意味論 疾患解説 腎炎

腎炎について

投稿日:2018年8月17日 更新日:

腎炎も原因不明とされてきました。何十年も前から腎炎も研究し尽くされていますが、相変わらず原因不明、治療法はステロイドだけであるという繰り返しのつまらない研究の歴史です。それでは難病である腎炎は化学物質が原因でしょうか?それともヘルペスウイルスが原因でしょうか?言うまでもなく、化学物質であります。皆さん、ご存知かもしれませんが、膠原病、つまりいわゆる自己免疫疾患といわれる膠原病で最も重篤な病気はSLE(全身性ループスエリテマトーデス)とされていますが、SLE腎炎とかループス腎炎という病名を聞かれたことがあるかもしれません。なぜSLEに腎炎が同時に起こるのでしょうか?それは原因が同じ化学物質であるからです。SLEのSは全身性という意味があるように、まさにあらゆる結合組織で化学物質と戦う膠原病を指すのです。従って人間の組織は全て、その組織に特異的な細胞と同時に、その細胞を結びつけるあらゆる組織に共通な結合組織があります。この結合組織が膠原線維でできているので、そこで化学物質とIgGで戦う病気を膠原病というのです。人体には組織が210種類あるといわれますから、SLEは210種類の結合組織で戦っても何も不思議ではないのです。そのひとつが腎臓の結合組織、つまりメサンギウムという組織で戦いがみられるのです。これを腎炎というだけであります。

腎炎も様々な種類の病名に分けられています。IgA腎症、壊死性糸球体腎炎、半月体形成性腎炎(急速進行性糸球体腎炎)、巣状糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、増殖性糸球体腎炎、中毒性腎症、肉芽腫性糸球体腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎、ループス腎炎、MRSA(マーサ)腎炎、微小変化型ネフローゼ症候群、紫斑病性腎炎、グッドパスチャー症候群などであります。(糖尿病性腎症は膠原病ではありません。これについては後で述べます。)これらの病名は、原因は全て化学物質ですから、病名などはどうでもいいのです。ちょうど膠原病のリウマチだけを持っているだけの人もいますし、シェーグレンの症状だけを持っているだけの人もいますし、皮膚筋炎だけを持っている人もいます。つまりこれらの病名は症状だけでつけられたり、症状の範囲の広さでつけられたり、症状のある場所だけでつけられたりしているだけですから、意味はないのです。ちょうどアレルギーで鼻炎だけの人をアレルギー性鼻炎というように、また結膜炎だけの人はアレルギー性結膜炎というように、さらに皮膚だけの人をアトピーや蕁麻疹といっていますが、実をいえば化学物質とIgEで戦っている場所が違うだけです。実はアトピーは皮膚の表皮で化学物質とIgEで戦っているのですが、蕁麻疹は皮膚の奥深い真皮で化学物質とIgEで戦っているだけの違いなのです。

腎炎も、いわば人体に入った様々な異物と腎臓の結合組織や細胞で戦ったときに見られる炎症のひとつなのです。この炎症を現代はステロイドで免疫の遺伝子を変えることによって一時的に止めることはできるのですが、一生やめることができなくなってしまうのです。なぜならば、やめてしまうと再び遺伝子を修復するためのリバウンドが出てしまうからです。現代の病気で普通の愚かな大学病院の教授先生方は膠原病が難病だと言いまわっています。何も難しいことはないのですが、実は最後に残された膠原病の中で腎炎が一番治すのに時間がかかるのです。もちろん腎炎を治すのも自分の免疫の遺伝子ですが、一度腎臓のどこかに炎症が起こると、それを修復することが一番難しいからです。なぜでしょうか?

