ガン コラム なぜシリーズ

なぜ、EBウイルスによる胃癌が生じるのか?胃癌はEBウイルスが胃の細胞の遺伝子に入り込み、遺伝子形質を癌化させるからです。 2018.9.6更新

投稿日:2018年8月31日 更新日:

白血病は見つけられた後、治療されていない病状の経過によって急性と慢性に分けられています。ところが、本来、上皮性のガンというのは、ガン化した細胞の1個が長い時間をかけて2個、4個、8個…と増え続け、10億個まで増えると大きさが1cmになり、この時に初めてガンと分かるのですが、ここまで大きくなるまで何年もかかります。一方、血液ガンについては、どれだけ時間がかかるかについては、どの本を読んでも書かれていませんし、急に見つかることがあります。なぜでしょうか?それは骨髄にある造血幹細胞や、様々な末梢血液に流れていく血球の前駆細胞に8つのヘルペスウイルスが感染し、それらの細胞の遺伝子の形質を転換(トランスフォーメーション)させ、その結果、その細胞を短期間で簡単にガン化させるからだと考えています。

さらに、毎年胃ガンや肺ガンや乳ガンの検診をやり続けた人が、突然にガンだと指摘されることがあります。癌腫においてもなぜこんな短期間でガンができてしまうのでしょうか?これも大量に増えたヘルペスウイルスが、感染した胃や肺や乳房の細胞の遺伝子を短期間で無理やり遺伝子をトランスフォーメーションさせ、急激にガンに関わる2種類の遺伝子であるガン遺伝子と抑制ガン遺伝子を一度に大量に変異させてしまうからであると考えています。例えば、毎年10年もの長い間、欠かさず胃ガンの検診をやり続けていた人が、突然11年目に胃ガンと診断された人もいます。この胃ガンはまさにEBウイルスの遺伝子の形質転換によってもたらされた胃ガンです。EBウイルスによって変えられたDNAは元からあった正常な胃の細胞の遺伝子と一緒に分裂する時に受け継がれていくのです。最後は胃ガンとして発見されるのです。

ところがどのようにして、EBウイルスがこのような胃ガンを引き起こすかについての詳しい研究は一切行われていません。たとえ行われていたとしても、その答えがわからないので公にされていないのでしょう。私はこのような事態を引き起こすEBウイルスが、突然にどのようなプロセスで患者の遺伝子に入り込んで、患者のガン関連遺伝子をガン化させるのかを明らかにするために、様々なヘルペスに関する英文の文献を読み続けているところです。徐々にその答えも分かりつつあります。

喜んでいいのか、悲しんでいいのかわかりませんが、私は数少ない悪性リンパ腫や多発性骨髄腫と大病院で診断された患者さんを診てきたことがあります。例えば悪性リンパ腫と某有名大病院で診断されて、当院に来られた患者さんがいました。その患者さんの症状は頸部リンパ節のみならず、腋窩リンパ節も腫大が見られ、微熱が続いていました。過去にその患者さんは、ストレスが強い生活を強いられてきた人であり、ストレスに耐えるために自分のステロイドホルモンを出しすぎて、リウマチにもなったことがあったのです。私はそのリウマチを治すお手伝いをして治されたので、私に絶大なる信頼を抱いてくれていました。そのあと親族の方が大腸ガンと診断され、遠路からはるばる漢方免疫療法と鍼灸療法を求めて受診され、その方の大腸ガンも自分の免疫で治されたので、自分の免疫でしか病気は治せないんだという思いを強くされていました。

悪性リンパ腫と診断されたときも、「抗ガン剤を入れなければ命が危ない」とまで言われていたのですが、抗ガン剤を使いたくなくて、私の免疫を上げるだけの治療を受けるために当院を受診されました。その時は既に私は「悪性リンパ腫はガンではなくて、自分の免疫を自分で抑え続けている間に、大量にヘルペスウイルスが増殖してリンパ節で免疫と戦っている症状で、ただ単にリンパ節が腫大している」と考えていたものですから、「一切免疫を抑えなければ、さらにヘルペスウイルスを増やすこともなく、最後はヘルペスウイルスを潜伏感染状態に押し込めることができる」と考えて、例のごとく大量の煎じ薬で免疫を上げ、かつ鍼灸もやり続ける方針を貫きました。さらに患者さんに「このような悪性リンパ腫と診断される状態を作ったのは、自分自身のステロイドホルモンを出し続ける心のあり方であるので、常に心のあり方に注意するように」と釘を刺しておきました。この治療を続けている間に、いつの間にかリンパ節の腫れもなくなっていました。

