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なぜ、子宮頸がんの原因となっているヒトパピローマウイルス(HPV)の抗体ワクチンである9価抗体ワクチンで子宮頸がんが撲滅できるのに癌の原因である8種類のヘルペスウイルスに対しても同じく8価の抗体ワクチンを作って癌を殺すことをやらないのでしょうか?更新2025.11.14

投稿日:

なぜ、子宮頸がんの原因となっているヒトパピローマウイルス(HPV)の抗体ワクチンである9価抗体ワクチンで子宮頸がんが撲滅できるのに癌原因である8種類のヘルペスウイルスに対しても同じく8価の抗体ワクチンを作って癌を殺すことをやらないのでしょうか?

子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルスの抗体ワクチンである9価抗体ワクチンで子宮頸がんが撲滅できる抗体ワクチンとは何でしょうか?「9価抗体ワクチン」という表現は、専門用語としては不正確な表現です。「抗体が作られるワクチン」という意味で使われているのです。
「9価抗体ワクチン」という表現は、専門用語としては不正確な表現なのに9価抗原ワクチンと正しく表現しないのですか?
「9価抗体ワクチン」という表現が使われる背景には、いくつかの理由が考えられます。専門的な正確さよりも、一般の方への分かりやすさや、言葉の響きが優先されている可能性があります。

1. 「抗体」という言葉の分かりやすさ
一般の方にとって、「ワクチンを打つと病気にかからなくなる」という効果は直感的ですが、そのメカニズムである「抗原」や「免疫」といった専門用語は、必ずしも身近ではありません。一方で、「抗体」はテレビやニュースなどで「ウイルスに対する防御物質」として頻繁に登場するため、多くの人にとって「体を守るもの」というイメージが定着しています。「抗体が作られるワクチン」という意味で、「抗体ワクチン」という表現が分かりやすく感じられる可能性があります。

2. 一般向け情報での簡略化
医療従事者や研究者は「HPVワクチン」「9価HPVワクチン」または「9価ワクチン」と呼ぶことがほとんどです。しかし、一般向けのウェブサイト、ニュース記事、あるいは口コミなどでは、専門用語を避け、効果を強調するために「抗体」という言葉が使われがちです。

3. 日本語特有の表現
英語では、ワクチンは “vaccine” や “immunization” と呼ばれ、「抗原ワクチン」という表現は一般的ではありません。「抗体ワクチン」に相当する表現も通常は使われません。
日本語では、ワクチンの効果を説明する文脈で「抗体」という言葉が多用されるため、結果として「抗体ワクチン」という俗称が生まれてしまったと考えられます。

4. 公式名称ではない
「9価抗体ワクチン」は、公式な製品名や医学用語ではありません。医学用語としては: 「HPVワクチン」「9価ヒトパピローマウイルスワクチン」「9価HPV定期接種ワクチン」など

まとめ
専門的には「9価抗原ワクチン」と表現するのが正しいと言えますが、一般への普及や理解を優先するあまり、効果である「抗体」を前面に出した「9価抗体ワクチン」という、不正確ではあるが直感的に分かりやすい表現が広まってしまったと考えられます。
ワクチンはすべて、体内で免疫反応を引き起こす原因となる「抗原」(ウイルスや細菌の一部など)を含んでおり、その抗原に対して体が「抗体」を作り出すことで予防効果を発揮します。したがって、HPVワクチンも「抗原に対するワクチン」であり、「抗体ワクチン」という種類のワクチンではありません。

1. HPVワクチンは「抗原」に対するワクチンです。
HPVワクチンは、ウイルスの外殻を構成する主要なタンパク質である「L1タンパク質」を、ウイルスに似せた粒子(VLP: Virus-Like Particle)として精製したものを抗原として含んでいます。「L1タンパク質」とは「ヒトパピローマウイルス(HPV)の構造タンパク質」で単にウイルスタンパク質の1つを指す符号(名称)です。
このVLP(Virus-Like Particle)は、ウイルス本来のDNAを含まないため感染性は全くありませんが、体に入ると本物のウイルスが侵入したかのように認識され、強い免疫反応(抗体産生)を引き起こします。

2. なぜ「抗体ワクチン」という言葉が使われるのか?
「抗体ワクチン」という言葉は、一般の方がワクチンの効果を分かりやすく表現する際に使われる俗称、あるいは誤解に基づいた表現である可能性が高いです。