ひとつは腎臓の機能が複雑かつ精巧であり、どの組織の何万倍も多くの毛細血管から成り立っており、この毛細血管を通じて血中に溶けている老廃物や異物を濾過して排除する場所であるからです。この濾過装置を糸球体といいますが、ひとつの腎臓に約100万個ありますから、2つの腎臓で約200万個あるのです。ひとたびこの腎臓の糸球体に一箇所でも傷がいくと、それを修復することが極めて難しいのです。その理由をゆっくり考えていきましょう。

この糸球体は毛細血管の“毛まり”のような塊であり、この糸球体の毛細血管の基底膜で血漿成分を限外濾過するのです。この限外濾過というのは、膜の両面に一定の圧力差があるときに、高い圧の側から低い圧の側へと溶液中の粒子が分散して染み出すことです。膜を通して粒子状のゴミや不純物が取り除かれるので濾過といいます。糸球体の毛細血管の水に溶けている分子量の低い物質(溶質)が血管から取り除かれます。生体内ではあらゆる毛細血管と、この腎糸球体の毛細血管で限外濾過が行われています。

どのようにして腎糸球体の毛細血管の中の粒子が濾過されるかをもう少し説明しましょう。実はこの糸球体のひとつひとつはボーマン嚢という袋に包まれています。このボーマン嚢という袋の中に糸球体の毛細血管から濾過されて染み出てきた老廃物や濾過された物質が貯められる所です。この袋の中をボーマン腔といいます。この腔は圧力がほとんどありませんから、このボーマン腔よりも糸球体の毛細血管の中の水の圧力の方がはるかに強いので、この毛細血管からボーマン腔に血液を濾過することが可能となるのです。もちろん毛細血管の水の圧力が押し出す力となりますが、逆にその押し出す力を弱める力があります。それが血漿膠質浸透圧と呼ばれるものであります。

血漿膠質浸透圧とは何でしょうか?皆さん、アルブミンというタンパクはたびたび耳にされることがあるでしょう。血中に多く含まれているこのアルブミンが少なくなると、下肢や足がむくむという話を聞いたことがあるでしょう。このアルブミンは血管にあるときに血管外の組織から水を血管内に引く力があるのです。この力を引く力のことを血漿膠質浸透圧というのです。従って糸球体の毛細血管にはアルブミンが多くあるので、水を引く力が強いのです。従って糸球体の毛細血管からボーマン腔に水を押し出そうとする力は、このアルブミンの血漿膠質浸透圧を差し引く必要があるのです。差し引かれても押し出す力の方が強いので、これが糸球体における血漿の限外濾過の力となるのです。大体お分かりになりましたか?

このような限外濾過によってボーマン腔に貯められたものが尿のもとであり、原尿といいます。原尿は別名、糸球体濾過液といい、糸球体において血液から濾過された成分であり、1日に100リットル作られますが、そのうち99%は尿細管で再吸収を受け、尿にはたった1~2%程度しか排泄されないので、普通の人の1日の尿量は1.5リットルぐらいです。このように、まさに腎臓はこの原尿を作る仕事が一番大事なのです。ただこの原尿そのものが尿ではないのです。この原尿の中に含まれている人体に必要な物質が、再び尿細管というところで吸収され、後の残りの老廃物がいわゆる尿、つまり小便となるのです。

糸球体の毛細血管で血液が濾過されるといいますが、実はどのように濾過されるかについてはまだ不明な点が多いのです。糸球体の毛細血管の表面には血液を濾過するフィルター役の足細胞がくっついています。この足細胞の隙間から原尿がもれ出てくるのです。足細胞はポドサイトや有足突起などとも呼ばれます。糸球体の毛細血管の表面を、まるで数匹の蛸があらゆる毛細血管に互いに足を絡め合い、網目を作り、糸球体の毛細血管を覆いつくしているのです。この足細胞の働きは、足をリズミカルに伸び縮みさせ、毛細血管をしごくようにマッサージさせながら、足細胞が密着していない毛細血管の内皮細胞の穴から液体成分と、小さい分子であるブドウ糖やアンモニアや様々なイオンだけが濾過されるのです。毛細血管中の大きな分子である赤血球、白血球、血小板などの細胞成分と大きなタンパク質はこのフィルターを通過できないのです。濾過された原尿のうち、有用な糖分やアミノ酸などは、ほとんど全て尿細管で再吸収されるのです。さらに塩分やカルシウムイオンの生命維持に必要不可欠な成分や水分は、ホルモンなどによって再吸収量が上手に調節されているのです。

