コラム 疾患解説 白内障

ステロイド性白内障について

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1.白内障とは

 白内障とは、水晶体が灰白色や茶褐色に混濁し、物がかすんだりぼやけて見えたりするようになる目の病気です。水晶体は簡単に言うと、カメラでいう凸レンズの役割を果たす組織です。

2.どのようにして水晶体の混濁が生じるか

 それではどのようにして水晶体が混濁し、白内障が生ずるのでしょうか?本来、白内障は歳をとるにつれて徐々に水晶体に混濁が生じて発症する加齢性疾患で、80歳以上になるとほぼすべての人に生じます。なぜ、水晶体の透明性が失われ、混濁に至るのかは完全には明らかになっていませんが、加齢、紫外線被曝、酸化ストレス、糖尿病、近視などによって水晶体構成蛋白質(クリスタリン)に構造変化が生じ、このような構造タンパク質が凝集したり、不溶化したり、さらにこのようなタンパク質の相互作用によりタンパク質のさらなる変性が起こることが、水晶体混濁の原因とされています。それでは、なぜ、透明性を保持していたクリスタリン蛋白質が、異常凝集し、不溶化し、さらに変性してしまうのかを理解していただくために、水晶体について詳しく説明していきましょう。

3.水晶体の構造について

 水晶体はタンパク質33%、水分66%、ミネラル1%からできていて、人間の体の中ではもっともタンパク質の多い、非常に特殊な組織です。水晶体は閉鎖された空間で、血管も神経も通っていません。内部の細胞はもちろん生きていますが、血管がないので、普通の細胞のように血液から栄養をもらうわけにはいきません。水晶体に栄養を与えているのは、毛様体でつくられる房水という栄養水なのです。(房水については緑内障のコラムをご覧ください)

 水晶体は眼球内部にある楕円球体の構造で、水晶体の角膜側を前極(前嚢の中心)、網膜側を後極(後嚢の中心)、そして前極と後極から等距離にあり水晶体楕円球体で最大径の円周を、地球の場合と同じく赤道といいます。赤道よりも前の部分を前極部といい、後ろの部分を後極部といいます。水晶体は外側から、水晶体上皮、水晶体皮質、水晶体核から成り立っています。水晶体という楕円球体の周囲全体はコラーゲンを主成分とする水晶体囊(水晶体包ともいいます)で包まれており、水晶体の前極から赤道にいたる水晶体囊(水晶体包)の内側に、ドーム状に水晶体上皮細胞(LensEpithelialCell:LEC)が単層で並んでいます。下に赤道部、前極部、後極部、水晶体上皮細胞、水晶体核、水晶体皮質、水晶体嚢の図を掲載しておきます。

4.水晶体の細胞について

 哺乳類の水晶体は、2種類の細胞から構成されています。水晶体の大部分を形成する水晶体線維細胞と、前側をおおう単層の上皮細胞です。水晶体線維細胞は、ときに水晶体線維ともいいます。なぜ細胞であるのに線維というのでしょうか?それは、水晶体線維は線維以外の成分がない無数の線維から成り立っているからです。水晶体の中心部の水晶体核はこのような線維だけを有している古い線維細胞の集まりで、線維細胞の膜どうしの境界が不明瞭になっているので、細胞というよりも線維だけでできているので水晶体線維細胞を水晶体線維というのです。

5.水晶体はどのように形成されるのか

 眼の水晶体はどのようにして発生分化するのでしょうか?正常な水晶体の発生には、まず水晶体上皮細胞の漸進的な分化・成熟が必要です。水晶体上皮細胞は、水晶体赤道部よりやや後極寄りの領域の近くまで水晶体囊から離れながら、水晶体の前極と後極に向かって伸長し水晶体線維細胞に分化します。水晶体線維細胞は水晶体の中心に向かってさらに分化し、細胞核、ミトコンドリア、ゴルジ体などの細胞内小器官が減少・消失し、最後に水晶体細胞の内部はクリスタリンという巨大タンパク質分子が規則正しく並んでいます。これが線維状に見え、光の屈折率を一定に保つことができ、可視光線を通すことが可能になり、長期にわたって透明性を維持することができるのです。

