潰瘍性大腸炎・クローン病 疾患解説

なぜ炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎は膠原病の中で最も治りやすいのか

投稿日:2018年8月22日 更新日:

まず、病気になるためにはどうすればいいのでしょうか?5大栄養素と水と酸素以外の異物が人体に取り入れる必要があります。どのようなルートで異物を取り入れることができるのでしょうか?まさに人間が生きるために絶対に必要な5大栄養素と水と酸素を摂取するときに、知らぬ間に一緒に取り入れてしまうのです。 それでは現代文明において、空気や飲食物と一緒に入ってくる異物に何があるでしょうか?目に見える異物を好んで人体に入れるバカな人は誰もいません。全て目に見えない異物です。その代表が風邪のウイルスであり、ヘルペスウイルスを代表とするウイルスであります。次に目に見えない異物の代表のひとつである細菌が知らぬ間に入ってきます。ブドウ球菌であり、レンサ球菌であり、肺炎球菌などであります。ときに子供によく見られるようにウイルスでも細菌でもないマイコプラズマなどであり、知らぬ間にマイコプラズマ肺炎を起こすことがあります。ところが優れた公衆衛生の意識が大衆の中に広まり、行政もすみずみまで衛生状態を常に監視しているので、飲料水や食べ物から病気を起こす異物となる細菌も人体に侵入することが現代文明では皆無となりました。しかも病原性の強い細菌やウイルスに対しては、強制的に乳幼児に予防接種をさせます。そのワクチンの代表が3種混合(DPT)で、Dはジフテリア、Pは百日咳、Tは破傷風のことであります。さらに、結核菌に対してはBCGが行われ、ウイルスに対してはポリオ、風疹、さらに日本脳炎に対するワクチンも接種されています。ますますウイルスや細菌が病気の原因であることがなくなってしまいました。風邪のウイルスは怖くないのでワクチンは行われていません。さらにヘルペスウイルスもワクチンの意味がないので行われていないのですが、ヘルペスだけが特殊なのです。ヘルペスについてはここを読んでください。

さて、皆さん、以上のウイルスと細菌が知らぬ間に人体に侵入する全てだとお思いでしょう。ところがどっこい、そうは問屋がおろさないのです。何だと思いますか?文明が利便さのために作り上げた化学物質が、実は現代人にとって最大の無限の異物となっているのです。このような化学物質が人体に入ったときに、これを異物と認識できる遺伝子を持って生まれた人はアレルギーを起こすのです。皆さんはアレルギー体質であると言われても、ほとんど全ての人が多かれ少なかれアレルギーを持っているので当たり前のように受け入れられるようですが、あなたは膠原病体質を持っていると言われると、まさかとビックリ仰天されるでしょう。実は免疫が戦っている敵は同じ化学物質であることを知らされれば、何も驚いたり悩んだりする必要はないのです。何万回も私のホームページで繰り返して説明しているように、化学物質をIgE抗体で戦うときにアレルギー症状が出現し、IgG抗体で戦うときに膠原病になる違いがあるだけの話なのです。
それでは無限に作られ続ける化学物質がある限りは、アレルギーになったり膠原病になったりして、永遠に苦しまざるをえないとお考えでしょうが、違うのです。共存が可能となるのです。まず膠原病で使われるIgGを抗体を、抗体のクラススイッチを命令する遺伝子であるAID遺伝子をONにすればアレルギーで使われるIgEに変えて、これらの化学物質と共存できるのです。もちろん免疫を抑えない限っての話ですが。さらにこのIgEを作らなくさせる働きが人間の免疫の働きに組み込まれているのです。これが自然後天的免疫寛容という働きなのです。つまり免疫がこの化学物質と戦うことをしなくなることが免疫寛容なのです。化学物質と戦いをやめれば膠原病もアレルギーも全て治ってしまうのです。

それでは潰瘍性大腸炎(UC)やクローン病(CD)は膠原病のひとつですから、IgGで化学物質と腸管で戦っていることは既に述べました。それではこのページのタイトルとなっている、UCやCDがどうして免疫寛容を起こしやすいのかをこれから詳しく述べていきましょう。

既に膠原病がどのようにして起こるかについてはあちこちで詳しく述べましたが、ポイントだけ復習しながら、今日のテーマであるUCとCDがどのように生じ、どうして治りやすいのか、つまり化学物質と免疫寛容を起こしやすいのかに力点を置いて述べます。

まず腸管に化学物質が侵入してきます。食べ物のペプチド(キャリアタンパク)と結びついた化学物質(ハプテン)は、小腸に200箇所あるといわれているパイエル-パッチ(パイエル板とか、パイエル斑と訳します)といわれる小リンパ節が集合したリンパ組織に取り込まれます。このパイエルという名前は、最初に見つけたヨハン・パイエルというスイスの解剖学者にちなんだものです。17世紀の終わり頃に見つけられました。このパイエル-パッチは誕生日の前から発達し始めるといわれています。パイエル-パッチは特に小腸の終末である回腸と盲腸の境目(これを回盲部といいます)に一番たくさんあります。40個以上も小腸の回盲部をぐるりと取り巻いています。パイエル-パッチは、ちょうど喉にある3つの扁桃とよく似ています。パイエル-パッチは腸管扁桃と言ってもよいのです。ちなみにこの3つの扁桃は、口蓋扁桃と、咽頭扁桃と、舌扁桃であります。(咽頭扁桃は、別名アデノイドといわれるのもご存知でしょう。)扁桃が気管に異物が入らないための重要な免疫の監視役をしているのと同じように、このパイエル-パッチは小腸の粘膜に異物が取り込まれないように腸管の粘膜上で番兵をしているのです。このパイエル-パッチで化学物質と激しい無駄な殺し合いの戦いをするものですから、ここで炎症が起きやすく、従って潰瘍ができやすく、腸管が穿孔しやすくなるのです。従ってUCやCDで腸管を切られる場所は、この回盲部のパイエル-パッチがある腸管となるのです。ちょうど子供のときにアデノイドが腫れて喉が痛くて空気が通りにくくなったために、アデノイドを切除されるのと同じです。しかし近頃は、アデノイドも重要な二次リンパ組織であることが知られ、バカな耳鼻科の医者しか切らなくなりました。

通常、小腸の粘膜は消化吸収された栄養分を取り込むために微絨毛(Micro-Villi)が取り付いているのですが、パイエル-パッチは吸収するための微絨毛がなく、異物だけを取り込む仕事をする細胞が集まったなめらかな表面になっています。この細胞をM細胞といいます。英語では“Micro-fold-cell”といい、小襞細胞(しょうへきさいぼう)と訳します。つまり微絨毛が要らないので、取れた後に襞(ひだ)ができたのです。このM細胞の働きは腸管の異物、つまり抗原を選択的に取り込む機能を持っています。

私は実はM細胞のMはマクロファージのMと考えた方が理屈に合うと思います。なぜならばこのM細胞は抗原である敵を食べこんで、パイエル-パッチの真下にあるリンパ小節のひとつに敵を送り込みます。放出された抗原はリンパ小節にいる樹状細胞やマクロファージに捕まえられて、それらがT細胞に抗原を提示するのです。実はM細胞自身も抗原提示細胞として考えている学者もいます。
M細胞は先ほど述べた襞の膜上にレクチンというタンパクを持っています。このレクチンというタンパクは、マンノースという炭水化物と結びつきやすいのです。このマンノースという炭水化物は、細菌や、真菌や、インフルエンザウイルスや、AIDSの原因になっているHIVウイルスや、さらにサルモネラやレンサ球菌などが持っているので、このレクチンとマンノースが結びついて、簡単に敵をリンパ小節に運び込むことができるのです。さらにこのM細胞は実はリーシュマニアという原虫とも結びつくことができるのです。リーシュマニアという原虫は、今なお88カ国1200万人に感染し、内臓を冒したり皮膚病を引き起こしたりしているのです。このレクチンは捕体の活性化に大きな役割を持っていることも書き添えておきます。捕体はいずれ詳しく分かりやすく書くつもりです。
さて、本論に戻りましょう。回盲部のみならず、200箇所のパイエル-パッチのM細胞によって取り込まれ、直下のリンパ節に運び込まれた化学物質(ハプテン)とペプチド(キャリアタンパク)の複合体に対して、どのように抗体が作られるのかはあちこちで書きましたので簡単に要約します。また機会があれば必ずリンパ節の話もする予定です。

このパイエル-パッチのリンパ節に集まっているTリンパ球、Bリンパ球、抗原、樹状細胞、マクロファージ、補体と結びついたハプテンキャリアタンパク複合体、さらに濾胞樹状細胞、NK細胞などの働きによって、ハプテンキャリアタンパク複合体に対する抗体が作られ始めます。

やはり、もっと詳しく抗体が作られるプロセスを書く必要があります。まず骨髄で作られた未熟なT細胞(Th0)が、胸腺でCD4+T細胞とCD8+T細胞に分化成熟し、これらのT細胞はリンパ管や血管、さらにリンパ節に循環し続け、T細胞自身がピッタリと認識できる敵を捜し求めます。そのうちピッタリ合ういくつかのT細胞がパイエル-パッチのリンパ節にやってきて、M細胞によってパイエル-パッチに運び込まれたハプテンキャリアタンパク複合体を認識できたときに初めて抗体を作り始めます。

実はこの抗体を最初に作るキッカケは、このハプテンキャリアタンパク複合体を食べこんだマクロファージが、まずTNFを初めの初めに作ります。皆さん、TNFというのはご存知でしょう。レミケードはまさにこのTNFの働きを奪い取り、異物が人体に入ったという一番大事な信号をなくしてしまうのです。わざわざ設置しておいた火災警報装置機が警報を発しているにもかかわらず、故意に警報を切ってしまうのがレミケードの仕事なのです。だからこそレミケードは症状を一時的になくしてしまい、火事が起こっているのにもかかわらず、「火事がない!ない!」というように、「UCやCDに良く効く!効く!」と宣伝されまくられるのです。安倍総理も大量のレミケードをやられているはずです!悲しいことです。最近の週刊誌で安倍総理の健康状態が云々され始めています。日本で最もストレスの多い仕事をしている総理大臣の健康が蝕まれることを懸念するばかりです。

