌とか偏性嫌気性菌という意味です。なぜ偏性という日本語を用いるのでしょうか?実は、嫌気性菌には通性嫌気性菌もいます。この代表がバクテロイデス・フラジリスです。この細菌については後で詳しく書きますから名前だけ覚えておいてください。この通性という意味は、酸素があってもなくても増殖できるという意味です。つまり通性とは有酸素でも無酸素でも、どちらも通じて増殖できるという意味です。つまり酸素があってもなくても増殖できる細菌が通性菌でありますが、酸素があっても増殖できることから臨床の場では通性嫌気性菌を好気性菌と呼ぶことがあるのです。この通性に対して、偏りをもった嫌気性菌、つまり酸素がない時にのみ増殖できるという意味で偏性嫌気性菌と名付けたのです。つまり偏性嫌気性菌完全な無酸素状態でのみ生存しうる細菌のことをいいます。従ってウェルシュ菌は、元来、酸素のないところにしか住めないので、腸管の酸素の少ないところでひっそりと悪玉菌として生存しているだけなのです。それでは腸管の中で一番酸素の少ないところはどこでしょうか?糞便です。この糞便は直腸に一番多いものです。ここで増殖したウェルシュ菌が大量の外毒素を出して、肛門近くの直腸の筋肉を壊死させて痔瘻を起こしていることは既に書きました。

それではどうしてウェルシュ菌は大量のガスを発生させるのでしょうか?以前からガスは細菌の代謝、つまり細菌の増殖が激しい時に、大量の水素(H2)、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)が産生されることは分かっております。従ってウェルシュ菌が大量に増殖する時に、このようなガスが発生するのです。ところがどうして免疫が下がるとウェルシュ菌は増えるのでしょうか?いうまでもなく、免疫が落ちるとウェルシュ菌を殺しにくくなるからです。

メトロニダゾールは主として偏性嫌気性菌による感染症(例,腹腔内、骨盤、軟部組織、歯周、および歯原性の感染症、および肺膿瘍)に対して、しばしば他の抗菌薬と併用されます。メトロニダゾールは細菌性腟炎に対してよく使われてきました。まさに膣瘻においても使われるべき抗生物質であります。クローン病は、はじめに化学物質と腸管で戦うと腸管に傷がつき、この傷にウェルシュ菌が増殖するので、クローン病によく使われるのです。髄膜炎、脳膿瘍、心内膜炎および敗血症にも有効であることが分かっております。メトロニダゾールは腸手術後の感染予防としても使用されています。メトロニダゾールは、ヘリコバクター・ピロリによる消化性潰瘍に見られる感染症に対してもよく使われます。皆さんご存知のように、ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍の原因であります。

クローン病や潰瘍性大腸炎の多くの患者さんが白米の代わりに発芽玄米食を食べると、下痢、腹痛をはじめとする様々な症状が顕著に減ります。まずその調理法と、なぜ発芽玄米食がCDやUCの患者さんの免疫を上げるのかについて考察してみます。他の全ての患者さんにもすぐに実施されることをお勧めします。発芽玄米は市販されていますから買ってください。具体的な1回分の主食としてのおおまかな調理方法を書いておきます。もっと食べたい人は量を増やしてください。

1.ミルサーを用いて、発芽玄米を粉状にする。
2.発芽玄米粉70g(お茶碗1杯分)に水300〜400cc程度と塩4g程度を厚手の鍋に入れて1〜2時間浸す。
3.これを中火で5分間炊きながら、十分にかき混ぜます。
4.火を止めて30分以上放置しておきます。
5.トロみとツヤが出るまで再び弱火で5分間ほど混ぜて水分を飛ばします。
6.これで発芽玄米クリーム(ペースト)が出来上がり、これをご飯がわりに食べます。
※量や水分は自分で調節してください。

