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4種類のワクチンについて 2020.6.10更新

投稿日:2020年6月9日 更新日:

ワクチンの種類には4種類あります。1)不活化ワクチン、2)弱毒化ワクチン(生ワクチン)、3)トキソイドワクチン、4)DNAキャリアワクチンの4種です。順番に説明しましょう。

1)不活化ワクチンとは

 まず不活化ワクチンについて詳しく述べましょう。不活化ワクチンは英語でinactivated vaccineと訳します。さらに不活化ワクチンは非活化ワクチンとも言われることがあり、英語でnon infectious vaccines ともいい、日本語で非感染性ワクチンと訳します。別名、死菌ワクチンともいいます。

 不活化ワクチンには、①ジフテリア、英語でdiphtheriaと書き、略してD、②百日せき、英語でpertussis、発音記号は、〔pərtʌ́sis〕であり、略してPで別名whooping coughです。③破傷風、英語でtetanusと書き、略してT、 ④ポリオ、英語でpoliomyelitis、日本語で急性灰白髄炎といい、不活化ワクチンは英語でinactivated poliovirus vaccine、略してIPVといいます。⑤日本脳炎、⑥インフルエンザ、⑦A型肝炎、⑧B型肝炎、⑨肺炎球菌、の9つがあります。

 ここで書いておきたいことは、不活化ワクチンでは終生免疫はつかないということです。なぜならば終生免疫がつくために必要なメモリーキラーT細胞が不活化ワクチンでは生まれないからです。メモリーT細胞が生まれるためには、樹状細胞に直接ウイルスが感染しなければなりませんが、不活化ワクチンは死んだウイルスですから、樹状細胞に感染しようがないからです。

 ちなみに四種混合ワクチンというものがあり、DとPとTとIPVを4つ混ぜて一度に投与します。 これをDPT-IPV四種混合ともいいます。さらにDとPとT を3つ混ぜて三種混合ワクチン(DPT)として一度に投与します。さらに二種混合ワクチンというものもあり、DとTを2つ混ぜて1度に投与します。これをDT二種混合と言います。

 不活化ワクチンは、病原性を無くした細菌やウイルスの一部を使います。生ワクチンに比べて免疫力がつきにくいので、何回かに分けて接種するのです。

 ポリオワクチンは、口から飲む(経口)生ワクチンと注射の不活化ワクチンの2種類があり、日本の定期接種には生ワクチン(経口)のポリオワクチンが指定されていましたが、2012年9月からは注射の不活化ポリオワクチンに切り替わりました。というのは、ご存知のように、現在でもポリオワクチンには不活化ワクチンと弱毒化ワクチンの2つがありますが、弱毒化ワクチンはいわゆる生ワクチンであるので、ポリオのウイルスが生きているので生ワクチンは感染する危険があるので、日本でもようやく2012年9月1日から不活化ワクチンに切り替わりました。

 それでは、不活化ワクチンの欠点は何かをもう一度復習してみましょう。2点あります。1つ目は、不活化ワクチンは、記憶ヘルパーT細胞と記憶B細胞を生み出すのですが、記憶キラーT細胞は作らない点が欠点です。なぜならば、不活化ワクチンは、APC(antigen presenting cell)に感染することができないからです。

 2つ目の欠点は、不活化ワクチンによってつく免疫は、一般的には生きた微生物によるワクチン(弱毒化ワクチン)ほど長く続かないという点です。

2)弱毒化ワクチン(生ワクチン)とは

 2つ目のワクチンは弱毒化ワクチン、英語でattenuated vaccineと訳します。attenuated というのは毒が薄められたという意味です。①麻しん(はしか)英語でmeaslesです。②風しん、英語でrubellaです、③水痘(みずほうそう)英語でchickenpoxです。ヒトに対して水痘(Varicella)と帯状疱疹(Zoster)を引き起こします。初感染時に水痘を引き起こします。治癒後の非活動期は神経細胞周囲の外套細胞に潜伏しており、ステロイドを投与して免疫力が低下するとウイルスが再び活性化し、帯状疱疹を引き起こします。したがって、潜伏してしまえばワクチンの効力はなくなるので、水疱瘡のワクチンはやる必要は全くありません。④BCG(結核)BCGはフランス語の略であり、Bacille de Calmette et Guérinと書き、日本語でカルメット・ゲラン桿菌と訳します。Bacille はフランス語で桿菌です。Calmetteは人の名前で、Guérinも人の名前です。⑤おたふくかぜ(mumps)、⑥ポリオ(poliomyelitis vaccine)の6つがあります。このポリオワクチンは、経口生ポリオワクチンと呼び、英語で訳すとlive oral poliomyelitis vaccineと書きます。ポリオの不活化ワクチンは非経口の注射で行いますが、弱毒化ワクチン、つまり生ワクチンの場合は注射で生きたワクチンを行うのは危険なので経口投与であります。

