疾患解説

ニキビとは?

投稿日:2018年8月17日 更新日:

ニキビはテストステロンという男性ホルモンが過剰に作られる二次性徴が始まる思春期において一番見られるものです。
思春期には、男女ともテストステロンという男性ホルモンが大量に作り始められることは、皆さんご存知でしょう。
女性ホルモンであるエストロゲンの原料も実はテストステロンであることを知っておいてください。この意味で、女性は男性から作られると言ってもよいのかもしれません。

テストステロンは思春期に大量に作られると脂腺、つまり脂肪を作る外分泌腺が急激に仕事を始めます。ところが、脂腺で作られた脂肪がまず毛穴に出るための管や、さらに皮質が毛穴から皮膚の表面に出る管に大量に溜まります。
脂肪が大好きなニキビ菌と言われるアクネ桿菌は元々脂腺に住み着いています。このニキビ桿菌が脂肪をどんどん食べて増殖し、好中球に見つけられ炎症が起こり、そこに表皮に常在している化膿性細菌が感染し、ニキビとなるのです。

ニキビが起こるには、毛包 (毛穴) が男性ホルモンであるテストステロンと常在菌であるアクネ桿菌(プロピオニイバクテリウム・アクネス桿菌)と皮脂の三つの要素が必要です。アクネ桿菌は元来、嫌気性菌であり、酸素を嫌って脂腺の奥深くに住んでいる常在菌ですから、人間の免疫はアクネ桿菌を敵とみなさず共存しています。ところが皮脂が増え、これを食べたアクネ桿菌がどんどん増えると免疫はアクネ桿菌を敵として認識し、殺しにかかります。この中心バッターが好中球であります。この好中球はアクネ桿菌を貪食して殺した後に様々な酵素や化学物質や活性酸素を吐き出し、皮膚の組織に障害を引き起こします。すると正常な皮膚が破れて、この傷に黄色ブドウ球菌や連鎖球菌が侵入し、これらの菌と戦った好中球は仕事を終えて、膿となっていわゆる炎症性のニキビ、つまり赤ニキビとして観察されるのです。

ニキビには、赤ニキビの他にもいろいろな種類のニキビがある事はご存知でしょう。ニキビは、既に述べたように、皮脂を分泌する毛穴が詰まるところから始まります。詰まった毛穴で排除されない皮脂や死んだ皮膚の細胞や、潰れた細胞から漏れ出た溶かしきれない角質や、メラニン色素や垢がたまると黒ニキビであり、時に面皰と呼ばれるものであります。
一方、白ニキビと呼ばれるものは、毛穴が閉じている状態でアクネ桿菌と好中球が戦っていない状態のニキビです。
もう少し赤ニキビが黒ニキビや白ニキビから生まれるプロセスをまとめながら、ニキビの成り立ちの全てについては卒業しておきましょう。黒ニキビ、白ニキビの状態から赤いニキビを作り出すのは、皮膚に非常に多く存在する皮膚常在菌のアクネ桿菌です。アクネ桿菌は、嫌気性の細菌のため酸素のない脂腺の奥に生息しています。皮脂を好むため、毛穴に皮脂がたくさん詰まったときに、この皮脂を栄養源として食べ続け、その結果、過剰に増殖します。増殖したアクネ桿菌は脂肪分解酵素のリパーゼを大量に分泌し、皮脂を遊離脂肪酸にして、ますます形を変えて、脂肪が溜まっていきます。また紫外線や空気中の酸素が皮脂をさらに過酸化脂質に変化させます。

