加齢性黄斑変性症 疾患解説

加齢性黄斑変性症について

投稿日:2018年8月22日 更新日:

皆さん、iPS の人体実験が初めて行われようとしていますが、iPS はどんな細胞に再生されるのかをご存知ですか?加齢性黄斑変性症に対して行われる予定でありましたが、癌になる危険度が高いということで今回は見送られました。この黄斑変性症とは一体何なのでしょうか?この黄斑にはどんな細胞があるでしょうか?実は錐体細胞がこの黄斑と呼ばれる網膜の中心にあたる部分に最も多く集まっており、眼底鏡で診ると、ほぼ眼底の中央部に黄色を帯びた領域が観察されるので黄斑と呼ぶのです。言い換えると、錐体細胞が集中的に集まった部分が黄色く見えるのです。この錐体細胞は高い視力と色の感覚を識別することができるのです。一方、この黄斑には桿体(杆体)細胞が少ししかないのです。この桿体(杆体)細胞は、暗い場所で働くことができます。錐体細胞は明るい光に反応し、かつ光の三原色である、赤・緑・青の光に反応できる 3種類の錐体細胞があります。網膜の細胞は、視細胞といわれる錐体細胞と桿体(杆体)細胞以外に、内側にあと 2 種類の細胞の層があります。(眼球の中の内外の区別は後で詳しく説明します。)双極細胞の層と神経節細胞の層であります。双極細胞は錐体細胞や桿体(杆体)細胞からの情報を受け取り、神経節細胞に渡します。情報を受け取った神経節細胞は長い神経軸索を持っており、この軸索を通じて情報を脳に伝達します。つまり神経節細胞からの神経線維は、脳の視床、視床下部、さらに中脳の上丘へと伝わっていくのです。

明るい光を受けて働き、明所視をつかさどる錐体細胞は眼球の中心である黄斑部に多く存在しており、この黄斑部を中心窩といいます。錐体細胞の密度はこの中心窩から離れると速やかに減少します。黄斑部(中心窩)に高密度に存在している錐体細胞の情報は、視覚情報の統合をあまり受けずに視神経乳頭から脳へ出て行く視神経へ伝えられることによって、脳へ伝えられる画像の分解能が最も高くなっています。一方、桿体(杆体)細胞は中心窩を取り巻くように網膜周辺部に多く存在し、暗い場所で働き、暗所視をつかさどるのです。

網膜の光感受性受容器である桿体(杆体)細胞と錐体細胞の分布は異なるのは当然なのです。人間の目は元来、光のある明るいところで働くべきものですから、一番ものが見えやすい黄斑部が変性すると、ものが見えなくなってしまうのです。暗いところで見る必要はないので、桿体(杆体)細胞は黄斑部には少ないのです。ところが、錐体細胞よりも桿体(杆体)細胞が 100 倍も多いのは、わずかな刺激を少しでも見えるように桿体(杆体)細胞が多くならざるをえなかったのでしょう。

ここでさらに詳しく人間を含めた脊椎動物の網膜の構造について述べておきましょう。実は先ほどは網膜は 3 層に分かれているように簡単に書きましたが、さらに組織学的に詳細に分類すると 10 層に分けることが出来るのです。皆さん、実は網膜の構造を正確に理解することは難しいのです。それは、まず網膜の構造を説明する際に、「眼球の外側・内側」とかあるいは「網膜の内側・外側」という言葉の「内・外」の理解に戸惑うからです。なぜ「内・外」の理解が難しくなるのでしょうか?皆さんは、光は外側から瞳を通して眼球の内側に侵入してくると考えておられますね。これは正しいのですが、それでは眼球の中の「内側と外側」とは一体何を意味するでしょうか?

これを理解するために、ぶ厚い皮の風船に空気が入った状態を思い浮かべてください。丸い眼球を空気の入った風船玉と考えてください。この眼球の風船玉の外側の膜は強膜で覆われているとイメージしてください。皆さん、角膜はご存知でしょう。この角膜を通して光が入ってくることもご存知でしょう。従って、眼球という風船玉は、光が入ってくる前部の強膜だけが角膜に変わり、残りの周りは全て強膜で囲まれてしまった風船玉と考えてください。空気で満たされた部分が内側であり、これが眼球の内側であります。この内側の後部3/4が網膜で覆われているのです。前部の角膜の周辺の1/4には網膜はないのです。大体眼球のイメージができたでしょう。

次に間違いやすい点があります。脳に行く神経線維(神経軸索)がどこにあるかという点です。実はこの網膜の一番内側にあるのです。分かりますか?網膜の一番内側であるということは、眼球という風船の空気に直接触れているのはこの神経線維(神経軸索)なのです。ここが眼科医でない一般の医者や患者が誤解する点なのです。つまり脳に一番近いところに神経線維があるように思ってしまうのですが、実は脳に一番遠い網膜の表面に神経線維が分布しており、この分布した神経線維が全て集まって大きな神経線維の束となって盲点から脳に入っていくのです。