ここで、IBD(炎症性腸疾患であるCDとUC)の主食として白米を食べるのではなくて、なぜ発芽玄米がいいのかについて考察してみましょう。

まず発芽玄米はどのようにして作られるのでしょうか?発芽玄米は、玄米を約1~2日程度、摂氏32度前後のぬるま湯に浸し、1mmほどの芽が出た状態にしたものです。元来、玄米は白米より栄養豊富ですが、発芽玄米はさらに発芽時の酵素の働きで、モヤシと同様に、玄米にもともと含まれていた栄養成分が増え、玄米の状態では十分に消化吸収しきれない成分や、新しく有効な成分が発生します。もっと具体的に白米と玄米を比較しますと、玄米は白米に比べ栄養価が高く、白米に含有されないビタミンB1やミネラルを豊富に含んでいます。発芽玄米は玄米よりも更に栄養豊富なうえ、玄米より消化も味も良いうえに、甘みが多く感じられるのは、玄米を発芽させることによって、様々な酵素が活性化されるため、胚乳に貯蔵されているデンプンやタンパク質が分解され、甘みや旨みが増すからです。普通の炊飯器で炊くと、玄米は糠層の消化が悪く、食感も悪くぼそぼそした感じになります。一方、発芽玄米は普通の炊飯器で炊いても比較的消化が良いうえに、甘みや旨みが増すので玄米よりもはるかに食べやすいのです。

ここで、発芽玄米の主な成分とその働きを勉強しましょう。

①ビタミンB1②ビタミンE③脂質④炭水化物⑤ナトリウム⑥食物繊維⑦カルシウム⑧γ-アミノ酪酸(GABA)⑨γ-オリザノール(ポリフェノールの一種)⑩IP6(フィチン酸)⑪イノシトール(ビタミンB群)⑫フェルラ酸(抗酸化作用を持つフィトケミカルの一種)⑬マグネシウム⑭カリウム⑮亜鉛

次に、上に挙げた発芽玄米に含まれる主な栄養成分の働きについて述べます。

①ビタミンB1
糖質の代謝促進・中枢神経、末梢神経の働きの正常化・脚気の予防・記憶力低下の抑制
②ビタミンE

抗酸化作用・老化防止
⑥食物繊維
腸内環境の調整・消化に関わる器官の運動の活発化・糖や脂質の消化吸収の抑制・便秘の予防・高コレステロール血症の予防
⑧γ-アミノ酪酸(GABAという略語のほうがよく知られております。)
血中コレステロール低下作用・抗肥満効果・血圧上昇抑制効果・アレルギーの予防・アトピー性皮膚炎改善効果・精神安定作用・ストレス軽減
⑨γ-オリザノール(ポリフェノールの一種)
皮膚の老化防止・皮膚の血液循環促進・自律神経失調症の緩和・更年期障害やそれに伴う不定愁訴の緩和
⑩IP6(フィチン酸)
抗酸化作用・抗ガン作用
⑪イノシトール(ビタミンB群)
脂肪肝、動脈硬化の予防
⑫フェルラ酸(抗酸化作用を持つフィトケミカルの一種)
活性酸素除去・メラニン色素の生成を抑制
⑬マグネシウム
心臓病の予防・カルシウムやビタミンB1の吸収促進
⑭カリウム
高血圧の予防・細胞内外のミネラルバランスを維持
⑮亜鉛
味覚異常の予防・生殖機能の正常化

さぁ、皆さん、発芽玄米の成分と働きについて勉強した後、何の成分がIBDの症状を軽減する役割をしているかがお分かりになりますか?やはり、⑩IP6(フィチン酸)が最後に残ると思いませんか?その通りです。それではフィチン酸についてさらに勉強を深めましょう。

フィチン酸(phyticacid)は植物が作る物質の1種です。なぜ“phyticacid”といわれるのは、“phytic”は「植物の」という意味があり、植物の作る酸であるからです。それではフィチン酸が別名IP6となぜいわれるのでしょうか?説明しましょう。フィチン酸の正式な化学名は、myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六リン酸といい、英語では、“myo-inositol-1,2,3,4,5,6-hexaphosphate”となります。略称をIP6というのは、“I”は“inositol”の“I”であり、“P”は“phosphate(リン酸)”の“P”であり、“6”はリン酸が6つあるという意味です。フィチン酸は、種子など多くの植物組織に存在する主要なリンの貯蔵形態であり、特にフィチン(Phytin:フィチン酸のカルシウム・マグネシウム混合塩で、水不溶性)の形が多く存在します。フィチン酸は、キレート作用が強く、多くの金属イオンを強く結合できるのです。