正しい理解: ワクチンを接種すると、体内で「抗体」が作られ、その抗体が将来のウイルス感染を防ぐ、という免疫の仕組みを指して、結果的に「抗体ができるワクチン」という意味で使われていると考えられます。専門用語との違い: 医学・薬学の分野では、体内で免疫を誘導する物質を「抗原」と呼び、それが引き起こす防御反応を「抗体産生」と呼びます。

まとめ:9価HPVワクチンは、L1タンパク質という「抗原」を用いて、体内で「抗体」を作り出し、将来のHPV感染を予防するワクチンです。すべてのワクチンが抗原を利用して抗体産生を促すため、HPVワクチンも例外ではありません。

 

下に1~8番までのherpesウイルスのそれぞれの主な潜伏感染部位とそれぞれのウイルスが起こす疾患を示します。

1型herpesは①herpes脳炎、②ヘルペス網膜炎、③角膜herpes、④ベル麻痺(顔面神経麻痺)、⑤ヘルペス性歯肉口内炎、⑥角膜herpes、⑦髄膜炎などの重大な病気を起こします。

2型ヘルぺスは脊髄炎、髄膜炎、急性網膜壊死の中枢神経の炎症を引き起こします。ヘルペス性髄膜炎はヘルペス脳炎と同じです。

3型herpesは①ラムゼイ・ハント症候群は、水痘帯状疱疹ウイルスが顔面神経を攻撃し、顔面神経麻痺、耳の痛みや水疱、難聴やめまいなどを引き起こす病気です。②汎発性帯状疱疹とは、通常は体の片側に起こる帯状疱疹が、ごく稀に全身に水疱が広がった状態を指します。免疫不全状態にある高齢者や、免疫抑制剤を使用している方、悪性腫瘍を持つ方などに多く見られ、ウイルスが血行性に全身へ広がることで発症します。発熱などの全身症状を伴うことがあります。通常の帯状疱疹は体の片側の一つの神経に沿って発症しますが、汎発性帯状疱疹は通常の帯状の皮疹以外に、全身に20個以上の水疱が広がります。水痘・帯状疱疹ウイルスが血管内皮細胞内で増殖し、ウイルス血症を起こすことで全身に広がります。発症しやすい人は主に、免疫機能が低下している高齢者や、免疫抑制剤を使用している人、悪性腫瘍(がん)を持つ人などに起こりやすいのです。症状は帯状の水疱と、全身に広がる水疱が同時に見られます。発熱などの全身症状を伴うこともあります。
③運動神経障害(顔面神経麻痺など)、VZVの運動神経障害とは帯状疱疹の原因ウイルスであるVZVが運動神経を直接または間接的に損傷することで、手足が動かしにくいなどの麻痺を引き起こす合併症です。これは「帯状疱疹に伴う髄節性運動麻痺(Segmental Zoster Paresis: SZP)」とも呼ばれ、最も有名な例として顔面神経麻痺を伴う「ラムゼイ・ハント症候群」があります。多くの場合、帯状疱疹の皮疹が出始めてから3日~2週間程度で麻痺が発症します。
運動神経障害(顔面神経麻痺など)発症のメカニズム
再活性化したVZVが、知覚神経だけでなく運動神経にも広がり、脊髄前角細胞や運動神経自体を損傷します。この損傷により、運動神経の機能が変化し、麻痺が引き起こされ手足の運動障害(力が入りにくい、動かしにくいなど)です。
ラムゼイ・ハント症候群の場合は面神経麻痺です。更に排尿障害などです。

4型herpesは①悪性腫瘍である乳癌、上咽頭癌、バーキットリンパ腫、胃癌 ②自己免疫性疾患である肝炎と、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)③自己免疫疾患の肝炎④伝染性単核球症、伝染性単核球症とは感染者の唾液を介して、キスや口移しでの飲食、飛沫などによって人から人へうつります。多くの人は感染しても症状が出ないか、軽微な症状で済みますが、思春期以降に初めて感染すると、症状が出る(顕性感染)ことが多いのです。主な症状は1〜2週間の発熱。喉の強い痛みを伴い、扁桃腺に白い苔(白苔)が付着することもある。倦怠感。リンパ節の腫れが首、脇の下、鼠径部などにいられます。まぶたの腫れ、発疹、肝機能障害、肝脾腫などが見られることがあります。血液検査でEBウイルスに対する抗体の有無や、異型リンパ球の出現、リンパ球(単核球)の増加などが見られるので伝染性リンパ球(単核球)症と名付けられました。

