ガン ガン なぜシリーズ 理論

何故肺癌が一番死にやすいのですか?更新2025.10.15

投稿日:

肺胞壁とはどんな構造をしておりかつどのような役割を持っているのでしょうか?
肺胞壁は、薄い「間質」と呼ばれる壁が、「肺胞上皮細胞」と「毛細血管」の壁(血管内皮細胞と基底膜)で構成されています。役割は、ガス交換で、息を吸うと肺胞内の酸素が毛細血管に移動し、息を吐くと毛細血管内の二酸化炭素が肺胞に移動します。

肺胞壁の構造
薄い間質:肺胞の壁は、電子顕微鏡でも見えないほど薄い間質でできており、その厚さはわずか0.2~0.6µm(マイクロメートル)です。
構成要素:
肺胞上皮細胞:肺胞の大部分は、ガス交換に関わる細胞で覆われています。
毛細血管:肺胞壁のすぐ外側には、毛細血管が網の目のように張り巡らされています。
ガス交換の「関門」:肺胞上皮細胞と毛細血管の内皮細胞・基底膜が、血液と肺胞内の空気の間の「血液空気関門」を形成し、ガス交換を可能にしています。

肺胞壁の役割
ガス交換:肺胞壁は、呼吸による酸素と二酸化炭素の交換の役割を担っています。
酸素の取り込み:肺胞内に入った酸素が、濃度差によって毛細血管へと移動し、血液中に取り込まれます。
二酸化炭素の排出:血液中の二酸化炭素が、肺胞へと移動し、吐き出されます。
ガス交換の効率化:肺胞は袋状の構造と、約3億個という数の多さによって表面積を大きくし、ガス交換の効率を高めています。

肺胞壁は、ガス交換を効率的に行うための特殊な構造を持つ、極めて薄い組織です。

肺胞壁の構造
肺胞壁は主に以下の要素から構成されています。
I型肺胞上皮細胞(扁平肺胞上皮細胞): 肺胞壁の大部分を占める非常に薄く平らな細胞で、効率的なガス交換を可能にします。
II型肺胞上皮細胞(立方肺胞上皮細胞): I型肺胞上皮細胞の間に存在する、やや厚みのある細胞です。後述する「肺サーファクタント」を分泌します。
肺胞マクロファージ(塵埃細胞): 肺胞の内部に存在する食細胞で、吸い込まれた異物や病原体を捕食・処理し、肺の防御機能を担います。
間質: 肺胞を隔てる壁のことで、内部にはコラーゲン線維や弾性線維が含まれ、肺の伸縮性を保っています。
毛細血管: 肺胞壁の間質には、毛細血管が網の目のように張り巡らされています。

肺胞壁の役割
肺胞壁は、その特殊な構造によって、以下の重要な役割を果たしています。
ガス交換: 肺胞壁と毛細血管の壁は非常に薄く、お互いに密着しています。これにより、肺胞内の酸素が血液中に取り込まれ、血液中の二酸化炭素が肺胞内に放出されるという、効率的なガス交換が行われます。
肺サーファクタントの分泌: II型肺胞上皮細胞から分泌される肺サーファクタントは、肺胞の表面張力を下げ、呼吸時に肺胞がつぶれるのを防ぎます。
防御機能: 肺胞マクロファージが、空気とともに侵入した細菌、ウイルス、塵などの異物を排除することで、感染や炎症から肺を守ります。
伸縮性: 間質に含まれる弾性線維は、肺が呼吸に合わせて膨らんだり縮んだりするのを助けます。肺胞壁は、ガス交換を効率的に行うための特殊な構造を持つ、極めて薄い組織です。

肺胞壁を癌細胞という巨大な細胞がどのように出入りできるのでしょうか?
癌細胞は「浸潤」という形で肺胞壁を破り、出入りします。これは、正常な細胞ががん細胞のように巨大化して出入りするのではなく、癌細胞が自身の細胞接着性を弱めたり、周囲の組織を分解する酵素を分泌したりすることで、肺胞壁を破壊・通過するメカニズムによるものです。