糸球体の濾過フィルターの役目をしているのは、今述べた毛細血管の外側に巻きついている足細胞と、毛細血管の内側を覆っている内皮細胞と、その中間にある基底膜の三者の協力によって行われているのです。皆さん、分かりにくいと思いますがついてきてください。

それでは腎臓が悪いときにむくみが見られるのですが、それについても簡単に説明しましょう。むくみは医学用語で浮腫といいます。ときには水腫ともいいます。細胞外にたまる液体が増加した状態です。人体には60兆個の細胞がありますが、その外というのは結合組織であり、結合組織のことを間質といい、ときに組織といいます。従って浮腫は結合組織に増加して貯留した水分がむくみとして観察されるのです。腎性の浮腫というのは、結局原尿が作られにくくなることです。腎臓の糸球体が傷つき、先ほど述べたアルブミンが糸球体の毛細血管からもれ出てしまいます。するとこのアルブミンの血漿膠質浸透圧が減っていきます。組織、特に下肢の皮膚の組織にある水分を毛細血管内に引き入れる力が落ちるので浮腫が出るのです。もちろん他にも浮腫の原因は色々ありますが、ほとんどの浮腫の原因はアルブミンをはじめとする低タンパク血症によるものと考えればいいのです。

腎臓の構造の全てを語るのは難しすぎますが、少しふれましょう。ボーマン嚢と丸まった毛細血管の塊である糸球体のふたつを腎小体といいます。昔はこの腎小体をマルピギー小体と呼んでいました。皆さん、ネフローゼという言葉を聞いたことがあるでしょう。ネフローゼという言葉はどこから生まれたかご存知ですか?ネフロンという言葉から生まれました。ネフロンは今述べた腎小体と尿細管からできているのです。つまり血液を濾過する仕事をしている腎臓の形態的・機能的な単位をネフロンと呼んでいるのです。ネフローゼというのは、尿中に大量の血清タンパク成分がもれ出るときに見られる病気のことをいっているのです。ネフロン、つまり腎小体と尿細管に病気がある状態をネフローゼといっているのです。もう一度復習しましょう。腎小体は糸球体とボーマン嚢から成り立っています。ネフロンは糸球体とボーマン嚢と尿細管から成り立っています。医学は専門術語が多いのでとっつきが悪いですが、分かってしまえば何も難しい学問ではありません。

さらに一言加えましょう。実は腎小体を漠然と糸球体と呼ぶことがあり、さらに本来の糸球体を糸球体係蹄と呼ぶことがあることも知っておいてください。皆さん、糸球体を糸球体係蹄となぜ呼ぶのか説明しましょう。係蹄の意味は、中国で罠の一種を意味しました。ひもや縄などを輪状にして餌を中に置き、鳥獣を誘い、その足に縄を絡ませ締めて捕える仕掛けを係蹄といったのです。つまり糸球体は、まるで毛細血管を縄と考えると、それをぐるぐる巻きにした毛細血管の集まりという意味で、糸球体の特徴を特に強調して示す言葉が糸球体係蹄であります。係蹄という難しい言葉は昔の偉い医学者は用いたのですが、もっと分かりやすくは“糸球体は毛細血管の糸だま”とか“糸球体は毛細血管の毛まり”と言った方がぴったりするのですが、医学を庶民から遠ざけるために作った言葉なのでしょう。今も昔も医者はお高くとまっていたようですね、アッハッハ!医学はこのような難しい医学術語の定義をマスターすることが一番大事なのです。