悪性リンパ腫の初発症状は、ほとんどの場合、血液検査においては炎症所見のみならず、血液一般、白血球分類、生化学の検査では異常が出ません。ですから、免疫を上げることによってリンパ節の腫れや微熱やだるさが消えてしまえば、私は患者の病気の根源であるリンパ球、特にBリンパ球に感染していたヘルペスウイルスのうち、殺すものは殺し、Bリンパ球に潜伏感染させるものはさせてしまって、病気そのものは患者さん自身の免疫で治したと考えています。

ところが現代の医療は、無理やりステロイドをはじめ他の抗ガン剤を飲むことで、自覚所見のみならず他覚所見が正常に戻れば「寛解」という言葉を使います。私はこれは間違った治療法だと考えています。症状だけを良くしても病気の根源そのものは治っていないからです。従ってその後再び免疫の抑制が完全に解除されると「再発」という言葉を医者たちは使います。これを一生繰り返していくのです。

白血病関連のガンの一つである多発性骨髄腫の患者さんの話をしましょう。彼女は某有名大学で多発性骨髄腫と診断され、「ステロイドを飲まなければ1年以内に死んでしまう」と言われて当院を受診しました。なぜ当院のことを知っていたかというと、娘さん2人のアトピーがひどかったからです。彼女たちは子供の時から知らぬ間にステロイドを使って、化学物質に対するアレルギー抗体であるIgE抗体を作らせないように長期にわたり免疫を抑えるためにステロイドホルモンを塗り続けてきました。塗っても症状は良くならないので当院を受診し、ステロイドを使わない漢方免疫療法をやることでステロイド離脱症状を乗り越え、かつ一つ一つの化学物質に対して自然後天的免疫寛容を起こして良くなっていったので、それを知っていたお母さんも免疫を抑えるステロイドを使うことが嫌だったので受診されたのです。

もちろんこのお母さんも若い時に御主人を亡くされ、ストレスの強い生活を強いられて、その間に自分自身の副腎皮質からステロイドホルモンをたっぷり出し続けてきたのです。その間に増え続けてきたヘルペスウイルスが突然にBリンパ球に異常な抗体を作らせることになったのです。つまり骨髄でBリンパ球が作る抗体の遺伝子のうちの軽鎖を作る遺伝子に突然に入り込み、その遺伝子を変えてしまったのです。言わばリンパ球の遺伝子の急性転化と言ってもいい急性形質転換を起こしてしまったのです。

ちょっと復習しておきますが、抗体の軽鎖とは何でしょうか?軽鎖について勉強する前に、抗体についてまず復習しておきましょう。

抗体は英語で“Antibody”といいます。抗体はどんな成分でできているのでしょう?糖とタンパクからできています。抗体はイムノグロブリン(Immunoglobulin)という名がつけられた糖タンパク質の一種であるのです。イムノグロブリン(Immunoglobulin)のイムノは「免疫に関する」という意味であり、グロブリンが「血液の血漿に溶けているタンパクの総称」です。実際はイムノグロブリンは「免疫に関わる抗体が存在する血清分画に溶けているタンパク」ですが。生化学的にはこの糖タンパクの一つでありますが、免疫学では抗体を呼んでいるのです。この抗体は、抗原と(Antigen)と結合する能力があります。抗原とは生体外に由来するタンパク質や糖鎖などのいわゆる異物で、抗体は抗原に結合することによって、その異物を排除したり不活化します。一種類の抗体が結合する抗原は一種類のみであり、特異的であることはご存知ですね。

抗体はYの字に似ているのも知っていますね。Yというのはイメージであって、正確な抗体の形ではないのです。もうちょっと正確に、左下に抗体構造を図示しておきましょう。Fabは“Fragment antigen binding”の略語で、日本語では「抗体と結びつく部分」という意味です。Fcは、“fragment crystallizable”の略語で、「結晶化できる部分」という意味です。H鎖は“Heavy chain”の略で重鎖の意味です。L鎖は“Light chain”の略で軽鎖の意味です。

糖タンパクであるイムノグロブリンの分子は、2本の重鎖(Heavy chain)と 2本の軽鎖(Light Chain)がジスルフィド結合(S-S結合)によって結合し、形作られる Y 字型が基本単位です。ジスルフィドの英語は“disulfide”と書き日本語では二硫化物の意味です。ジスルフィド結合は、2つの硫黄が結びついているという意味です。Y 字の上端 2 箇所に相当する部分は抗原結合部位(Antigen binding site)と呼ばれ、文字通り抗原に結合します。結合する抗原が異なればこの抗原結合部位のアミノ酸配列および構造は異なり、その違いが抗体の違いであり、抗体の特異性を示すのです。イムノグロブリンには IgA、IgD、IgE、IgG、IgM の 5 種類のクラスがあります。