 ちなみにM(Measles、麻しん)とR(Rubella、風しん)の2種のワクチンを一度に投与する混合ワクチンを二種混合ワクチンのMRといいます。以前には麻疹、おたふくかぜ、風疹等のウイルス感染症は1度かかると2度はかからない(終生免疫)と考えられていました。同じように、生ワクチン接種の場合も免疫は終生続くと考えられていました。しかし、感染を防ぐだけの抗体が維持されるのは、麻疹がときどき流行して、麻疹のウイルスと接触しているためと考えられてきましたが、これは間違っています。ひとたび本物の麻疹ウイルスに接触した時に、メモリーキラーT細胞(Memory CTL)ができない限りは、細胞内にウイルスが感染した時には抗体は手も足も出ないのです。メモリーキラーT細胞(Memory CTL)が生まれるためには、樹状細胞に生きたウイルスそのものが感染しなければ生まれないということが最近わかりました。従って、ウイルスの生ワクチンは決して本当の生きたウイルスではないので、樹状細胞に直接感染することができないので、抗体ができてもメモリーキラーT細胞(Memory CTL)は生まれないので、生ワクチンで終生免疫は不可能です。麻しんウイルスは、人体に感染すれば抗体は作ることができるのです。

生ワクチンは、生きた病原体のウイルスや細菌が持っている病原性を弱めたものです。これを予防接種すると、その病気に自然にかかった状態とほぼ同じ抗体を作る免疫力がつきます。しかしながらメモリーキラーT細胞(Memory CTL)が生まれないことを知ってください。

 ポリオについてお話しましょう。かつて日本には多くのポリオ患者さんがいましたが、ポリオ生ワクチンの一斉投与が行われるようになってから、その数は急激に少なくなり、1981年以来日本ではポリオの患者さんの発生はありませんでした。ポリオの生ワクチンは、強毒化した病原性がほとんどないポリオウイルスを経口生ワクチンとして飲むことによって免疫ができ、野性ウイルスと呼ばれる自然のポリオウイルスの侵入が防止できます。しかし生ワクチンの欠点として、極めて稀に、ワクチンを飲んだ人に自然のポリオと同じ様な症状が現れてしまうことがあります。これがポリオワクチンによる麻痺例で、日本では約440万回接種あたり1件、数年間に1件生じました。またポリオのワクチンを飲んだ人の便からは、弱毒のワクチンウイルスが、1~2カ月間排泄され続けますが、これがポリオの免疫のない人の口から入ってしまうことがあります。ワクチンを飲んだ人の便から現れる弱毒のウイルスが、ポリオウイルスの遺伝子が変異し毒性が強くなる変異株となっていることもあります。このように生ワクチンは、時に副作用が出るので、日本でもようやく2012年9月1日から新しいワクチンである不活化ワクチンに切り替わったのです。

不活化ワクチンと(経口)生ワクチンの違いについてもう少し詳しく説明しましょう。不活性化ワクチンは血清中の抗体は誘導できますが、不活化ワクチンはタンパクなので腸管で消化されてしまうので腸管免疫を誘導できません。このため、ポリオウイルス感染による急性弛緩性麻痺発症予防は可能ですが、経口生ポリオワクチンより流行を阻止する力は劣っています。高等免疫のメモリーヘルパーT細胞や、メモリーB細胞はできやすいのですが、メモリーキラーT細胞ができにくいので、その結果免疫持続期間も短期的であり、一生免疫を持続させることができません。そのために定期的な接種が必要で、接種費用が高くなります。

