コラム なぜシリーズ

鍼灸はなぜ免疫を上げるのか?

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 鍼灸はなぜ免疫を上げるのか?どうして鍼灸が免疫を上げることができるのでしょうか?考究していきましょう。

 皆さん、何のために中国人は鍼やお灸をやり始めたと思いますか?言うまでもなく痛みを止めるためです。世界中に痛みがなければ医学などは全く必要なかったでしょう。以前私が述べたように、魏の皇帝であった曹操の頭痛を治したのは誰だったでしょう?外科の元祖でかつ「五禽の戯」の創作者である華佗でしたね。魏の曹操はどうして頭痛やめまいに苦しんだのでしょうか?ヘルペスウイルスが曹操の脳血管神経に入り込み、免疫がヘルペスを殺そうとして、それが頭痛となっていたのです。

 鍼をツボに刺すことは、どのように免疫を上げるのかという難問です。既に経絡のツボについては解剖学の一分野である形態医学の立場から、鍼を刺すと痛みやむくみが取れるという働きは明白なものであるので、何とかして形態学的にその根拠を解明しようとしてきました。この働きはツボに鍼をすることによってもたらされるわけですから、他の部分とは違って何か特別にツボに独自な形態が見つけ出されるのではないかと必死に調べられたのですが、ツボには何一つ特別な細胞や組織や構造物がないということが判明しました。ただ分かったのは、経穴と呼ばれるツボの部分には、他の組織と比べて神経線維や血管やリンパ管の数が多い傾向があることが分かりました。まさにこれがツボの正体だったのです。形態学者はツボに神経線維や血管やリンパ管が多いということを無視してしまったのです。形態学者は鍼灸師ではないので、鍼をやるのは実はツボだけではなくて、患者が痛いという箇所も鍼を打つと痛みが取れるということを知らなかったのです。ツボも痛むことがありますが、ツボでないのにもかかわらず痛みがある箇所はいくらでもあるので、頻繁にツボでない痛みの場所を鍼師は鍼を打つのです。いずれにしろ痛みを感じるのは全て感覚神経であります。全身に痛みの感覚神経は網の目のように張り巡らされています。しかも神経は必ず血管とリンパ管が並走している意味をも形態学者は見逃してしまったのです。

 さぁ、さらにここで鍼の本質を考える前に、痛みとは何かを考える必要があります。皆さんは痛みを感じる特別な装置があるとお考えでしょう。確かに触覚には皮膚の下の真皮は触れられたら反応できるマイスネル触覚小体というものがあり、強く触られた時には真皮の下の皮下組織にあるファーターパッチーニ小体という特別な装置が反応するのです。その他に圧を感じる特別な装置はメルケル小体やルフィニ終末といわれる受容体もあります。実際は圧と触りの違いを区別することは難しいのですが。

 ところが痛みを感じる特別な装置は何もないのです。それでは何が痛みを感じているのでしょうか?皆さんご存知のように、神経には中枢神経と末梢神経があります。脳から出た神経は脊髄に入ります。この脳と脊髄にある神経は中枢神経であります。さらに脊髄から体の隅々まで出て行く神経を末梢神経といいます。末梢神経は脊髄から出るとすぐに、脊髄神経節にいきます。神経節という言葉は皆さんご存知でしょう。ヘルペスウイルスは永遠に人間に免疫では殺しきることができずに、ただ神経節に追い込むことしかできないと何百回も言っていますね。この脊髄神経節は中枢の脊髄から出た神経がたくさん集まっているところです。この脊髄神経節にいる神経細胞から神経軸索、別名神経突起とか神経線維といわれますが、これが出て行きさらに枝分かれし、この分岐した先端の最後を終末分枝といいます。この終末分枝が皮膚や筋肉や腱や関節や内臓の組織に入り、この終末が痛みを感じるのです。神経線維は太さによって大きくA、B、Cの3種類に分けられますが、痛みを脳まで運ぶのは、A線維がさらに細分されたAδとCであります。刺すような痛みは太い線維で運ばれ、鈍い痛みは細い線維であります。

 それでは手を切ったり火傷をしたりするとどうして痛いのでしょうか?皮膚が傷つけられると、その周辺にある血管は一時は縮みますがすぐに広がります。すると広がった毛細血管の圧力が上がり、毛細血管の中から液状成分が周りに滲み出し、その血液成分が様々な免疫細胞を刺激します。毛細血管の血液も鬱滞し腫れてきます。ところがいったん縮んだ毛細血管はすぐに広がるときに痛みを引き起こす様々な化学物質が組織に出て行きます。その代表がブラジキニンであり、セロトニンであります。さらに傷ついた組織内にいた肥満細胞からもヒスタミンが出ます。このブラジキニンとセロトニンとヒスタミンの3つが、先程述べた痛みを感じる神経末端を刺激します。この刺激が末梢神経を通って中枢神経の脊髄に入り、脳に伝わっていくのです。