TNFの働きを詳しく見ましょう。マクロファージが作ったこのTNFは、マクロファージ自身のTNFレセプターと結びついて、自分自身にIL-12を作れとまず命令します。同時にこのハプテンキャリアタンパク複合体を食べこんだNK細胞はIFN-γを作り始めます。このIFN-γのレセプターも持っているマクロファージにIFN-γが結びつくと、マクロファージ自身にもっと頑張ってTNFのみならずIL-12もさらに作れとIFN-γが命令します。するとますます多く作られたTNFとIL-12は一緒になってNK細胞にもっともっとIFN-γを作れと命じるのです。すると刺激を受けたNK細胞はIL-2を作り出します。IL-2というサイトカインは、細胞を増やす増殖因子として有名であります。このIL-2と結びつくと、その細胞はどんどん分裂を繰り返して増えていくのですが、NK細胞は元来IL-2のレセプターを持っていないのです。ところがTNFがNK細胞にIL-2のレセプターを作れと命じることができるのです。このTNFの命令を受けたNK細胞はIL-2のレセプターを増やして、自分自身が作り出したIL-2と結びついて、自分自身をさらに分裂させ、増殖していくのです。まさにマクロファージとNK細胞が激しい相互協力のダンスをし続けるのです!

皆さん、ややこしいでしょう?このややこしさを乗り越える勉強をするのが大変ですから、医学者のみならず医者も免疫学の勉強を途中で止めてしまうのです。残念です。このように勉強すればするほどTNFというサイトカインはいかに大事な仕事をしているのかお分かりでしょう。命を守る病気を治してくれる警報装置のTNFを止めるレミケードがいかに悪い薬であるかもお分かりになるでしょう。なぜならば化学物質と共存するためには絶対に必要な免疫の働きのプロセスのひとつであるからです。

TNFの働きを一時的にゼロにしてしまうこのレミケードの毒薬ぶりは、免疫寛容を起こすところまで勉強し続ければますます理解できるのです。このようなTNF、IL-12、IFN-γ、IL-2などをサイトカインと呼び、これらのサイトカインはまさに殺しのIgGを作るために必要なタンパク質なのです。免疫を勉強する際に非常に混乱するのは、このようなサイトカインが数十種類以上も登場してくるのもひとつの要因です。しかもそれぞれのサイトカインの役割が複雑であるので、ひとつひとつ理解し記憶しておかないと何が何だかさっぱり分からなくなってしまうのです。

残念ながら人体の免疫は、人体に侵入した侵略者を殺すべきか侵略者と共存すべきかをはじめから知ることができないのです。従って、まず免疫の働きはその敵を殺すべきものとして対処しようとするのです。だからこそ全ての侵略者に対しては、まずIgGを作るシステムが出来上がったのです。IgGは殺しの武器なのです。TNFはIgGを作るためにも絶対に必要なサイトカインであり、と同時に、皮肉なことにIgGはクラススイッチをさせるIL-4というサイトカインを作るためにも絶対に必要なのです。皆さん、IgGは殺しの世界であるのに、なぜ排除の世界であるIgEを作るのに必要なのか疑問に思うでしょう。その必要性は読み続けていただければ分かっていただけます。

人体は最初に作った免疫のタンパク質をさらに新しい状況に対処するために、その古い免疫のタンパク質を利用して新しい免疫のタンパク質を作り上げていくという、連鎖的な無駄のないシステムを38億年かかって作り上げたのです。38億年の免疫の進化は不必要なサイトカインを作らせたりしないし、どんな敵をも正しく処理する方法をあみださせたのです。処理の仕方は3つしかないのです。殺すか排除するか共存するかの3つの方法で敵を処理できる免疫の遺伝子を作り上げたのです。そうでなければ生命は永遠ともいえる38億年もの間、永続して遺伝子を伝えることはできないのです。この遺伝子の働きを止めようとするのがステロイドでありiPS細胞なのです。遺伝子は絶対的に正しいのです。変えてしまえば必ず遺伝子の復讐に直面せざるをえなくなるのです。ステロイドをやめればリバウンドという医原病で苦しみ、iPSは必ず癌細胞を生み出してしまうのです。
このTNFというサイトカインも、日本語で“腫瘍を壊死させる因子”と訳されるように、元来癌を壊して死に至らせることもできるのです。敵がウイルスや細菌であるときには、まさに上に述べたようにTNFによって刺激された好中球や大食細胞やNK細胞が殺しまくるのです。敵が一掃されれば、いわゆる病気は終わったのです。それでは殺せない敵に免疫がどのような対応をするのでしょうか?まさにはじめから死んでいる化学物質は殺す意味がありません。一時的に侵入するだけで終わる化学物質は排除するだけで終わってしまうのですが、現代文明に生きている限り、毎日毎日文明が終わるまで永遠に侵入してくる化学物質に対してはどうすればいいのでしょうか?まさに共存しかないのです。進化した免疫は殺しきれないという敵に対しては共存への戦略に戦いをチェンジするのです。これがクラススイッチの目的であるのです。つまり免疫は殺したつもりで、実は殺せない化学物質が人体に蓄積し続けると、無駄な殺しの戦いを止めるためにクラススイッチをするのです。つまりクラススイッチとは単にIgGからIgEに抗体の種類を変えるという意味ですが、実は殺す世界から共存する世界へと戦いをチェンジしてしまうのです。

ちょうどアメリカはアフガンでタリバンをできれば全て殺すつもりで10年以上も殺し合ったのですが、ロシアと同じく殺しきれないということが分かり、アメリカも金もなくなり軍隊をアメリカに戻すということになったのです。いずれアメリカがアフガンから撤退すれば、残念ながらアフガンは再びタリバンの支配する国になってしまうでしょう。とどのつまりは、ロシアとアメリカもはじめから10年以上もの戦いをする必要がなかったのですが、これもやってみて初めて分かることですから、免疫の働きと同じといえるかもしれません。アッハッハ!この意味では人間の頭も免疫のレベルと同じといえるかもしれません。ワッハッハ!
このIgGからIgEへのクラススイッチに必要なサイトカインが、実はIL-4なのです。このIL-4はまさに大量に作られたIgGが皮下や粘膜下に常駐している肥満細胞と結びつき始めて、初めて肥満細胞がIL-4を作り始めるのです。肥満細胞はまさにIgEの世界の中心を占める細胞なのですが、肥満細胞は殺し屋がいくら銃であるIgGを作っても、殺しきれないので、まるで肥満細胞に「IgGという銃をあげるから、後処理をお願いします」と頼み込まれたようなものです。ところが肥満細胞は銃では殺せないということを知っているので、つまり殺す武器であるIgGでは処理できないので、やっと自分の出番になったことを知らされるのです。このIgGが、痒みや粘液を出すだけで敵を殺す仕事はしない肥満細胞と結びつくと、肥満細胞はIL-4を作り始めるのです。このIL-4がTh0をTh2に変えて痒みを出させ、かつTh0を殺しのT細胞であるTh1にさせなくなるのは、まるでIL-4は平和の特使のようですね。ワッハッハ!皆さん、傷が膿んだりした後、傷が治りかけるときに痒みを感じませんか?まさにIgGと戦っているときも、このIgGが肥満細胞に結びついてIgEを作り出していたことの証拠なのです。いわば戦いを止めるという証拠なのです。

素人の皆さんに対して、私は何も世界で初めて解き明かそうとしているクラススイッチの意味を、初めから終わりまで完全に理解されることを望んでいません。世界中の医学者の誰も知らないことを述べているので、当然です。化学物質が侵入して、免疫が共存できるまでの全てが私には分かっており、できる限り分かりやすく述べようと努力していますが、患者さんにとってはやはり理解の限界を超えていることも知っています。それでもついてきてください。私はIgGの世界である膠原病と、IgEの世界であるアレルギーとは同じ病気であるということが分かっており、しかも毎日の診療の中で、全国からやってこられる膠原病の患者をアレルギーの患者に変え、最後は免疫寛容を起こさせ、化学物質と共存させている松本仁幸にとって何も難しい真実ではないのです。その真実がどのようにして起こるかを理解していただくために説明しているのです。難病であるといわれている全ての膠原病を治してもらいたいと思っている方は、最後までついてきてください。

人類は38億年間生き延びるための完璧な免疫の論理を進化させてきました。生命が生きるために、かつ病気を治すために作り上げた免疫の遺伝子を理解し、かつ免疫の遺伝子の命令に従うだけで、あらゆる病気は免疫の遺伝子が治してくれるので、私は全ての病気を治すことができるのです。ところが私以外の医者はこの免疫の真実を認めようとせず、免疫に逆らうことばかりやるものですから、自然に免疫が治してくれる病気を治さなくしてお金を稼いでいるのが現代の医療なのです。しかも免疫の論理は完璧なのですが、この完璧な論理を臨床の場では逆に破壊していくものですから、医者自身が何が何だかさっぱり理解できず、支離滅裂の臨床をやり続けるものですから、免疫の論理さえもが不完全であるように見えてしまうのです。その最たるものは、勝手に自己免疫疾患を作り上げてみたり、アレルギーと膠原病は全く同じ敵と戦っているにもかかわらず認めようとしないことです。このようにこれほど悲しいことはないのです。だって自分の免疫の遺伝子が敵を殺すか、封じ込めるか、共存するかの3つの治療法を自然に生み出してくれるのに、免疫の遺伝子を変えて病気を治さなくしているほど悲しいことが他にありますか?悲しいですね~、悲しいですね~、残念ですね!あぁ~!あぁ~!医者にとっては患者の命よりも金が大事だという冷酷な現実以上に悲しいことが他にあるでしょうか?