この約200万個のひとつひとつの糸球体に一本ずつ輸入動脈が入り、糸球体毛細血管網を作り、この毛細血管で限外濾過によって血液を濾過し、原尿を作り、ボーマン腔に溜まった原尿は尿細管で原尿の中にある必要な物質を再び血管に戻します。濾過の仕事を終えた糸球体毛細血管は再び集まって一本の糸球体輸出動脈となり、糸球体から出て行くのです。

さぁ、これからは腎臓の膠原病である腎炎についてお話しましょう。糸球体腎炎は、普通には腎炎と呼ばれますが、この病気の本質は糸球体の血液の濾過の仕事ができなくなった状態であります。腎炎とはなんと漠然とした言葉でしょう。とどのつまりは、原理的には人体にとって異物である化学物質を腎臓の結合組織でIgGを用いて排除する戦いにおいて見られる炎症を腎炎といっているのであります。ちょうど関節の結合組織で化学物質をIgGで排除する戦いを関節炎とか関節リウマチというのと同じことです。従って糸球体腎炎とは、正しくは腎臓の糸球体の間質で異物と戦うときに見られる糸球体間質炎というべきものです。

さて、糸球体の間質とは何でしょうか?先ほど述べたように、糸球体は大部分が毛細血管から成り立っています。従ってこの毛細血管を固定したり支持したりするために、この無数の毛細血管と毛細血管との間に、それらを結びつけ、かつ支持する結合組織が必要となります。この糸球体の結合組織をメサンギウムといいます。このメサンギウムは糸球体の中心にあり、血管の間にあるので血管間膜ということもあります。このメサンギウムという糸球体の間質には、メサンギウム細胞がたくさんいます。このメサンギウム細胞は、皮膚の結合組織に見られる線維芽細胞とよく似た性質を持ち、メサンギウムという間質を作るために膠原線維(コラーゲン)を分泌します。と同時に、このメサンギウム細胞は皮膚の結合組織に見られるランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞や、かつ大食細胞に似ているところもあります。つまりメサンギウム細胞は糸球体の構造を維持するほか、食作用、コラーゲン産生作用、さらに代謝産物の移送などもしているのです。

それでは、どのようにして糸球体に運ばれた異物が、どのようにして処理されるのかを考えてみましょう。今述べたように、メサンギウム細胞は大食細胞に似た物質処理能を有しており、異物の貪食と処理を行い、同時に糸球体外に異物を排除していると考えられ、糸球体の異物排出機構の仕事をやっております。糸球体毛細血管から出た異物を取り込んだメサンギウム細胞は、毛細血管から大食細胞になる単球を寄せ集め、炎症を起こします。異物を取り込んだ大食細胞はTNFというサイトカインを作り出します。かつ大食細胞は化学物質を溶かしきれないので、様々な強力な酵素や化学物質や、同時に殺しきれない異物である化学物質をも吐き出して、メサンギウムとよばれる間質を破壊してしまいます。すると、この炎症が糸球体の毛細血管の基底膜にまで波及し、基底膜が破壊されます。すると、破壊された毛細血管の基底膜を通して、様々な種類の高分子のタンパクや血球がもれ出てきます。これが腎炎の始まりであります。すぐに毛細血管のほころびが修復されると一過性の急性腎炎で終わりますが、同じ化学物質が続けて入ってきますと、この炎症がいつまでも続きます。これが慢性腎炎となるのです。

このような腎炎も実を言えば治すことができるのです。なぜならば膠原病ですから、原因は化学物質であり、その化学物質と共存するだけです。ただし腎臓の構造や機能が他の組織とは全く異なっているので治しにくいのです。これからその治しにくさについて説明することが、このタイトルの目的です。ただ治しにくい腎炎をさらに治しにくくしているのが医者であることも説明したいのです。つまり膠原病である腎炎は、他の全ての膠原病と同じく免疫の遺伝子を無理やり変えない限りは、人体は自然にIgGをIgEに変え、最後は免疫寛容を起こせば治るという原理原則にのっとって化学物質と共存させてくれるのです。