 水晶体線維(水晶体線維細胞)は幹細胞である水晶体上皮細胞で終生続けられ、新しくできた水晶体線維(水晶体線維細胞)は次々と古い線維細胞の上に重なって水晶体内部の核に移行します。注意しておきますが、ここでの核というのは、水晶体の中心部という意味であり、水晶体細胞の細胞核ではないことです。この過程で細胞核が失われていくのです。細胞核がなくなればなくなるほど、古い線維細胞は線維に見えてくるのです。この水晶体線維は水晶体から漏出することはないので、水晶体の中央部の核は加齢とともに少しずつ大きくなっていくのです。

 このような水晶体上皮細胞の分化は、眼の体液内に存在する増加因子によって促進されます。増加因子とは、動物体内において、特定の細胞の増殖や分化を促進する内因性のタンパク質の総称で、成長因子、細胞増殖因子などともいわれます。上皮細胞増殖因子などは有糸分裂を促進し、塩基性線維芽細胞増殖因子や、インスリン様成長因子や、インスリンなどの成長因子は、上皮細胞の移動および分化を促進します。左上に、ヒト水晶体上皮細胞のCK-19抗体による免疫蛍光染色で染めたあと、200倍に拡大して水晶体上皮細胞を見た顕微鏡写真を掲載します。ブルーは水晶体上皮細胞の核です。緑は細胞質です。

6.クリスタリンの透明性維持機構について

 このように形成されたクリスタリン蛋白質はどのようにして透明性を維持しているのでしょうか?実は生まれてまもない哺乳動物の水晶体は完璧に無色透明であるのです。光は眼の中でクリスタリン蛋白質の濃厚な水溶液によって集められます。眼の中にあるレンズは発生初期に形成された長い水晶体上皮細胞でできており、この中はクリスタリンで満たされています。既に述べたように、この水晶体上皮細胞は核やミトコンドリアやゴルジ体などの細胞小器官(オルガネル)を失う代わりに、滑らかで透明な可溶性タンパク質だけを残しているのです。我々が持つクリスタリンは生涯を通じて必要であるため、自身を守る強力な手段を持っています。それはクリスタリンタンパクの一つであるα-クリスタリンがシャペロンとして働くことができるからです。シャペロンとは、折りたたまれることができない変性状態のタンパク質に結合し、それが適切に折りたたまれた状態(天然状態)になるのを助けるタンパク質のことであることです。α-クリスタリンは、損傷したタンパク質を見つけ出し、それらが凝集して乳白色の複合体になる前に捕らえて結合します。

 このようにして、クリスタリン蛋白質は透明性を維持しているのですが、このような保護機構があるにもかかわらず、歳を重ねると共に損傷は蓄積し、クリスタリンは壊れたり、ほどけたり、酸化したりしてしまうことも既に述べました。損傷によって、ゆっくりと不透明な凝集物の蓄積が進み、白内障(cataract)を引き起こすことになるのです。

 既に説明したように、水晶体核は赤ちゃんにはなく、年とともに水晶体皮質が増えながら水晶体の中心部へと古い水晶体線維細胞が移っていき、その細胞が圧縮され、25歳ごろから硬くなり、だんだん淡黄色に着色して、最後は水晶体核になります。加齢性白内障のほとんどは、水晶体皮質で生ずる「皮質白内障」です。最も一般的なタイプでは、まず水晶体の周辺部に小さなくさび状に濁りだし、頂点を水晶体の中心に向けた細長い三角形の濁りとなっていきます。下側や鼻側に数本現れるのが普通です。この三角形が次第に成長し、頂点が瞳孔に達するようになると、視力低下が始まります。そして外からも瞳の濁りが確認できるようになります。これがやや白く見えるので「しろそこひ」と呼ばれる状態となるのです。

7.クリスタリン蛋白がどのような機序で変性するのか

 次に、老化によって透明性を保持していたクリスタリン蛋白質が、どのように異常凝集し、不溶化し、さらに変性してしまう根拠を詳しく述べます。老化とは何かについては、別にコラムを設けましたので、興味のある方は読んでみてください。

 水晶体のクリスタリンタンパク質異常凝集の原因は、クリスタリンタンパク質を構成しているアミノ酸の酸化、脱アミド化、非酵素的糖化、異性化の4つであります。この4つの酸化、脱アミド化、非酵素的糖化、異性化によって、どのようなクリスタリンタンパク質の中のアミノ酸が変化して、どのような異常な生成物ができるかの一覧表を下に掲載しておきます。専門的すぎますが、自分のために掲載しました。