一方、経口生ポリオワクチンは、咽頭と腸管での局所免疫と全身免疫の両者を誘導し、3つの高等免疫のうち2つのメモリーヘルパーT細胞や、メモリーB細胞ができて継続して抗体は作れますが、既に説明したようにメモリーキラーT細胞ができません。新新型コロナウイルスでも言われているように、集団免疫、英語でherd immunityや、herd effectや、community immunityや、population immunityや、social immunityなどといいますが、このherd immunityによるポリオ根絶には経口生ポリオワクチンが優れていますが、腸管で増殖したワクチン株ウイルスは便中に排泄され、周囲の人に感染し、周囲の感染を繰り返す中で強毒化する危険性があります。ちなみにherdは集団という意味です。

ポリオの不活化ワクチンと経口生ポリオワクチンのいずれにしろ、神経細胞に侵入したポリオウイルスに対して、最高の免疫の働きであるメモリーキラーT細胞ができないので、副作用のない安全な不活化ワクチンの方が良いのに決まっています。だからこそ、2012年に日本の厚労省は、ポリオのワクチンは不活化ワクチンに統一したのです。新新型コロナウイルスに関しては、スウェーデンが実践しているようですが、3つのウイルスの遺伝子を組み入れた人工コロナウイルスではherd immunityは絶対に起こり得ません。感染の第一関門である3密を規制しないスウェーデンは、新新型コロナウイルスの患者がさらに増え、死者数も増えていくでしょう。アメリカの患者数や死者数が増え続けているのは、移動の規制をしないでherd immunity(集団免疫)を狙っているからかもしれません。

弱毒化ウイルスワクチンの利点は2点あります。1つは、大抵は不活化ワクチンよりも長続きする免疫を与えることができます。なぜならば、弱いけれども生きたワクチンを投与された宿主で、ある程度複製できるのでそれによって自然感染を模倣できる可能性があるからです。

さらに大事な利点の2つ目は、弱毒化ウイルスワクチンは、不活化ワクチンと違って記憶キラーT細胞を生み出すことができる点です。なぜならば、生きた弱毒化ウイルスワクチンは、APCに感染することができ、免疫を刺激してCTLを生み出し、細胞に感染したウイルスを殺すことができるからです。しかしながら、弱毒化ウイルスワクチンは、感染性の生きたウイルスを含んでいるので安全性に問題があるのです。ワクチンを投与された人が接触した幾人かに感染するほど十分なウイルスが増えてしまうことがあります。感染した接触者が健康な人であれば、免疫学者がいうところの集団免疫を生み出されたならば利点になりますが、免疫の落ちている人に感染すると生きた弱毒化ウイルスを抑制することができなくなり、本当の病気になる可能性があるのが欠点です。

とにかく、弱毒化ウイルスワクチンというのは、ウイルスが死んでいるのではなく弱まっているだけなので、免疫抑制が強い人にとってはこの弱毒化ワクチンは重大な結果をもたらすことがあるのです。

)集団免疫(Herd Immunity)

コロナウイルスでも、新聞紙上で集団免疫(Herd Immunity)という専門用語を目にしたことがありません?スウェーデンでは三密規制がありません。コロナ患者は、非常に多く死ぬ人も多いのですが、全ての人がコロナに感染すれば最後は集団免疫(Herd Immunity)が付くからいずれ感染がなくなるという考え方です。集団免疫(Herd Immunity)とは何でしょう?

集団免疫(しゅうだんめんえき、英語で herd immunity, herd effect, community immunity, population immunity, social immunity)とは、ある感染症に対して集団の大部分が免疫を持っていると、免疫を持たない人が新たに感染する度合いが少ないという意味で、未感染の一般大衆を保護する手段となる考え方です。多数の人々が免疫を持っている集団では感染の連鎖が断ち切られる可能性が高く、病気の拡大は収まるか緩やかなものとなります。あるコミュニティにおいて免疫を持っている人の割合が高ければ高いほど、免疫を持たない人が感染者と接触する可能性は低くなるので、いつの間にか感染が止まるというわけです。今、コロナ禍の真っ只中で世界でスウェーデンが唯一実行している集団免疫(Herd Immunity)が果たして成功するかどうかはやってみなければわかりません。私は絶対に失敗すると考えています。なぜならば、新新型コロナウイルスのワクチンができないということは、一度コロナウイルスに罹れば終生免疫ができないのと同義語です。ちょうどヘルペスウイルスと同じで、ヘルペスウイルスに対するワクチンができないのは、一度ヘルペスに罹ったからと言って永遠に再感染とか再活性化がないといえないからです。だからこそ、すでに述べたように水疱瘡のワクチンは意味がないのです。ヘルペスは、死ぬ病気ではないのですが、新新型コロナウイルスは死ぬことがあるのでこれからの人類の最大の敵となり続けるでしょう。今後、コロナウイルスに罹らないためには3密をさける必要が永遠にあるでしょう。