それではキレート作用とはなんでしょうか?キレーション療法の歴史は古く、鉛など有害ミネラルを体外に排出するための治療として1940年代から行われています。1950年代初頭に米国で発生した鉛中毒の患者に使用したところ、狭心症まで改善したことから、心臓病をはじめとした動脈硬化性疾患にも効果があることがわかりました。キレーションの語源は、ギリシャ語のキレ(Chelle:カニのはさみという意味)で、キレート剤が体内の有害ミネラルをはさみこむ(結合する)現象に由来しています。従ってキレート作用を持つフィチン、つまり発芽玄米に含まれるマグネシウムとカルシウムとフィチン酸が混合塩になった成分が、体内の有毒ミネラルと挟み込んで解毒することができるのです。さらにフィチン酸が他の人体に保持されている必須ミネラルと結びついて、キレート作用を用いて様々な化学物質を排除しているのです。これがクローン病や潰瘍性大腸炎に対して発芽玄米に含まれている大量のフィチン酸が症状を軽減しているのです。

現代の文明化学社会の環境や食事に含まれている重金属や有害化学が日常生活の中で知らない間に体内に侵入蓄積しているのです。これらの有害物質がクローン病や潰瘍性大腸炎のみならず、その他の様々な膠原病やアレルギーの原因になっているのは、皆さん既にご存知でしょう。それではもっと具体的にどんな製品にどんな化学物質が含まれ、それらをどのように人体は解毒しているのかを見てみましょう。

有害ミネラル有害ミネラルを含む化学製品有害ミネラルの過剰蓄積による様々な病気や症状キレート効果を発揮して有害ミネラルを排除する人体に含まれる必須ミネラル
鉛 (Pb)喫煙・鉛管による水道水・殺虫剤貧血・不安感・めまい、骨や筋肉の痛み、頭痛、脳発達遅延(胎児、小児)、不妊カルシウム、亜鉛、鉄
水銀(Hg)魚介類、歯科用アマルガム(歯の詰め物)、乾電池うつ状態、皮膚炎、眠気、しびれ、情緒不安定、不妊セレニウム、亜鉛
カドミウム
 (Cd)
喫煙、生活排煙(ゴム、プラスチック製品)腎臓障害、骨粗鬆症、骨軟化症、貧血、脱毛、食欲不振、疲労、血圧上昇、神経過敏、不妊亜鉛
ヒ素(As)防腐剤(木材)、肉類、殺虫剤、穀物類色素沈着、皮膚がん、疲労、手足の灼熱感、胃腸障害、不妊セレニウム
アルミニウム
(Al)
アルミ器具、乾燥剤、膨らし粉、野菜類腎臓障害、食物不振、息切れ、筋肉痛、胃腸障害、不妊マグネシウム、鉄
ベリリウム
(Be)
肉類の加工食品、半導体、プラスチック金属呼吸障害、皮膚障害セレニウム

この表を一見してすぐに分かることは、いかに現代人が化学物質で毒されているかがおわかりになるでしょう。上の表はあくまでも症状を列記しているだけですが、例えば皮膚障害というのはアトピーのことであり、呼吸障害というのは喘息であり、腎臓障害というのは糸球体腎炎であり、筋肉の痛みや頭痛や眠気や目眩やしびれや疲労というのは化学物質が免疫を抑制したために増えたヘルペスと免疫との戦いにみられる、自律神経や知覚神経、運動神経で生ずるヘルペス性神経炎であるのです。もちろん癌も書かれていますが、まさに化学物質は発ガン物質となっているのです。胎児や小児の脳発達遅延というのは、まさに発達中の脳神経細胞に化学物質が侵入してしまったためなのです。私がいつも言っているように、文明の病気の原因は、化学物質であり、かつ免疫を抑えることによって増えたヘルペスであることが、この表を見ても一目瞭然なのです。不妊はまさに、水銀・鉛・砒素・カドミウム・アルミニウムなどの有害ミネラルが、遺伝子を変えるのみならず、必須ミネラルに拮抗し受精卵の代謝を阻害することによって生じるのです。

