コラム なぜシリーズ 潰瘍性大腸炎・クローン病

ウェルシュ菌について更新2022.3.27

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ここでウェルシュ菌について詳しく述べていきましょう。読み続けていけば、実はクローン病に特徴的な敷石像やコッブル・ストーン像といわれる腸粘膜の所見の形成にウェルシュ菌が関与していることもお分かりになるでしょう。さらにウェルシュ菌がクローン病に特徴的な難治性の痔瘻を作っていることも追い追いお分かりになるでしょう。まず、どうして免疫がウェルシュ菌と戦うとガスが生じて、ガス性腹部膨満感が起こり、臭いガス(屁)が出るのか説明しましょう。腸管には200種類の細菌がトータルで200兆個もいるといわれています。近頃、腸管には1000種類の細菌が住んでいるという研究者もいます。そのような腸管の常在菌の中で悪玉菌の代表は、大腸菌とウェルシュ菌であります。ところが免疫が正常である時には、この大腸菌もウェルシュ菌も増えすぎることはないので、完全にコントロールされています。なぜ200兆個もいる細菌どうしが仲良く住み続けるのかについて考えると極めて難しいのでまた別の機会に書きます。

ところがCDやUCになる人は、本来IgEのアレルギーで排除すべき化学物質を、ストレスに耐えるために自分のステロイドホルモンを出しすぎて免疫を長期にわたって抑え続け、IgGにいわゆる逆クラススイッチした状態で膠原病であるCDやUCに仕立て上げます。逆クラススイッチというのは、実際にはIgGからIgEになりにくくなり、IgGの世界にとどまることです。言い換えると、殺す必要がない同じ化学物質に対して、殺しのIgGの武器で戦おうとするので炎症が起こるのです。免疫が落ちると、腸管の善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌は病原性がないので、いくら増えても免疫は戦う必要がないのですが、悪玉菌である大腸菌やウェルシュ菌は増えすぎると免疫に認識され、これを殺そうとして炎症が起きます。なぜ人体にとって異物である乳酸菌やビフィズス菌は、敵にならないかについて書くのはさらに難しいのでまたの機会に書きます。

しかもCDやUCが起こると腸管の粘膜が傷つき、糜爛や潰瘍が腸管粘膜の下層にまで及びます。つまりその傷口に大腸菌やウェルシュ菌が入り込みます。とりわけウェルシュ菌は既に化学物質と戦って炎症を起こして生じた糜爛や潰瘍の組織に入り込むと、この傷ついた組織で病原性を持っているこのウェルシュ菌が敵と認識され、好中球やマクロファージが戦いを始めます。粘膜下層は結合組織でできています。この結合組織の成分は膠原線維であります。この膠原線維組織は炎症が起こると線維がズタズタに切断されて、蜂の巣のような状態の炎症、つまり蜂窩織炎とか蜂巣炎という炎症像が見られます。この炎症は化学物質が毎日飲食物から供給され、かつウェルシュ菌が腸管内にいつまでも居続けるわけですから、いつまでもこの炎症が続き、修復されにくく、あちこちに生じたままになると、腸管の粘膜の上皮細胞がどんどんつぶれていきます。すると、上皮細胞どうしが分断され、細胞どうしが完全に結びつくことができず、隙間がところどころにできる状態となります。これを敷石状(コッブル・ストーン)とよぶのです。ちなみに「コッブル」というのは、玉石とか丸石とか敷石という意味があります。つまり潰瘍と炎症の後に正常な細胞が作られずに分断された結合組織の溝ができ、潰瘍や炎症を免れた正常な部分が盛り上がった敷石のように見えるのです。これがクローン病に特徴的な所見とされるコッブル・ストーン像とか敷石像などと呼ばれるものであります。潰瘍と炎症の後に、腸粘膜の上皮細胞がなくなったままで修復されない結合組織だけが残り、この溝になった部分が縦に繋がると縦走潰瘍に見えるのです。縦走潰瘍もクローン病の特徴的なX線や内視鏡での所見であります。以上の説明で、クローン病に特徴的な敷石像とか縦走潰瘍がどうしてできるのかが完全に理解されたことでしょう。ちなみに縦走潰瘍は英語で“longitudinalulcer”といいます。