 上の一覧表で何が言いたいかというと、長年生きていると酸化的ストレス、つまり活性酸素がタンパクを作る遺伝子にも影響を与えると同時に、出来上がったクリスタリンのタンパク質にも障害を与えて修復されなくなり、最終的には老人性白内障になるということです。上の表に脱アミド化とありますが、アミド化とはカルボン酸の-OHを-NH2で置き換えることです。言い換えると、カルボニル基と窒素との結合を特にアミド結合とかアミド化と呼ぶのです。ついでに異性化というのは、ある分子が原子の組成は全くそのままに、原子の配列が変化して別の分子に変換することです。

 それではクリスタリンタンパク質異常凝集の原因の一つ一つについて説明していきましょう

 ①酸化

 タンパク質構成アミノ酸の一つであるトリプトファンは280nmのUVB領域(紫外線B領域)に吸収極大を持っていることから紫外線照射の標的になります。トリプトファンはUVBを吸収するとキヌレニン(吸収極大=360nm)となり、キヌレニンはさらに酸化されてヒドロキシキヌレニンをはじめとしたキヌレニン誘導体となります。これらはUVA(紫外線A領域)を吸収し、その光エネルギーを活性酸素の形で放出し、過酸化水素、スーパーオキシドアニオン、一重項酸素、その他のフリーラジカルが、タンパク質中のシステイン、メチオニン、ヒスチジンなどを分解し、タンパク質の構造にダメージを与えてしまいます。酸化された結果、種々の修飾をアミノ酸残基の側鎖に種々の修飾を受けてしまったタンパク質は繋がって架橋が生じます。架橋が生じるとさらに異常に長いタンパク質になり、タンパク分解酵素であるプロテアーゼによって分解されにくくなり、異常になったタンパク質が正常な代謝によって生体内から排除されないで蓄積されてしまうのです。

 ②脱アミド化

 カルボニル基と窒素との結合を特にアミド結合と呼びます。脱アミド化とは、アミドが有機化合物から取り除かれる化学反応のことです。生化学での脱アミドは、アミノ酸(アスパラギンとグルタミン)のアミドを含む側鎖を分解するため、タンパク質の分解にとって重要な反応であります。タンパク質構成成分であるアミノ酸のアスパラギンやグルタミンの脱アミド化により、アスパラギン酸、グルタミン酸へと変化することにより、電荷が発生し、酸性アミノ酸が増えます。その結果、そのタンパク質自身の性質や、他のタンパク質との相互作用が変化することです。

③非酵素的糖化

 リジンのε-アミノ基と糖のアルデヒドが縮合することによって開始するメイラード反応による修飾物および架橋産物が、加齢に伴い生体内のタンパク質中で蓄積することが知られています。縮合とは、2個以上の化合物が結合して、簡単な化合物、例えば水などを分離し、新たなる化合物(これを縮合体といいます)を生成することです。メイラード反応とは、還元糖とアミノ化合物(アミノ酸、ペプチド及びタンパク質)を加熱したときなどに見られ、メラノイジンという褐色物質を生み出す反応のことであります。従って褐変反応とも呼ばれます。還元糖とは、糖類のうち還元性を示す糖類であります。

④異性化;D-アスパラギン酸残基の生成

 異性化の話をする前に、L-体やD-体、さらに異性体や異性化の意味についてまず理解しましょう。L-体やD-体は、化合物の立体配置の絶対配置を示す際に使用される表記法であり、「dグリセルアルデヒド」という化学物質の立体配置を基準として、この立体配置を崩さずにできる化合物をD-体とし、そのD-体を鏡で映しだして見える鏡像を鏡像異性体と定義し、これをL-体と表記するのです。L-体とD-体は異性体どうしであり、同じ数、同じ種類の原子を持っています。違うのは立体構造だけなのです。異性化というのは、ある分子が原子の組成は全くそのままで、つまり原子の数と種類は全く同じでありますが、ただ配列が変化して別の立体構造が生まれ、別の分子に変換されることであります。