3)トキソイドワクチンとは

3つ目がトキソイドワクチンで不活化ワクチンとして分類されることもあります。なぜならば、もともと病原体が作り出す毒素(トキシン)は生命体でないので、その毒素を弱くしようが生きていないワクチンですから、不活化ワクチンとして分類していいのです。①ジフテリア、②破傷風の2種です。トキソイドは、細菌の産生する毒素(トキシン)を取り出し、免疫を作らせる能力は持っていますが毒性は無いようにしたものです。トキソイドとは、外毒素をホルマリンなどで処理することにより、免疫原性を有した状態でその毒性を消失させたものです。ホルマリンは、ホルムアルデヒドの水溶液です。トキソイドは類毒素と訳されます。不活化ワクチンの一種であるとされることもありますが、不活化ワクチンは、病原体そのものを対象とするのに対して、トキソイドは細菌の外毒素を対象とするものであり、両者は異なる概念であるとされていますが、免疫が認識するのは異物であるタンパクですから、両者が異なる概念であるとは言い過ぎです。トキソイドワクチンは既に述べたように、破傷風、ジフテリアの予防に利用されます。もちろん毒素が樹状細胞に感染することはないので、メモリーキラーT細胞が生まれるはずもないし、生まれる必要もないのです。

 ここから4つ目のDNAキャリアワクチンについて述べます。

アンジェスの新新型コロナウイルスに対するDNAキャリアワクチンとはなんでしょうか?

阪大の森下教授のアンジェスが開発しつつある、新新型コロナウイルス表面に発現するスパイク(英語でspike、略してS)タンパク質遺伝子をコードしたDNAワクチンです。コロナのDNAワクチンは、対象とするコロナウイルスの病原体のスパイクタンパク質をコードする環状DNA(プラスミド)の接種で病原体タンパク質を体内で生産し、液性免疫や細胞性免疫が誘導されることで、新新型コロナウイルスに感染しにくくなるほか、重症化が抑制されるなどの効果が期待されていますが、頭のいい人は完全なワクチンとしては必ず失敗することはお分かりでしょう。

 コロナウイルスはエンベロープを持つウイルスであり、人体の細胞に感染するのは、コロナ粒子が細胞の受容体に結合し、ウイルスのエンベロープと細胞膜と融合することです。コロナウイルススパイク(S)蛋白は、“王冠(コロナ)様”突起(スパイク)を持つので、コロナウイルスと名づけられたのです。スパイクは最外部が球状で,その下の棒状部位でウイルスのエンベロープに埋め込まれています。

 DNAキャリアワクチンは、SARS-CoV2のスパイク蛋白に対するワクチンであるので弱毒化ワクチンと異なり、病原性がないなどの特徴があります。「大腸菌を用いて製造するため、極めて短期間で供給ができる。今回のような緊急事態にはDNAワクチンは非常に適している」と有用性を強調しています。アンジェスの報道によれば、DNA ワクチンは、生きた危険なSARS-CoV2の病原体を一切使用せず、ただスパイク蛋白(Sタンパク)を作らせるだけですから、安全かつ短期間で製造できる特徴があります。コロナウイルスという病原体のタンパク質をコードする環状 DNA(プラスミド)を接種することで、病原体のDNAがコードするタンパク質を体内で生産し、コロナウイルスに対する免疫を付与します。弱毒化ワクチンとは異なり、病原性を全く持たないため、安全です。とアンジェスは報道しています。念のために、私が名づけた新新型コロナウイルスはSARS-CoV2とかCOVID-19と名づけられていることを確認してください。

しかしこの論理には疑問があります。なぜならば、免疫は病原体全体のタンパク質に対して異物と認識し、様々な症状を起こし、病気を生み出します。従って、DNAワクチンを投与することによって作られたタンパク質に対して、人体がどのタンパク質の抗原に対してヘルパーT細胞や、Bリンパ球や、キラーT細胞が免疫記憶細胞となるかが全くわかりません。ましてやキラーT細胞が永久免疫を生み出すメモリーキラーT細胞(memory CTL)は、APCである樹状細胞(dendritic cell)に直接新新型コロナウイルス(SARS-CoV2)が感染しないと絶対に生まれないので、必ず失敗するでしょう。DNAワクチンは樹状細胞に果たして感染してくれるでしょうか?それがわかるまではアンジェスの株価は上がり続けるでしょう。アッハッハ!

