コラム ヘルペス関連

EBV(エプシュタイン・バール・ウイルス)について

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 ヘルペスウイルスは8種類から成り立っていますが、4番目のEBV(エプシュタイン・バール・ウイルス)は、抗体を作るリンパ球であるBリンパ球に好んで感染します。もちろん骨髄から作られたばかりのBリンパ球にも感染します。この生まれたばかりのBリンパ球は、既に述べたようにB1リンパ球といわれます。このB1リンパ球には、BCL(B cell receptor)と呼ばれるIgMが必ずついています。このIgMは、自然抗体であることも私のホームページを読んできた人はおわかりでしょう。この自然抗体であるIgMは、IgMを作る遺伝子の組み合わせによって何億種類も作ることができるのです。この生まれたばかりのBリンパ球にEBVが感染すると、感染したEBVは、はじめは潜伏感染という状態でおとなしくしていますが、患者の免疫が落ちると、EBVが突然暴れだし、このBリンパ球は、EBVによって活発な増殖能を持つリンパ芽球様細胞に変わります。これをLCLといいます。LCLとは英語で“Lymphoblastoid Cell Line”といい、“blastoid”が「芽球様」という意味であり、“Line”は「細胞系列」という意味であります。LCLになったBリンパ球は、細胞分裂を繰り返すとともに、細胞の寿命を決めるテロメアの長さが短縮して、細胞の染色体が不安定化し、死滅してしまうLCLもあるのですが、どういうものか、なかには不死化(immortalize)するLCLも出てくるのです。不死化というのは寿命がないことです。寿命がない細胞はこの不死化したLCLの中から生まれる腫瘍、つまりガンになることもあるのです。この不死化のメカニズムについてはまだ誰も知りません。

 さて、生まれたばかりのナイーブBリンパ球のレセプターが自然抗体IgMであることは既に説明しました。Bリンパ球のレセプターを英語で“B cell receptor”といい、略語でBCRいいます。生まれたばかりのBリンパ球には2種類のBCRが必ずひっついています。ひとつはIgDという抗体であり、もうひとつはIgMという抗体であります。このIgMのことを自然抗体IgMというのです。この自然抗体であるIgMを持っているBリンパ球に、EBVが感染した当初は潜伏感染でありますが、免疫が落ちると俄然このリンパ球は増殖を始めます。正常なBリンパ球は、元来は二次リンパ節に組織から運ばれた抗原がBCRに結びつき、様々な刺激を得て初めて形質細胞に変わります。形質細胞に変わると、同じ抗原を認識する同じIgMを産生するBリンパ球がどんどん増殖します。ちなみに1個の形質細胞は1秒間に2000個のIgM抗体を産生します。さらに刺激を受けると今度は、抗体のクラススイッチを行い、必要に応じて様々なサイトカインによって自然抗体IgMをIgGに変えたり、IgAやIgEになっていくのです。さらにソマティック・ハイパー・ミューテーション(日本語で体細胞高頻度突然変異)を起こして、Bリンパ球のレセプターが抗原とさらに強く結びつくようにレセプターの遺伝子が突然変異をして、レセプターのタンパクが変わってしまうのです。

 ところが、EBVが感染したBリンパ球は、上に述べた正常な抗原との出会いやサイトカインの刺激が一切ないのにもかかわらず、EBVの遺伝子によって無理矢理に形質細胞に変えられてクローンのIgMを作るのみならず、クラススイッチをさせられて同じクローンのIgGを作り、どんどんIgMやIgGを血中に放出し続けるようになります。もちろんIgAやIgEにもクラススイッチさせてしまうこともあるのです。従って、EBVが感染したBリンパ球に作らせたIgMもIgGも抗原なしに作られたものですから、どちらも自然IgMと自然IgGといっても間違いではないのです。さらに考えを進めていくと、EBV感染によって不死化したBリンパ球は単にIgMやIgGのみならず、IgEやIgAも作ってしまうので、これらの抗体も自然IgEや自然IgAといってもよいでしょう。