 まずアミノ酸は、その分子内にアミノ基(-NH2)とカルボキシル基(-COOH)を持つ化合物の総称であることはご存じでしょう。グリシンを除くアミノ酸には、ちょうど右手と左手の関係のように、互いに鏡に映すと同一になる構造のものが存在し、一方をL体、もう一方をD体とよんで区別します。体のタンパクを構成するアミノ酸は不思議なことにすべてL体です。D体のアミノ酸は自然界に存在しないとされてきましたが、実はいろいろな役割を持ったD-体も存在していることが近年、見出されつつあります。DL体はL体とD体の等量混合物で、ラセミ体ともいいます。

 通常、タンパク質はすべて、L-アミノ酸から構成されているために、立体構造が保持されています。しかし、加齢性白内障のクリスタリン中ではアスパラギン酸(Asp)というアミノ酸が、部位特異的にL-体からD-体に反転し、同時にこれらの隣接アミノ酸残基との結合がα結合からβ結合へと異性化するのです。これをβ-Asp化といいます。これが白内障の病因の一つなのです。なぜなら、タンパク中でのD-β-Asp生成はタンパク質の2次構造や高次構造に直接的なダメージをもたらすからです。D-β-Aspとは、D-体でベータ結合したアスパラギン酸であります。すなわち、タンパクはすべてL-アミノ酸から構成されているために側鎖はペプチド結合の平面に対して、全てトランスに配置されています。トランスというのは反対側と理解してください。D-アミノ酸が生成されると隣同士のアミノ酸の側鎖はペプチド結合の平面に対して同じ向きに配置されることになります。これをアミノ酸の側鎖はシスに配置されるといいます。

 このような変化がタンパク質の立体構造に波及的に影響を及ぼすため、異常凝集体が生じ、機能低下を引き起こすのです。実際、このような変異の生じている80歳のヒトの水晶体のαクリスタリン会合体は不均一で巨大な異常凝集体となっており、さらにα-クリスタリン会合体の機能であるシャペロン活性も正常なα-クリスタリン会合体の40%しかないということも報告されています。会合というのは、化学において、静電相互作用や水素結合、ファンデルワールス力などの非共有結合性相互作用によって複数の化学種が結びつくことです。それによって出来上がった化合物を会合体といいます。シャペロンとは、折りたたまれることができない変性状態のタンパク質に結合し、それが適切に折りたたまれた状態(天然状態)になるのを助けるタンパク質の総称であり、シャペロン活性とは、変性タンパクを天然タンパクに変える働きを持っているという意味です。

 以上、長々と白内障が生じるプロセスを説明してきましたが、この白内障は全て老人性白内障がどのようにして起こるのかの説明であったのです。言い換えると、老人性白内障は全くステロイドとは関係がないということを知ってもらいたかったのです。ところが、これからはまさに過剰に投与されたステロイドがどのようにしてステロイド性白内障が起こすのかを説明する本番の舞台となってきました。

 8.アトピーによる白内障はありえない(アトピー性皮膚炎はステロイド性白内障だ!)

 近頃新たに「アトピー性白内障」というありえない病名が生まれました。これはまさに医者は病名作りが上手であるという証拠の一つです。アッハッハ!眼科医や皮膚科医は、自分たちがステロイドを使って生み出した病気の責任を回避するために、アトピーのために白内障が生まれたと言い出したのです。ところが、眼科医も皮膚科医もアトピー性皮膚炎がどのようにして生ずるかを全く知らないのです。とりわけ皮膚科医に私のコラムの一つである、『どのようにしてアトピーが生ずるか』を読ませてあげたいのですが、私のコラムに書かれている論文は、皮膚科学会では絶対に認めないので読もうとしないのです。馬を水辺に連れて行って無理やり欲しがっている水を飲ませようとしても飲まないのと同じように、皮膚科医はアトピーを治したがっていて、私の真似をすれば患者がアトピーを治してくれるのに、私の論文を読もうとしてくれないのです。アッハッハ!残念ですね。

 いずれにしろアトピー性皮膚炎は、排除の炎症、つまりIgEで化学物質(ハプテン)を処理しようとする働きですが、ハプテンが血管もない水晶体に到達することは絶対にないので、アトピー性白内障が水晶体に起こるわけはないのです。その理由をしつこくもう一度説明しましょう。