続きはまだまだありますが、乞うご期待!まだ今日のテーマの1/5も書いていません!しかしUCやCDも必ず自分の免疫で治せるのです。化学物質とは共存できる根拠をこれから書いていきますから楽しみにしていてください。
さぁ、クラススイッチのもっと具体的な話と、どうしてUCやCDが化学物質と自然後天的免疫寛容を起こしやすいかを説明していきましょう。

IgGと結びついた肥満細胞が初めてIL-4を作り出すのですが、長い間、クラススイッチをするためにIL-4はどの細胞が作るかが誰も突き止められなかったのです。しかし優れた英語の“Immuno Biology”や“Sellular and Molecular Biology”を勉強することによって私が見つけ出したのです。肥満細胞がIL-4を最初に作る事実を世界で初めて見出したのです。皆さん、英語を勉強することは真実を知るうえで、とりわけ医学の勉強をする上で極めて強力な武器となります。私が読んでいる本は全て日本語には翻訳されておりません。最新の情報がチラチラッと書かれており、そのわずかな情報から真実を解き明かすことができる手立てとなるのです。私が肥満細胞がIgEを作り出すということを知ったのも、このようなBiologyの英語の原書であることは皮肉なことなのです。なぜならばこのような生物学の本は、生物学者によって書かれたものであり、生物学者は医学をやっているわけではないので最初にどの細胞がIL-4を作るかとか、クラススイッチの理論などにはあまり興味を持っていないのです。ところが私にとっては、膠原病を治すためには患者自身の免疫がクラススイッチする必要があり、かつクラススイッチして初めて免疫寛容が起こるということを日々の診察で知っているものですから、十数年前から頭から離れなかったのです。それを見つけたのです。IL-4を肥満細胞(Mast-cell)が作ることを知ったときには天にも昇る喜びがありました。これで私の理論が完璧になったからです。しかも痒みの世界を作り上げる中心的な仕事をしていたのは肥満細胞ですから、自然の摂理のすごさに体が震えました!なぜならば、殺せない敵を排除する世界へ移し変えるのに最も適していた肥満細胞に殺しの武器であるIgGが結びつくことによって、ストレートにIgGからメッセージを受け取り、IgGをIgEに変えてくれという伝言を手渡すシステムを免疫の遺伝子が作り上げていることを知ったときに、免疫の遺伝子のすごさに身震いしてしまいました。完璧な免疫の遺伝子に畏怖の念を感じた瞬間でもありました。完全な免疫の遺伝子は理解することは許されても、変えてはならないということを知った瞬間でもありました。
本論に戻りましょう。IL-4を受け取った未熟なT細胞、つまりTh0細胞はIL-4と結びついたからといって、実はすぐにTh2になるわけではありません。このTh0は、やはり抗原提示細胞(APC)である樹状細胞が提示するハプテン化学物質とキャリアタンパクと結びついた複合抗原体と結びつく必要があります。この結びついたTh0細胞にIL-4が結びつくとTh1に変わります。さらにこのIL-4は、ちょうどIL-2がTh1を分裂増殖させるように、Th2を分裂増殖させる増殖因子となり、どんどんTh2を作り出すのです。すると、このTh2になったT細胞はIL-4、IL-5、IL-13というサイトカインを作り出します。しかもこのIL-4はB細胞に対する増殖因子であり、かつご存知のようにB細胞のAID遺伝子をONにすることによってIgMやIgGをIgEにクラススイッチする仕事もしているのです。
念のためにクラススイッチの意味を少し補っておきましょう。クラススイッチとは、抗体の両手で捕まえている敵は同じですが、しっぽに結びつく細胞が異なる種類の抗体に変えるためにしっぽの形状が変わることです。IgGは殺しの細胞である好中球や大食細胞やNK細胞としっぽで結びつくと、抗体が両手で捕まえている敵をこれらの細胞が食べて殺してしまうのです。一方、IgEは排除の細胞である肥満細胞や好塩基球や好酸球と結びつくと、ヒスタミンを出して痒みを感じたり粘液を出して両手で捕まえている敵を皮膚や目や鼻から排除してしまうのです。
さらにIgMからIgEが作られることは証明されているのですが、果たしてIgGからIgEが作られるかは誰も知りませんでした。私がその答えを世界で初めて出しましょう。答えはIgGからIgEも作られるのです。その根拠を遺伝子的に証明していきましょう。
皆さん、利根川進が日本で初めてノーベル生理医学賞を取ったことはご存知でしょう。まさにノーベル賞にふさわしい業績に与えられたのです。利根川進が抗体の遺伝子は変わるという真実を発見するまでは、生まれたときに両親から与えられた遺伝子は絶対に変わらないとされていたのですが、抗体の遺伝子だけは抗体の遺伝子の組み換えによって変わるということを彼は証明したのです。
IgGも実は何億種類以上もあるのです。この世に人体にとっての異物は何億もあります。それを処理するために、IgGも何億種類も用意する必要があるのです。ジフテリアのワクチンを打てば、ジフテリアだけに特異的な1種類のIgGが作られやすくなるだけなのです。だからこそ、破傷風や百日咳のワクチンも同時に打つのです。すると破傷風に対する特異的なIgGや百日咳に対する特異的なIgGが作られやすくなるのです。言い換えると、ジフテリアに対して作られたIgGは破傷風には効かないのです。つまりジフテリアの菌に対するIgGは、破傷風の菌とは結びつくことはできないのです。にもかかわらず、IgGもIgEもIgMもIgAもIgDも1種類しかないと考えている患者さんが非常に多いことにショックを受けることがあります。
従って5種類の抗体は全てIgGと同じくあらゆる敵に対して捕まえることができるように、それぞれ何億種類もあるのです。この何億種類の抗体はどのようにできるかを利根川進は証明したのです。つまり、これは抗体の遺伝子の組み換えによって、地球上の全ての敵に対して特異的な抗体を作ることができることを証明したのです。このときに同時に彼は抗体のしっぽは5種類しかないということも証明したのです。つまり敵を捕まえる両手は何億種類もあるのですが、しっぽは5種類しかないということを確認しておいてください。しっぽの種類によってIgGとかIgEとかIgAとかと区別しているのです。この両手は変えずにしっぽだけ変えることをクラススイッチということは既に述べました。
抗体はB細胞の遺伝子の命令によって作られるのですが、最初にB細胞が無条件に自然に抗体を作るときは必ずIgMであるのです。初めてB細胞を作るということは、IgM抗体を作るということです。様々なサイトカインがこのB細胞に結びつくと、IgM抗体を他の種類の抗体に作りかえることができるようになるのです。IgMのしっぽを作らせた遺伝子には、その後に3種類のIgG、IgA、IgEのいずれかを作れるような遺伝子を残しているのです。この3種類の遺伝子の発現は、B細胞に結びつくサイトカインによって変化するのです。例えば、IgMを作っているB細胞の抗体の遺伝子は、インターフェロンγ(IFN-γ)と結びつくとIgMのしっぽを決める遺伝子を除去して、IgGのしっぽを作る遺伝子を発現させるのです。このときIgGを作っているB細胞のしっぽを作る遺伝子には、なお2種類のIgAやIgEが作られるようにちぎられずに残されているのです。さらにIgGを作っているB細胞にIL-4が結びつくと、今度はIgGを作るしっぽの遺伝子を除去し、IgEやIgAのしっぽを作る遺伝子のどちらかを発現させることができるのです。
このしっぽを決める遺伝子が残されている限りは、必要に応じてしっぽの種類を変えるという原理は、リンパ球が抗体を作れる限りは有効なのです。IL-4というサイトカインの刺激によってIgMからIgEを作ることも、さらにIgGからIgEを作ることも原理は同じなのです。もしIgGを作ればIgEやIgAを作ることができないとなれば、何も新たなるIgEやIgAのしっぽの遺伝子を残す必要はありません。進化の遺伝子は完璧なのです。無駄なことはしません。さらに例えばサイトカインであるTGF-βやIL-5がB細胞に結びつくとIgAを作りだすのも同じ原理です。つまり抗体はB細胞につくサイトカインによって自由自在に抗体の種類を作りかえることができるのです。これが抗体のクラススイッチの原理なのです。ただしIgMが出発点であります。というのは、B細胞が骨髄で作られれば必ず無条件にIgMが全てのB細胞に発現されているからです。
さらに付け加えれば、IgGを作る必要がなくなったときに、必要がないからといって貴重なB 細胞を殺すことをしますか?絶対にするはずがないのです。つまりIgGを作っているB細胞にもIgEを作らせるように変えることがはるかに合目的でしょう。従って私は以前からIL-4が結びつけば、IgGを作るB細胞からもIgEが作られ、IgMを作るB細胞からもIgEが作られると言い続けてきたのです。
腸管免疫の中心的な抗体であるIgA抗体について述べていきましょう。Th2が作り出すIL-5はB細胞にIgA抗体を作り出すようにさせます。Th2が作り出すIL-13は腸管の粘液を作り出させます。IgA抗体は、実は人体が作り出している抗体の中で最大といわれています。ご存知のようにIgG抗体は血管に最も多く含まれていますが、B細胞が作り出している80%がIgA抗体であります。皆さんどうしてIgA抗体がIgG抗体よりも大量に作るられるかご存知ですか?IgAは人体の粘膜を防御する抗体であるからです。皆さん、考えてください。必要な栄養物はどこから入ってくるでしょうか?消化器官ですね。消化吸収されるのは腸管ですね。さらに酸素はどこから入ってくるでしょうか?呼吸器官からですね。これらの器官は全て粘膜でできていますね。他に粘膜でできている器官はどこでしょうか。生殖器官であり泌尿器官ですね。つまり外部と接触のある部分は全て粘膜でできています。まさに異物は外部から入ってくるのです。この外部から入ってくる侵入者に対して体を守るのは粘膜なのです。この粘膜は400㎡あるといわれています。この粘膜を守る免疫のメインプレーヤーがIgA抗体であるのです。このような粘膜の下にいるB細胞の80%がIgA抗体を作っているのです。