 もっと詳しく説明すると、脊髄に入った痛みの感覚は、中枢の脊髄の神経細胞に中継された後、その神経細胞から出た神経線維は脊髄の中で反対側に行ってから脳へと上がっていきます。脳の間脳にある視床にまで行き着いて、そこで視床後腹側核にいきます。ここまでの道筋を外側脊髄視床路と専門的にはいいます。視床まできた痛みの情報は、さらに脳の皮質にある知覚野にいき、痛い場所の特定や程度が知覚されるのです。末梢神経の終末枝で感じられた痛みの感覚は、首から上の痛みは三叉神経により痛みの情報が伝えられます。他には、後頚部や首の痛みは頚神経により、かつ胴体の前と後ろの痛みは胸神経により、腰や両下肢の前部は腰神経により、最後は両下肢の後部と生殖器は仙骨神経により脳にまで痛みの情報が伝えられるのです。こむら返りの痛みは、仙骨神経から出た座骨神経が筋肉に入って、この神経にいるヘルペスとの戦いのために生じるのです。

 例えば、ヘルペスで顔の痛みや頭痛が起こる時の痛みはどのように脳にまで伝わるのかを説明しましょう。皆さん、なぜ三叉神経というのかご存知ですか?三叉神経というのは3つの末梢神経から成り立っているからです。一番上の枝の神経を眼神経、真ん中の枝を上顎神経、下の枝を下顎神経といいます。この3本の神経はどこから出て行くのでしょうか?三叉神経神経節から3本に分岐するのです。この三叉神経神経節は半月神経節ともいわれます。この三叉神経は首から上にある末梢神経である12本の脳神経の中で最大であり、脳の橋という場所から出て、三叉神経節を作った後に、第1枝の眼神経、第2枝の上顎神経、第3枝の下顎神経の3本に枝分かれして行くのです。この左右にある眼神経が脳の血管を支配している神経であります。この三叉神経が12本の脳神経の中で最大である理由の一つは、この分枝である眼神経が全ての脳の血管神経や脳膜の痛みを感じ取るためであります。

 それではどうしてヘルペスによる頭痛は起こるのでしょうか?三叉神経神経節(半月神経節)にいるヘルペスウイルスが、知らぬ間に左右の眼神経に沿って脳の血管神経に入っていくのです。この脳血管を支配する神経でヘルペスと免疫が戦うと、その情報は三叉神経神経節に痛みの情報としてまず伝わります。そこから脳の痛みを知覚する知覚野に伝わって頭痛となるのです。

 皆さん、絶対に知っておいてもらいたいことがあります。脳の中自身には痛みを感じる感覚神経の受容体は何もないのです。頭痛は脳の表面にある動静脈や、脳膜の間にある動静脈や、脳底の動静脈などにきている痛みを感じる神経が感じているのです。この神経は何だと思いますか?まさに三叉神経の一分枝である眼神経なのです。脳の全ての血管神経を支配し、痛みを感じるのは、まさにこの三叉神経の眼神経なのです。これをしっかり覚えておいてください。この眼神経にはびこった水痘帯状ヘルペスが免疫に見つけられ、免疫がこのヘルペスを殺そうとした時に炎症を起こし、それが痛みとして先に述べたように脳に感じられて頭痛として認識されるのです。全ての脳の痛みは三叉神経を通じて脳の知覚野に伝えられるのです。

 漢方鍼灸の数千年の歴史の中で、「なぜ漢方が免疫を上げて病気を治すのか」や「なぜ鍼灸が痛みを取るか」について疑問を感じ、その答えを出そうとした中国医学の天才は誰一人としていませんでした。経験医学だけで作り上げてきた漢方鍼灸にその答えを求めさせるのは無理な話です。生理学、生化学、免疫学、病理学、解剖学など何一つとして分からなかった過去の中国において、そのような問いに対する答えは不可能なのです。現代でも目に見えない神経・リンパ管については、彼らは一切知識がなかったのですから、答えが出ないのは当然といえば当然なのです。その答えを私が出す日が近づいてきました。