ここで皆さん、セレニウムが必須ミネラルであることをご存知でしたか?ついでにちょっと勉強してみましょう。セレニウムは、別名セレンと呼ばれます。セレンはシステインというアミノ酸と結びついてセレノシステインとなり、主にセレノプロテインというタンパク質になります。セレンはビタミンEやビタミンCと協調して、活性酸素や他のラジカルから生体を防御します。

セレノプロテインには抗酸化作用を持っているグルタチオンペルオキシダーゼや、チオレドキシン還元酵素などの酵素以外に、甲状腺ホルモンを活性化するテトラヨードチロニン(サイロニン)-5′-脱ヨウ素化酵素や、セレンを末梢組織に輸送するセレノプロテインPなどがあります。

セレンという必須ミネラルは、欠乏量と中毒量の間の適正量の幅が非常に狭いので、すぐに過剰症や欠乏症による症状がみられます。まずセレン過剰症としては、悪心、吐き気、下痢、食欲不振、頭痛、免疫抑制や、みなさんご存知の善玉コレステロールであるHDL減少などの症状があります。ちなみに、HDLは英語では“High density lipoprotein”といい、日本語では高密度リポ蛋白とか、高比重リポ蛋白といいます。一方、欠乏症は貧血、高血圧、精子減少、ガン(特に前立腺ガン)、関節炎、早老、筋萎縮、多発性硬化症などが知られています。ただし、ヒトでは、セレン単独の欠乏では、これらの症状はみられません。

セレンは肉や植物など日常で摂取する食材に含まれており、欠乏症はさほど多くはありませんが、特に植物性の食物に含まれるセレン含有量はその植物が生育する土壌中のセレン含量に左右されます。そのため、セレン含量の乏しい土地の住人にセレン欠乏が見られます。そのような土地として中国黒竜江省の克山県(こくざんけん)があり、うっ血性心不全を特徴とする克山病(こくざんびょう)が知られています。

また、血液中のセレン濃度と前立腺ガンの相関性が指摘されています。血液中セレン濃度の低下は前立腺ガンのリスクファクターとなっています。セレンの補充は前立腺ガンのリスクを軽減しますが、取り過ぎは前立腺ガンのリスクを軽減しないどころか、皮膚がんのリスクを高めるのです。

さぁ、発芽玄米がフィチン酸のキレート作用で有害ミネラルを処理する話を終えましたが、ついでに有害ミネラルのみならず、世界中にどれだけアレルギーや膠原病の原因となっている人類が18世紀後半の始めた産業革命以来作り出した化学物質がどれだけこの地球上にあり、かつ人類の健康にどれだけ影響を及ぼしているのかを全般的に見てみましょう。

下記の表は化学物質による人間への主要な健康影響をまとめたものです。化学物質との関連性は、ベンゼンと白血病のようによく知られた因果関係から、化学物質過敏症と農薬のようなものまであります。最も有害な影響は多くの原因の相互作用の結果であり、遺伝子、生活スタイル、放射線、食事、医薬品、化学物質(人工及び天然)、喫煙、屋内および屋外の大気汚染などがあります。また、通常の人々よりはるかに低いレベルの用量で影響を受ける老人、子ども、胎児、病人、妊婦などの“感受性の高い集団”のことをいつも考慮することが必要です。

病気感受性の高い集団関連化学物質、事例
全てアスベスト、多環芳香族化合物(PAH)、ベンゼン、金属、農薬、数百の動物発癌物質、溶剤、天然毒物
心臓血管疾病特に老人一酸化炭素、ヒ素、鉛、カドミウム、コバルト、カルシウム、マグネシウム
呼吸器系疾病子ども、特に喘息吸入微粒子、二酸化硫黄、二酸化窒素、オゾン、炭化水素、様々な溶剤、テルペン
アレルギー及び過敏症全て、特に子ども微粒子、オゾン、ニッケル、カドミウム
生殖系疾患生殖年齢の大人PCB類、DDT、フタル酸化合物
発達系疾患胎児、子ども鉛、水銀、内分泌かく乱物質
神経系疾患胎児、子どもPCB類、メチル水銀、鉛、マンガン、アルミニウム、有機溶剤