さらに森下教授のDNAワクチンは一つ疑問が残ります。新新型コロナウイルス(SARS-CoV2)は全てRNAが遺伝子です。にもかかわらず、彼はDNAワクチンと言い続けるのでしょうか?それを説明しましょう。

アンジェスをはじめ前述した企業が手掛けているのは、メッセンジャーRNAやDNAなどの遺伝情報を基に、体内で抗原となるたんぱく質を作らせる新しいタイプのワクチンです。新型コロナウイルスが持つたんぱく質に対する免疫を誘導して感染を抑えます。これまで作られたRNAワクチンやDNAワクチンで承認されたものは未だかつて1つもありません。伝統的なワクチン、例えばインフルエンザワクチンの場合、鶏卵の中でウイルスを増殖させたあと、増殖能力を失わせる処理をして製造しています。遺伝子組み換え技術によって、ウイルスが持つ抗原のたんぱく質を大量生産したワクチンも、既に様々な感染症に対して承認されています。これらはDNAキャリアワクチンではありません。一方ただ、たんぱく質の設計図であるRNAやDNAから成るワクチンは、以前から研究されてはきましたが、まだ承認されてはいませんでした。このため、アンジェスが作ろうとしているこれらのワクチンについては、有効性もさることながら、安全性についてより慎重に検討する必要があります。理屈の上では安全性が高いと考えられても、多数の人に使用した場合に、予期しない副反応と呼ばれる症状が現れる可能性は否定できません。それでなくとも健康な人に予防のために投与するワクチンに対しては、治療薬よりも安全性に対する要求は厳しいのは言うまでもありません。緊急事態ですから、COVID-19(SARS-CoV2)に対する薬は効果性や安全性を無視して大歓迎である風潮がありますが、十分注意すべきです。最後に、なぜCOVID-19に対するワクチンができないのか論証します。

環状DNAであるプラスミドにワクチンを作る上で必要な遺伝子を加え、かつ新新型コロナウイルス(SARS-CoV2)はRNAですから、RNAをDNAに変えて大腸菌に導入するのです。従って、本来は新新型コロナウイルスはRNAウイルスであるのですが、これをDNAに変えてDNAに導入するので、元のRNAはDNAに変えられてしまっているので、DNAキャリアタンパクと言ってもおかしくはないのです。この大腸菌を培養することで、このDNA遺伝子を含んだプラスミドを大量に得ることができます。

このようにRNAをDNAに変えて新新型コロナウイルスのDNAワクチンを作らせるプラスミドのDNAに新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の表面にあるタンパク質の一部(Sタンパク)を作り出すような遺伝子を組み込み、このプラスミドを体内に投与します。意図した遺伝子を組み込んだプラスミドDNAを体内に投与することによって、体内で治療に必要とされるタンパク質物質(抗原)が作られます。体内で目的のタンパク質(Sタンパク抗原)が作られると、次に免疫システムはそのSタンパク質を異物として認識し排除対象として免疫が戦いを始めます。具体的には、Sタンパクを認識するヘルパーT細胞や抗体を作るB細胞が生まれますが、その結果、ウイルスが体内に侵入してくると、ウイルスの表面にあるタンパク質を目印にして排除されるようになると言う訳です。ところが、あくまでもSタンパク抗原は単なる1つのタンパクに過ぎないので、このSタンパク抗原は人体の樹状細胞に感染することができないのでメモリーキラーT細胞を生み出すことはできません。SARS-CoV2が新たに細胞に感染してしまうと、メモリーキラーT細胞がないので感染が広がるばかりになります。だからこそ、アンジェスのDNAキャリアワクチンは絶対に感染を防ぐワクチンにならないので、絶対に失敗すると主張しているのです。

今までの不活化ワクチンや生ワクチンと比べて、DNAワクチンは大腸菌を増殖させればプラスミドDNAをいくらでも増やせるので、簡単に増産することが可能です。値段が比較的安いというのも一つの特徴です。また、ウイルスそのものを使うのではなく、ウイルスの遺伝情報をプラスミドに挿入して利用しているため、ウイルスのゲノム情報が公開されればすぐに開発に着手できる上に、DNAそのものは核酸ですから、核酸は極めて安全ですから、核酸の副作用については何も心配することはないのですが、上で説明した通り、不活化ワクチンレベルの効果がありそうですが、絶対的で完璧なワクチンには成り得ないのです。