それではIgA抗体の仕事は何でしょうか?まさに外部から入ってくる敵を殺さないで排除する仕事です。いわばIgAは殺しを嫌う平和を愛好する抗体といえます。IgA抗体の両手にはIgGと同じ敵が捕まえられています。しかしながらIgGと違って、しっぽに殺しの専門家である好中球や大食細胞やNK細胞がひっつくことができないのです。IgA抗体に結びついた敵は大便となり、かつ小便となり、また粘液と一緒に排除されるという意味ではIgEと似ています。IgEも殺し屋の細胞とは結びつかないのです。従って先ほど述べたTh2はIL-4とIL-5というサイトカインを出し、IL-4はB細胞にIgEを作らせ、IL-5はB細胞にIgAを作らせるということは既に述べました。つまりTh2というT細胞はIL-4、IL-5を作ることにより、B細胞にそれぞれIgEとIgAを作らせて平和的に敵を体外にお引取り願う平和主義者といえます。さらにTh2はIL-13を出して腸管の粘膜に粘液を作らせて化学物質を体外に出すという仕事をしていることも既に述べました。まさに敵を処理する仕方においては同じですから、Th2細胞はIgEを作ってもIgAを作っても、どちらでも体外に異物を出すことができ、かつ粘液に異物をUCやCDの場合は化学物質を排除させているのです。まさにTh2は排除のT細胞といえるのです。一方、Th1はIgGを作らせ、かつ炎症を起こすので、殺しのT細胞といえるのです。
皆さん、もともとどうして高等動物である人類はIgEを作り出したかご存知ですか?腸管に入ってきた寄生虫を排除するためです。私は以前はIgEは寄生虫を殺せると教えられていたのですが、常にミクロの免疫がどうして巨視的な寄生虫を殺せるのか大いに疑問を感じてきたのですが、今日勉強してやっと疑問が解けました。IgEは寄生虫を殺すために作られたのではなくて、腸管の粘膜から人体の組織に侵入しないようにするだけだったのです。やはりIgEは寄生虫を殺すためにあるのではなくて、便として排除するためにあるのです。
人類は生きたミクロの異物をIgGで殺そうとしました。ミクロのウイルスや細菌はまずIgGに捕まえさせ結びつけさせます。IgGのしっぽに大食細胞や好中球などの貪食細胞がひっつき、IgGもろともウイルスや細菌を食べて殺してしまうことは、皆さんもう既にご存知でしょう。ところがマクロの大きさを持った敵である様々な大きさの寄生虫に、ミクロのIgG抗体を結びつけたところで、寄生虫を貪食細胞で食べ尽くすことは絶対にできません。特に寄生虫の中でも回虫などの蠕虫や他のサナダムシといわれる条虫を腸管から除去する役割を肥満細胞が持っていることが知られています。肥満細胞のみならず、アレルギーに関わるIgEを作る好酸球や好塩基球が、寄生虫がいる腸管に集まってIgEをどんどん作り、寄生虫が腸管の壁を通って粘膜に入り込まないようにして、腸管から寄生虫を排除しようとしていることが分かっています。つまりミクロの免疫はマクロの寄生虫を殺すというよりも、内なる外である腸から内なる内である腸壁の下にある人体の組織に入らせないようにしていると同時に、便から寄生虫を排除しているのであります。やはり古来からIgEは殺しの世界ではなく、排除の世界を目指していることがお分かりでしょう。
これはさらに何を意味しているのかを考えましょう。答えは簡単です。腸管は粘膜からできています。この腸管の粘膜の免疫を特別に“MALT”といいます。英語で“Mucosa-Associated Lymphoid Tissue”といい、日本語では「粘膜関連リンパ組織」と特別に名づけているのです。このMALTはまさに排除の免疫の働きを担っているのです。この排除の役割を持っている中心を占めているのが、既に詳しく述べたパイエルパッチなのであります。もちろんこのパイエルパッチは腸管から侵入する細菌やウイルスをもやっつけることはできるのですが、何よりも大事なのは異物が腸管から侵入させないようにすることです。今でこそ先進国の文明社会の衛生状態は昔と比べて格段に良くなっているので、寄生虫が飲食物に入ることは100%ないと断言できます。人類発生以来、腸管に入ってきた異物は殺すのではなくて、腸管からすぐに肛門へお引取り願った方がはるかに合目的であります。だからこそ殺すことができない腸管免疫(MALT)が作る抗体はIgAであり、かつIgEであることがお分かりになっていただけるでしょう。さらにここで難しい話を加えておきましょう。
実はT細胞には2種類のT細胞があります。ひとつめはαβT細胞で、ふたつめはγδT細胞とよばれるものであります。私たちが普通にT細胞と言っているのは、αβT細胞のことなのです。なぜ2つのT細胞があるのでしょうか?ご存知のようにT細胞はMHCⅡやMHCⅠと抗原であるペプチドが結びついた異物と結びつくレセプターがあります。このレセプターの種類にαβとγδ があるのです。ところがγδのレセプターを持ったT細胞の研究はほとんどされていないのです。このγδT細胞はCD4やCD8などのco-recepterといわれるタンパク分子もないのです。ただこのようなγδレセプターを持ったT細胞は粘膜に極めて多く存在していることが分かっています。
αβT細胞は、ほとんど無限の異物を認識できるのですが、γδレセプターはそれほど多様性はないのです。なぜγδT細胞はそれほど異物を認識する多様性がないと思われますか?答えは簡単です。γδT細胞の仕事は、殺すのではなくて闇雲に排除するという仕事だけをすればよいからです。つまり排除するIgA抗体かIgE抗体だけを作りさえすればよいのです。もちろん排除する敵は様々ですから、ある程度の多様性がなければ仕事ができませんから、レセプターの多様性は残されているのです。つまり様々な異物と結びつくレセプターはあるのです。ちょうどαβT細胞のレセプターはB細胞の抗体を作るのと同じように、免疫の遺伝子の組み換えによって作られます。B細胞の抗体が無限にあるのは、遺伝子の組み替えによることを発見したのは利根川進であることは既に説明しました。同じようにγδT細胞のレセプターも、遺伝子の組み換えによって多種多様のレセプターが作られるのです。もちろんαβT細胞のレセプターほど多様ではないのですが。
それではなぜγδT細胞のレセプターは限られるのでしょうか?その答えを出しましょう。私は研究者ではないので、今から述べる話の証拠はまだ掴んでいませんが、臨床家としての私の論理的な答えを言いましょう。結論から述べると、γδT細胞はB細胞に結びついたときに、αβT細胞と違って、結びついた全てのB細胞に「クラススイッチをして、IgAかIgEを作りなさい」と命令しているのではないかと考えています。αβT細胞がB細胞にクラススイッチをさせる場合に、Th1になり、IFN-γを出し、B細胞にIgGを作らせることは既に述べました。さらにαβT細胞がB細胞にIgEを作らせるためにTh2になり、IL-4を作ることも既に述べましたが、γδT細胞はこのようなクラススイッチのサイトカインであるIFN-γやIL-4を作らなくてもB細胞にクラススイッチを直接させることができると考えています。しかも、αβT細胞は制御性T細胞(iTreg)になって初めてTGF-βやIL-10などのサイトカインを作り、最後は免疫寛容を起こすことができるのですが、γδT細胞はこの免疫寛容を起こすIL-10やTGF-βと同じ仕事もしているのです。なぜならば、クラススイッチをすることと免疫寛容を起こすことは、実は同じことであるからです。なぜならば、αβT細胞がTh2になるのも、制御性T細胞(iTreg)になるのにも、必要なサイトカインは同じIL-10とTGF-βであるからです。
なぜγδT細胞が腸管の粘膜に多いのかはお分かりでしょうか?つまり、できる限り腸管に入ってくる敵を戦わないで排除するという仕事をするためです。従ってパイエルパッチというMALTのリンパ節にいるT細胞の多くは、γδT細胞なのです。もちろんこのパイエルパッチにはαβT細胞もたくさんいます。なぜならば体内に入ってきた異物を殺すためにαβT細胞も必要であるからです。全身の血管やリンパ管を通ってαβT細胞も運ばれてきています。
皆さん、東京医科歯科大学の名誉教授である藤田紘一郎先生をご存知ですか?「彼はアレルギーが多くなったのは、寄生虫がいなくなったのでIgEが多くなったためだ」と主張しています。「だからアレルギーにならないためには寄生虫を腸管に飼いなさい」と勧めている先生です。こんな愚かな理論は医学部の名誉教授たる先生が言うべき話ではありません。なぜならばIgE抗体はもとより、全ての種類の抗体は異物が入らない限り絶対に作ることはできないし、作る必要もないのです。つまり寄生虫がいなくなっても、アレルギーが起こるためには寄生虫以外のアレルゲンが入らない限り起こりえないという原理原則を無視されておられます。彼は免疫学も充分以上に勉強しておられるにもかかわらず、免疫の原理原則をご存知ではないのは悲しい限りです。
このような誤りはあちこちで見られます。例えば現代の臨床医療は免疫が敵と戦うことによって病気を起こすという原理原則を無視しています。病気の原因を一切考えずに、もっぱら命を守る免疫を抑えるだけで、敵の処理を全く考えていないのです。従って敵が人体に住み着く限り、免疫の働きは永遠に続き、いわゆる病気になり続ける造病医療をやっているだけですから、何も間違いは藤田紘一郎先生だけがしておられるのではありません。例えばUCやCDは自己免疫疾患といわれているのですが、自分の腸管を攻撃するというようなバカなことを免疫がやるわけはないのにもかかわらず、自己免疫疾患という病名が高々と世界中に響いています。自分の免疫が自分を攻撃する人は、何百万年も前に死に絶えてしまっているでしょうに、相変わらず世界中の医学者は間違いを重ねて、人々に不幸を与え続けています。悲しいことばかりです。