人工の化学物質が人間の健康に大きな影響を与えることは確かです。最新の国際労働機関(ILO)の推定によれば、2003年には化学物資とその他の危険物質により、なんと439,000人の労働者が死亡している。2015年時点で約3,500万の人々が危険物質によって引き起こされる職業関連疾患の被害を受けていました。

ある化学物質は、曝露したグループ内で明らかに癌を引き起こしますが、全体の因果関係は不明確であります。特に、問題なのは過去数十年間に若い男性の精巣癌劇的に増加していることであります。1950年以来、その症例は400%増加しました。同様な懸念は女性の乳癌発症の増加であります。長期間の合成化学物質への曝露は女性ホルモンへの影響を通じて重要な役割を果たしています。

世界で年間、約1,000万人の新たな癌患者がみられます。文明国であるヨーロッパでは不均衡に高い発症率であり、1995年には新たな症例は260万件であり、世界の発症数の4分の1以上を占めます。それらのうち160万人が死亡しているのです。

ヨーロッパではタバコと食事は癌の知られた原因として突出しており、その全発症の65%を占めています。ヨーロッパでは大気汚染と職場での曝露を含む化学物質への長期間曝露を原因とするものが全発症数の5%を占め、130,000人が発症し、そのうち80,000人が死亡していると考えられます。

ある化学物質は野生生物の生殖系に女性ホルモン様作用の有害影響を与えるという事実が知られている。ところが人間の生殖への影響も懸念の主要な対象となってきました。野生生物で観察される影響の多くは化学物質によって引き起こされます。他の天然ホルモンの機能不全又は過剰効果は野生生物中で観察されるもうひとつの影響であり、このような影響を及ぼすと考えられる化学物質は「内分泌かく乱物質」(EDCs)と呼ばれます。EDCsは“Endocrine disrupting chemicals”の略語です。別名、環境ホルモンと呼ばれます。

過去数十年間、人間もまた内分泌かく乱物質(EDCs)によって影響を受けています。特定の内分泌かく乱物質への人間の曝露に関する臨床的経験は非常に限られている。最も重要な経験は、1940年代から1960年代まで使われた、流産防止薬剤である「ジエチルスチルべストロール(DES)」に関するものであります。DESの正式な英語は“Diethylstilbestrol”であります。女性ホルモン様効果をもつDESは流産を防止するために妊婦に投与されました。最終的にはこれらの女性から生まれた女子には著しい膣癌の発症がみられ、女子と男子には高い割合で先天的障害が出ることが立証されたのです。

3つの重要な経験をこの悲劇から学びました。第一は、人間へのDESの影響は臨床研究において動物に観察されたことと非常によく似ていることです。第二は微量な物質でも、特に胎児の発達の敏感な時期に曝露が起これば、子孫に深刻な影響を与えます。第三は、最も難しい問題でありますが、影響が現れるまでに時間がかかることです。

もうひとつ、人が経験した内分泌かく乱物質(EDC)への懸念は農薬であるキーボン(Kepone)の製造です。キーボンを製造している男性労働者に関する研究が、精子の数が影響を受け、不妊となるものもいることを示しました。実際、キーボンのような内分泌かく乱物質が人間の精子製造を損なうということは知られた事実であります。いくつかの研究によれば、人間の精子の数と質は過去50年の間に劇的に低下しています。このことは人間の生殖は合成化学物質によって脅かされているのです。

皆さんもご存知だと思いますが、私が若い時には男性の射精された一回分の精液の中に少なくとも3億個の精子があることが知られていました。ところが近頃は、その量が1億個以下になっています。昔と比べて、精子造成のための男性の栄養状態や体格は極めて良好であるにもかかわらず、精子だけが減っているのは、まさにEDCによるものであります。このような化学物質の影響を受けた人間に関する臨床的な観察と報告はたくさんあり、若い男性の精巣癌および女性の乳癌の劇的な増加はそのような分野のひとつであります。その他として、前立腺癌、停留睾丸、男性生殖器異常、流産などがあります。皆さん、化学文明が進んだからといって喜ぶことはできません。人類の精子や卵子、さらに受精卵の遺伝子に直接影響を及ぼす化学物質の恐ろしさを理解できますか?快楽を増やすだけの資本主義が最後は人類の絶滅をもたらすことになるでしょう。