浸潤のメカニズム
細胞接着性の低下:がん細胞は、正常な細胞同士をつないでいる接着分子を失うことで、互いに離れやすくなります。これにより、肺胞壁の細胞の間をすり抜けることが可能になります。
酵素による分解:がん細胞は、肺胞壁や周囲の結合組織を分解する酵素(例えば、マトリックスメタロプロテアーゼなど)を分泌します。この酵素が組織を壊すことで、がん細胞が通過できる通路を作ります。
周囲の細胞への浸潤:肺胞壁を通過した癌細胞は、周辺の正常な組織に入り込み、そこで増殖を続けます。
転移:がん細胞は、さらに血流やリンパの流れに乗って他の臓器へと広がっていく「転移」を起こすこともあります。

まとめ
「癌細胞」という特定の細胞が「巨大な細胞」で出入りできるわけではなく、細胞の性質(接着性の低下、酵素分泌など)を変化させることで、肺胞壁の構造を破壊しながら浸潤・通過していくのが実情です。

癌細胞が肺胞壁を出入りする過程は、単純な細胞の移動ではなく、様々なメカニズムを駆使した複雑なものです。特に、細胞が大きいという問題は、周囲の組織を破壊・分解する能力や、血管を利用した移動によって解決されます。
1. 肺胞壁への浸潤
癌細胞は、単に壁を通り抜けるのではなく、浸潤という形で周囲の組織に入り込んでいきます。
周囲組織の分解: 肺胞壁の周りにある結合組織(コラーゲンなど)を分解する酵素を分泌します。これにより、細胞が通り抜けるための道を物理的に作り出します。
高い運動能力: 癌細胞の中には、自ら活発に動く高い運動能力を持つものがいます。
接着の操作: 肺胞壁の細胞同士を繋ぐ接着分子や、細胞と細胞外基質を繋ぐ接着分子(インテグリンなど)の働きを操作し、細胞間の結びつきを弱めます。

2. 血管(毛細血管)の利用
肺胞の周りには毛細血管が網の目のように張り巡らされており、癌細胞はこれを移動経路として利用します。
血管内への侵入(血管内皮細胞の透過): 癌細胞は、血管壁を構成する血管内皮細胞の間の隙間を広げたり、自ら接着能力を調整したりして、血管内に侵入します。
血流に乗っての移動: 血管内に入った癌細胞は、血流に乗って全身に運ばれます。このとき、癌細胞同士や血液細胞と塊を形成することもあります。
転移先での血管外への脱出: 目的の臓器(転移先)の毛細血管に接着し、今度は血管を破って外に出て、新たな転移巣を形成します。

3. 特定の臓器への転移
癌細胞が特定の臓器に転移しやすいのは、「種と土」のような相性があるためと考えられています。
ケモカイン: 転移先の組織が分泌する「ケモカイン」という物質と、癌細胞の表面にあるケモカインの受容体が引き合うことで、特定の癌細胞が特定の臓器に集まりやすくなります。例えば、肺がんは脳に転移しやすいことが知られています。

OとCOの分子を1個1個取り入れたり取り出す極めて小さい穴からできている肺胞に極めて大きな癌細胞はどのよう出入りするのですか?
その質問は、がんがどのようにして転移するのかという非常に重要なポイントを突いています。結論から言うと、がん細胞は肺胞にあるガス交換のための小さな穴を通るわけではありません。

がん細胞は主に、以下の2つの経路を使って肺にたどり着いたり、肺から出たりします。
1. 血液の流れ(血行性転移)
体中の血液は、最終的に心臓に戻り、そこから肺へと送られます。このとき、血管に侵入したがん細胞は、血流に乗って肺まで運ばれます。
血管への侵入: がん細胞は、元々発生した場所(原発巣)で増殖し、周りの組織を壊す酵素などを分泌します。
血管内での移動: その酵素を使って血管の壁を破り、血液中へ侵入します。
肺での定着: 血流に乗って肺の毛細血管にたどり着いたがん細胞は、毛細血管の壁に引っかかり、血管の内側から壁を破って外に出て、肺の組織に新たな「すみか」(転移巣)を作ります。