藤田先生にしろ、自己免疫論者にしろ、人間が戦っている敵は化学物質であると言えばいいのに、なぜ言えないのでしょうか?彼らは組織に入っているからです。アレルギーの原因は化学物質であり、自己免疫疾患(膠原病)の原因も化学物質であると言ってしまえば、彼らの地位は一瞬にして消え去るでしょう。なぜならば製薬メーカーが作っている薬は全て化学物質であるからです。しかもおまけに薬は全て免疫を抑え続けるので、薬という化学物質と最後まで共存ができないので、膠原病やアレルギーが治らないということを言わざるをえなくなるからです。悲しいことです。
現代の病気の原因は3つしかありません。化学物質とヘルペスウイルスと風邪のウイルスだけです。化学物質とは共存し、ヘルペスウイルスは神経節に封じ込め、風邪のウイルスは殺せばよいのです。この答えも全ての人間に与えられている免疫によって与えられるのです。病気を治すのは自分の免疫だけです。
本論に戻りましょう。γδT細胞と違って、αβT細胞はあらゆる異物をまず殺すという仕事を担い、殺す必要のない敵は、殺すのをやめて排除する仕事に変えるのです。そのためにαβT細胞は、CD4co-recepterを持ったものがヘルパーT細胞になったり、CD8co-recepterを持ったものがキラーT細胞になったりする必要があるのです。さらにαβT細胞は必要に応じて様々なサイトカインを作りだしたり作り変えたりして、そのサイトカインに応じて、B細胞にIgGを作らせたり、ときにはクラススイッチをさせてIgEやIgAを作り変えさせたりすることができるのです。αβT細胞はこのような複雑な仕事をするために、胸腺で分化成熟するために教育を受ける必要があるのですが、他方、γδT細胞は胸腺で教育される必要もないのです。いわば、B細胞が骨髄で作られるだけで一人前になるように、γδT細胞も骨髄で作られるだけで完成された細胞になってしまうのです。さらにB細胞が世界のあらゆる有機物を直接的に認識できるのと同じく、γδT細胞は樹状細胞や大食細胞などの抗原提示細胞(APC)に抗原を提示される必要がないのです。なぜならば、わざわざAPCにMHCⅡと結びついたペプチドを提示されなくても、γδというレセプターに異物が結びつくだけで、その異物に対してB細胞にIgAやIgEを作れと命令するだけでいいのです。
皆さん、ここまでの話だけでもUCやCDがクラススイッチがしやすくて、かつ免疫寛容を起こしやすい病気であることが何となくお分かりになってきたでしょう。
ここでペンタサがUCやCDに対して最もよく使われている薬であることはご存知でしょうから、ペンタサの作用について述べておきます。ペンタサは成分がメサラジンという薬ですが、この薬の役割は何だと思いますか?炎症性腸疾患の権威とされている慶応大学の日比先生によれば、ひとつめが、活性酸素消去であり、IL-1βの作用を抑制するのです。つまり殺しの世界である炎症を起こさせないようにしているのです。活性酸素は主に好中球やマクロファージの貪食細胞から出され、ウイルスや細菌を殺してしまいます。IL-1βは発熱を起こすサイトカインであります。これらの働きをペンタサは抑えるのです。さらに血小板活性化因子(PAF)を作らせなくします。PAFはどんな仕事をするのでしょうか?敵が来ると白血球を戦いの場所へ導く必要があります。これらの仕事をする因子を白血球走化性因子と呼びます。この因子のひとつがPAFであります。このPAFは好中球やマクロファージや血管内皮細胞から放出されるのですが、この働きもペンタサは抑制してしまいます。つまりペンタサは、敵を殺す働きを奪い取ってしまうのです。さらにペンタサは好中球やマクロファージが作るロイコトリエンB4(LTB4)の産生を抑えます。このLTB4は、白血球やマクロファージにより作られ、多核白血球(好中球)を血管外へ出させたり、かつ白血球を活性化させる作用が著しく強いのです。今まで述べた世界は殺しの世界であります。つまりペンタサは殺すための目的の炎症を、以上に挙げた炎症細胞の遺伝子を変えることによって一時的に取るのです。これらの働きは全て先天的な免疫の働きであり、これを後天的な免疫の働きの中枢プレイヤーであるαβT細胞の働きに繋げて、αβT細胞に様々なサイトカインを作らせ、B細胞に必要な抗体を作らせ、さらにはαβT細胞がB細胞にクラススイッチをさせたりして、最後は抑制性T細胞(制御性T細胞)に免疫寛容を起こさせようとしている免疫の働きも同時になくしてしまっているのがペンタサなのです。だからこそ医者はUCやCDの原因は分からず、絶対に治らない病気だと断言するのです。レミケードもステロイドもヒュミラも、ペンタサと同じく全て同類の病気を治せない薬なのです。
要するに免疫が行っている症状は全て正しいのです。何のために?殺すべきものは殺し、共存すべきものは共存できるための戦いが一時的に行われているだけで、症状自体は敵を殺すか共存するか封じ込めるかのどれかを目指す一過性の症状に過ぎないのに、医者たちは原因が分からないとか、一生治らないとか、くだらない詭弁を弄して金儲けに奔走しているだけなのです。ずるい人間の頭と心は常に嘘をついて他人を犠牲にして自分の利益を得ようとしますが、免疫の戦いは損得のない正しい戦いなのです。
ペンタサのふたつめの働きが、肥満細胞からのヒスタミンの遊離も抑制するとされています。ヒスタミンはまさにアレルギーの世界です。既に述べたように、MALTのひとつであるパイエルパッチといわれるリンパ節でαβT細胞はクラススイッチをしてアレルギーを起こしつつあり、かつγδT細胞は簡単にクラススイッチを起こさせているにもかかわらず、IgGからIgEにクラススイッチしたこのアレルギーの働きをも抑えることによって、下痢などの症状が良くなるのです。つまりペンタサは膠原病の炎症とアレルギーの炎症を同時に抑制するので、UCやCDに際して最初に使われる薬となるのです。
これは何を意味しているのでしょうか?UCやCDは実は膠原病であると同時にアレルギーであるということをも示しているのです。我が母校の京大の本庶佑名誉教授が見つけたクラススイッチの臨床的な意味は、まさにこのことなのです。アレルギーと膠原病は同じ病気であり、IgGをIgEに変えるクラススイッチをして初めて免疫寛容になり、化学物質と共存が可能となり、UCやCDの全てが治ってしまうのです。
ところで、UCやCDの患者さんのほとんどに多かれ少なかれ下痢が見られます。なぜUCやCDの患者さんに下痢が見られるのでしょうか?まず下痢について考察してみましょう。下痢とは一体何なのでしょうか?下痢とは糞便中の水分が増加することであります。日本人の一日の糞便量は約150gでありますが、水分含有量は70%であります。80%~90%になると泥状便となり、90%以上になると水溶便となります。このような下痢が出る原因は色々ありますが、UCやCDは原因が化学物質でありますから、腸管の細胞から粘液がIL-13により大量に分泌されることも下痢の一因となっているのです。Th1の世界がTh2の世界に変わると、このIL-13が腸管壁の透過性を亢進させて、どんどん下痢を起こさせて化学物質を排泄する仕事をしていると考えられます。つまりUCやCDで見られる下痢は殺しの世界と同時に、共存の世界が同時並行しているのです。
もちろんTh2の世界は殺しの世界ではありませんから、組織を傷つけることはありません。ところが、UDやCDの患者さんは多かれ少なかれ糜爛(びらん)や潰瘍や血便や痔ろうが見られます。これらは平和的なTh2の戦いの世界ではありません。あくまでもTh1の殺しの世界であります。UCやCDの場合は化学物質をIgGの両手で捕まえ、しっぽに好中球や大食細胞やNK細胞がつき、化学物質を殺そうとして強力な化学物質や活性酸素や酵素を腸管の結合組織にばらまき、化学物質を殺せないどころか、結合組織に傷をつけ、糜爛や潰瘍を起こすのです。潰瘍の深さが深くなると、挙句の果てに腸管同士に穴が開いたり、痔ろうや皮膚ろうや膀胱ろうを形成するほどになってしまうのです。
ところがIgGの世界は果たしてどれぐらい下痢の原因となるのでしょうか?さらにどうして糜爛や潰瘍が起こるかについて考察しましょう。皆さんご存知のように炎症の世界は殺しの世界であります。どのようにして殺しの世界で血管から水性成分や血漿成分が浸出液や露出液として腸管にもれ出て行き、粘血便や軟便を引き起こすかについても説明しましょう。大量に浸出液が出て行けば水溶便になるメカニズムを考察していきましょう。
腸管は元来、栄養物や水分を吸収するために微小循環系、つまり細動脈や細静脈が豊富に分布しています。通常の炎症ではこの微小循環系は閉じていますが、敵が侵入してくると毛細血管が太くなり血流量が増加します。さらに細静脈の領域の血管内細胞同士の間が開き、この間隙を通じて血漿成分が水分とともに結合組織へ浸出します。これを「血管透過性が高まった」といいます。この血管透過性の高まりは2段階で起こります。最初は様々な炎症細胞が放出するヒスタミンやセロトニンという化学物質で起こる弱い反応であり、即時型の透過といわれます。このようなヒスタミンやセロトニンが、どの細胞から放出されるのかについては誰も述べていません。実は、このヒスタミンは肥満細胞から出されているのです。腸管に入ってきた異物に対して、既にIgE抗体を知らぬ間に作られ、このIgE抗体が肥満細胞に結びついていたのです。再び新たに同じ異物が侵入したときに、IgE抗体と結びつき、肥満細胞からヒスタミンが出されたのです。
2番目に起こる遅延型の透過性が亢進するときに、血管の細静脈の透過性がさらに高まります。すると血管内細胞同士の間隙が大きくなり、好中球や単球やさまざまなリンパ球が腸管の結合組織へと出て行きます。単球は結合組織に出るとマクロファージに変身することも知っておいてください。腸管の結合組織に出た様々な免疫細胞が化学物質と戦うことによって、腸管の粘膜が傷つき糜爛となり、さらに粘膜が深く傷つけられると潰瘍となり、自覚症状的には発熱や疼痛が感じられ、内視鏡検査をすれば発赤や腸管の粘膜の腫れが見られ、炎症の範囲が広くなるとCDに特徴的なコッブルストーンといわれる敷石像や縦走潰瘍が見られるのです。炎症のために細胞が壊れてしまうと、細胞がない膠原線維だけが炎症巣の後に残った肉芽種も見られるようになるのです。
