2020年1月4日の朝日新聞の抗菌薬処方、6割が不必要 風邪などに効果なし 自治医大など調査 についてコメントします。
細菌による風邪症状の時のみ、抗生物質の投与は必要ですが宿主に2種以上の病原微生物、例えばウイルスと細菌がほぼ同時に感染する混合感染との区別が難しい場合が少なくないのです。さらに風邪の始め(1次)の原因がウイルスであっても治りきらずにこじらせて免疫が落ちた時に新たに細菌による二次感染 (secondary infection)が起こることがあります。二次感染は呼吸器感染症の際,しばしばみられます。宿主に一種の病原微生物(ウイルス)の感染が成立した後に,別種の病原微生物(細菌)による感染が加わる場合を二次感染または続発感染といいます。最後にウイルスであるインフルエンザと細菌であるインフルエンザ菌は別の病原体であることを知っておいて下さい。 風邪の原因微生物は、80~90%がウイルスであります。 主な原因ウイルスとしては、ライノウイルス、コロナウイルスが多く、RSウイルス(respiratory syncytial virus)、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルスなどが続きます。 ウイルス以外では、一般細菌、肺炎マイコプラズマ、クラミジア(クラミドフィラ)やレンサ球菌や溶連菌やインフルエンザ菌 など特殊な細菌も原因となります。風邪の原因となるウイルスの、例えばライノウイルスには数百種類以上もの血清型が存在し、毎年のように新たな型のウイルスが出現するため、風邪に対するワクチンや特効薬の開発は不可能です。インフルエンザウイルスも毎年ミューテーション(変異)により 血清型が変わるので現在流行している血清型に対するワクチンを作るのが難しいのです。血清型(serotype)とは細胞表面の抗原やウイルス表面の抗原を基に分類した微生物、ウイルスあるいは細胞の型であります。血清型の判定に用いられる因子は、毒性、グラム陰性菌中にあるリポ多糖、外毒素の存在(たとえば百日咳菌における百日咳毒素)、プラスミド、ファージ、遺伝子プロファイル(たとえばポリメラーゼ連鎖反応によって判定されるような特定の遺伝子の発現と遺伝子変異)、その他同じ種に属する個体を識別するための様々な特性です。同じ抗原をもつ血清型をまとめて血清群といいます。
最後に、外出して帰宅したらすぐに必ずうがい、手洗い、顔洗いを十分にやることが究極の風邪に対する予防になることを知っておいて下さい。