さぁ、なぜウェルシュ菌が痔瘻を作るかという本題に対する答えを出してみせましょう。結論から言うと、ウェルシュ菌が産生する外毒素だけの作用で痔瘻は生じるといっても過言ではないのです。どうしてでしょうか?炎症は必ず結合組織で起こります。ところが筋肉には結合組織はほとんどないので、炎症のために筋肉にも穴が開くというのは絶対にないのです。つまり筋肉に穴が開くということは、穴の部分の筋肉が炎症なしに死んでしまったから生じたのです。この状態を筋壊死といいます。筋壊死が起こる時にガスが生じるので、別名ガス壊疽ともいうのです。まさにこのガス壊疽を起こしたのは、ガス壊疽を起こす細菌の代表であるクロストリジウム・パーフリンジェンスなのです。クロストリジウム・パーフリンジェンスは、別名ウェルシュ菌といいます。このウェルシュ菌が、瘻管を作るキッカケは直腸と肛門を境にするギザギザになった境界線である歯状線の真上にある肛門陰窩に入り込むことが必要です。さらに肛門括約筋や肛門挙筋を溶かすのは、クロストリジウム・パーフリンジェンスが産生する外毒素なのです。これを実証していきましょう。

さらに大切なのは、痔瘻でもⅠ型〜Ⅳ型の4つのタイプがあることを付け加えておきます。Ⅰ型は肛門括約筋を貫いていない痔瘻であります。従って皮下痔瘻とか粘膜下痔瘻などと呼ばれます。Ⅱ型は一番多いタイプで、80%を占めます。内肛門括約筋と外肛門括約筋の間を瘻管が走るタイプで、筋層を貫いていないのです。Ⅲ型は外肛門括約筋を貫いているタイプです。つまりウェルシュ菌の毒素によって一部筋壊死を起こしているタイプです。Ⅳ型は肛門挙筋を貫いて瘻管が走っています。従ってこのタイプもウェルシュ菌の毒素による筋壊死が一部起こっているのです。従って筋壊死が起こったとしても筋肉の細胞から漏れ出る筋原酵素といわれるクレアチンホスホキナーゼ(CPK)とかクレアチンキナーゼ(CK)という漏出酵素が少ないからであることも知っておいてください。

直腸と肛門の解剖は実は結構複雑なので、立体的な筋肉の走行を皆さんが正確にイメージすることは極めて難しいので、言葉の意味だけを理解しておいてください。

まず、ウェルシュ菌がどのような外毒素を出すのかの説明を始めていきましょう。ウェルシュ菌が産生する主な外毒素には、α(アルファ)、β(ベータ)、ε(イプシロン)、ι(イオタ)の4種類があります。この4つの外毒素の種類と割合によって、A型、B型、C型、D型、E型の5型の血清型の外毒素に分けることができます。

ここでウェルシュ菌を例にとって一般的に血清型というのはどういうものなのか説明しましょう。ウェルシュ菌は、人間にとってもウサギやヤギにとっても異物であります。これらの動物は異物が侵入すると、この異物であるウェルシュ菌を殺すために様々な抗体を作ります。上に述べたA型、B型、C型、D型、E型の5型の外毒素の血清型をどのようにして決めるのでしょうか?人間にウェルシュ菌を打ってしまうと、死んでしまうかもしれないのでウサギやヤギにウェルシュ菌を打ちます。すると、それに対して免疫が働き抗体ができます。その抗体の種類に基づいてウェルシュ菌の外毒素の種類を決めたものが血清型といわれるものです。なぜ血清という言葉を使うのでしょうか?それは動物の血液を採血して、そのまま試験の中に入れておくと、やがて血が固まり血液凝固が生じます。そのままさらに放置しておくと、凝固した血液が収縮して血餅となり、下に沈殿します。上に残った淡黄色の液体を血清といいます。その血清成分にウサギやヤギが細菌に対して作った抗体が含まれています。この抗体を分離したものが血清型(serotype)というのです。言い換えると、上に挙げた4つの外毒素はタンパクからできています。このタンパク抗原に対して、人や動物はそれぞれ抗体を作ることができるので、この抗体が人間や動物の血清中に存在するので、その抗体の種類に応じてウェルシュ菌の抗原の種類を5型に分けることができるのです。血清型というのは抗体の種類と考えておいてください。

もっと具体的に述べましょう。A型菌はα毒素、B型菌はα,β,ε毒素、C型菌はα,β毒素、D型菌はα,ε毒素、E型菌はα,ι(イオタ)毒素を産生しているのです。α毒素は、ガス壊疽の際の毒素で組織破壊作用があり、肺から吸引した場合、致命的な肺の障害を起こす恐れがあり、他の生物兵器同様、テロリストによる使用が懸念されています。β毒素は、壊死性腸炎の際の毒素で、α毒素と同じく組織破壊作用があります。ε毒素は、動物実験で神経毒性が見つかっています。ι(イオタ)毒素は細胞に対する毒性を示します。人の場合はA型、C型、D型の3つの外毒素の血清型を持っています。つまり人はA型、C型、D型の3つの外毒素に対して抗体を作っています。

