潰瘍性大腸炎・クローン病

なぜ炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎は膠原病の中で最も治りやすいのか?part.2 2018.9.28更新

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ちょうど「なぜ自己免疫疾患はないのか」というシリーズをpart.1〜part.3に分けて書いたように、「なぜ炎症性腸疾患であるクローン病と潰瘍性大腸炎は膠原病の中で最も治りやすいのか?」のpart.2を詳しく書きましょう。

クローン病も潰瘍性大腸炎も自己免疫疾患(膠原病)の一つでありますが、なぜこだわるのでしょうか?それは、10歳未満から10代、20代のはじめにかけて、一番この病気が多いからです。全世界に2000〜3000万人の若い患者さんがいます。私は、彼らが一生免疫を抑えるという間違った医療の犠牲者にされ、人生を医薬業界に潰されてしまうという悲劇に耐えきれないのです。

この病気に治療薬と称されて一番使われている薬はなんだと思いますか?ヒュミラとレミケードであります。ヒュミラは世界で一番使われているランキングでトップであり、なんと売上は2兆円を超えているのです。レミケードは1兆円を超えています。なぜこの薬が一番売れているのでしょうか?免疫は異物が入ってくると最初に人体の免疫にdanger signal(危険信号)として、その異物を大食細胞や樹状細胞(樹枝状細胞)が貪食することによってTNFαというサイトカインを作り出すのですが、この働きを完全に亡き者にできるからであります。しかもこれらの異物に対して、免疫を抑えない限りは最後にTGFβを自然に作りだし、無駄な戦いを止めるために自然後天的免疫寛容を起こして治る病気にもかかわらず、私以外の世界中の医者たちは声を合わせて「絶対に治らない」と宣告します。しかも束の間は症状は和らぐものですから、不審を抱きながらも医者のいいカモになってしまうのです。

まさにpart.2は、「自然後天的免疫寛容を起こすTGFβが、どのようにして化学物質とIgGの戦いに関わっているあらゆる免疫細胞の働きをストップすることができるか」ということを詳しく詳しく書きたいために新たに作成しようとしているのです。

まずpart.1で書いたように、炎症性腸疾患は、腸の免疫が化学物質をIgGで戦い、その戦いをIgEに自然にクラススイッチし、TgFβをまたもや自然に免疫に作らせて、最後はその化学物質に対して自然後天的免疫寛容を起こすことで治ってしまうことはみなさんご存知でしょう。またpart.1では、人体に入った化学物質の戦いでは、あらゆる組織の中で一番腸管においてクラススイッチも自然後天的免疫寛容も起こしやすいということを証明したのであります。

それではもっと詳しく、なぜ腸管において化学物質と人体の免疫とは共存しやすいのかを説明するには、腸の独自の免疫の働きを説明する必要があります。以前にも書いたように、MALTという言葉を覚えておられますか?MALTは、英語の“Mucosa-associated lymphoid tissue”の略称であり、発音は「モールト」と発音します。(英語の発音に興味のない医者たちはローマ字読みで「マルト」と読んでいますが、間違いです。だから英語を話せる外国人にバカにされてしまうのです。アッハッハ!)日本語では「粘膜関連リンパ組織」とも呼ばれ、孤立リンパ組織(孤立リンパ小節)からなる粘膜に分布した免疫機構です。孤立リンパ小節とはなんでしょうか?もう一度リンパ節について復習しておきましょう。

孤立リンパ小節は孤立性リンパ濾胞とも呼ばれます。英語で“isolated lymphoid follicle”と書きます。B細胞とリンパ小節に住み続けている濾胞樹状細胞(FDC)からなる濾胞構造を有する腸管リンパ組織のうち、濾胞構造が複数存在しています。大きなリンパ組織であるパイエル板とは異なり、濾胞構造が単独で存在している小さなリンパ組織.孤立性リンパ濾胞内にはリンパ節にある胚中心が認められます。小腸粘膜上に数多く存在し、パイエル板とは少し異なる分化や機能を持っていますが、基本的にはリンパ節と同じく、リンパ液に含まれる異物を掃除する中心的な役割を持っています。胃腸管、甲状腺、肺、性腺、目、肌などの体の様々な粘膜を持っている組織に分布します。T細胞、B細胞、形質細胞、マクロファージなどが集まっています。それぞれ粘膜上皮を突破して粘膜固有層にまでやってきた抗原やアレルゲンと戦います。この時に病気が出るのです。腸のMALTにはパイエル板にあるM細胞は、腸管内から抗原を採取してリンパ組織に運ぶ役割をも担うことは、私のサイトで勉強した人は覚えておられるでしょう。ここでMALTの働きを具体的に図示して、さらに詳しくパイエル板と腸管粘膜の免疫の働きを復習しておきましょう。