 私が吉益東洞を高く評価するのは、彼は漢方薬を使うことによって症状がひどくなることを瞑眩と言ったことです。実を言えば、この瞑眩という症状は漢方薬が一毒に対して、漢方薬を用いると免疫が高まり、その一毒を排除するために症状がひどくなることを知らずして瞑眩に気がついていたことです。このコラムは「どうして漢方薬をはじめとする中国医学が免疫を上げるのか」ということを理論的に実証するために書いているのはご存知でしょう。吉益東洞は漢方薬が患者の免疫を上げることによって、一毒、つまり感染症の原因であるウイルスや細菌やカビ、さらに原虫や蠕虫などの寄生虫と激しく戦っていることや、かつ漢方薬が免疫の働きを上げていることや、一毒と薬物の毒との戦いが激しくなり、瞑眩となっていることの全てを知らずして、正しい免疫の働きを見つけ出していたのです。だからこそ、彼を日本医学史の天才と私は呼ぶのです。

 残念ながら吉益東洞や大塚敬節先生が書かれた書物には、免疫については一切ふれられていません。当然です。吉益東洞は1702年に生まれ、1773年に亡くなっています。一方、大塚敬節先生は1900年にお生まれになり、1980年に亡くなられました。免疫学が凄まじい勢いで解明され始めたのはここ30年前からであります。従って吉益東洞も大塚敬節先生も、漢方と免疫学を結びつけることは不可能でありました。しかし2人とも漢方薬がどんなに素晴らしい薬であるかを臨床を通じてさらに証明し続けられた方々です。今私は、なぜ漢方や中国医学が免疫を手助けすることによって病気を治すかという根拠を解明しようとしているのです。漢方は古来以来、免疫の証拠を明らかにしないのにもかかわらず、確実に人間が免疫で治せる病気を治す手伝いをやってきたことは確かであります。この確かな事実の背後に隠されていたmissing link、つまり免疫と中国医学の繋がりを明確にしようと長い長いコラムを書き連ねてきました。いずれこのmissing linkをひとつひとつ明らかにしていこうと思います。これを明らかにするのも長い時間がかかりますが乞うご期待をお願いします。

 常に皆さんに知っておいてもらいたいことは、漢方薬は薬ではないということです。漢方薬は農産物であるのです。200年前に西洋医学が最初に作った薬はバファリン、つまりアスピリンであります。このアスピリンと漢方薬とは全く違った意味を持つことを知ってもらいたいのです。漢方薬は免疫を上げ、アスピリンは免疫を下げるという全く違った働きを持っているのです。ただ病気を治すのは薬であるということで、古来から漢方薬と言われ続けましたが、漢方薬は患者の免疫を手助けしているということが今なお気がつかれていないのです。一方、200年前から西洋化学が作り出した工場で作られる薬は、ワクチンと抗生物質と抗ヘルペス剤を除いては全ては免疫を抑える仕事をする薬であることをしっかりと知ってもらいたいのです。漢方薬は1年もかけて中国の農民が作る農産物であり、製薬メーカーが作る薬は、一日で工場で作られる薬であり、工場で作る薬は免疫の遺伝子の働きを抑えて症状を取るだけで、病気を治す薬ではないということも重々知ってもらいたいのです。漢方薬も西洋薬も語尾に“薬”がついていますが、これが一般大衆に漢方薬と西洋薬の違いを分かりにくくさせているのです。漢方薬には一切免疫を下げるような薬はありません。一方、西洋薬がほとんど全てが免疫を下げて症状を取るだけで、病気を治す薬ではないということを再確認してもらいたいのです。

 病気を治すのは患者の免疫であり、病気を作るのは患者の免疫を抑えることによってであるということをも充分に知ってもらいたいのです。しかも21世紀の文明社会にはいつまでも人体に侵入して免疫が排除しようとしている敵は化学物質とヘルペスしかないのです。この真実を知った私は現代の吉益東洞といえます。なぜでしょう?私は吉益東洞の言葉を借りて次のように言いたいのです。「万病二毒説」という新説です。それではこの二毒とは何でしょう?もうお分かりのように、化学物質とヘルペスウイルスです。その二つの原因を引き起こされた病気の治し方も、もう皆さん既にご存知でしょう。化学物質と戦う病気はふたつあることもご存知でしょう。ひとつは膠原病であり、ひとつはアレルギーであります。免疫をヘルプすることによって、抗体のクラススイッチを行うことによって膠原病をアレルギーに変えることです。最後はアレルギーを免疫寛容によって戦いをやめさせることです。これを自然後天的免疫寛容と名付けたのも私です。つまり化学物質と共存できるようになれば膠原病もアレルギーも全て治ってしまうのです。それではもうひとつの毒であるヘルペスによる病気はどのようにすれば治ってしまうのでしょうか?もうご存知でしょう。免疫を高めて神経に居座っているヘルペスを神経節という刑務所に押し込むことです。これで「万病二毒説」の二毒の治し方がお分かりでしょう!アッハッハ!

2014/04/10

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