 自然抗体IgG、IgA、IgEを半自然抗体IgG、IgA、IgEと言い直したほうが良いということを説明します。なぜかというと、クラススイッチをするためには必ずBリンパ球がCD40を作り、かつBリンパ球と結びつくTリンパ球がCD40Lが必要であることを説明する中で気づきました。そこでまずなぜ半自然抗体IgG、IgA、IgEといったほうが良いかを説明しておきます。

 EBウイルスが最も感染しやすいのは、粘膜の上皮細胞やBリンパ球であります。人間の遺伝子は23000個余りであることはご存知ですね。EBウイルスは遺伝子を80種類持っています。これらの細胞に感染しているEBウイルスが潜伏感染しているときには、80種類のEBウイルスの遺伝子は、ほとんど発現していないのです。感染した宿主である人間の免疫が落ちてしまうと、隙を見て増殖しようとします。

 増殖するために必要なタンパクを作るためには、80種類の遺伝子の多くが発現し、タンパクを作り始めます。自分のコピーを作ると次の細胞に感染していきます。このとき、いわゆる専門用語で、細胞を殺すときに細胞を融解させるので、溶解感染をするといいます。

 このような溶解感染を起こして細胞を次々に殺して、隣の細胞に感染しようとしたときに初めて様々なEBウイルスの遺伝子が発現するのはおわかりでしょう。ところが、このEBウイルスの遺伝子が発現して、様々なタンパクが作られれば作られるほど、そのタンパクを異物として認識する免疫に見つけられやすくなります。特にEBウイルスを認識したキラーT細胞が、EBウイルスが感染した細胞もろとも殺そうとする免疫との激しい戦いとなり、症状がますます激しくなり、新しい病気がEBウイルスによって生まれだすのです。

 難しいことを書けば潜伏感染のときにEBウイルスが発現している遺伝子はLMP-1と、LMP-2AかLMP-2Bであります。このLMP-1“Latent membrane protein-1”の略であり、日本語では「潜伏感染膜タンパク」であり発がん活性を持っていることも知られています。しかもなんとBリンパ球が持っているCD40を発現し、かつB細胞がリンパ芽球様細胞、つまり潜伏感染細胞にさせることができるのです。このCD40からのシグナルが持続的に活性化されると、転写因子であるNF-κBがONになり、Bリンパ球の働きがトランスフォームしてしまうのです。

 トランスフォームというのは、形質転換ともいい、Bリンパ球に自然抗体IgMから自然抗体IgGを作らせてしまうのです。私はEBウイルスが感染したBリンパ球が自然抗体IgGを作らせると書きましたが、その根拠は書きませんでした。まさにLMP-1がBリンパ球にCD40を発現させることによって、無理やりクラススイッチを行わせたのです。本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、クラススイッチが行われるのです。これだけの話でもEBウイルスがいかに難解な敵であるかがおわかりでしょう。

 それでは、どのようにしてクラススイッチしてIgG抗体やIgA抗体やIgE抗体ができるのでしょうか?さきほど、「本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、クラススイッチが行われるのです。」と書きました。どういう意味でしょうか?CD40もCD40Lも既に書いたのですが、Co-stimulatorとか、Co-stimulatory moleculeというのですが、日本語では、共刺激分子とか補助刺激分子といいます。Bリンパ球が抗体のクラススイッチをしたり、体細胞高頻度突然変異を行うためには、必ずTリンパ球のCD40Lという分子と結びつかなければ絶対に起こらないのです。つまりBリンパ球が活性化するためには、Tリンパ球のCD40Lが必要なのであります。

