なぜシリーズ バセドウ病 疾患解説

何故バセドウ病が起こるのでしょうか?更新2021.12.15

投稿日:2021年12月15日 更新日:

バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気です。甲状腺の機能が普通以上に高まってしまい、「甲状腺機能亢進症」になります。それでは甲状腺ホルモンが何故、過剰に分泌されるのかの答えを説明しましょう。甲状腺疾患の中でも特に多く、20~30代の若い女性に多いのです。男女比は、女性が男性の4倍以上で、圧倒的に女性に多い病気です。それは男尊女卑の男性優位の社会では女性が男性よりもストレスが強いからです。強いストレスがあると耐えるために視床下部でCRHホルモンを出して下垂体前葉を刺激してACTHを出させて最後はステロイドを副腎皮質に出させるのはみなさんご存じでしょう。このCRHホルモンを男性よりも出し過ぎ続けるとこのTSHというホルモンはThyroid stimulating hormoneの略で甲状腺刺激ホルモンでありACTHと同じく脳下垂体前葉から分泌され,甲状腺濾胞(ろほう)上皮細胞の膜受容体に結合して,甲状腺の機能を促進させ甲状腺ホルモンCRHホルモンが多ければ多いほどTSHというホルモンが過剰に産生されてしまうのです。

下図に正常な甲状腺ホルモンの分泌と調整の仕組みを示します。

①視床下部は、血液中に甲状腺ホルモンが少なくなると「甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)」を放出し、「下垂体へ甲状腺刺激ホルモン(TSH)」を分泌するように促します。また甲状腺ホルモンが直接下垂体にはたらいて、TSHの分泌をコントロールします。②脳下垂体でTSHが作られます。③TSHが甲状腺を刺激して甲状腺ホルモン(T3・T4)が合成され、必要な量が分泌されます。④甲状腺ホルモンは、いったん濾胞(ろほう)細胞という“貯蔵庫”に入り、そこから血液中に分泌され、血流に乗って全身の細胞に運ばれていきます。この際、ホルモン分泌量が調整され恒常性が保たれるのは、TSHの指示を受けて甲状腺が正常に調整するからです。正常な人では血中の甲状腺ホルモン濃度が低くなってきたときには、脳下垂体がそれを察知して、TSHをたくさん作るポジティブ・フィードバックを行い、甲状腺も刺激されて、甲状腺ホルモン(T3・T4)が多く作られます。逆に、正常な人では血中の甲状腺ホルモン濃度が高くなると、TSHの分泌は抑えられネガティブ・フィードバックが生じて、甲状腺で合成されるホルモン量も少なくなるのです。ところがいつまでも強いストレスが続いてCRHホルモンを出し過ぎ続けるとこのTSHというホルモンをいつまでも過剰に作ってしまいネガティブ・フィードバックが働かなくなるのです。その結果いつまでも甲状腺ホルモン(T3・T4)が合成されてしまい甲状腺機能亢進症のバセドーになってしまうのです。

それでは何故バセドウ病で眼球突出が起こるのでしょうか?

TSH受容体は甲状腺のみならずリンパ球、線維芽細胞、眼窩後部の脂肪細胞などにも発現しているのです。眼窩後部には支持組織があり特に目に前から強い外力が当たっても眼球が変形しないように目の奥にクッションとなる脂肪を作る脂肪細胞があります。この脂肪細胞にTSH受容体があると増えたTSHと結合するとこの脂肪細胞が増殖して眼球を前に押し出し眼球突出症となるのです。ストレスが減ってT3・T4が高くなる甲状腺機能亢進症がよくなっても眼球突出症が同じようによくならないのは増えた脂肪細胞は簡単には減らないからです。

脊椎関節炎とはなんでしょう。

椎関節、胸鎖関節や仙腸関節などの体軸関節(いわゆる体幹部の関節)と手指関節などの末梢関節(肩や股より先の関節)に炎症が生じる疾患です。若年男性に発症しやすいとされています。ヒト白血球抗原の一つであるHLA-B27という遺伝子のタイプに関連すると考えられています。脊椎関節炎(spondyloarthritis: SpA)は更に、強直性脊椎炎、反応性関節炎、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う関節炎、ぶどう膜炎関連脊椎関節炎などのタイプに分類されます。

炎症性腰背部痛(40歳以下で発症し、3ヶ月以上続き、安静で軽快せず運動でむしろ改善する腰痛・背部痛)が脊椎関節症に特徴的な症状の一つです。また手指や肩などの痛みや腫れ、こわばりといった症状も伴います。炎症のため発熱、倦怠感を伴うこともあります。更に、患者さんによっては尿道炎、乾癬、クローン病や潰瘍性大腸炎、ぶどう膜炎といった関節以外の症状がみられることもあります。進行すると関節の動きが悪くなり、背中が曲がらない、首が回りにくいといった症状を呈します。関節の柔軟性がなくなることなどから骨折をしやすくなります。

血液検査では、関節リウマチに特徴的なリウマチ因子や抗CCP抗体は陰性で、HLA-B27やCRPが陽性となることがあります。脊椎や仙腸関節、末梢関節などのレントゲンやMRI、関節エコー検査では、骨の変形や炎症がみられることがあります。進行すると靭帯の石灰化により背骨がまるで竹のようにくっついてしまいます。

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