 アトピー性皮膚炎というのはあくまでも化学物質(ハプテン)と結びついたキャリアタンパクが複合体となり、この複合体をアレルゲンと認識した免疫が排除する結果起こるものです。ところが水晶体は、水晶体上皮細胞と水晶体線維細胞だけで作られており、血管は存在しません。水晶体は、角膜と同様、透明な組織でなければなりませんが、もし血管があれば、目に入ってくる光が血管で遮られ、網膜に正しい映像が映らないのです。血管がない水晶体の細胞に、どのように栄養が運ばれているかというと、水晶体の周囲を満たして流動している「房水」から、酸素と栄養を受け取っているのです。ついでに言えば、房水は同時に、水晶体から排出された老廃物を受け取り、血流に運び去ってもいます。また、水晶体には「紫外線を吸収する役割」もあり、紫外線ができるだけ網膜に届かないように、「盾」の役割をして網膜を紫外線から守ってくれているのです。

 このように、ハプテンが血液から運ばれることもないので、アトピーは起こりようがないのです。もちろん透明なクリスタリンタンパクはありますが、ハプテンがない限りは、このクリスタリンタンパクと結びつくアレルゲンは存在しようがないのです。

 それではアトピー性白内障が絶対に起こりえないとなれば、アトピーの若い患者さんに見られる若年性白内障はどうして生ずるのでしょうか?言うまでもなく、ステロイドのためであるのです。若くして白内障になるのは、アトピー性皮膚炎でステロイドを使いすぎてなるにもかかわらず、皮膚科の医者も眼下の医者も身内どうしですから、新たなる病名を作ったのです。それがアトピー性白内障という病名です。なぜアトピー性白内障になるのかは一切わからないと言い張るのです。この世に原因のわからない病気などは何もないと言っても過言ではないのにもかかわらず、ステロイドを用いない診療科というのは何もないので、ステロイドが原因であるステロイド白内障であると診断付ければ、私のように医薬業界の全てを敵に回すことになります。そのため、正しい診断名をつけようとしないのです。というよりも、皮膚科がステロイドを用いれば用いるほど眼科の仕事が増えるので、医者たちにとっては仕事が増える訳で喜ばしいこと限りないということになるのです。ワッハッハ!このような間違ったステロイド医療が患者をどれだけ苦しめているかを告発し、かつ医者たちがどれほど嘘をついているかを明らかにするために、長々としつこくステロイドの副作用がどのように出るかの真実を明らかにするために、私はホームページを作っているのです。

9.ステロイド白内障と老人性白内障の違い

 ステロイド性白内障と老人性白内障の特徴の違いを考察しましょう。老人性白内障は水晶体の周辺から混濁し、若年性ステロイド性白内障は中心部に混濁が見られます。ちなみに、水晶体の混濁部位と度合いは細隙灯(さいげきとう)顕微鏡という装置を用いることでわかります。ステロイド性白内障は老人性白内障と違い、通常は両眼性に起こってきます。す。また、老人性白内障に比べ、進行が早いのも特徴です。

 10.ステロイド性白内障の起こる機序について

 水晶体細胞には幹細胞があるでしょうか?あります。幹細胞があるからこそ、ステロイド性白内障が生じるのです。なぜ私が水晶体上皮細胞に幹細胞があるかないかを論じざるをえないのでしょうか?あくまでも私が論じたいのは、白内障がどうしてできるかという問題だったのです。ところがどうしてもこの問いに対する答えを見出すためには水晶体上皮細胞の幹細胞の有無についても論じざるをえなくなったのです。

 というのも、ステロイド性白内障は、医者が投与した過剰なステロイドが、幹細胞となりうる水晶体上皮細胞の細胞核にアトランダムに入り込み、細胞周期を無理やり変えさせたり、遺伝子のタンパクの発現を訳もわからずにOFFにしたりONにしてしまうために起こるからです。ステロイドがどのように遺伝子の蛋白発現を狂わせるかについては、以前こちらのコラムで書いておりますので、お読みください。