アレルギーと喘息免疫系もまたホルモンのバランスに高度に依存し、特に胎児期、あるいは若年期に内分泌かく乱物質によって乱されているかもしれないのです。もちろんいつも私が言っているように、人間が生まれた後に摂取した化学物質がアレルギーや膠原病の原因となっているのは公然の秘密なのです。さらに野生生物の免疫系が内分泌かく乱物質によってダメージを受けることはよく知られており、動物の一種である人間にも同様な影響があるのです。この真実は、世界中で免疫系に関連した疾病が増加しているという事実によって証明されています。例えば、いくつかのヨーロッパ諸国の学校の子どもたちの喘息は、1950年代の1%から今日の約10%と大幅に増加しています。人工化学物質を大量に作り出している産業先進国の人口の約20%は、何らかのアレルギー症状を持っているのは周知の事実であります。

このような状況になったことについてはいくつかの要素があります。まず屋外大気汚染化学物質、屋内空気に含まれる化学物質、無菌化するために使われる化学物質による環境汚染などが主な原因であります。さらに内分泌かく乱物質の作用は言うまでもありません。

健康問題以外のコストを考えてみましょう。果たして、このような危険な化学物質によって地球社会にもたらされた経済的コストを評価することは可能でしょうか?成層圏のオゾン層破壊とその他の環境影響、温暖化現象による影響、漁業、農業、そして林業に携わる人々の収入の損失、水処理コスト、医療コスト、数十万エーカーの汚染された土壌の汚染除去、数十万の失われた人の命の補償などの全てのコストを評価することは不可能なほど巨大であります。

しかし、これらのうちのいくつかについて関わるコストについては知ることができます。例えば、産業先進諸国では化学物質汚染が健康問題の5%を引き起こしており、従って医療費の5%に関与していると見積もることができます。EUにおけるアレルギーだけでも社会経済的コストは年間290億ユーロ(約4兆円)と見積もられます。従ってEUで化学物質汚染によってもたらされるアレルギーの医療経済コストは年間14億ユーロ(約2,000億円)と見積もられます。

アメリカでは、環境汚染による喘息、癌、発達障害に関わる罹患と死亡のコストは500~600億ドル(約5~6兆円)と見積もられています。アメリカとカナダで有毒物質によって引き起こされる年間の総医療費は3,200億ドル(約32兆円)であると見積もられています。これらの数値は巨額でありますが、それらは化学物質汚染がもたらす全体コストのほんのほんのわずかな一部にすぎません。

人工の化学物質の過度な生産、使用、そして環境中への拡散は多数の問題を引き起こしています。このような化学物質の野生生物と人間への直接的な影響を定量化することは難しいのですが、それらの影響は莫大であり、大きな問題であるということは全く疑いないのです。毎年、化学物質により数十万の人々が死に、数百万の人々が傷つけられているのです。にもかかわらず、なぜ人工化学物質の製造をやめることができないのでしょうか?それは人類は便利さという快楽だけを文明に求めようとしているからです。しかもその快楽を満たす化学物質を生産する世界中のグローバルな化学会社が製造物責任法(PL法)をないがしろにしているからです。

人工の化学物質はまた、成層圏のオゾン層の破壊や現在の廃棄物問題の主要な原因であるなど、深刻な問題をもたらしています。さらに、化学産業とその製品は、生物多様性の喪失、水の大量消費、海岸地帯の汚染破壊など、その他多くの問題を引き起こしています。これらの社会に対するあらゆる種類の年間総コストは、はかり知れないものです。この状況が続く限り人類のみならず、人類を支えている地球が破綻する日も近いでしょう。人類のエゴがなんらかの形で抑制されない限りは人類の破滅は遅かれ早かれ必定のものとなるでしょう。ただひとつ解決策があります。人間の欲望を常に刺激してやまない資本主義に基づいた私有財産制をなくし、地球上の全ての国家を社会主義にすることしかないでしょう。今こそ、無血共産主義革命が必要なのかもしれません。アッハッハ!!!

次で最後になります!もう少し頑張って着いて来て下さい!!「潰瘍性大腸炎、クローン病完治の症例報告Part16-⑤(コメントあり)

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