ついでに述べておきますと、クロストリジウム・パーフリンジェンスの外毒素は、上に述べた4種類のα(アルファ)、β(ベータ)、ε(イプシロン)、ι(イオタ)の主要な毒素以外に、マイナーな外毒素があり、δ(デルタ)、θ(シータ)、κ(カッパー)、λ(ラムダ)、μ(ミュー)、ν(ニュー)の6種類があります。メジャーなα毒素と、マイナーなθ毒素のふたつが筋肉の壊死と、腸管で炎症反応を起こさせないようにしていることが分かっています。ウェルシュ菌の毒素も様々な作用を持っているのは本当に不思議ですね。にもかかわらず医学者や薬学者は免疫の働きを抑えて症状を取ることだけに関心があるのは全くもって許しがたいことですよね!さらにウェルシュ菌の毒素について勉強を続けましょう。

ウェルシュ菌が作り出すこのような外毒素は、様々な酵素の働きを持っているのです。まず溶血毒といわれるδ(デルタ)毒素は、血を溶かす酵素の働きを持っています。この酵素のためにUCやCDの患者さんの便に出血が見られることがあるのです。さらに結合組織の膠原線維を溶かすコラゲナーゼの働きを持っているのはκ(カッパー)毒素であります。様々なタンパクを溶かすプロテアーゼ(タンパク分解酵素)の働きを持っているのはλ(デルタ)毒素であります。人間のあらゆる結合組織に存在するヒアルロン酸を溶かすヒアルロニダーゼの働きを持っているのはμ(ミュー)毒素であります。さらに細胞のDNAを破壊するDNAアーゼ(DNアーゼともいいます)の働きを持っているのはν(ニュー)毒素であります。DNAアーゼは正式にはデオキシリボヌクレアーゼといって、腸管の細胞にある遺伝子であるDNAを溶かしてしまうのです。それでは、これらの毒素や毒素の持っている酵素の働きは何のためにウェルシュ菌は持っているのでしょうか?もちろん人体に入り込んだウェルシュ菌が増殖し、最後は腸管の筋肉を壊死させて、痔瘻を作るためであります。従って、痔瘻は別名、「クロストリジウム・パーフリンジェンス性筋壊死」と名付けるべきでありますが、その根拠をもっと具体的に示していきましょう。

皆さん、ご存知のように、本来化学物質は免疫を抑えない限りはIgEという武器を使ってアトピーとして皮膚から排除できるのです。赤ちゃんのアトピーがまさにその典型例であります。ところが受験勉強をはじめとする様々なストレスに耐えるために、あらゆる人間は競争の戦いに打ち勝つためのホルモンであるステロイドホルモンを大量に出し続けざるをえない社会で生きなければ、美味しい飯が食えないのです。元来、化学物質を異物として認識できる優れたMHCⅡの遺伝子の多様性を持って生まれた若き免疫と頭脳のエリートたちが、この化学物質をIgGを用いて腸管で戦い始めるとUCやCDになってしまうのです。真面目に頑張りすぎてステロイドを出せば出すほど、免疫はIgGからIgEへとクラススイッチができなくなります。一方では、免疫が落ちれば落ちるほど、腸管の様々な細菌も増え続けます。善玉菌である乳酸菌やビフィズス菌がいくら増えてもいいのですが、こっそり悪玉菌であるウェルシュ菌や大腸菌が増えていくのです。言うまでもなく、いくら猛勉強をしている若い受験生といえども睡眠が必要です。睡眠とともにステロイドホルモンが減り、従って夜間に免疫が戻ります。昼間にストレスに耐えて勉強し、かつステロイドを増やしている間に免疫を抑え、夜になって休むと免疫が戻るという生活を長期に続ければどうなるでしょうか?ご存知のように膠原病をはじめとするあらゆる病気は免疫を抑えている間は症状としては現れません。なぜならば化学物質やウェルシュ菌などの異物と戦うための免疫の力がなくなっているからです。免疫を落とし続ける限り、ウェルシュ菌は増え続ける一方です。