新型コロナウイルスのDNAワクチンとして、アメリカのバイオテクノロジー企業のモデルナが新型コロナウイルスのDNAデータが公開されてから42日でRNAワクチン(DNAワクチンと似たタイプのワクチン)を作ることもできたのです。もちろん言うまでもなく、RNAそのもののキャリアワクチンを作ることもできるのです。アンジェスは3月5日に開発を発表して、3月24日にはDNAワクチンが完成させました。20日間で作れたのは世界最速の新新型コロナウイルスのDNAキャリアワクチンだったのです。

左に大腸菌とベクターであるプラスミド(遺伝子の運び屋)の関係図と、1個の大腸菌の細胞内のプラスミドの一部(濃い赤色)になっているコロナウイルスのSタンパク遺伝子によって作られるタンパク質の絵図を掲載しておきます。

  ベクター(vector) とは、プラスミドそのものであると理解して下さい。新新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の遺伝物質を大腸菌の細胞に人為的に運ぶために利用される遺伝子であるDNAやRNA分子です。大腸菌の大量培養により、大腸菌が分裂するたびごとに増殖し、新新型コロナウイルス(COVID-19)の遺伝子やDNA配列やRNA配列を増やし、目的のタンパク質をも増やすことができるのです。プラスミドとは大腸菌の細胞内で複製され、大腸菌が分裂する度ごとに娘細胞に分配される大腸菌の染色体以外のDNA分子の総称です。大腸菌の核様体のDNAとは独立して自律的に複製を行うことができ、一般に二本鎖環状構造をとります。大腸菌は原核生物ですから、核がないので核様態のDNAと表現するのです。

左にベクターであるプラスミドの赤色と青色の二本鎖環状構造を図示しておきます。

キャリアワクチンとは何か?

キャリアワクチンの概念は素人には極めて難しいのでもう一度復習しましょう。今をときめく遺伝子工学の手法を用いて、病気を起こさないウイルスやプラスミドの中に新新型コロナウイルス(SARS-CoV2)の遺伝子を導入することによってワクチン製剤を作れるようになりました。このようにウイルスを遺伝子工学的に処理することによって人間の細胞の中に病原性のあるウイルスの遺伝子を運ばせることもできるのです。このような考え方は1990年代に生まれたのですが、すぐ上で述べたように、このような細胞(大腸菌)は、大腸菌自身のタンパクに加えて、遺伝子を挿入された病原微生物(新新型コロナウイルス)などを作り出すのです。その結果、キャリアワクチンを人体が取り込むと本当の病原体(新新型コロナウイルス)による未来の感染に対して守ってくれるメモリーキラーT細胞を生み出すはずなのです。ところが、SARS-CoV2そのもの全体を作りだすと正に新たなる感染が起こるので、SARS-CoV2の一部のRNAを運ばせるのです。この時、抗体は作れることができますが、細胞に入り込んだウイルスを細胞もろとも殺すメモリーキラーT細胞は作れないのです。なぜならば、何回も繰り返しますが大事なことは、キャリアワクチンが運ぶ一部のRNAやDNAが作り出すタンパクに対する抗体を作る可能性があるので、免疫がそのタンパクに対しては付くのウイルスが作り出す病気を引き起こす可能性が減ります。なぜならば、病原体(新新型コロナウイルス)の多くの遺伝子の中でウイルスが細胞に侵入するために絶対に必要な、ほんの少しの遺伝子だけがキャリアワクチンによって運ばれ、ウイルスが細胞に侵入する可能性が減るからです。ところが、一度ウイルスが細胞に侵入していまうとメモリーキラーT細胞ができないので、完璧なワクチンとは言えないのです。

この方法は、特にAIDSのワクチンを作るために用いるには完璧なものだと思われ、このタイプのワクチンが今なお試験されつつありますが、残念ながらこれまで認められたキャリアワクチンは一つもありません。

アンジェスは、このような難関に挑戦しているのですが、AIDSのワクチンを作る以上に難しい3つの遺伝子が組み入れられた新新型コロナウイルスに対するキャリアワクチンは、果たして阪大の森下先生は成功するでしょうか?無理です。

