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グリア細胞とは何でしょうか?更新2022.4.8

投稿日:2022年4月8日 更新日:

グリア細胞 ( glial cell)は神経膠細胞(しんけいこうさいぼう)とも呼ばれ、神経系を構成する神経細胞ではない細胞でありの総称であり、ヒトの脳では細胞数で神経細胞の50倍以上存在しています。ヒトの脳には神経細胞が1,000億個から2,000億個あります。グリアの意味は、膠(にかわ)です。

グリア細胞には六種類あります。①ミクログリア(小膠細胞)②アストロサイト(星状膠細胞)③オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞・乏突起膠細胞・稀突起膠細胞)④上衣細胞⑤シュワン細胞(鞘細胞)⑥衛星細胞の六つです。この六つのグリア細胞は脳の神経細胞に対して以下の10種類の働きがあります。

①神経細胞の位置の固定(他の体細胞にとっての結合組織に相当)。
②栄養素と酸素を供給。
③他のニューロン(神経細胞)から絶縁させる。
④病原体を破壊。
⑤死んだニューロンを取り除く。
⑥神経栄養因子の合成と分泌。神経栄養因子とは神経細胞に細胞の外から働く、液性の蛋白質物質である。栄養因子はtrophic factorを訳であり、いわゆる栄養素であるnutrientsとは異なる。trophicの栄養という英語の言葉が意味しているのは、生きて行く上で必要なものという意味であり、神経細胞にとって有益に働く分子でありすべての細胞の成長・増殖因子やサイトカインのうち、神経に対する作用をもつもののみに使われます。
⑦)髄鞘(ミエリン)の構成要素となる。
⑧)過剰に放出されたカリウムなどのイオンの再取り込み
⑨)神経伝達物質を細胞内に回収することで伝達時間を限定させる。
⑩)血管内皮とともに血液脳関門を形成し、フィルターの役割を果たす

上に掲げた六種類のグリア細胞のそれぞれの働きを説明しましょう。

①ミクログリア(小膠細胞)はHortega細胞(オルテガ細胞)とも呼ばれる。ミクログリアは中枢神経系で免疫の食作用を示し異常代謝物などの回収を担う。白血球同様、造血幹細胞由来、中胚葉由来であり、マクロファージの特殊化した中枢神経系に存在する仲間です。

②アストロサイト(星状膠細胞)は中枢神経系に存在し、形質性星状膠細胞と線維性星状膠細胞の二つに分類される。神経幹細胞に由来する。

③オリゴデンドロサイト(希突起膠細胞・乏突起膠細胞・稀突起膠細胞)も中枢神経系に存在するグリア細胞で、軸索に巻きついて髄鞘を形成し、巻きついた神経細胞の維持と栄養補給の機能を持つ。一個のオリゴデンドロサイトは数本の突起を伸ばし、それぞれの突起が異なる神経細胞の髄鞘となる。存在部位により衛星希突起膠細胞および束間希突起膠細胞の二つに分類される。神経幹細胞に由来する。

④上衣細胞も中枢神経系に存在するグリア細胞であり、脳室系の壁を構成する細胞である。脳室内で脈絡叢上皮を、脳室正中面で脳周囲器官を形成する。

⑤シュワン細胞(鞘細胞)は末梢神経系に存在するグリア細胞で、軸索に巻きついて髄鞘を形成する。髄鞘を持つ神経細胞を特に有髄神経と呼ぶが、一つの有髄神経細胞にはたくさんのシュワン細胞が通常巻きつくのに対し、複数の神経細胞にまたがって巻きつくシュワン細胞は存在しない。

⑥衛星細胞も感覚神経節、交感神経節、副交感神経節にあって、細胞体を取り巻く。運動神経には神経節は存在しません。中枢神経系に存在するこの衛星細胞と筋肉中に存在する衛星細胞とは別物である。

神経変性疾患ではヘルペスが原因であるので共通にみられる病理所見として病変部位に活性化されたミクログリアやアストロサイトの集積がみられ、さらには種々のT細胞やB細胞の浸潤がみられるのは神経細胞に感染したherpesとの戦いで炎症が生じているからです。パーキンソン病やアルツハイマー病などでヘルペスによって侵害され破壊された変性神経細胞の周囲にはTNF-αやIL-1Bやインターフェロンγ陽性のミクログリアが認められています。因みにIL-1にはIL-1αとIL-1βの2種類があり、同一のインターロイキン‐1受容体に結合してどちらも内因性発熱物質やリンパ球活性化因子としての生理作用を持っています。

脳内の神経細胞にherpesの感染細胞は溶解したりすると細胞中の崩壊産物を処理するためにグリア細胞が活性化され、更に多くの周囲の神経細胞が死滅しまうと認知症が発症して、見られるα-シヌクレイン凝集体やAβ(アミロイドβ)がミクログリアを活性化し、それらの神経細胞のガラクタを回収するのです。

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