パイエル板(パイエルばん、Peyer’s patch)とは、小腸の空腸や回腸と言われる腸の上皮細胞のすぐ下の粘膜固有層のあちこちに存在しています。絨毛がない領域であります。絨毛は栄養を吸収する仕事をしていますね。哺乳類の免疫器官の1つです。小腸は十二指腸と空腸と回腸の3つの部分でできていて、パイエル板以外の部分には栄養を吸収するための絨毛がたくさん存在し、小腸の表面積が大きくなっているのはご存知ですね。栄養を吸収する仕事をしていないパイエル板には絨毛はありません。パイエル板は小腸の粘膜固有層にあり、1個のパイエル板の中に数十個から数百個のリンパ小節が集合しています。しかし、扁桃やリンパ節ほど器官としては分化しきってはいません。パイエル板にはリンパ球が多数集合しており、その中のB細胞の一部は抗体を産生するプラズマ細胞(形質細胞)に分化して、免疫グロブリンの中でも主としてIgAを産生しています。IgAは粘膜で産生され、体の中でIgGよりもはるかに多く産生されているのです。IgAはまさに粘膜を守るために産生される粘膜抗体ともいえます。ついでに言えば、扁桃はいわばパイエル板の咽喉頭バージョンといえます。

それではなぜIgGではなくてIgAが粘膜を守ることができるのでしょうか?それはIgGのしっぽであるFc部分には殺しの仕事をする大食細胞やNK細胞や好中球がつきますが、IgAのしっぽであるFc部分には大食細胞やNK細胞や好中球がつかないからです。つまりIgA抗体のYの形をした上部の両手には、IgGと同じように細菌やウイルスをひっつけているのですが、IgAはひっつけた後、このような敵を大便として排泄するだけであるからです。したがって、IgAは平和抗体という名前をつけるべきなのです。ちょうどそれはIgE が殺しの抗体になれないので排泄抗体と名付けたのと似ていますね。

なぜ腸管粘膜抗体であるIgAはFc部分に殺しをする仕事をしてくれる好中球や大食細胞やNK細胞がひっつかないように進化したのでしょうか?さらになぜ抗体のクラススイッチがあるのでしょうか?この2つの問いに対して答えを出しましょう。

まず腸管には1000種類の200兆という細菌がいます。人間の免疫が進化したのは、まさに細菌を殺すために免疫の働きを磨きに磨きをかけて作り上げたのが、人間が持つ生得の自然免疫と適応免疫と呼ばれる高等免疫であります。なぜ腸管の素晴らしい免疫が200兆の細菌と毎日戦いをしないのでしょうか?腸管にいる200兆の敵を毎日殺す戦いをし続けると炎症のために火事場となり、最後は腸管が死んでしまい、飲食物は吸収できなくなり、人類は死に果ててしまっているはずであるからですね。

腸管の免疫は腸管の病原体と戦うことをどのようにして避けたのでしょうか?と同時に、なぜ化学物質とIgGの戦いが最後はTGFβを作ることによって免疫寛容が起こるのかを、全体の流れと問いに対する答えだけを先に書いてしまいましょう。この流れを理解するだけでも一仕事になりますがついてきてください。全体の流れを説明した後、どのようにして2つの問いに対して私の答えが出てくるのかについては、後でもう一度腸管免疫の特殊性を詳しく述べる際に詳しく説明しましょう。

一つめの問いは「200兆の敵と戦わないのはなぜか」であります。答えは2つあります。一つ目の答えは、腸管の免疫は戦うIgGを戦わないIgAにクラススイッチしやすいことです。2つ目の答えは、腸管の免疫は日常的に免疫寛容を起こすTGFβを作っているので200兆の最近と共存しやすいからです。

