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臓器移植の拒絶反応は何故起こるのか?アロ認識とは何か?アロ認識とMHC(主要組織適合遺伝子複合体)との関係は何か?更新2025.7.19

投稿日:2025年7月19日 更新日:

アロ認識とMHC(主要組織適合遺伝子複合体)は、免疫反応、特に移植における拒絶反応と密接に関わっています。MHCは、体内の細胞表面に存在する分子で、免疫システムが自己と非自己を区別する上で重要な役割を果たします。アロ認識とは、異なる個体間でMHC分子が認識され、免疫反応を引き起こす現象です。

MHCとは: MHCは「主要組織適合遺伝子複合体 (Major Histocompatibility Complex)」の略称が正しいです。腫瘍組織適合抗原という訳は誤りです。MHCは、免疫システムにおいて重要な役割を果たす遺伝子群であり、細胞表面に発現して自己と非自己を区別し、免疫反応を制御します。

MHC (Major Histocompatibility Complex)は免疫システムにおける中心的な役割を担う遺伝子群で、細胞表面に発現し、免疫細胞が抗原を認識する際に重要な役割を果たします。方HLA (Human Leukocyte Antigen)はヒトにおけるMHCのことで、白血球抗原とも呼ばれます。

腫瘍組織適合抗原はMHCの役割を指すものではなく、MHCによって提示される抗原の一部を指す言葉です。MHCは、ウイルスや細菌などの異物だけでなく、細胞内で分解された自己のタンパク質も提示します。腫瘍細胞も自己の細胞ですが、変異などによってMHCに提示される抗原が変化することがあり、それを腫瘍組織適合抗原と呼ぶことがあります。

MHCの役割とはMHCは、免疫細胞(T細胞)が抗原を認識するための足場を提供し、免疫反応を活性化または抑制する役割を担います。

MHCと移植の関係はMHCは、移植された臓器が拒絶されるかどうかを決定する上で重要な役割を果たします。移植片とレシピエント(移植片をもらう人)のMHCが異なる場合、拒絶反応が起こる可能性があります。したがって、MHCを「腫瘍組織適合抗原」と呼ぶのは誤解を招く表現であり、正確には「主要組織適合遺伝子複合体」または「ヒト白血球抗原(HLA)」と呼ぶべきです。

MHCは、免疫細胞(特にT細胞)が抗原を認識するための分子です。ヒトではHLA(ヒト白血球型抗原)と呼ばれます。MHCは、体内の細胞が持つ抗原と結合してT細胞に提示し、T細胞がそれを認識することで、免疫反応が開始されます。

アロ認識とは何でしょうか?異なる個体(人)のMHC分子をT細胞が認識することをアロ認識と呼びます。移植において、ドナーとレシピエントのMHC分子が異なる場合、レシピエントのT細胞がドナーのMHC分子を異物として認識し、拒絶反応を引き起こします。「アロ」は、生物学では「他」や「異種」を意味する接頭語として使われます。特に、免疫学や移植医療の分野で、他人の細胞や組織、臓器を指す場合によく用いられます。例えば、「アロ移植」は他人の臓器を移植することを指し、「アロ抗原」は他人の細胞が持つ抗原を指します。

アロ認識には直接認識と間接認識があります。アロ認識には、直接認識と間接認識の2つの経路があります。①直接認識:レシピエント(臓器をもらう人)のT細胞が、ドナー(臓器をあげる人)のMHC分子を直接認識する経路です。移植直後から見られる強い拒絶反応の原因となります。②間接認識:レシピエントの抗原提示細胞が、ドナー由来のMHC分子を分解し、ペプチドとして取り込み、自己MHC分子に結合させてT細胞に提示する経路です。移植後、時間が経ってから現れる拒絶反応に関与します。

アロ認識と拒絶反応の関係は:アロ認識は、移植における拒絶反応の主要な原因です。ドナーとレシピエントのMHC分子の適合性が低いほど、拒絶反応は強く現れます。移植後の拒絶反応を抑制するために、免疫抑制剤が用いられますが、副作用も存在します。

MHCは、免疫システムが自己と非自己を区別するための分子であり、アロ認識は、異なる個体間でMHCが認識され、拒絶反応を引き起こす現象です。移植における拒絶反応は、MHCの認識が直接的または間接的に関与することで起こります。

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