単核球とリンパ球の関係は実際はリンパ球は単核球の一つなのです。単球とは「リンパ球は単核球ではない」という認識は誤解に基づいています。実際には、リンパ球は単核球の一種として分類されているのです。

白血球の分類とリンパ球の位置づけ
白血球は、細胞質に目立つ顆粒(かりゅう)があるかどうかという形態的な特徴に基づいて、大きく2つに分類されます。
1、顆粒球: 細胞質に微細な顆粒が多く含まれるグループで3種類があります。
①好中球②好酸球③好塩基球
2、単核球(無顆粒球): 細胞質に目立つ顆粒がほとんどなく、通常、単一で丸い(あるいは少し不整形な)核を持つグループで2種類があります。①リンパ球②単球

なぜリンパ球は単核球なのですか?
リンパ球が単核球と呼ばれる理由は、その形態的特徴にあります。
単一の核: リンパ球は、通常、細胞質に対して比較的大きな、単一の丸い核を持っています。顆粒球のように核が分節(分葉)していません。
顆粒の欠如: 顆粒球のような目立つ細胞質顆粒がありません。
したがって、リンパ球は形態学的な分類において「単核球」に該当します。
「伝染性単核球症」におけるリンパ球
前回の回答で触れた「伝染性単核球症」という病気は、まさにこのリンパ球(単核球の一種)が血液中で異常に増加し、さらに形が変化した「異型リンパ球」が現れることによって特徴づけられる疾患です。
結論として、リンパ球は単核球の主要な構成要素の一つなのです。

herpesウイルス名主な潜伏感染部位herpesウイルスが起こす疾患
番号名英語名日本語名知覚神経節
(三叉神経節など)
口唇ヘルペス、ヘルペス性ひょう疽、性器ヘルペス、カポジ水痘様発疹症、ヘルペス脳炎、ヘルペス性網膜炎、ヘルペス性歯肉口内炎、角膜ヘルペス、ベル麻痺、髄膜炎
herpes simplex virus-1 (HSV-1)単純ヘルペスウイルス1型
herpes simplex virus-2 (HSV-2)単純ヘルペスウイルス2型知覚神経節
(三叉神経節など)
性器ヘルペス、新生児ヘルペス、脊髄炎、無菌性髄膜炎、急性網膜壊死
varicella zoster virus (VZV)水痘・帯状疱疹ウイルス知覚神経節(脊髄
後根神経節など)
水痘、帯状疱疹、ラムゼー・ハント症候群 、汎発性帯状疱疹、運動神経障害(顔面神経麻痺など)、自律神経障害(ホルネル症候群など)、血管炎、脳炎、脊髄炎
Epstein-Barr virus (EBV)エプスタイン・バール・ウイルスBリンパ球慢性活動性EBV感染症(CAEBV)、伝染性単核球症、上咽頭癌、バーキットリンパ腫、EBV関連胃癌 、自己免疫性肝炎、乳癌
human cytomegalovirus (HCMV)ヒトサイトメガロウイルス顆粒球、マクロ
ファージ前駆細胞
間質性肺炎、CMV網膜症、CMV単核球症、 先天性巨細胞封入体症 、腸炎、自己免疫性肝炎
Human herpesvirus 6 (HHV-6)ヒトヘルペスウイルス6型マクロファージ
リンパ球
突発性発疹症、脳炎・脳症
Human herpesvirus 7 (HHV-7)ヒトヘルペスウイルス7型唾液腺?突発性発疹症
Human herpesvirus 8 (HHV-8)カポジ肉腫関連ヘルペスウイルスBリンパ球カポジ肉腫(エイズ関連型・古典型・アフリカ型)
キャスルマン病、悪性Bリンパ腫(body cavity)

ヒトパピローマウイルスの抗体ワクチンである9価抗体ワクチンとは何でしょうか?