この論文のテーマは、なぜUCやCDが治りやすいのかというテーマでしたが、途中色々脱線して難しくなりすぎたところもありますが、大体お分かりになったでしょう。免疫の逆クラススイッチをしない限りは実は腸管の下痢の症状は全てアレルギーの症状と考えてよいのです。現代文明は化学物質オンリーの世界です。しかも毎日毎日無限の化学物質が人体に侵入してきます。ところがストレスがない限り、自分の副腎皮質で多量の長期にわたるステロイドホルモンを作る必要がないので、逆クラススイッチは絶対に起こりません。ところが現代はストレスを感じない人は誰もいません。だからこそUCやCDのような腸管の膠原病が多くなったのです。
2002年に2万人であったUCやCDが2012年に16万人にもなってしまいました。それはバブルの崩壊により、日本の最盛期が過ぎてしまったからです。成長のクライマックスがバブル期であったのですが、一度贅沢を覚えた社会はその快楽の味を忘れることができないのです。いくら働いても、いくら勉強しても、バブル期を超える生活は不可能になったのです。昔は弁護士になったり公認会計士になったら、前途洋洋たる未来が開けたのですが、現代は難関の試験を突破して専門職業に就いても、社会全体が陰鬱なので、気分が滅入ってしまうのです。一流の大学に入っても世界に冠たる一流企業に入って終身雇用を保証される人は少数となってしまいました。その企業に入るために子供たちは子供の頃から受験競争に参加せざるをえなくなりました。
ところが、ただひとつ永遠に滅びることのないどころか永遠に繁栄する最高の職業があるのです。それは医者です。医者になれば病気を作っても治さなくてもお金は稼げるということが分かってしまったので、猫も杓子も医学部へと殺到します。今年も京大や東大の医学部の合格者が発表されました。偏差値が70を超える学部は医学部しかありません。東大や京大は偏差値77といわれています!まさに受験戦争の勝利者だけが合格できるのです。しかしその人たちが医者になったところで、今の医療でUCやCDを治すことができるでしょうか?できるどころか病人が増えるばかりです。こんな医者になって何の喜びがあるでしょうか?病気を作って金が儲かるという喜びです。アッハッハ!!
彼らが医者になっても病気を治せない自分の職業をどう考えるでしょうか?「金さえ儲ければ事足れり」という風潮は、医薬業界から消え去ることはないでしょう。なぜならば医薬業界は“Too big,too fail”になってしまったからです。私一人が頑張っても医薬業界がを変える事は不可能なのです。それでも私は叫び続けます。この世に治らない病気はないのだ。この世に原因の分からない病気はないのだ。この世に怖い病気は何一つとしてないのだ。病気を治すのは自分の免疫だけなのだ。病気を治せないのになぜ医者は金を取るのか。最後に世界でただ一人誇りを持って患者に病気を治せさせている唯一の医者であり続けることを誓います!
さて、腸管でT細胞(αβT細胞)がどのようにしてTh1細胞になり、さらにTh2細胞になり、最後はレギュラトリーT細胞が化学物質と共存できるように免疫寛容を起こすのかをもっと具体的に説明しましょう。
骨髄で毎日毎日100億個以上も作られる未熟なT細胞をナイーブT細胞といいます。このT細胞の中でヘルパーT細胞に分化し、CD4というタンパクを膜に持つことになる未熟なナイーブT細胞をTh0と表記します。このTh0がTh1やTh2やTh17やiTreg(レギュラトリーT細胞)になったときに、これらのT細胞をエフェクターT細胞といいます。日本語であえて訳せば、「効果T細胞」とか「作動T細胞」と訳します。実は成熟したT細胞はふたつに大きく分けることができます。ひとつはヘルパーT細胞(Th)であり、ふたつめがキラーT細胞(CTL)であります。このヘルパーの名称は、Thは色々なサイトカインを出してB細胞やキラーT細胞(CTL)や、さらに先天免疫の働きも手助けすることができるので与えられました。CTLは、ウイルスや細菌に感染した細胞を敵もろとも殺す仕事をすることは既にご存知でしょう。
ここで見慣れないiTregについて注釈しておきましょう。iTregは従来から私が使っているサプレッサーT細胞のことです。つまり無駄な戦いをやめさせ、自然後天的免疫寛容を起こすT細胞のことを、近頃はサプレッサーT細胞というよりも、レギュラトリーT細胞とかiTregと言うようになりました。サプレッサーT細胞をiTregと言い始めた学者は、今でも「自己免疫疾患を起こさせない働きをする」と、訳の分からないことを言い続けていますが、元来、自己免疫疾患などという病気は捏造された病気であり、従って捏造された病気を起こさせないというiTregの働きも何の意味もないことがお分かりでしょう。iTregはあくまでも戦っても殺しきれない敵だと免疫自身が自然に気がつき、異物と共存することができるように38億年の免疫の進化の中で作り上げたシステムのひとつに過ぎないのです。その異物とは化学物質であり、この化学物質は殺すことができないために、最後は共存する以外にないということに免疫がおのずから気がつき、自然後天的免疫寛容を起こして全ての膠原病やアレルギーが治ることは、既に私のホームページを読んでおられる皆さんは充分に理解していらっしゃるでしょう。 Th17は最近発見されたので、このホームページでは初登場となります。このTh17に関しては後で説明します。
それではどのようにしてTh1とかTh2とかTh17という番号がつくのでしょうか?実はヘルパーT細胞は、先ほど述べたように、多くの違ったサイトカインを作り出し、免疫系の戦いを始めさせ、敵を殺すか、一時休戦するか、共存させてしまうのです。このような答えを免疫が出すまでに、ヘルパーT細胞が作り出すタンパク分子であるサイトカインの種類が敵や状況に応じて異なってくるのです。ひとつのヘルパーT細胞で免疫の働きを助ける全てのサイトカインを作り出せればよいのですが、負担が大きすぎます。従って実際は1つのヘルパーT細胞があらゆる種類のサイトカインを作っているわけではなく、敵に応じて、そして必要な仕事の役割に応じて、その役割を分担させるために、T細胞は現在のところ3種類のヘルパーT細胞があるということが分かり、Th1やTh2やTh17に分類されたのです。ただ、これらの細胞が共通して持っているタンパクがあります。そのタンパクがCD4と呼ばれるものです。このCD4はco-recepterと呼ばれるタンパクです。
実はT細胞は全てのサイトカインを作っているわけではないのですが、この3つの細胞に分類しきれないT細胞もあるのです。しかしながらサイトカインがいくつか組み合わさってひとつの仕事をしていることが分かり、このまとまったサイトカインの組み合わせを産出するT細胞を、概念として分類した結果がTh1でありTh2でありTh17なのです。この概念に合わないヘルパーT細胞もあることは知っておいてください。このように分けないと、まとまりがつかないほどT細胞は何十というサイトカインを出すものですから、ますます免疫の概念を認識することが難しくなるので、免疫学を理解するために都合よく免疫学者が作り出したのがTh1、Th2、Th17の概念であることを知っておいてください。そうでなくても、免疫学はだだっ広くて深くて登場人物が多すぎて一般の人には理解を超えてしまっており、私の説明についてくることも難しいのはお分かりでしょう。
ここでついでに免疫という演劇の新参者であるTh17ヘルパーT細胞について述べておきましょう。このTh17ヘルパーT細胞は最近発見された新しい種類のヘルパーT細胞です。このTh17は主にカビに対する防御作用があります。 まず樹状細胞が粘膜や皮膚にいる酵母菌のようなカビや見つけだすと、これらのカビを捕まえて近くのリンパ節に運び、このカビだけを認識するナイーブT細胞を活性化します。このカビを捕まえている間に、樹状細胞はTGF-βやIL-6などのようなサイトカインを作り出し、ヘルパーT細胞の膜にあるCD28というco-stimulator分子(共刺激分子)と、樹状細胞が持っているB7と結びついて、新たに活性化されたヘルパーT細胞をTh17に変えて、このTh17にIL-17とIL-21というサイトカインを作らせるのです。Th17の“17”はIL-17を作り出すから名づけられたのです。一方IL-21は、Th17細胞の増殖因子であります。このIL-21はTh17自身が自分に対して増殖しなさいという命令を出すサイトカインであるのです。IL-21によって増え続けるTh17細胞は、カビを殺すためにカビの感染の場所に膨大な好中球を集めるのです。このように集まってきた好中球は、Th1やTh2では比較的処理できない様々なカビや、さらに細胞に入り込めない細菌を殺すことができるのです。実際にIL-17を作り出す遺伝子が欠如している患者は、通常に見られるカンジダ・アルビカンスという真菌感染症にかかりやすくなり重症化します。さらにIL-17やIL-21はB細胞に命令して、カビや細菌にひっついて味付けするオプソニン作用を持っている抗体を作り出すこともできます。さらにこのような抗体は補体系を活性化し、補体のオプソニン作用を高めることもできます。
ここでさらに難しい話を付け加えます。Th0細胞にTGF-βだけが作用すると、Th17細胞ではなくて、制御性T細胞であるiTreg(Treg)が誘導されることも知られています。さらに強調しておきたいことがあります。TGF-βはカビに出会った樹状細胞が作り出すという事実です。これは何を意味していると思いますか?カビは元来、病原性が低いということを意味しています。つまりカビは生命体でありながら共存できる異物であるということです。だからこそ水虫を起こす白癬菌は、いわば皮膚の表皮に共存している状態であり、水虫で死んだ人がこの世にいたでしょうか?カビに対して樹状細胞がハナからTGF-βを作る意味は、やはり共存できる敵であることを進化の中で認識できるようになったことを示唆する最近発見された真実です。