皆さん、視神経、つまり視神経の神経線維が盲点という箇所から脳につながっているのはご存知ですか?つまり盲点というのは、視神経が脳に入っていく通路であるので、網膜がないのです。従って光がこの盲点に到達しても、光の刺激を感じる網膜がないので見ることが出来なのです。つまり“目くらになる点”という意味で盲点といわれるのです。ご存知のように、黄斑はこの盲点の近くにあります。この盲点というのは、視神経乳頭ともいい、網膜の神経線維が集まって、眼球から脳へと出ていく通路であります。

もっと具体的に説明しましょう。眼球という風船玉の外側は強膜であり、その内側が脈絡膜であり、さらに内側が網膜であり、そのさらに内側に神経線維が分布しているのです。つまり眼球という風船の中にある空気と触れているのは神経線維であると考えてよいのです。眼球という風船玉の外のゴム皮から順番に空気のある内側に向かって、強膜、脈絡膜、網膜があります。この網膜に 10 層があります。外側から、①網膜色素上皮層、②網膜視細胞層、③網膜外境界膜、④網膜外顆粒層、⑤網膜外網状層、⑥網膜内顆粒層、⑦網膜内網状層、⑧網膜神経節細胞層、⑨網膜神経線維層、⑩網膜内境界膜であります。少し難しすぎますか?光は確かに⑩から①に通るのですが、光を感受し、その情報は①から⑩へと伝わっていくのです。最後はこの情報は、⑨網膜神経線維層から出て行く神経線維から盲点へ束になって視神経によって脳に伝えられるのです。②の視細胞層の中に錐体細胞と桿体(杆体)細胞が含まれているのです。難しいですがついてきてください。

さてやっとここで、ヘルペスウイルスが網膜の神経のどこに隠れているかを本格的に議論できるようになりました。上の説明での、⑧網膜神経節細胞層に住んでいることがお分かりでしょう。神経節に囲まれた細胞という意味で名づけられたのですが、ご存知のように元来、神経節に囲まれている細胞は免疫には見つかりにくいのですが、この神経節細胞から神経線維に増殖したヘルペスウイルスを免疫が見つけると、慢性的な本格的なブドウ膜炎が起こるのです。網膜は眼球の前部の角膜周辺 1/4 には存在しないことは先ほど述べました。後部の 3/4にしか網膜はありませんし、従ってヘルペスが隠れることができる神経節細胞も、網膜のない前部にはありません。しかし、皮膚科医や眼科医にステロイドを長期に使われた人たちは、網膜の様々な細胞にもヘルペスウイルスが感染増殖したり、さらに眼球前部の虹彩や毛様体や脈絡膜の上皮細胞にも網膜の神経細胞からヘルペスウイルスが増殖して、そこでも免疫とヘルペスとの戦いが見られ炎症が起こるのです。ちょうどアトピーや喘息で長期にステロイドを用いられてきた人たちのあらゆる全身の末梢神経にヘルペスが増殖すると同時に、あらゆる上皮細胞にもヘルペスが住みつき、またステロイドを大量に塗られた皮膚の表皮細胞にもヘルペスが増殖するのと同じです。

ここまできた以上、目の構造も完全に理解できたので、もっと詳しく光がどのようにして認識されるかについてもう一度勉強しましょう。光がまず角膜から入り、この角膜から入った光は網膜に照射された光は、まず一番内側の内境界膜側から網膜層を透過し、一番奥の視細胞層にある錐体・杆体視細胞に到達して光が認識され、この情報は内側にある様々な細胞に戻るように伝えられていきます。

網膜には大別すると、視細胞(錐体、杆体)、双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、神経節細胞の5つの神経細胞が存在します。光は視細胞で電気信号に変換され、その信号(情報)は化学シナプスを介して双極細胞と水平細胞に伝達されます。双極細胞はアマクリン細胞や神経節細胞とシナプス結合しており、神経節細胞の軸策が視神経として視神経乳頭から出て行き、大脳の視覚中枢に連絡します。

⑤網膜外網状層で視細胞と双極細胞、水平細胞がシナプス結合しており、⑦網膜内網状層で双極細胞とアマクリン細胞、神経節細胞がシナプス形成をしています。④網膜外顆粒層には視細胞、⑥網膜内顆粒層には双極細胞、水平細胞、アマクリン細胞、⑧網膜神経節細胞層には神経節細胞の細胞体が位置しています。

ここでさらに網膜のいくつかの大切な細胞について復習をかねて勉強しましょう。何回か述べていますが、まず一番大事な視細胞といわれる錐体細胞と杆体細胞について述べましょう。ここでも内と外との違いをはっきり区別してくださいね。内は眼球という風船の中側で、外は風船の外のゴムの膜ですからね。

