コラム

なぜアトピーの治療でステロイドを長期に用いると、 皮膚が黒人のように黒くなったり、白くなったりするのか?

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 以前、“マイケルジャクソンがなぜ白人になったか”というテーマで、ステロイドを塗り続けたり飲み続けたりすると、メラニン産生細胞自身が作られなくなってしまうことで白斑症になると書きましたが、ステロイドには、皮膚のメラニン産生細胞に対する直接的な影響以外にも、白斑を生じさせる原因となる作用があります。

 ステロイドを使うと免疫を一時的に抑えることはできるので症状が一時的に良くなり、ステロイドをやめても再び免疫が取り戻されると、初めよりもひどい症状が出てきます。医者は症状が良くなると「寛解」と呼び、症状がひどくなると「再燃」と呼びます。このいわゆる寛解と再燃の20年近くも繰り返してしまうと、黄色人種の黄色い皮膚が徐々に徐々に黒くなっていきます。これをステロイド性黒皮症といいます。特にステロイドを大量に塗った皮膚は、まるで黒人のように真っ黒になります。

 ときには、皮膚が黒い部分がみられると同時に、白い部分もみられる患者もいます。白い部分を白斑(はくはん)といい、これをステロイド性白斑症といいます。黒い皮膚は、メラニン色素が真皮に大量にたまるためです。白斑はメラニン色素が作られなくなったためです。

 どちらの場合も、メラニン色素が関わっていますので、まずはメラニン色素がなんのために作られるについて説明しましょう。人間などの動物は、太陽からの紫外線をメラニン色素で吸収しないとメラノサイトの細胞のDNAを損傷し、悪性黒色腫という癌になってしまいます。つまり、メラニン色素は紫外線から表皮細胞のDNAを守るための、いわば日傘なのです。

 悪性黒色腫は、英語でメラノーマといい、“malignant melanoma”と書きます。ちなみに悪性黒色腫は、今話題になっています。なぜでしょう?それはこの癌に効くといわれるオブジーボが発売されたからです。しかしなんと1年間飲むだけで3500万円かかり、医療費がさらに高くなるということで、トピックになっています。メラノーマは紫外線が当たる皮膚や、眼窩内組織や、口唇などの口腔粘膜上皮などに発生しやすいのです。遺伝的にメラニンが全く合成されない人をアルビノといい、こうした人は紫外線によって皮膚癌になりやすいのです。

 次にメラニン色素はどのように作られるかについて説明します。メラニン色素はメラノサイト刺激ホルモン(MSH)が、皮膚の表皮にある黒色色素細胞であるメラノサイトを刺激することで作りだされます。表皮は5層からできていますが、メラノサイトはどの層に存在しているのでしょうか?表皮は最下層が基底細胞層であり、上の方に向かって次に有棘細胞層、顆粒細胞層、淡明細胞層、角質細胞層があります。この基底細胞層にある基底細胞の間にメラニン色素細胞があり、このメラニン色素細胞がメラニン色素を作り、作ったメラニン色素を隣にある基底細胞に渡します。メラニン色素をもらった基底細胞は上へどんどんと分裂成長して押し上げられ、結局5層の全ての細胞にメラニン色素が存在することになるのです。

 本題に戻りましょう。実は先ほど説明したメラノサイト刺激ホルモン(MSH)がステロイドを使用することによって、出されなくなり、結果的にメラニン色素細胞が作られなって白斑症が起こるのですが、まずはMSHが作られるプロセスを詳しく説明しましょう。

 まず脳の視床下部からCRHというホルモンが産生されます。そして、そのホルモンの刺激によって下垂体の前葉と中葉でPOMCという物質が作られます。POMCは主に下垂体の前葉と中葉で産生されるのですが、少なくとも8つの切断可能な箇所があり、組織や変換酵素によって次に示す最大10の活性ペプチドが産生されます。

N-Terminal Peptide of Pro opio melanocortin(NPP,orpro-γ-MSH)
γ-メラニン細胞刺激ホルモン(γ-MSH)
副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)
α-メラニン細胞刺激ホルモン(α-MSH)
Corticotropin-like Intermediate Peptide(CLIP)
β-リポトロピン(β-LPH)
γ-リポトロピン(γ-LPH)
β-メラニン細胞刺激ホルモン(β-MSH)
β-エンドルフィン
メチオニン-エンケファリン

 POMCの“O”はオピオイド(エンドルフィンをはじめとする麻薬性のアルカロイドおよびモルヒネ様活性を有する合成ペプチド類の総称)、“M”はメラニン細胞刺激ホルモン(MSH)、“C”はコルチン(ACTH)、を意味し、これに“前の”という意味の”Pro”がついて、“O”と“M”と“C”の前駆体という意味でPOMCと名付けられました。MSHがどのように作られるのか理解できたところで、MSHを出させるCRHがどのようにして視床下部で作られるかについて述べましょう。CRHが作られるのは人体のステロイドホルモンが少なくなった時と、ストレスがかかった時だけです。逆に人体のステロイドホルモンが多くなると、CRHは作られなくなります。これはCRHがMSHだけではなく副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)の産生を促すホルモンでもあるからです。

 アトピーの治療と称して人工合成ステロイドを長期に使い続けると、脳の視床下部は副腎皮質が充分以上のステロイド作っていると見なし、CRHを出してACTHの前駆体であるPOMCを作る命令をやめます。POMCが作られなくなるということは、ACTHのみならず、同時にMSHも作れなくなるのです。MSHが作られなくなると、メラニン色素細胞はメラニンを作ることをやめます。このような機序で、ステロイドを使えば一時的に皮膚が綺麗に白くなるので、昔はステロイドが化粧品として用いられたことがあったのです。

 現在でも化粧品としてプラセンタが使われていますが、プラセンタに含まれている黄体ホルモンは代謝されて、コルチコステロンというステロイドホルモンに変わり、同じように美白効果があるので、女性の間では大人気になっていますね。アッハッハ!

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