9価抗体ワクチンとは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の9種類の感染を予防するワクチンのことです。子宮頸がんの原因となるHPVの16型、18型に加えて、さらに5種類の型(31型、33型、45型、52型、58型)も予防できます。これにより、子宮頸がんの原因の80〜90%をカバーします。

9価ワクチンの特徴
予防できる範囲が広い: 2価や4価ワクチンよりも多くの種類のHPVを予防します。
対象疾患: 子宮頸がんだけでなく、尖圭コンジローマ(いぼ)の予防にも効果があります。
効果: 体内でHPVに対する抗体が作られ、少なくとも10年〜12年後まで維持される可能性があるとされています。

接種について
定期接種: 2023年4月から、小学校6年生から高校1年生相当の女子を対象に、定期接種として公費で受けられるようになりました。

接種回数: 1回目の接種を受ける年齢によって、合計2回または3回の接種が必要です。

15歳の誕生日の前日までに1回目を接種し、5か月以上あけて2回目を接種した場合、合計2回で完了します。
1回目の接種が15歳以後になる、または1回目と2回目の間隔が5か月未満の場合は、合計3回の接種が必要です。

交互接種: 2価や4価ワクチンをすでに接種したことがある場合、9価ワクチンの追加接種は推奨されません。ただし、医師の判断によっては、途中から9価ワクチンに切り替えて残りを接種することも可能です。

副反応について
副反応の傾向: 注射部位の痛みや腫れが出やすいことがあります。
安全性: 全身症状の副反応の頻度については、従来のものと大きく変わらないとされています

ヒトパピローマウイルス(HPV)の9価ワクチン(製品名「シルガード®9」)とは、子宮頸がんなどの原因となる9種類のHPVの感染を予防できるワクチンです。
主な特徴は以下の通りです。

予防できる型の種類: 従来の2価や4価ワクチンが対象としていたHPV型に加え、さらに多くの型に対応しています。具体的には、以下の9種類です。
がんの原因となる型(7種類): 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58型
良性疾患(尖圭コンジローマなど)の原因となる型(2種類): 6, 11型
高い予防効果: 子宮頸がんの原因となるHPV型の約90%をカバーすることができ、予防効果が最も高いワクチンとされています。
定期接種の対象: 日本では2023年4月1日から、原則として小学校6年生から高校1年生相当の女性を対象とした定期接種(公費負担)に加わりました。
男性も接種可能: 9歳以上の男性も接種可能で(自費接種の場合あり)、自身の健康だけでなく、パートナーへの感染リスク軽減にもつながります。
このワクチンは、HPV感染による子宮頸がんだけでなく、肛門がん、腟がん、外陰がん、中咽頭がんなどの予防にも効果が期待されています。

「9価抗体ワクチン」という表現は、専門用語としては不正確な表現です。

ワクチンはすべて、体内で免疫反応を引き起こす原因となる「抗原」(ウイルスや細菌の一部など)を含んでおり、その抗原に対して体が「抗体」を作り出すことで予防効果を発揮します。したがって、HPVワクチンも「抗原に対するワクチン」であり、「抗体ワクチン」という種類のワクチンではありません。

おそらく「なぜHPVウイルスそのものではなく、ウイルスの一部(抗原)を使ったワクチンなのか」ということ、あるいは「なぜ『抗体ワクチン』という言葉が使われるのか」ということかと思います。

1. HPVワクチンは「抗原」に対するワクチンです
HPVワクチンは、ウイルスの外殻を構成する主要なタンパク質である「L1タンパク質」を、ウイルスに似せた粒子(VLP: Virus-Like Particle)として精製したものを抗原として含んでいます。 このVLPは、ウイルス本来のDNAを含まないため感染性は全くありませんが、体に入ると本物のウイルスが侵入したかのように認識され、強い免疫反応(抗体産生)を引き起こします。 

2. なぜ「抗体ワクチン」という言葉が使われるのか?
「抗体ワクチン」という言葉は、一般の方がワクチンの効果を分かりやすく表現する際に使われる俗称、あるいは誤解に基づいた表現である可能性が高いです。

  • 正しい理解: ワクチンを接種すると、体内で「抗体」が作られ、その抗体が将来のウイルス感染を防ぐ、という免疫の仕組みを指して、結果的に「抗体ができるワクチン」という意味で使われていると考えられます。
  • 専門用語との違い: 医学・薬学の分野では、体内で免疫を誘導する物質を「抗原」と呼び、それが引き起こす防御反応を「抗体産生」と呼びます。

まとめ
9価HPVワクチンは、L1タンパク質という「抗原」を用いて、体内で「抗体」を作り出し、将来のHPV感染を予防するワクチンです。すべてのワクチンが抗原を利用して抗体産生を促すため、HPVワクチンも例外ではありません。