視細胞 は、photoreceptor(光受容体)とも言います。つまり光を受け取る受容体であります。視細胞は網膜の②網膜視細胞層から⑤網膜外網状層にかけて存在し、光刺激を吸収し電気信号へと変換する役割を持ちます。 視細胞には、明所で機能する錐体 (cone) と暗所で機能する杆体(又は桿体、rod)の2種類があり、錐体には光吸収の波長特性が異なるものがいくつか存在し、波長の長さにより色が区別されるのです。長波長光に感受性が高いものが赤錐体であり、中波長に感受性が高いものを緑錐体であり、短波長感受性が高いものを青錐体といいます。

錐体や杆体の外節と呼ばれる部分には視物質が蓄えられています。視物質は蛋白質オプシンにレチノール(ビタミンA)が結合した色素タンパク質で、オプシンのアミノ酸配列の違いにより吸収波長が異なります。このビタミンAが欠乏すると夜盲症となることはご存知でしょう。つまり杆体細胞の障害のために暗順応の機能が働かなくなるので、夜に見にくくなるのです。 錐体のもつオプシンとしては、紫外型・青型・緑型・赤型の4種類が知られる。ヒトの錐体では、視物質として異なる蛋白質オプシンを持つ3種類の細胞があります。それぞれ吸収波長が異なっており、L錐体(赤錐体)、M錐体(緑錐体)、S錐体(青錐体)と呼ばれます。これら3種類の錐体の興奮の割合の違いを利用して色を区別しているのです。この3種類の錐体の1個〜複数個の欠損または吸収波長の違いにより色覚異常(色盲、色弱)が生じます。この色盲のために医者になれなかった時代がありました。

一方の杆体は視物質ロドプシンを持ちます。杆体は1種類しかなく、色(波長)の違いを区別できません。このような視物質は数段階の化学変化を経て、細胞膜のイオンチャネルを開閉させ、その結果、イオン電流が発生して緩やかな電位変化をもたらします。網膜の多くの神経細胞は、脳神経系などで見られる活動電位と呼ばれるスパイク状の電位変化とは異なり、緩やかな電位変化を発生するのです。

昔々の祖先型の脊椎動物は紫外型・青型・緑型・赤型の錐体(および杆体)をもつ4色型色覚であったと考えられます。現生の鳥類は進化の過程で各オプシンを失わず、現在でも4色型色覚をもっています。一方、哺乳類では、初期に緑型オプシンと青型オプシンを失い、現生のものでは2色型色覚が多く、ヒトをはじめとする霊長類では、紫外型オプシンが青色域に吸収域が変わり、また、赤オプシン遺伝子の重複と変異によって緑オプシンが生じた結果として3色型色覚(赤・緑・青)になっているのです。

水平細胞 (horizontal cell) は、視細胞とシナプス結合をする神経細胞です。名前のとおり、網膜に水平に軸策が伸び、広い受容野を持ちます。 視細胞から双極細胞への信号伝達経路に対して水平細胞は抑制的に結合しており、視細胞の興奮活動の空間的な差異が双極細胞で強調されるように抑制的に働きます。錐体と水平細胞は選択的なシナプス結合が形成されており、3原色信号を反対色信号に色情報を変換しているのです。

この黄斑変性というのは、黄斑部に限局した網膜の変性を指すのですが、実は網膜全体に変性があり、その変化が特に黄斑部に強いものが黄斑変性と呼ばれるのです。言い換えると、黄斑変性とは錐体細胞の変性と言ってもよいのです。

皆さん、ここで加齢という意味を考えてみましょう。加齢とは何でしょうか?一言で言えば、生まれ持った遺伝子の正常な働きがなくなったということです。つまり老化した細胞の遺伝子は癌遺伝子にはならないのでありますが、生まれ持った遺伝子が傷つけられて修復されなくなり、遺伝子の設計図によるタンパク質が正常でなくなった状態といえます。つまり正しいタンパク質を作ることができない状態が様々な細胞で起こり、老化が生じるのです。その一番大きな原因は、まず細胞が分裂するときにDNAが正しく転写されないことです。次に食べ物や水に含まれている化学物質や、自分自身が代謝した産物などが遺伝子を傷つけることです。最後は紫外線や放射線などにより遺伝子が傷つけられることです。もちろんよく言われているように、人間は細胞分裂を行うたびにテロメアという染色体のしっぽについたDNAが減っていき、最後は分裂が不可能になり、老いさらばえていくことは言うまでもありません。いずれにしろ癌にはならないのですが、長く生きれば生きるほど遺伝子の傷が修復されないために老化が起こったと考えられるのです。加齢は人間の宿命であり、大金をかけて治療する必要はないと考えますが、皆さんどのようにお考えですか?

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