 ともかくステロイドによって、水晶体上皮細胞が作るクリスタリン蛋白が異常になったり配列がおかしくなったり、さらには水晶体上皮細胞自身の形や配列が異常になって、ぼやけたり見えにくくなったりするのです。水晶体の細胞は前述の通り、一度クリスタリン蛋白質で満たされると、タンパクの合成機能も完全に失ってしまいますので、クリスタリンは他の組織のタンパクと異なり、交換・補充が利かず、一生にわたって使用されます。そのため、若くしてステロイド性白内障になってしまうと、人工水晶体を入れざるをえないのです。下にさらに詳しいマクロからミクロの水晶体の絵図を掲げておきます。

 11.水晶体の幹細胞について次にステロイドに幹細胞がある根拠について、述べていきましょう。水晶体がどのように形成されるかの項で、「(水晶体線維)水晶体線維細胞は、水晶体上皮細胞で終生続けられ、新しくできた水晶体線維(水晶体線維細胞)は次々と古い線維細胞の上に重なって水晶体内部の核に移行します。この過程で細胞核が失われていくのです。』と書きました。

 この文章は、水晶体にも幹細胞があるということを示しています。ちょうど皮膚の細胞の幹細胞は基底細胞にあり、その細胞が分裂・増殖していくうちに細胞核を失って、最後は死んだ細胞である角質細胞になり、垢となってしまうのです。この繰り返しを120日周期で一生繰り返すのが皮膚の上皮細胞であります。幹細胞に関わるマウスで研究された論文の一部を抜き出しておきましょう。マウスで起こっていることは人間でも起こっていると考えてもいいのです。LECは、“LensPicelialCell”の略語で、水晶体上皮細胞のことです。

 また、ある大学の研究資料の中で、『マウス水晶体上皮細胞(LEC)の増殖領域と組織幹細胞は、水晶体のいずれの領域のLECにおいても増殖が見られ、細胞の増殖に関連する代表的なタンパク質として、PCNA(ProliferatingCellNuclearAntigen)やKi-67などがあります。PCNAは細胞周期が移っていく細胞である増殖細胞で主に見られますが、一部の増殖していない細胞である静止期の細胞でも見られます。また、細胞周期制御因子であるサイクリンDやサイクリンEなどもあり、これらは増殖マーカーとなっています。一方、組織幹細胞マーカーの1つにlow-affinityneurotrophinreceptorp75があり、これは低親和性のneurotrophinの受容体で上皮系幹細胞マーカーのひとつであります。前極部のLECは“細胞増殖が再開可能な細胞”であり、“水晶体特異的な組織幹細胞”であります。』とハッキリ書かれていました。

 何回も繰り返して言いますが、皆さんは水晶体上皮細胞の核にある全ての遺伝子は、皮膚の細胞にある全ての遺伝子と全く同一であることはご存知ですね。いわば目の水晶体上皮細胞はクリスタリンを死ぬまで一生正常に作り続け、さらにそのクリスタリンタンパクだけを特異的に作るために分化した細胞であるのです。このように特異的なタンパクだけを作る遺伝子のことを「ラグジュアリー遺伝子」といいます。日本語で訳せば「分化した細胞だけが発現できるという贅沢が許された遺伝子」というわけです。と同時に、水晶体上皮細胞は生き続けるために、毎日必要に応じてラグジュアリー遺伝子以外の遺伝子も発現したり止めたりする必要があります。これらの毎日毎日使われている遺伝子を「ハウスキーピング遺伝子」といいます。過剰にエピジェネティックな働きをしすぎる医者の使う大量のステロイドホルモンは、単にラグジュアリー遺伝子のON/OFFを異常にするのみならず、このハウスキーピング遺伝子のON/OFFも異常にしてしまい、全ての遺伝子がステロイドのためにもてあそばれて、訳のわからない後天的遺伝子病を生み出してしまうのです。ただ、その遺伝子病がいつ病気として認識されるかどうかは分からないのです。だからこそステロイドをアトピーの治療で長期に使い続けて、若くしてステロイド性白内障になったり、ならなかったりするのも、水晶体上皮細胞の遺伝子まかせなのであります。

 さらに付け加えれば、老人性白内障というのも、長生きしている間に自分の副腎皮質で作ったステロイドの影響で、徐々に徐々に老人性ステロイド性白内障になっている可能性も否定できないのです。アッハッハ!さらに付け加えれば、歳をとればとるほど水晶体上皮細胞の中にある幹細胞も減っていくのも老人性白内障の原因であるのです。

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