ただ腎臓はその働きがなくなれば死んでしまいます。常に私が言っているように、死ぬときにはステロイドを使えばよいのです。死なない限り全ての膠原病やアレルギーは自分の免疫で治すことができるのです。全ての膠原病は免疫を抑えることによって生じるものですから、免疫をいかに助けてあげるかの仕事をしてくれるのが漢方煎剤であり、鍼灸であり、漢方浴剤であるのです。

ついでに、若い人によく見られるIgA腎症について詳しく述べましょう。

IgA腎症は、別名、IgAメサンギウム腎症とか、IgA腎炎とか、免疫グロブリンA腎症とか、ベルジェ病ともいいます。フランスのベルジェが1968年に初めて報告しました。慢性に経過する糸球体腎炎の中で、蛍光抗体法により、IgAがメサンギウムに沈着していることが証明されたのですが、同時に補体のC3も沈着することが分かりました。(補体についてはいずれ必ず詳しく書きます。)上に述べたように、糸球体間質といわれるメサンギウム結合組織領域を中心に、IgAという抗体が沈着し、メサンギウム細胞が増え、さらにメサンギウム細胞以外にも大食細胞などの様々な炎症細胞も増えているのです。

IgA抗体は本来、粘膜抗体といわれるように、粘膜にしか見られないのに、どうして粘膜のない腎臓のメサンギウムにIgAが沈着しているのが見られるのでしょうか?さらにIgAは抗体の中で最も炎症を起こしにくい抗体といわれてきたにもかかわらず、なぜ腎炎を起こすのでしょうか?つまりIgAは中和抗体といって、ウイルスにしろ、細菌にしろ、敵をつかまえて自分自身と敵を便や小便や痰や涙などに流し去るだけであると考えられている最も安全な抗体であるにもかかわらず、なぜ腎臓に炎症を起こし障害を残すのでしょうか?説明しましょう。

その答えの中心はただひとつ、実はIgA抗体にはしっぽに補体がつくIgAがあることが分かったのです。この補体に大食細胞や好中球がひっついて炎症を起こしてしまうのです。皆さんご存知のように、抗体はY字の形をしています。上の2本の手で敵を捕まえ、一本足に様々な炎症を起こす補体や貪食細胞がつきます。IgA抗体のしっぽには貪食細胞は絶対につかないのですが、補体はつくことができるのです。だからこそ腎臓のメサンギウムに補体のC3が沈着しているのです。この補体のC3がIgAにひっつくと、オプソニン作用(味付け作用)が生まれ、この味に憧れて大食細胞や好中球が食べにかかるのです。これが答えなのです。つまりIgAに補体がひっつくと、この補体に貪食細胞がひっついて、IgA抗体の両手で捕まえている敵を食べるのですが、貪食したハプテン(化学物質)とキャリアタンパクの複合体は殺しきれないのでメサンギウムに吐き出します。このときに貪食細胞である好中球や大食細胞は強力な活性酸素や化学物質や酵素を吐き出し、そのメサンギウム(糸球体間質)の組織を傷つけ、と同時に近接する糸球体の毛細血管も傷つけて、その結果分子量の小さいアルブミンのみならず、大きな様々なタンパクや血球もボーマン腔に、尿細管で再吸収されきれないほどにもれ出てしまい、最後は尿に出てしまい、尿検査で蛋白や潜血が尿に出てしまうのです。一度傷ついた毛細血管は修復することが非常に難しいのです。これについて説明しましょう。