 それではこのようなCD40やCD40Lはどのようにして作られるのでしょうか?まずCD40はどのように作られるのかを説明しましょう。まさにEBウイルスのLMP-1がBリンパ球に無理やりCD40というCo-stimulatory moleculeを発現させることによってであることはすでに説明しました。それではTリンパ球のCD40LというCo-stimulatory moleculeはどのようにして作られるのでしょうか?発現されるのでしょうか?それはBリンパ球に感染したEBウイルスがBリンパ球のクラスⅡMHC(MHCⅡ)がリンパ球の膜に提示されるときに、HLA-DRというレセプターに乗せて提示されます。そうすると、数多くのT細胞の中で、これを認識するT細胞が刺激され、CD40LがT細胞にどんどん作られ、その結果、Bリンパ球のCD40とT細胞のCD40Lが結びつき、クラススイッチを行わせるのです。本来、Bリンパ球が持っているCD40というのは、Th1リンパ球が持っているCD40Lと結びついて初めて活性化され、抗体のクラススイッチが行われるのです。

 従って、私がEBウイルスが無理やり作らせる自然抗体IgG、自然抗体IgA、自然抗体IgEという表現は、半分正しくて半分間違いという面があります。というのは、CD40はLMP-1は無理やりBリンパ球に作らせます。一方、CD40Lは、EBウイルスに感染したBリンパ球が、抗原提示細胞として、それを認識するヘルパーT細胞を刺激して、CD40Lを作らせたのですから、これは自然な出来事と言えます。

 念のために書きますが、抗原提示細胞の仕事をするのは3つあります。樹状細胞と、大食細胞と、Bリンパ球であります。Bリンパ球に感染したEBウイルスを切り刻んでペプチドにし、Bリンパ球が持っているMHCⅡというタンパクと結びつけて、Tリンパ球にEBウイルスを提示するのです。その意味でCD40を作るのは、無理やり作らせるという意味で無理やり抗体と言ったほうがよいのかもしれませんね、ワッハッハ!

 見方を変えれば、抗原と出会って作られた抗体ではないので、自然抗体IgMと同じく自然抗体IgGと呼んでもいいと考えたのですが?一方、CD40Lは自然に生まれたものですから、自然抗体IgGとは半分意味が違うので、半自然抗体IgG、IgA、IgEというべきでしょうか?ワッハッハ!

 例えば、アレルゲンが全くないのにアレルギー症状が突然ひどくなる人かがいます。当然アレルギーでステロイドをたっぷり使ってきた患者さんであり、免疫を抑えてきた人ですから、必ずEBVに感染しています。一度EBVに感染してしまうと、免疫は絶対に殺すことができないので、永遠に人体に住み続けます。ですから、原因不明のアレルギーというのは、EBVがBリンパ球にIgEを作らせた病気であると断言できるのです。この考え方をあらゆる原因不明の病気に敷衍していくことができるのです。言い換えると自己免疫疾患を含めて、あらゆる現代の原因不明の病気や特発性の病気といわれる病気の原因は、全てEBVに感染したBリンパ球が作り出した多クローン性の抗体によるものだと言っても過言ではないのです。もっと具体的に説明しましょう。

 さぁ、これからが山場の話となります。EBVはひとつの種類のBリンパ球、言い換えると1種類のIgMだけを作るクローンのBリンパ球だけに感染するのではなくて、非常に様々な多種類の異なったIgMを持った多くのクローンのBリンパ球にも感染していきます。EBVは膨大な数のBリンパ球に感染するのです。その結果、本来抗原を認識して様々な段階を経て初めてBリンパ球は抗体が作れるにもかかわらず、EBVがBリンパ球に感染することだけで、多クローンの抗体、つまり多種類のIgMを作ることになります。これは極めて恐ろしいことです。しかし実際に起こっていることです。なぜ怖いのでしょう?なぜならばEBVがリンパ球に感染することによって作られた様々なIgM抗体が、さらにクラススイッチしたIgGやIgAやIgEが人体の様々な成分と結びついてしまうとどうなるでしょうか?何の目的もなしにEBVがBリンパ球に作らせた膨大な種類の抗体が血中にどんとどん流れ始めると、交差反応(クロスリアクション)が起こり、この無数に作られた抗体と結びつく人体の成分が必ず存在しますから、結びつくとまさに様々な不都合を生み出し、いわゆる見かけは自己免疫疾患という病気が生じてしまうのです。