ところが、免疫が戻った時に初めて増えたウェルシュ菌を免疫は認識し、直腸に溜まった糞便に大量のウェルシュ菌がゴマンといることを認識するのです。この増えたウェルシュ菌は、上に述べた様々な外毒素や酵素をどんどん産生し続けます。ご存知のように腸管の中に生息している200種類の細菌は、お互いに増えないように牽制し合っています。従って免疫が落ちたからといって、ウェルシュ菌だけがどの細菌よりも増えやすくなっているのではありません。栄養体のウェルシュ菌は増殖し、芽胞の状態のウェルシュ菌は栄養体になるチャンスを虎視眈々とうかがっています。残念がらウェルシュ菌は鞭毛もないので自分で移動できないので、糞便と一緒に直腸まで自然に移動させられます。ところが、ひとたび化学物質と免疫が戦い始めると直腸に小さな創傷ができてしまいます。その創傷に入り込んだウェルシュ菌がさらに増殖することが可能になり、かつ芽胞が発芽しやすくなるのです。なぜならばクローン病により生じた直腸の組織にできた創傷、つまり炎症の傷の部分は酸素分圧が低下しているので、嫌気性菌であるウェルシュ菌にとっては、発芽しやすく、かつ増殖しやすくなっているのです。

どんどん酸素分圧の低い創傷の組織内でウェルシュ菌が増殖すると、上に述べた毒素や、さらに組織を破壊する酵素をますます作り続けます。これらの酵素によって直腸の結合組織は損傷を受け、外毒素はもっぱら筋組織の壊死を起こすのです。ますます組織の破壊のみならず直腸の筋肉の崩壊、つまり筋肉の壊死が深刻になっていきます。筋肉が壊死する時に二酸化炭素やメタンガスが大量に産生されます。どうして筋肉が壊死する時にガスが増えるかについては誰もまだ研究していませんが、おそらく筋肉は運動するために大量の酸素が必要であり、かつその結果大量の二酸化炭素が放出される組織であるので、筋肉が壊死すると、使われなかった酸素や処理されるべき二酸化炭素が大量にガスになるからだと推察されます。いずれにしろ、ウェルシュ菌の外毒素によって筋肉が崩壊し、死んでいく時に筋肉からガスが大量に産生されるので、ウェルシュ菌と免疫との戦いでガスが発生するので、ウェルシュ菌をガス壊疽菌ともいうのです。壊疽は壊死の一つであり、壊死とは体の組織が局部的に死んでしまうことです。壊疽とは筋肉が腐敗し融解し壊死になってしまった状態をいいます。従ってガス壊疽菌は別名、筋肉壊疽菌とか、筋肉ガス壊疽菌というべきです。

ウェルシュ菌の作り出す毒素は、毒素が持っている酵素の働きによって常に腸管の組織を破壊しようとします。とりわけα毒素とθ毒素は、腸管の最外層にある輪状筋や縦走筋の筋肉まで溶かして壊死させ、皮膚瘻孔(穴)までも作ってしまいます。瘻孔のある場所によって、肛門周囲の皮膚に痔瘻を作るのみならず、腸管と皮膚が接触できるどんな場所でも皮膚瘻を作ってしまうのです。つまり腸管の筋層が破られ、それが接触している筋肉の筋層も破ってしまい、肛門のまわりのみならず、腹部の皮膚瘻もできてしまうのです。さらに女性の場合は、このような炎症が直腸に近い膀胱や膣に及び、膀胱や膣の筋層も破って、膀胱瘻や膣瘻を引き起こすことがしばしばあるのです。長年、現代の間違った免疫を抑える治療をし続けていると、リバウンド(免疫の上昇)を繰り返し、ウェルシュ菌がますます増えて、その結果、毒素が増え筋肉に壊疽を起こし、最後には若い女性が膀胱瘻や膣瘻で悩まざるをえなくなる悲劇も生じてしまうのです。

それではこんな悲劇を避けるにはどうすればよいのでしょうか?クロストリジウム・パーフリンジェンス(ウェルシュ菌)を殺すことです。ウェルシュ菌を殺すことができる抗生物質には、ペニシリンとメトロニダゾールが一番効果的であります。皆さんはペニシリンのことはよくご存知ですが、メトロニダゾールは聞き初めでしょう。メトロニダゾールはフラジールという名前で売られています。クローン病や潰瘍性大腸炎で、ガスが腸管で大量に作られ、腹部膨満感で苦しむ患者さんがいます。しかもそのガスが特に臭いのです。このような時に、私はフラジールを使うと良くなると同時に痔瘻も少しは良くなることを知っています。今後は、痔瘻や皮膚瘻や膀胱瘻や膣瘻には、大量のフラジールを飲ませれば良くなると考えています。これまで男性のクローン病で、もちろん膣瘻はないのですが、膀胱瘻も見たことはありません。やはり圧倒的に女性が多いのですが、今後そのような女性の患者さんにはフラジールの長期投与を考えています。一方、腹部の皮膚瘻は、女性は見たことはないのですが、男性になりやすい印象があります。男性の皮膚瘻にもフラジールの長期投与をする予定です。なぜならば瘻孔は全てウェルシュ菌が作り出す毒素であることが分かったからです。今後は痔瘻の患者さんにも長期にわたってフラジールを投与すればもっと良くなると考えています。これほど大事なメトロニダゾールについて、以下にまとめて述べてみましょう。