果たしてAIDSのワクチンが作れるでしょうか?絶対に無理です。

効果的なAIDSのワクチンを作るためには、メモリーキラーT細胞をワクチンに作らせなければなりません。したがって、他のウイルスや病原体に対して作られてきた不活化ワクチンはAIDSのウイルスに対しては全く役に立ちません。したがって、AIDS発症以来、AIDSウイルスに対する弱毒化ワクチンが、メモリーCTLを生み出すであろうワクチンをAIDSウイルスを弱毒化することによって用いられてきましたが、全て失敗しました。その失敗の理由の一つは、極めて高頻度な変異を行うので、最初に作らえらたワクチンが効かなくなることと、かつ、弱毒化ワクチンを一般の人に予防的に接種すると、本当のAIDSに罹り致命的になることがあるのです。したがって、AIDSウイルスの弱毒化ワクチンは一般の人に用いることができないのです。一方、キャリアワクチンは、メモリーCTLを生み出しAIDSウイルスの感染のリスクを、キャリアワクチンを受けた人に生じることがないかもしれませんが、今までのところ、このキャリアワクチンの戦略は強力ですが、同時に安全な免疫反応を生み出すワクチンは未だかつて認められたことはないのです。何回も繰り返すようですが、安全なキャリアワクチンがHIVに特異的なCTLを生み出すように設計されたとしても、AIDSウイルスの高頻度の変異率がそのようなCTLを生み出すことを難しくしています。HIVに感染した患者は、単にAIDSウイルスを持っているのみならず、少し遺伝子が異なった非常に多くの種類のHIVを体内に保持しているのです。したがって、このようなHIVの人が別の人にHIVを感染させると、この人は単に1種類の遺伝子を持ったAIDSウイルスに感染したわけではなく、違った種類のAIDSのウイルスの一団に感染していることになります。したがって、AIDSウイルスのワクチンを作るために使われる、ある1種類のHIVウイルスに対して感染を防いでくれるワクチンによってメモリーT細胞が生み出されたとしても、実際に感染を起こしている様々な変異型のHIVに感染してしまっているので1種類のワクチンだけでは無意味なのです。AIDSウイルスが実際に急速に変異してしまう能力を持ち続ける限りは、効果的なAIDSウイルスのワクチンを作るのに最大の障壁になってしまうのです。

今回のSARS-CoV2は、アメリカが中国に対してAIDSとエボラ出血熱とインフルエンザウイルスの3種類の遺伝子を組み込んでバラまいたと仄めかしているように、COVID-19コロナウイルスは様々な種類の遺伝子から成り立っているので、単一のワクチンだけでは全く意味がないのです。地球誕生以来、世界で初めての人工ウイルスであるSARS-CoV2に対するワクチンを作ることはAIDSウイルスのワクチンを作る以上になお一層難しいのです。

今なお、世界中で毎年100万人も殺しているマラリアや毎年300万人も亡くなっている結核に対しても、数十年以上に渡るこれらの病気に対するワクチン作りの努力も今なお成果を結んでいません。さらに、地球上の3分の1の人たちが単純ヘルペス(HSV)に感染していますが、HSVに対するワクチンさえ出来ていません。帯状疱疹(VZV)のワクチンが各国で接種されていますが、実はこれは既に述べように本当のワクチンではありません。なぜならば、VZVに一度罹ってもアトピーなどでステロイドなどを長期に用いて免疫を抑えれば、一度VZVに罹ったりあるいはVZVのワクチンを接種したにもかかわらず再感染のみならず、再活性化も常に生じているからであります。そんなVZVのワクチンをワクチンと呼べるのでしょうか?しかも、同じ仲間であるHSVに対してはワクチンができなくて、VZVに対してはワクチンができるという根拠が全く示されていないのです。