まず抗体は長い2本のH鎖と短い2本のL鎖で成り立っていることはご存知ですね。さらに抗体には5種類あることも述べました。IgD、IgM、IgG、IgA、IgEの5種類の抗体ですね。この5種類ともH鎖は可変領域(Variable region)と定常領域(Constant region)に分けられます。定常領域は IgDはδ、IgMはμ、IgGはγ、IgAはα、IgEはεの 5 種類あります。一方、L鎖はκ鎖(カッパ鎖)とλ鎖(ラムダ鎖)の2種類です。

さて、多発性骨髄腫の患者の診断がどのようにつけられるかについて説明しましょう。まず抗体がどのようにして作られるかから話を始める必要があります。まず重鎖が作られ、その後軽鎖が作られます。

このようなタンパクがどのような遺伝子によって順序良く作られていくかについては次回、詳しく述べる予定です。乞うご期待。

いつ動物に高等免疫、つまり抗体を作るという免疫が生じたか、皆さんご存知ですか?動物の免疫は細菌やウイルスなどの病原体に対して、まず自然免疫が芽生えました。ところが細菌やウイルスは、この自然免疫から逃れるために、様々な突然変異を起こしながら進化してきました。動物は病原体と生きるか死ぬかの長い戦いの末に、時間をかけて最後に動物がこれらの病原体を確実に打ち負かす免疫の進化を遂げました。これが私たち人間も所有している高等免疫であり、適応免疫とか獲得免疫と呼ばれる免疫のシステムであります。 高等免疫とはなんでしょうか?一言で言うと、高等免疫とは、自然免疫のように漠然と敵を見つけて殺すのではなくて、明確に見つけ確実にやっつける究極の防衛手段であります。今私が論じている抗体そのものあります。この抗体が異常になって生じる病気のひとつが多発性骨髄腫であります。それではこの抗体を最初に作ったのは誰でしょうか?2億年前に魚類が作ったのであります。それがひとつひとつの病原体を確実に殺すことができる特異的な究極の防衛手段となる抗体であります。この抗体を作り出すのはBリンパ球であります。 Bリンパ球は、骨髄で生まれます。骨髄にある多能性造血幹細胞から作られるのであります。毎日10億以上のBリンパ球を一生涯人間は死ぬまで作り続けるのであります。血管の中には30億個のBリンパ球が毎日毎日巡回しています。Bリンパ球は膜の表面にB細胞受容体と呼ばれる2種類のタンパクである2本の重鎖(Heavy chain)と2本の軽鎖(Light Chain)から成り立っているB細胞受容体を持っています。“Heavy chain”は“Hc”、“Light Chain”は“Lc”と縮めて表記します。このB細胞受容体と抗体はほとんど同じものであります。言い換えると、B細胞受容体が剥がれたものが抗体と考えてください。 ちなみに、日本で1987年に初めてノーベル生理医学書を受賞したのは利根川進先生です。その当時、無限の病原体に対しては100億以上の異なった抗体を作る必要があるのに、人間が持っている遺伝子は数万〜1億ほどしかないことが知られていました。(現在では人間の遺伝子は23000個とわかっています。)にもかかわらず、どうして100億以上の違った抗体が作れるのかという疑問に対しての答えを出したのです。利根川進先生は、「抗体の多様性は、生まれ持った抗体の遺伝子が特別な組み替えによって作られる」ことを明らかにしたのです。その当時は、生まれた時に与えられたいかなる遺伝子も永遠に変わらないという考え方が定説でありました。この定説は、抗体の遺伝子に関して、つまり重鎖と軽鎖の遺伝子については間違いであるということを世界で初めて正しく証明したためにノーベル生理医学賞を受賞したのはご存知ですね。 さて、B細胞受容体はHcもLcもタンパクでありますから、必ずこのタンパクを発現する遺伝子があります。Hcの遺伝子は14番目の染色体にあります。Bリンパ球は、お母さんとお父さんからもらった2本の14番にHcの遺伝子を持っています。このように同じようなタンパクを作る遺伝子を対立遺伝子といいます。それではお父さんとお母さんのどちらのHcの対立遺伝子のひとつがどのように発現するのでしょうか?とにかくどちらが早く作るかの競争をするのです。いち早くHc遺伝子を発現してHcタンパクを作った方のタンパクが重鎖となり、遅れた方は使われることがないのです。このように一方の遺伝子だけが発現される現象を対立遺伝子排除といいます。

2018/9/6

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