メトロニダゾールは殺菌性で主に嫌気性菌およびある種の原虫に対して使用されます。ウェルシュ菌は嫌気性菌であるので、つまり酸素がなければ生きられるのですが、元来、酸素を嫌う絶対的嫌気性細菌ですから、使われるのです。経口メトロニダゾールは吸収が良好です。静脈内使用は、一般に経口的に治療できない患者に対して使われるべきでありますが、膀胱瘻や膣瘻や皮膚瘻が生じている重傷のクローン病の患者さんには使うべきです。メトロニダゾールは体液中に広く分布するので、酸素の少ない組織にいるウェルシュ菌にも効くのです。メトロニダゾールは肝臓で代謝され、主に尿中に排泄されますが、腎不全患者において排泄が低下することはないので、腎機能の悪い患者さんにも使えます。肝臓で代謝されるので、重篤な肝疾患患者においては量を減らしたほうがいいでしょう。メトロニダゾールは、全ての偏性嫌気性菌およびある種の寄生原虫(例,腟トリコモナス,赤痢アメーバ,ランブル鞭毛虫)に対して用いることができます。ウェルシュ菌はまさに偏性(絶対性)嫌気性菌の代表です。

それでは偏性嫌気性菌とは何でしょうか?英語の専門用語でobligate anaerobe(オブリゲート・アナエローブ)といいます。obligateは、「必須な」とか「絶対的な」という意味があります。anaerobeは嫌気性菌という意味です。従って、obligate anaerobeは絶対的嫌気性菌とか偏性嫌気性菌という意味です。なぜ偏性という日本語を用いるのでしょうか?実は、嫌気性菌には通性嫌気性菌もいます。この代表がバクテロイデス・フラジリスです。この細菌については後で詳しく書きますから名前だけ覚えておいてください。この通性という意味は、酸素があってもなくても増殖できるという意味です。つまり通性とは有酸素でも無酸素でも、どちらも通じて増殖できるという意味です。つまり酸素があってもなくても増殖できる細菌が通性菌でありますが、酸素があっても増殖できることから臨床の場では通性嫌気性菌を好気性菌と呼ぶことがあるのです。この通性に対して、偏りをもった嫌気性菌、つまり酸素がない時にのみ増殖できるという意味で偏性嫌気性菌と名付けたのです。つまり偏性嫌気性菌完全な無酸素状態でのみ生存しうる細菌のことをいいます。従ってウェルシュ菌は、元来、酸素のないところにしか住めないので、腸管の酸素の少ないところでひっそりと悪玉菌として生存しているだけなのです。それでは腸管の中で一番酸素の少ないところはどこでしょうか?糞便です。この糞便は直腸に一番多いものです。ここで増殖したウェルシュ菌が大量の外毒素を出して、肛門近くの直腸の筋肉を壊死させて痔瘻を起こしていることは既に書きました。

それではどうしてウェルシュ菌は大量のガスを発生させるのでしょうか?以前からガスは細菌の代謝、つまり細菌の増殖が激しい時に、大量の水素(H2)、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)が産生されることは分かっております。従ってウェルシュ菌が大量に増殖する時に、このようなガスが発生するのです。ところがどうして免疫が下がるとウェルシュ菌は増えるのでしょうか?いうまでもなく、免疫が落ちるとウェルシュ菌を殺しにくくなるからです。

メトロニダゾールは主として偏性嫌気性菌による感染症(例,腹腔内、骨盤、軟部組織、歯周、および歯原性の感染症、および肺膿瘍)に対して、しばしば他の抗菌薬と併用されます。メトロニダゾールは細菌性腟炎に対してよく使われてきました。まさに膣瘻においても使われるべき抗生物質であります。クローン病は、はじめに化学物質と腸管で戦うと腸管に傷がつき、この傷にウェルシュ菌が増殖するので、クローン病によく使われるのです。髄膜炎、脳膿瘍、心内膜炎および敗血症にも有効であることが分かっております。メトロニダゾールは腸手術後の感染予防としても使用されています。メトロニダゾールは、ヘリコバクター・ピロリによる消化性潰瘍に見られる感染症に対してもよく使われます。皆さんご存知のように、ヘリコバクター・ピロリは胃潰瘍の原因であります。

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