皆さんは、活性酸素が人体に大きな害を与えることについてはご存じでしょうが、実は、この過酸化脂質によって起こる害は活性酸素より大きいのです!
活性酸素は、菌や異物を溶かす非常に強力なものですが、生体でできても、すぐに消失してしまいます。対して、過酸化脂質は、菌や異物・組織に対する反応はあまり強くありませんが、腎臓から排出されず、いつまでも身体の中にとどまり、徐々に組織や臓器や細胞の外側から内部に向ってじっくりと浸透して
いって、細胞を傷つけ破壊していくのです。従って、活性酸素の生体での実際の害は、活性酸素によるものによるよりも、むしろ活性酸素が脂質と反応してできた過酸化脂質が害を及ぼしているのです。つまり皮膚においても過酸化脂質になった皮脂が皮膚の組織を傷つけて、その結果炎症起こすことになるのです。このように、皮脂が遊離脂肪酸へ変化し、さらに酸化されて過酸化脂質になった結果、感染が起こらなくても炎症が起きて赤くなることがあるのです。
さらに増えたアクネ桿菌を殺した好中球の死骸が膿として溜まり黄色い部分ができるという症状も出ます。また、さらに進行すると、毛穴の奥深くまで組織が障害を受け、炎症が広がることもあります。そんなときには皮膚の奥深い部分を傷つけてしまうため、炎症が終わっても奥深い傷が治りきらなくて、いわゆるあばた(痘痕)となり、一生傷として残ってしまうのです。このような治癒のし方を瘢痕治癒といいます。

普通、思春期に出たニキビは、長くても一年前後で治ります。なぜならば、脂腺で思春期に大量に作られた脂質が一年足らずで毛孔につまらなくなるからです。つまり一年前後で毛孔の広さも拡大し、脂腺で作った大量の脂肪がスムースに皮膚に排泄することができるようになるからです。脂質が毛孔にたまらなくなると、アクネ桿菌が増殖することもできなくなり、自然にニキビもできなくなってしまうからです。

にもかかわらず、思春期が済んでからもニキビが作られ続ける人がいるのはなぜでしょう?それはアトピーの人です。アトピーがある人は、アトピーが治るまで、ニキビが治りきらないのです。なぜでしょう。ニキビは上で説明したように細菌を殺すための殺しのヘルパーT1 の世界の炎症であります。ところが、ひとたび殺しの炎症が起こると、その病巣に化学物質を排泄するアトピーの炎症に関わる細胞やサイトカインも、その炎症巣に集まってくるのです。この理由は後に詳しく書きます。とにかく、肥満細胞、好塩基球、好酸球、排泄に関わるアレルギーのヘルパーT2細胞、さらに IgE 抗体を作る B 細胞、さまざまなサイトカイン等が集まってきます。その炎症巣でアトピーとして免疫細胞と化学物質を排泄する戦いが続くとニキビ跡が修復されずに、その病巣で、いつまでも、いつまでもアトピー性皮膚炎が起こり続けるのです。しかしこの時起こるアトピー性皮膚炎の場合は、痒みがほとんど感じられないのはなぜでしょうか?それは、このニキビの傷痕から化学物質が肥満細胞、好塩基球、好酸球から作られたヒスタミンとともにすぐに排出されるため、このヒスタミンが近くの痒みを感じる神経の H1 レセプター(ヒスタミン1レセプター)に付くことがほとんどないために神経が痒みを感じる暇がないからです。

それでは、なぜ漢方の生薬がニキビをよくし、ニキビ跡を治す手伝いができるのでしょうか?まずニキビが生じているときは、まさに上で説明したようにTh1 の殺しの炎症の世界であるので、好中球の死骸が毛孔に溜まったり、炎症後の産物が蓄積したりします。これらを人間の免疫は排泄しようするのですが、その手助けをするのが漢方生薬であります。漢方生薬は非特異的な先天的免疫の働きを高めるのみならず、同時に非特異的な組織の障害の修復を助ける事もできるのです。つまり、人体に蓄積した炎症産物を排泄する仕事を高めることができるのです。以前どこかで書いたことがあるのですが、漢方は特異的な細菌やウイルスを免疫が殺す手助けをするよりも、非特異的な排泄の手助けをする方がはるかに上手なのです。つまり、漢方は敵を一つに決めた特化された抗体やキラーT 細胞を作るのではなく、先天的な非特異的な大食細胞や好中球などの働きを高めるのです。したがって、傷ついた結合組織は、特異性がないので、炎症後の結合組織の傷痕を修復するという後始末は、まさに非特異的であり、漢方生薬に含まれている苦い成分であるアルカロイドがやっていることなのです。

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