2. リンパの流れ(リンパ行性転移)
もう一つの経路は、リンパ管です。
リンパ管への侵入: がん細胞は、リンパ管に侵入し、リンパ液の流れに乗って体中を移動します。
リンパ節での増殖: リンパの流れに乗って近くのリンパ節に運ばれ、そこで増殖することがあります。
肺への転移: さらに、リンパ管を通って肺に転移することもあります。

肺胞の構造とガス交換
ガス交換が行われる肺胞は、酸素分子や二酸化炭素分子といった極めて小さな気体だけを通すことができる、非常に薄い「壁」でできています。がん細胞は、細胞の塊であるため、この壁を通り抜けることは不可能です。

まとめ
がん細胞が肺に出入りするのは、肺胞のガス交換の仕組みとは無関係な、血管やリンパ管という別の「交通網」を通じてです。この「交通網」を使い、がん細胞は全身に転移を広げていきます。

がん細胞が毛細血管の壁を破って肺の組織に出ていく際に、なぜ空気漏れや大出血といった大きな問題がすぐには起こらないのか?
血流に乗って肺の毛細血管にたどり着いたがん細胞は、毛細血管の壁に引っかかり、血管の内側から壁を破って外に出て、肺の組織に新たな「すみか」(転移巣)を作ります。
この時肺胞壁を破ると穴が開いて空気が漏れたり毛細血管が破れて出血しないのはなぜですか?
その理由は、がん細胞が壁を破る「力」の質と、肺の毛細血管および組織が持つ「構造」にあります。

1. がん細胞は組織を「溶かす」ように進んでいく。この後溶かされた組織の修復はどのようにされるのですか?
がん細胞が血管の壁を破壊するプロセスは、外部からの物理的な力で壁を突き破るような暴力的なものではありません。がん細胞は、周囲の組織や細胞の間を埋める物質を溶かす酵素(タンパク質分解酵素など)を分泌することで、壁の細胞と細胞の間の結合を弱め、隙間を作ってそこから這い出すようにして移動します。
これは、あたかも泥の中に指を差し込むように、組織を溶かしながらゆっくりと進んでいくイメージです。そのため、一気に壁が崩壊して大きな穴が開く、といったことは起こりにくいのです。しかし穴が酵素によってあけられた後始末は何がするのですか?

2. 毛細血管の構造が非常に細い
肺の毛細血管は、直径が赤血球がやっと1個通れるほどの非常に細い管です。がん細胞は、この毛細血管の細い管の中で引っかかり、血管の内側から壁を破って出ていきます。
このとき、がん細胞が抜け出た部分には血小板が凝集して小さな血栓ができたり、血管壁の細胞が修復を始めたりすることで、出血はごくわずかで済みます。この出血巣はどうなるのですか?また、血流がごくわずかに止まるため、その部分から大量の血液が漏れ出すことはありません。しかし肺という極めて大切な臓器がわずかでも穴が開き出血があるのに放置しておくと炎症が起きません?

3. 肺の組織全体の構造
肺は、肺胞と毛細血管が無数に集まって形成される、スポンジ状の複雑な構造をしています。がん細胞が1つの毛細血管から出て、1つの肺胞の壁を破ったとしても、その影響は非常に局所的です。しかし数多くの肺胞細胞が傷つくのは二次的な別の問題をおこすことはないのでしょうか?
空気漏れ: 肺胞の壁に開いたごく小さな穴は、すぐに周囲の炎症反応によって塞がれたり、肺組織自体の弾力性によって圧迫されたりします。この程度の微細な損傷では、広範囲な空気漏れ(気胸)には至りません。
出血: 上記の通り、出血もごく少量に留まることがほとんどです。大きな血管を巻き込むほどにがんが成長して転移巣を形成すると出血が起こることもありますが、これは転移の初期段階ではなく、ある程度がんが大きくなってからの話です。大きくなるとどうなるのでしょうか?無責任な筋の通らない話ばかりです。

