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ヌクレオシド類似体アシクロビルとは何か?更新2020.6.28

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ヌクレオシド類似体アシクロビルとは何か?

アシクロビルはヌクレオシドアナログ(核酸類似体)であり、もっと正確に言うとグアノシン核酸アナログであり、DNAの成分であるグアノシンに似ているが糖は環状ではありません。アシクロビルはHSV(単純herpes)には非常に効き目はありますがVZV(水痘帯状ヘルペス)に対してはHSV(単純herpes)ほどではありません。アシクロビル自身はプロドラッグであります。というのはプロドラッグであるアシクロビルは体内に入って活性型であるアシクロビル三リン酸に変えられて初めて効果が出るのです。アシクロビルが抗ヘルペス剤として選ばれる根拠はherpes感染ウイルスの酵素であるチミジンキナーゼ(TK)があるからです。ヘルペスのチミジンキナーゼ(TK)はアシクロビルをリン酸化して,アシクロビル一リン酸に変えますがアシクロビルは細胞のリン酸化酵素では一リン酸化できないのです。このようには3000倍も薬剤選択性が強くできないので細胞性チミジンキナーゼだけではアシクロビルはほぼリン酸化されずプロドラッグのままです。さらに細胞性チミジンキナーゼは細胞周期の特定の段階でしか産生されないのですがウイルスのチミジンキナーゼは細胞の酵素が産生されるのを待たずに常にウイルスのチミジンキナーゼはできるのです。次にアシクロビル一リン酸をアシクロビル三リン酸にする時には細胞のリン酸化酵素が利用できるのです。

アシクロビル三リン酸はウイルスのポリメラーゼによりDNAの伸長中にDNA鎖に取り込まれます。細胞内のDNAポリメラーゼがアシクロビル三リン酸をDNA中に取り込む確率はウイルスのDNAを取り込む確率の100分の1です。アシクロビルの毒性の低さはこの2段階の選択性によっているのです。つまり3000×100で30万倍の選択の確率となるからです。アシクロビルがDNAに取り込まれるとデオキシリボースの大部分が欠落してしまいます。というのは特に次のヌクレオチドが付加される環状の糖の3‘-OH基が欠けてしまうからです。その結果、それ以上の塩基がウイルスのDNAに付加されなくなりDNA合成が中断してしまい、完全なヘルペスウイルスのDNAが完成されなくなってしまうのです。未完成のDNA合成が終結してしまいます。つまり環状の糖の3‘-OH基が欠けてしまうアシクロビルおよび他の多くのヌクレオシドアナログはすべて未完成のDNA伸長終結剤なのです。さらにアシクロビルについては次のヌクレオチドを付加しようとしているウイルスウイルスDNAポリメラーゼが不活性複合体に取り込まれてしまうという別の効果もあるので更にウイルスが増えにくいという効果も生まれます。従ってアシクロビルはウイルスの酵素によって活性化されてウイルスDNAに取り込まれるという点でアシクロビルは非常に抗ウイルス剤として特異性が強くかつ効果的であると同時にウイルスに感染していない細胞に取り込まれても活性化することはないので正常な細胞に対する毒性は極めて低いという優れた抗ウイルス剤なのです。アシクロビルの発明でノーベル賞をもらったエリオンは世界で初めてウイルスに効く薬を見つけたのみならず副作用も薬剤耐性も細胞や人体に対する毒性も無いと言える薬剤を発明したからです。さらに薬剤耐性もない最高の抗ヘルペス剤なのです。

何故アシクロビルがherpesに対して薬剤耐性が問題にならないのかを最後に説明しましょう。

まず薬剤耐性とは何かを説明しましょう。薬剤耐性とは、あるいは単に耐性とは、患者さんが自分に対して何らかの作用を持った薬剤に対して抵抗性を持ち、これらの薬剤が効かない、あるいは効きにくくなる現象のことです。つまりアシクロビルがヘルペスの増殖を抑制出来なくなることです。

薬剤耐性獲得の遺伝的メカニズムはその薬剤に対して1)ウイルスなどの病原体が新たに独自の耐性機構を作り出す場合と、2)他の薬剤耐性病原体が持つ機構が何らかのかたちで伝達され、それを新たに取り込む場合がある。

1)の新規の耐性獲得はある薬剤に感受性の微生物が増殖していく過程で、薬剤耐性のウイルスが新たに生まれることがあるのは、ウイルスの染色体上の遺伝子が突然変異することで起きる。

2)の耐性の伝達はウイルスが、外来の遺伝子を取り込んだり、ウイルス同士で遺伝子をやり取りする仕組みを持っており、この仕組みを介して、あるウイルスが獲得した薬剤耐性が、別のウイルスに伝達されて新たな耐性ウイルスが生じる場合がある。

抗ヘルペス剤のアシクロビルの薬剤耐性ができにくいことを、難しいですが説明しておきましょう。

アシクロビルに対する耐性はチミジンキナーゼ遺伝子の、塩基の変異することがなかった保存配列領域に変異が起こり機能が完全に失われるときです。ウイルスのDNAポリメラーゼとは違って、チミジンキナーゼはherpesウイルスが複製する時には役に立ちますがウイルスにとっては必須な酵素ではありません。しかしチミジンキナーゼはアシクロビルのリン酸化のためには必須です。チミジンキナーゼを欠如している単純ヘルペスウイルス(HSV)変異体は病原性は弱いのですが大した病変を引き起こすことはありません。機能的で正常なチミジンキナーゼを持っているウイルスの複製を阻止することで新規の変異を必要とするよりもむしろそのような変異体を選ぶことになるでしょう。何故ならば大した病変を引き起こすことがないからです。 他のそれほど起こるわけではないアシクロビル耐性変異体はアシクロビルのリン酸化を止めるチミジンキナーゼの基質の特異性を増やすか又はDNAポリメラーゼの変異を増やしてアシクロビル三リン酸をDNAに取り込むのを止めてしまうことです。もちろんDNAポリメラーゼの変異を起こしてしまうとウイルスの        DNAを伸長することができなくなりポリメラーゼの機能を完全に喪失するのでDNAを伸長することができなくなりウイルスにとっては致命的になってしまうからです。確かにアシクロビル耐性にかかわるウイルス蛋白の変異が見られるいくつかの例はありますし例えばチミジンキナーゼアシクロビル耐性を生み出す変異はしばしば起こることはないのです。何故ならばそのような変異は時に見られますがチミジンキナーゼの機能の喪失という非常に特別な変異が必要であるからです。しかしながらそのようなアシクロビル耐性にかかわるウイルス蛋白の変異はチミジンキナーゼが保存されているのでより強い病原性を持つウイルスを生み出すこともあるかもしれません。

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