カビについて色々と書きたいのですが、これを研究するだけでも一生かかるほどの膨大な分野であります。カビについてはここだけにしておきます。
それでは、未熟なヘルパーT細胞は、誰からTh1、Th2、Th17細胞に相応しいサイトカインを出す命令を与えられるのでしょうか?ヘルパーT細胞がどのようなサイトカインを出すべきかを決めるのに2つの条件が必要です。ひとつは、どんなタイプの侵入者が入ってきたのかを知ることであり、その敵がどこから侵入してきたかを知る必要があります。このような情報はどの細胞が収集した後、ナイーブT細胞(別名バージンT細胞とも言いますが)に伝えるのでしょうか?まさにこれこそ樹状細胞であります。この樹状細胞を初めて見つけだした医学者に2年前にノーベル賞が与えられたこともご存知でしょう。
さて樹状細胞は、侵入者の種類や入ってくる場所の情報をどのようにして知ることができるのでしょうか?最初の敵が誰であるかを認識するレセプターを英語で“Pattern Recognition Recepter”(パターン-レコグニション-レセプター(PRR))といい、樹状細胞が持っているPRRをToll-like recepter(TLR)ともいいます。このようなTLRというレセプターは、今のところ11種類知られています。大食細胞なども独自のPRRを持っています。PRRをあえて日本語に訳せば「パターン認識受容体」といわれます。
さてこのパターンという意味はどういう意味でしょうか?パターンという英語の意味は、「図形、模様、図柄、タイプ」という意味がありますが、このレセプターは敵を漠然とした図柄で認識していることを意味しています。ご存知のようにTリンパ球やBリンパ球はたった唯一の敵(エピトープ)しか認識できないのです。つまりひとつひとつのTリンパ球やBリンパ球はひとつひとつの異なった敵しか認識できないのです。ところがTLRは、唯一の敵の一部ではなくて、様々な敵が共通に持っているいくつかの部分をパターン(図柄)で認識することができるのです。逆に言えば、漠然としたパターンしか認識できないのです。つまり敵を特化できないので、樹状細胞は生まれつき持っている自然免疫や先天免疫といわれる一方、T細胞やB細胞は敵に対して適応して自分の作る抗体を特化できるので、適応免疫や後天免疫と呼ばれるゆえんなのであります。このように特化できるようにT細胞やB細胞は進化してきたのですが、樹状細胞はウイルスや細胞が持っている進化によって変わらない共通の必須の特質だけを認識できるのです。この意味においても、樹状細胞はT細胞やB細胞に比べて進化のレベルは低いのでありますが、実はより高度なT細胞やB細胞に情報を伝えるのは樹状細胞であることは充分理解してください。
2つめの敵の侵入する場所の情報は、どのようにして樹状細胞は得ることができるのでしょうか?その場所にある樹状細胞が知ることができるのです。例えば、腸管から敵が入ってきたとしましょう。腸管のパイエル-パッチに住んでいる樹状細胞は、Th2にIL-4を出させて、腸管の免疫にとって最も大事なIgAをBリンパ球にクラススイッチさせ産生させます。さらに非常に大事なことでありますが、腸管の粘膜下に住んでいる樹状細胞は、TGF-βを産生することが分かったのです。先ほどTh17の説明で樹状細胞がTGF-βを産生することは述べました。さらに、腸管の上皮細胞に侵入してきた敵に対して、腸管の上皮細胞自身がTGF-βを作り出すことも分かったのです。つまり体の違った場所にある様々な細胞は、敵に対する反応としてその侵入地点に相応しい独自のサイトカインを作り出すのです。
ここで強調しすぎて強調しきれないほど最も大事なことがあります。腸管に化学物質と結びついたキャリアタンパクが、いかに簡単に免疫寛容を起こし、共存できるかがお分かりになりますか?それは腸管にいる樹状細胞や腸管の上皮細胞が、異物が侵入したときにまずTGF-βを作り出すところがミソなのです。先ほどTh17について述べました。腸管にいるカビを見つけた樹状細胞がTGF-βとIL-6を出して、Th0をTh17に変え、このTh17は、主にカビをやっつけると同時に、腸管の細胞内に入れない細菌を殺すことは述べました。これはいったい何を意味しているのでしょうか?腸管は外側から見れば人体の内側あるように見えますが、実を言えば人体の外なのです。口から肛門までは人体の外なのです。言い換えれば、口から肛門までは内なる外と言ってもいいのです。このような人体の内なる外にいるカビや細菌を殺す必要があるでしょうか?カビや細胞に入れない細菌を殺さないで排除するだけで、何も余計な殺し合いをする必要がないということを人類は進化の中で学び取ったことを意味するのです。だからこそ共存のサイトカインであるTGF-βを腸管の樹状細胞や腸管の上皮細胞が作り出すようになったと言えるのです。これも私が世界で初めて意味づけた真実であります。私の勉強の楽しみは他の人が知らない真実を探し出すことであり、この喜びは永遠に尽きません。
このように腸管にいる樹状細胞や腸管の上皮細胞によって作られたTGF-βというサイトカインが、どのようにして殺しの戦いを排除の戦いに変え、さらに異物と共存する世界に変えていくかについては既に書いたのですが、もう一度詳しく述べましょう。
まず最初の最初にマクロファージが作り出すTNFについて述べましょう。TNFはマクロファージによって初めて作られるサイトカインでありますが、Th1によって作られたTNFも一緒になってマクロファージに結びつくとIL-12を作らせます。するとこのIL-12とTNFが一緒になってキラーT細胞にインターフェロンγを作れと命令します。このインターフェロンγは、Th1によって作られたインターフェロンγも一緒になってマクロファージを鼓舞して「もっともっとTNFを作れ、IL-12を作れ」と命令して作らせます。このIL-12はTh0をTh1になれと命令すると、Th1はIL-2を作り出します。このIL-2はNK細胞に働いて、NK細胞を増殖させます。このIL-2は増殖因子として有名でありますが、NK細胞は元来IL-2に対するレセプターが膜には表現されていないのです。従ってIL-2がTh1細胞によっていくら作られても、NK細胞はIL-2に対するレセプターがないので増殖することができません。ところが、マクロファージが作るTNFはNK細胞の膜にIL-2のレセプターを発現させることもできるのです。
ここで一度マクロファージや樹状細胞や、さらにTh1が作るTNFの働きを別の観点からまとめましょう。まずTNFはマクロファージにIL-12を作らせます。かつNK細胞にインターフェロンγを作らせます。あらゆる異物の戦いはTNFからスタートすることを確認してください。だからこそ、TNFの働きを抑えるレミケードがUCやCDに用いられるのです。言い換えると、免疫の出発点であるTNFを作らせなければ、異物を認識することはおろか先天免疫やT細胞の働きも一切なくなってしまうのです。だからレミケードは免疫を抑えて症状を除去する最高の薬になっているのです。しかしレミケードをやめれば必ず免疫の復讐をいずれ受けねばならない運命を背負わざるをえないのです。
次にIL-12の働きについてまとめましょう。IL-12は、敵を見つけたマクロファージや樹状細胞によって作られます。このIL-12は次にNK細胞に働いて、インターフェロンγを作らせます。かつIL-12はTh0をTh1に変えてくれます。IL-12はTh0をTh1にした後、Th1にTNF、インターフェロンγとIL-2をどんどん作らせます。
次にインターフェロンγについてまとめましょう。インターフェロンγは、NK細胞とTh1によって作られます。このインターフェロンγの働きは、マクロファージの働きを活性化します。かつB細胞が作る抗体をIgMからIgGに作り変えます。
次にIL-2についてまとめます。IL-2は、NK細胞とTh1から作られます。IL-2の働きはNK細胞を増やし続けます。そしてNK細胞が敵を殺す力を増やします。このIL-2は先ほど述べたように、CTLやNK細胞やTh1がどんどん増やすことができる増殖因子として有名であります。
以上、マクロファージや樹状細胞やナチュラルキラー細胞(NK細胞)やキラーT細胞(CTL)が作るサイトカインの世界は、まさに敵を殺すための世界であることがお分かりですか?この敵を殺す最高の武器はIgGであるのです。このIgGを作るために、マクロファージや樹状細胞やナチュラルキラー細胞(NK細胞)やキラーT細胞(CTL)が相互協力し、一丸となって私たちが全く知らない世界で私たちの命を守ってくれていることがお分かりでしょうか?難しいようですが、理解してしまえば、実は免疫学は何も難しくないのです。
さて、さらに話を進めていきましょう。既にご存知のようにUCやCDの敵は化学物質ですね。それでは化学物質は殺す意味があるのでしょうか?死んだ化学物質を殺すなどということは狂気の沙汰であることはお分かりになるでしょう。だからこそ、以上に述べた殺しの世界を排除の世界に変える必要があるのです。この排除の世界がIgEの世界であるのです。このIgEを作るキッカケは皆さんご存知でしょう。これが全身の粘膜下や皮膚の下の結合組織に、殺さなくてもいい異物を排除するために常時待ち構えている肥満細胞なのです。さぁ、これからがTh2の世界とIgEの世界の話となっていきます。この肥満細胞は、殺しの世界で作られたIgGが無限に作られることがないように待ち構えているのです。というのは、殺せない異物をいつまでも殺すためのIgGを作っても、人体の結合組織に溜まるばかりであり、全く意味のないことであるからです。