ひとつの腎臓に約100万個もある糸球体の毛細血管は、普通の血管とは構造が全く異なります。というのは普通の血管は、まず動脈、小動脈、細動脈、毛細血管、細静脈、小静脈、静脈、とつながるのですが、糸球体の毛細血管は、輸入細動脈から始まり、毛細血管、毛細血管、毛細血管・・・と無限に繋がり、血液が濾過された最後に輸出細動脈となって出て行くのです。傷ついた毛細血管は、どの器官の毛細血管であろうとも、毛細血管を取り囲む結合組織が充分多くないと修復できにくいのです。なぜかというと、毛細血管の細胞にしろ、他の全てのいかなる細胞も、まず細胞が定着する母地となる結合組織が絶対に必要であるのです。つまりまず正常な結合組織をつくって初めて正常な細胞が出来上がるのです。糸球体の間質(結合組織)は糸球体の中心に集中しているので、糸球体の中心に近い毛細血管は比較的早く修復できるのですが、糸球体の中心から離れた大部分の毛細血管はボーマン腔に連なっており、ボーマン腔には間質がないので、ますますこれらの毛細血管の修復が難しくなるのです。つまりメサンギウムの結合組織自身の修復はまだやりやすいのですが、糸球体の毛細血管の内細胞の組織修復が極めて難しいのです。さらに糸球体の支持組織であるメサンギウムの細胞は、他の組織の支持組織にある線維芽細胞とは異なっているので、メサンギウムの間質の修復が難しくなるのです。それについて説明しましょう。

毛細血管の修復にしろ、メサンギウム組織の修復にしろ、まず肉芽組織が作られる必要があり、その後、膠原線維により欠損組織が置換される必要があります。ところが肉芽組織を作ってくれるメサンギウム細胞は、上に述べたように、皮膚の結合組織に見られる線維芽細胞とよく似た性質を持っており、かつ間質(結合組織)を作るために膠原線維(コラーゲン)をも分泌できるのですが、と同時に、このメサンギウム細胞は皮膚の結合組織に見られるランゲルハンス細胞と呼ばれる免疫細胞や、かつ大食細胞に似ているところもあります。つまりメサンギウム細胞は糸球体の構造を維持しコラーゲン産生作用もあるので、メサンギウム間質の修復もできるのですが、一方では免疫の食作用もあるので、炎症を高めてしまうのです。だからこそ一度傷ついたメサンギウム間質は治りにくいのです。一言で言うと、メサンギウム細胞は化学物質を処理すると炎症を起こしやすく、同時に炎症の傷も治すという、相反する仕事を一人二役でやっているので傷が治りにくいのです。

それではなぜIgA腎症が細菌感染やウイルス感染の後に起こりやすいのでしょうか?さらに様々な食物タンパクがIgA腎症を起こしやすいといわれていますが、なぜでしょうか?なぜ腸管や喉頭や気管支の粘膜で作られるIgAが粘膜とは全く関係ない腎臓に沈着するのでしょうか?このふたつの疑問を解きましょう。

粘膜で扁桃炎を起こすほどのウイルスや細菌の感染症が続くと、IgA抗体も大量に作られます。その抗体の中に補体がひっつくIgA抗体も生まれます。もちろん補体と結びつくが、まだ補体がついていないIgA抗体もどんどん作られます。例えば、2次リンパ組織である扁桃などで作られたこのような抗体は、必ず扁桃の輸出リンパ管に乗って扁桃のリンパ節から出て、最後は血管に入っていきます。リンパ管に流れている液体をリンパといいます。