次に本論の二つ目の問いに対する答えは、ちょっと詳しく述べます。クローン病や潰瘍性大腸炎は、本来は化学物質をIgGで戦うのをIgEにクラススイッチして最後はTGFβで免疫寛容を起こすというのが私の理論ですよね。私の今まで唱えてきた理論は、この理論を患者さんに実行させて、IBDを治す手伝いをしてきました。この理論の出発点は、殺しきれない化学物質を殺すためにIgGをいくら使っても処理できないので、IgGがどんどん増え続けるので、この大量に増えたIgGが腸管の粘膜下層に住んでいる肥満細胞が持っている数少ないIgGのレセプターとまず結びつきます。すると肥満細胞はこのレセプターからのシグナルを得てIL-4を作り始めます。この作られたIL-4が腸管の粘膜固有層のリンパ節にいるナイーブT細胞にひっつくとアレルギーを起こす手伝いをするTh2に変わり、さらにTh2自身がIL-4、IL-5、IL-10、IL-13を産生します。IL-4、IL-5、IL-10、IL-13などのインターロイキンは、殺しの戦いをヘルプするTh1を作らせないようにします。かつこのIL-4は今までIgGを作っていたB細胞にもひっついて、IgEにクラススイッチさせる遺伝子を発現させるAICD遺伝子(Activation-induced cytidine deaminase)をB細胞に発現させ、AICDタンパクを作らせます。さらにTh2が作るIL-5は、腸管の固有粘膜層になるリンパ節のT細胞やB細胞にIgAを作れと命令します。抗体がIgG(IgM)からIgEにクラススイッチしてしまうと、アレルギー性の腸炎にしたり、時にはアトピーに現れることがあります。アレルギー性の腸炎になったからといって、IgEとひっついた化学物質は便に出てしまうので症状はほとんど気づかれません。

最後は、IL-4とIL-10が腸管の粘膜固有層や腸間膜にあるリンパ節に存在しているナイーブT細胞をレギュラトリーT細胞(Treg)にさせて、FOXp3の遺伝子を発現させます。すると初めて免疫寛容を起こすTGFβが作られます。大量に作られたこのTGFβが、腸管全域に血管を通じて伝えられ、戦い始めた敵である化学物質(ハプテン)と結びついたキャリアタンパクの複合アレルゲンに対して生じたアレルギー反応を、全面的に活動停止にさせます。つまり、最初は炎症を起こす殺しのIgGの戦いを、炎症のない排泄のIgEの戦いに変え、最後はTGFβを作りカスケード的に活動していた全ての細胞にひっつくことによって、全ての活動停止を引き起こし、最後は自然後天的免疫寛容になって、自己免疫疾患もアレルギーと言われる病気の全ては自分の免疫で治すという理論ですね。

後でTGFβというシグナル因子がどのようにして全ての細胞にひっついて、全ての核にストップの号令がかかるかについて詳しく説明します。乞うご期待!

ところが腸管の粘膜の上皮細胞は、腸管にいる200兆の常在細菌と戦わないように、アプリオリに生まれつきTGFβを作っているものですから、もともと免疫寛容を起こしやすいという話がpart.1の結論でしたね。ところが、このTGFβは上に述べたようなカスケード的な免疫の働きの結果生まれたわけではないTGFβであり、あくまでも化学物質と共存するために作られたわけではないことを知っておいてください。つまり、たまたま現代文明が作った化学物質が何億という莫大な量になったために、世界中に若者たちが何千万人もIBDになったので、これらの化学物質と戦った結果、自然後天的免疫寛容を起こすために生まれたTGFβではないことを知ってください。腸管の粘膜表面だけで終わってしまう腸管の粘膜細胞だけが持っている本来的免疫寛容であって、敵と戦った後に生まれた自然後天的免疫寛容ではないのです。ところが、いずれにしろ化学物質との共存にはTGFβが必要ですから、私の上に述べた理論の結果生まれるTGFβと、腸管の上皮細胞が毎日作っている腸管の粘膜だけに行き渡るTGFβの2つのTGFβを利用できるので、IBDは治りやすいと言えるのです。しかも腸管での戦いであるIBDという病気の結果生まれる様々な炎症産物は便として体外に流れ去っていくので、IBDという病気はさらに治りやすいと言えるのです。

次回は腸管免疫の特殊性について詳しく詳しく述べていきます。

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