 SLEの様々な症状はEBVと極めて関わりがあります。例えばループス腎炎とよばれる糸球体腎炎はEBVが関わる腎炎なのであります。ここでSLEに関する病名と症状を掲げましょう。

発熱、全身倦怠感、疲労感、食欲不振、体重減少などがみられます。

 皮膚・粘膜の症状には、蝶型紅斑(頬にできる赤い発疹で、蝶が羽を広げた形に似ている)が特徴的です。また、顔面、耳、首のまわりなどにできる円形の紅斑で、中心の色素が抜けてコインのようになるディスコイド疹もみられます。日光過敏を認めることが多く、強い紫外線を受けたあとに、皮膚に発疹、水ぶくれができ、発熱を伴うこともあります。また、手のひら、手指、足の裏などにできる霜焼けのような発疹も特有な症状です。その他、大量の脱毛や、口腔内や鼻咽腔に痛みのない浅い潰瘍ができたりします。

 関節の症状には、手指にはれや痛みがあるために関節リウマチと間違えられることもありますが、SLEでは関節リウマチと異なって骨の破壊を伴うことはほとんどありませんが、SLEの一症状として関節リウマチの症状が出ることもあるのです。というのは、ご存知のようにSLEのSは英語のSystemicであり、全身性という意味があります。つまり、SLEは、全身に出る自己免疫疾患という意味でつけられたのです。従って自己免疫疾患で一番怖い病気は全身性のSLEになるので、訳も分からずに大量のステロイドを使うことを医者は患者に勧めるのです。ちなみにLupus erythematosusは、ドイツ語でLupus erythematodesといいます。

 臓器の症状では、腎症状としては、急性期に蛋白尿がみられ、尿沈渣(ちんさ)では赤血球、白血球、円柱などが多数出現するのが特徴です(テレスコープ沈渣)。糸球体腎炎(ループス腎炎)と呼ばれる腎臓の障害は約半数に現れ、放っておくと重篤となり、ネフローゼ症候群や腎不全に進行して透析が必要になったり、命にかかわったりすることがあります。

 心臓や肺では、漿膜炎、心外膜炎や胸膜炎の合併が約20%に起こります。間質性肺炎、肺胞出血、肺高血圧症(はいこうけつあつしょう)は頻度としては低いですが、難治性です。

 腹痛や吐き気がみられる場合には、腸間膜の血管炎やループス腹膜炎、ループス膀胱炎に注意が必要です。

 中枢神経の症状には、中枢神経症状(CNSループス)。多彩な精神神経症状がみられますが、なかでも、うつ状態・失見当識・妄想などの精神症状とけいれん、脳血管障害が多くみられます。

 その他の症状では、貧血、白血球減少、リンパ球減少、血小板減少などの血液の異常もよくみられます。また、抗リン脂質抗体という抗体がある場合は、習慣性流早産、血栓症、血小板減少に基づく出血症状などの症状、抗リン脂質抗体症候群などです。

 皆さん、この症状の全てが実はEBVが感染したBリンパ球が作り出す抗体によるものなのです。なんとびっくり仰天でしょう!!!おそらく私は死ぬまで全ての自己免疫疾患の原因、特にSLEの原因を完璧に明らかにし、かつその治療のためにEBVを増やさせない治療を言い続けることになるでしょう。8種類のヘルペスウイルスを増殖させない抗ヘルペス剤の開発に世界中の医薬業界は一丸となってまい進すべきだと言い続ける一方、EBVを増やさないために免疫を抑えない医療を声高に叫び続けるでしょう。最悪の人類の敵であるEBVが世界中に広まるのは、免疫を抑える薬しか作れない薬業界なのだと弾劾し続けることになるでしょう。そして死ぬまで医薬業界から憎まれ狙われ続けることになるでしょう。私の最期はどうなるでしょうか?わかりません。ワッハッハ!

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