元来、肥満細胞はIgEと結びつくレセプターを膜の全面に大量に持ち合わせているのですが、ところどころにIgGのレセプターもあるのです。化学物質が入ってくると、排除しない限りは溜まるばかりであり、はじめはこれを殺すべき敵だと考えるように作られている免疫は、どんどんIgGを作り続けるのですが、殺せないどころか排除もできなくなりIgGが増えるばかりです。この増えすぎたIgGは肥満細胞の少ないIgGのレセプターに結びつき始めます。すると肥満細胞の核にメッセージが伝わり、IL-4を作らせ始めるのです。なんと素晴らしい巧妙なシステムでしょうか!殺すことができないIgGが、まさにギブアップして肥満細胞にIgEを作ってくださいと懇願し始めるのです。「IgGが敵にしているのは殺すべき敵ではないので、その敵はIgEに任せますから、お願いします」と言わんばかりです。免疫の働きは38億年かけて出来上がったものです。完璧です!このようにしてIgGと結びついた肥満細胞は徐々に徐々にIL-4を出して体中に増やしていきます。このIL-4と徐々に結びついたTh0はTh2に新たなるサイトカインを作らせるようになっていきます。そのサイトカインが、まさにIL-4でありIL-5でありIL-13であります。これらは全てIgGを作らなくさせる一方、IgEを作らせようとする働きを持っているのです。さぁ、これからIl-4やIL-5やIL-13の働きについて述べましょう。
まずIL-4は、今言ったようにTh0に対してTh2細胞へと分化させます。と同時に、Th0がTh1へ分化することを抑制します。肥満細胞に対してはもっと成長しなさいという成熟因子として働きます。さらにIL-4はB細胞に対する増殖因子となり、B細胞を増やします。かつB細胞がIgE抗体を作るようにクラススイッチさせるのです。B細胞のAID遺伝子に働いてIgMをIgEに、かつIgGをIgEに作らせるように抗体をチェンジさせるのです。
IL-5は、アレルギーを起こすヒスタミンを作る肥満細胞や好酸球を増殖させます。かつB細胞にIgMをIgAに、かつIgGをIgAにクラススイッチさせるのです。このIgAは人体に最も多いことはご存知でしょう。とりわけ粘膜に多い抗体として知られています。UCやCDの粘膜においてもIgA抗体は化学物質と結びついて、便から異物を出そうとする働きがあります。つまりIgGの炎症と殺しの世界を排除の世界に変えてしまうのです。
次にIL-13は、IL-4と類似した働きがあり、マクロファージや樹状細胞に対して、炎症性サイトカインであるIL-1、IL-6、TNFなどの産生を抑制し、肥満細胞の増殖を促すのです。かつ、腸管の粘膜から粘液を産生するように粘液産生細胞を刺激でき、腸管の壁に敵が引っ付いたり、腸管の組織に侵入しないようにしてくれるのです。衛生状態が悪い時代は寄生虫が飲食物からよく入ったものですが、現在は文明先進国においては寄生虫は皆無となりました。その代わりに人体にとって不必要な化学物質が侵入するようになったのです。この化学物質は寄生虫以上に人体にとっては有害無益であり、これを腸管から排除するためにTh2の世界、言い換えるとIgEの世界がアレルギーの世界であり、かつ膠原病であるUCやCDの世界となったのです。
さぁ、最後の局面にやっと到達しました。どうしてUCやCDが免疫寛容を起こして治るかという最後の場面となりました。まず免疫寛容を起こすためには、既に書いたようにサプレッサーT細胞(iTreg)が絶対に必要です。上で述べたように、Th2とIgEやIgAの世界で化学物質を排除しようとしても、いつまでも入ってくる化学物質に対して、38億年かかった免疫の進化はどのように最後にこの化学物質を処理すると思いますか?まさに自然後天的免疫寛容を起こして化学物質と共存するしかないのです。
それでは、iTregはどこから作られるのでしょうか?既に述べたようにまさにTh0細胞からであります。だからこそ免疫寛容を起こすT細胞のことを、以前はサプレッサーT細胞と名づけたのですが、現在は新しく“Inducible regulatory T細胞”と名づけられたのです。Inducibleは“誘導された”という意味があり、Th0から誘導され、かつregulatoryというのは、“免疫の働きを制御する”という意味で、本当はIregTと言った方がよいのですが、表記はiTregと決めたのです。それでは、Th0をiTregに変えるサイトカインは何でしょうか?TGF-βとIL-10です。このTGF-βとIL-10はこれまでにもしばしば登場してきたのでご存知でしょう。
なぜ最後の自然後天的免疫寛容の話が出るまでにTGF-βが登場したのかご存知ですか?答えは簡単です。人体にとって不必要な敵の処理の仕方は、実は3つしかないからです。1つめは殺すか、2つめは排除するか、3つめは共存するかだけです。排除することと共存は、結局は敵を殺すことではなく、さらに排除できなければ共存しかないのです。殺されなければならない敵は、自分が殺されるから殺す以外に道はないのです。従って、2つめの排除する世界がアレルギーあるので、アレルギーの話をするたびにTGF-βが登場していたのです。つまり排除することと共存することとは本質的には同じであるからこそ、排除の話でTGF-βが頻回に登場したのです。
それではこのTGF-βはどこで作られるのでしょうか?まさに腸管免疫の働きによるものです。既に書いたように、腸管の内皮細胞からTGF-βが作られるのです。まさに腸管は免疫寛容を行うべき理想的な器官であるのです。なぜならば腸管は不必要な敵を認識すれば排除できる内なる外であるからです。まさに吸収する前に便に排除すれば、病気は一切起こらないのです。UCやCDで見られる下痢は、まさに排除の症状なのです。しかしながら、IgGで処理する時には、炎症が起こり潰瘍や糜爛が起こってしまう上に、IgEで処理し続けると下痢が続き脱水症状になり、かつ栄養不良になるものですから、永遠に下痢を続けることは不可能です。そこで腸管免疫は排除すべき化学物質と共存する道を作り上げたのです。最後はTGF-βにTh0をiTregに変えることをさせたのです。つまり腸管の上皮細胞から常にTGF-βを作らせたのです。腸管に特異的であるパイエル-パッチにいるTh0と結びつかせて、iTregになるようにさせたのです。既に述べたように、TGF-βはTh0をTh17にさせて腸管に入ってくるカビを処理させたのです。
今でこそ飲食物にカビが入ることは少なくなりましたが、文明社会の人類にとっては毎日カビのない食べ物などはひとつもなかったでしょう。さらに腸管の内皮細胞で作られたTGF-βによって作られたこのiTregは、自分自身もiTregになったあとに、さらに多くのTGF-βやIL-10というサイトカインを作ることができるのです。作れば作るほど、既に述べたように、このTGF-βはTh1やTh2に結びつくと、Th1やTh2の増殖を抑え、キラーT細胞(CTL)にこのTGF-βが結びつくと、CTLの殺しの力がなくなっていくのです。
iTregが作りだすIL-10は、T細胞のレセプターに結びつくと、T細胞のCD28という分子と結びついて、co-stimulatory シグナル(共刺激シグナル)が伝わらないようにブロックするのです。ご存知のように、全てのT細胞は共刺激シグナルがなければ仕事ができません。つまりIL-10がT細胞のレセプターに結びつくと、T細胞を活性化できなくなるのです。このようなT細胞の状態をアナジーとかアネルギーといいます。いずれアネルギーとなったT細胞は死んでしまうのです。最後に私の言う自然後天的免疫寛容となり、化学物質との戦いは全面的に終わり共存できるのです。
腸管に侵入してきた化学物質とIgGで戦って、UCやCDが生じるのですが、以上に述べた複雑には見えますが、実をいえばシンプルな免疫の働きにより、免疫のクラススイッチと自然後天的免疫寛容により、最後は簡単に原因である化学物質と共存でき、UCもCDも治ってしまうのです。
皆さん、1種類のサイトカインが色々な仕事をするものですから、ますます免疫学が難しくなる理由のひとつであることも知っておいてください。なぜならば免疫の進化は突然に起こるものではなくて、38億年かけて作り上げたものですから、それまでに作り上げたサイトカインの遺伝子自身を破壊するのではなくて、既に作り上げた遺伝子を徐々に進化させて応用し、今までになかった高度な仕事を同じサイトカインにさせながら、新たなる遺伝子を進化させて、新たなるサイトカインを付加していくことは、極めて合目的かつ合理的だと思いませんか?
社会システムも同じことが言えると思いませんか?共産主義革命は、反革命の人間をできるだけ殺し古い全てのシステムを破壊して、新しいシステムを作ろうとしたのですが、結局人間自身の利己的な遺伝子が全て変わらない限り、革命革命といったところで、本当に新しい社会を作ることができなかったのと同じです。だからこそいかなる社会も過去の伝統を受け継ぎながら、新しい文化を少しずつ付け加えながら、いつの間にか徐々に変わる以外にないのと同じことです。
皆さん、難しい免疫の話を最後までついてきてくれてありがとうございます!ただただ言い続けたいのは、このように化学物質と共存し、UCやCDを治すための必須条件は、免疫の遺伝子を自然に発現させ、絶対に抑えないことです!現代の治療は全て免疫を抑える薬しか作れないので、簡単に自分の免疫で治せる病気を永遠に治らない病気に作り上げ、医薬業界は景気不景気にかかわらず、永遠に繁栄し続けるのです。悲しい、悲しい。どうすればこのような悲劇をなくすことができるのでしょうか?皆さん、考えてください。

病気は自分の免疫で治す以外に治しようがないのです。自分の免疫で治せない病気は絶対に治すことはできません。現代文明の病気の原因は化学物質とヘルペスと風邪のウイルスだけであり、これら3つの敵と戦っても死ぬことは絶対にないのです。死なない限り自分の免疫で化学物質とは共存でき、ヘルペスは一時的に神経節に封じ込め、風邪のウイルスは殺しきることができるのです。一方、成人病は贅沢病ですから、自分で成人病を作っているだけです。贅沢をやめ、免疫を抑えない心のあり方を身につければ成人病もなくなってしまいます。

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