なぜワクチンにアジュバントが必要なのか?アジュバントとハプテンの関係

病原性のあるウイルスのような微生物の襲撃をまねるワクチンを作るためには、免疫系の樹状細胞がそのワクチンを異物であり、かつ危険なものとしてみなされなければなりません。ところが、たった一つとか数種類のタンパクからしか作られていない1種類のワクチンが、樹状細胞に危険なタンパクであると知らせることは実は結構難しいのです。実際、人体にとって異物であるというタンパクが人間に注射されるとしても、免疫系はそれを無視することが多いのです。なぜならば、その異物であるタンパクは免疫系の樹状細胞が危険だと認識しないことが度々あるからです。したがって、確実にワクチンが危険な敵であると樹状細胞が認識するためには、ワクチンをアジュバントと結合させることが必ず行われています。アジュバントというのは、すでに述べましたがラテン語で「手助け」という意味があり、英語でAdjuvantと書き、ワクチンと一緒に投与して、危険な異物である物質を免疫に強く認識させるために使用されます。ほとんどあらゆるワクチンで用いられるアジュバントは、アルミニウム水酸化物、英語でAluminum hydroxideであり、略してアラム(Amnu)が用いられており、重要な危険信号を免疫系の樹状細胞に伝えているのです。ワクチンに添加するアジュバントの働きの1つは、投与されなければならないワクチンの量を減らすことできることです。

アレルギーの時にハプテンという化学物資とタンパクが結びついてアレルゲンとなり、アレルギーを引き起こすのは皆さんご存知でしょう。アジュバントは、ハプテンと同じ仕事をしているのです。

キャリアワクチンの小史

言うまでもなく、ワクチン接種は医学史の中で人類を病原菌から救った最も成功した免疫学の華です。DNAワクチンは1990年代初頭から開発されている新しいワクチンです。DNAワクチンは有望ですが、既に述べたように、これまでに承認されたヒトDNAワクチンはありません。最高のDNAワクチンやRNAワクチンの輸送システムは、大腸菌などの生きた菌をベクター(プラスミド)として使用しています。生菌ベクターは、免疫システムによって認識されるその自然な特性により、強力な免疫応答を誘発します。大腸菌ベクターによって使用される投与経路は、粘膜経路を通じてです。乳酸菌も、生菌ベクターとして最もよく使われる細菌の一つです。多数の研究により、生きた細菌ベクターがDNAワクチンを提供する有望な候補であることが示されました。

プラスミドとは何か?

ここで、先ほど、「コロナウイルスという病原体のタンパク質をコードする環状 DNA(プラスミド)を接種することでコロナウイルスに対する免疫を付与します。」というアンジェスの説明がありました。それではプラスミドについて、上に書いたプラスミドの絵図だけでは不十分ですから、もう少し詳しく書きましょう。

 プラスミド(plasmid)は、大腸菌などの細菌や酵母の核外に存在し、細胞分裂によって娘細胞へ引き継がれるDNA分子であり、一般的に環状の2本鎖構造をとり、染色体のDNAからは独立して複製を行います。細胞増殖など菌が生育していくための遺伝情報は、染色体のDNAにあります。一方、プラスミドは通常の生命活動に必要な遺伝子はもっていません。しかし、細菌が特殊な環境(高温、乾燥、高塩分など)に置かれた場合や病原性を発揮する場合などに、プラスミドの遺伝子が独自に働きます。特に大型プラスミド(Rプラスミド、Fプラスミド)の中には、接合に関わる遺伝情報をもつものがあります。これらと共存することにより、本来接合できない小型プラスミドも他の固体に遺伝情報を伝えることができ、無性生殖をする種の多様性において、重要な役割を果たしています。 また、プラスミドには薬剤耐性や酵素などの様々な遺伝子がありますが、大半のプラスミドがどのような働きをしているのかはわかっていません。

プラスミドはその独立した遺伝子複製機構から、遺伝子組み換え操作のベクターとして多くの研究や産業に利用され、キャリアワクチンも生まれ出そうとしているのです。既に先ほど簡単に述べた大腸菌を用いた新新型コロナウイルスと同じ遺伝子を大量に作り出すクローニングでは、まずプラスミドを回収し制限酵素で切断します。クローニングとは、同じ遺伝子型をもつ生物の集団(クローン)を作製したり、ある特定の遺伝子を増やすことです。プラスミドと同じ制限酵素で切断した、増幅させたいDNAをDNAリガーゼで今度はプラスミドに結合させるのです。DNAリガーゼは、英語でDNA ligaseと書き、DNA鎖の末端同士をリン酸ジエステル結合でつなぐ酵素です。このプラスミドを大腸菌に導入し、大腸菌の大量培養により目的のDNAを増幅します。またアグロバクテリウム(土壌菌の一種)が持つプラスミドは自分でプラスミドを切断し、植物のゲノム上に遺伝子を導入する性質があり、植物の遺伝子導入において頻繁に利用されています。

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