 

9価抗体ワクチンとは抗原としてエピトープである抗原決定基を9種類も用いた意味は何でしょうか?
「9価HPVワクチン」が抗原として用いているのは、9種類の異なるヒトパピローマウイルス(HPV)型それぞれに対応する抗原です。 「9種類の抗原決定基(エピトープ)を用いた」という意味は、特定の1種類のウイルスに対して複数のエピトープを使ったということではなく、異なる9種類のウイルス型(ジェノタイプ)それぞれに特有の主要な抗原(L1タンパク質)が含まれているという意味です。

9種類のHPV型それぞれに対する抗原
HPVには100種類以上の型があり、それぞれが異なる遺伝子配列と、わずかに異なる構造(特にウイルスの表面にあるエピトープ)を持っています。ヒトの体は、特定の型のウイルスに感染すると、その型に特異的な抗体を作り出します。
このワクチンでは、以下の9種類の型にそれぞれ対応するウイルス様粒子 (VLP) を抗原として含んでいます。 

  • 低リスク型: 6, 11型(良性疾患である尖圭コンジローマの主な原因)
  • 高リスク型(発がん性): 16, 18, 31, 33, 45, 52, 58型(子宮頸がんの主な原因) 

複数エピトープではなく、複数型への対応
重要な点は以下の通りです。

  1. 型特異的免疫: HPVに対する免疫応答は、基本的に「型特異的」です。16型に対する抗体は、31型にはあまり効果がありません。そのため、より多くの種類のがんを予防するには、それぞれに対応する抗原を含める必要があります。
  2. 9種類の抗原: ワクチンには、これら9種類の型のL1タンパク質から作られたVLPが混合されています。体はこれら9種類すべてに対して個別に抗体を作り出します。
  3. 高い予防効果: 従来の4価ワクチン(6, 11, 16, 18型)が子宮頸がんの原因の約70%をカバーしていたのに対し、9価ワクチンは追加の5種類を含むことで、約90%の原因をカバーできるようになりました。 

結論として、「9価」とは、1つのウイルス型内の複数のエピトープを指すのではなく、異なる9種類のHPV型それぞれを標的とする抗原を含有していることを意味します。

 

抗原決定基を用いたワクチンはありますか?
抗原決定基(エピトープ)」のみを抗原として用いたワクチンは、現在、一部のがん治療薬として臨床研究や治験が進められている段階であり、一般的な感染症予防ワクチンとしてはまだ広く実用化されていません。 

エピトープワクチンの現状 

  • がんペプチドワクチン: がん細胞に特異的に現れるエピトープ(ペプチド断片)を投与し、免疫細胞(特にキラーT細胞)を活性化させてがん細胞を攻撃させる治療法が研究されています。日本では、膵臓がんや膠芽腫(脳腫瘍の一種)、食道がんなどを対象とした臨床試験が行われてきました。
  • 研究段階: エピトープを用いたワクチンは、従来のワクチンに比べて副反応が少なく、狙った免疫応答だけを引き起こせるという利点がありますが、標的とするエピトープの選択が難しく、個人の免疫型(HLA型)に依存するなどの課題があり、広く実用化された感染症予防ワクチンはありません。 

なぜHPVワクチンは「ウイルス様粒子」なのか?
HPVワクチンのような感染症予防ワクチンでは、ウイルス全体に近い構造を持つ「ウイルス様粒子 (VLP)」を抗原として使用する方が、より効果的に防御免疫(中和抗体)を誘導できるため、この方法が採用されています。 

  • 立体的構造の再現: ウイルスに対する防御抗体は、ウイルスの表面にある立体的で複雑な構造(コンフォーメーションエピトープ)を認識することが多いです。VLPは本物のウイルスに酷似した立体構造を再現しており、非常に強力な中和抗体反応を引き起こします。
  • 免疫原性の高さ: VLPは粒子としての大きさも免疫反応を引き起こすのに適しており、アジュバント(免疫賦活剤)なしでも強い免疫応答を誘導できるほどです。 

結論
現在、感染症予防の分野では、ウイルス全体やVLPのように、複数のエピトープを含む大きな構造を抗原とするのが主流です。エピトープのみを用いたワクチンは、がん治療などの特定の分野で研究・開発が進められている最先端の技術と言えます。

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