まとめ
がん細胞の血管外遊出は、酵素による組織の融解と、毛細血管の極めて細い構造によって、ごく限られた範囲で、ゆっくりと進行するプロセスです。そのため、まるで爆発的に壁が破壊されるような激しい現象ではなく、体内で静かに進む微細な変化であるため、初期段階では目に見えるような空気漏れや大出血は起こりません。空気の入れ替えをする肺の空気漏れが大きくなることもあるのみならず出血が起こるので癌が大きくなっていくと大出血するという話は聞いたことはないのです。ということは肺胞壁を癌細胞は出入りすることは不可能です。

癌細胞の大きさと肺の毛細血管の大きさの違いは?
がん細胞と肺の毛細血管の大きさは、種類や状況によっても異なりますが、おおよその目安は以下の通りです。人の細胞の直径は約20マイクロメートル(μm)です。人の赤血球の直径は約7.5マイクロメートル(μm)です。人の毛細血管の直径は5~10μm(マイクロメートル)です。

がん細胞の大きさ
おおよそ20マイクロメートル(μm)の範囲です。
1マイクロメートル(μm) = 1ミリメートルの1000分の1
がん細胞は正常な細胞よりも不ぞろいな形をしていたり、大きくなったりすることがあります。ただし、血流に乗って移動する個々の細胞(血中循環がん細胞)は、赤血球がやっと通れるほどの細い血管にも入り込めるサイズです。人の毛細血管の直径は5~10μm(マイクロメートル)です。

肺の毛細血管の大きさ
肺にある毛細血管の直径は、平均して約6マイクロメートル(μm)です。
これは、直径約8マイクロメートルの赤血球よりもやや細いため、赤血球は毛細血管を通過する際に形を少し変えながら進みます。

大きさの比較
肺の毛細血管(約6μm)よりもがん細胞(約10〜20μm)の方が直径は大きいのです。
この比較からわかるように、がん細胞は肺の毛細血管よりも大きいため、血管に侵入すると、その細い場所で引っかかって詰まってしまいます。そして、血管の壁を破って外へ出ていくのです。このことから、がん細胞が物理的に血管内を通るには、変形したり、周囲の組織を溶かす酵素を使ったりするなどの能力が関係していると考えられます。こんな考えも間違っています。何故ならば周囲の組織を溶かした後の穴はどのように塞がれるのかについては一言も言及されていません。つまり結論としては癌細胞が自由に肺胞壁に入ることは新たなる問題が出るので無理だからこそありえないのです。結論としていえることはナノメートルの極小のherpesウイルスだけが肺胞壁を自由自在に出入りして新たなる癌細胞を作ることできるのです。

-ガン, ガン, なぜシリーズ, 理論
-, , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

Ⅰ型糖尿病の原因について

 私が最近経験したインフルエンザワクチンの副作用としては、Ⅰ型糖尿病になった子供がいました。これはインフルエンザワクチンの副作用というよりも、別のメカニズムによって膵島のβ細胞が破壊されたためです。そ …

no image

新新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンは作ることができない 2020.1.1

8月ごろに書いた、「コロナウイルスの後遺症はなぜ起こるのか?」という論文の中に「阪大とアンジェスの開発する新新型コロナウイルスに対するDNAワクチンは作れない」という趣旨の文章を書きましたが、DNAワ …

no image

リバウンド時にアミノ酸や蛋白を特別に大量に摂取しなければならない理由

 血中には2種類の蛋白が含まれています。ひとつは免疫グロブリンといわれる主に、IgG抗体を含んでいる蛋白であります。もうひとつはアルブミンであります。このアルブミンの一番大きな仕事は、血管の中に水分を …

no image

ウェルシュ菌について更新2022.3.27

ここでウェルシュ菌について詳しく述べていきましょう。読み続けていけば、実はクローン病に特徴的な敷石像やコッブル・ストーン像といわれる腸粘膜の所見の形成にウェルシュ菌が関与していることもお分かりになるで …

no image

何故ヘルペスウイルスは細胞が増殖分裂する時に積極的に感染して自分のビリオンを増やそうとするのですか?更新2025.8.18

何故ヘルペスウイルスは細胞が増殖分裂する時に積極的に感染して自分のビリオンを増やそうとするのですか?それは感染細胞が増殖する時にのみ作って用いる酵素を、しかもへルペスウイルス自身は必要ではあるが作れな …