どのようにリンパが血管に集まるかを説明しましょう。まず左右の下半身から集められたリンパと上半身の左側から集められたリンパは、胸管というリンパ管に一緒に集められ、左鎖骨下静脈に入って血管に入り、心臓へ戻っていきます。上半身の右側から来たリンパは、右リンパ本管に入り、右鎖骨下静脈に合流して心臓に戻ります。心臓に血液と共に戻ったリンパは心臓から出て行く血液と一緒に全身に運ばれ、腎臓にも行きます。腎臓に入った栄養血管は糸球体のメサンギウムに到達すると、栄養と共に補体のついたIgAに結びついた細菌やウイルスの断片を吐き出し、これを待ち構えていたメサンギウム細胞や大食細胞が食べます。このような細菌やウイルスの断片が大量でなければ、メサンギウム細胞や大食細胞は簡単に処理して溶かしきってくれるのですが、あまりに多いと炎症が続きます。このときにたまたま血管から化学物質(ハプテン)と結びついたキャリアタンパクの複合体が一緒に運ばれてくると、ここでときに細菌やウイルスの断片(エピトープ)と似たハプテンキャリアタンパクとIgAとがひっつくことがあります。このIgAは本来は細菌やウイルスの抗原につくべきものですが、この抗原がたまたまハプテンキャリアタンパクの抗原と似ているときには、このIgAがハプテンキャリアタンパクに結びついてしまうのです。これを抗体のクロスリアクションといいます。さらに補体は血流や糸球体の間質にいつも大量にありますから、ここでまた補体のついていないIgAがハプテンキャリアタンパク結合体にひっつきます。この補体を大食細胞やメサンギウム細胞が食べだします。ところがこのような化学物質を貪食細胞は溶かし殺せるわけはないので、殺せない化学物質と共に細胞を傷害する活性酸素や様々な酵素と共にメサンギウムに吐き出してしまいます。ますますメサンギウム間質の炎症が起こり、近辺の毛細血管の内皮細胞にもさらに炎症が波及し、毛細血管の内皮細胞がつぶれていきます。つまり糸球体の毛細血管に穴が開いてしまい、ここからタンパクや血球やその他の血液成分が漏れ出し始めます。はじめに述べたように、糸球体の毛細血管は特別な毛細血管であり、輸入細動脈から輸出細動脈まで毛細血管が連続的につらなっているので、補修が難しく、いつまでも穴が閉じられなく、いつまでも尿にタンパクや潜血が見られ、腎炎と診断をつけられてしまうのです。

炎症が一時的に終われば毛細血管の傷だけが残るのですが、ときにはその傷も自分の免疫の修復力により自然に治ってしまうことがあります。この糸球体の毛細血管の傷が完全には治らない人は、いつまでも尿タンパクや尿潜血が見られ、無症候性持続性蛋白尿と診断されたり、IgA腎症と診断される人が出てくるのです。さらに何回も炎症が起こり続けると、この悪循環を繰り返し、本格的な慢性腎炎へと徐々になっていきます。タンパク尿が見られても、腎機能が正常の場合でも、過激な運動や過労などによりストレスがかかり続けると、自分でステロイドホルモンを出しすぎたり、間違った治療を知らず知らずにやっているうちに、免疫を抑制し続ける人がいます。ところが自分で作るステロイドホルモンは必ず出しすぎることがないように、脳は副腎皮質にステロイドホルモンを作らせないようにするので、ステロイドの量が大きく下がるたびごとに、ステロイドの離脱症状が生じ、免疫が上がるたびに糸球体のメサンギウム組織の炎症が起こり、それを知らず知らず繰り返しているうちに腎機能も悪化し、いつの間にか腎不全を起こし、最後は腎透析をせざるを得ない人もいるのです。あまりにもこの炎症が急激に起こったときには急性腎炎として診断されるのです。

この糸球体の毛細血管の長さを知りたいと思って調べたことがあるのですが、どの本にも記載されておりません。なぜ腎臓学者はこの長さに興味がないのでしょうか?一度壊れた糸球体は再生しないといわれていますが、実は毛細血管が修復されないためなのです。にかかわらず、診断のために腎生検という名で人為的に医者が糸球体を傷つけて良いものでしょうか?一度傷ついた糸球体は絶対治らないといわれているにもかかわらず、何のために腎生検をやるのでしょうか?この腎生検によって糸球体がさらに新たに深く傷ついてしまうということは許されるべきことではない人体実験のひとつであります。

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