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生まれつきの遺伝子癌は存在しないのですが何故癌になりやすい人が生まれるのでしょうか?更新2025.9.1

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LOHとは「対立遺伝子喪失(LOH)」とは、ヘテロ接合性(相同染色体上の異なる対立遺伝子の存在)を持つ細胞が、片方の対立遺伝子を失ってヘテロ接合性をなくす現象を指します。これはがん細胞で頻繁に発生し、特に片方の対立遺伝子に異常な変異が生じた後に、もう片方の正常な対立遺伝子が失われることで、がん抑制遺伝子の機能不全を引き起こすなど、がん化の過程で重要であることが示唆されています。

ヘテロ接合性(ヘテロせつごうせい)とは、人のように染色体が二倍体生物の特定の遺伝子座において、親から受け継いだ2つの対立遺伝子が異なる状態のことを指します。ヘテロの意味は「異なった」という意味です。例えば、遺伝子型が「Aa」のように、Aとaという異なるアレル(対立遺伝子)を持つ場合にヘテロ接合体と呼ばれます。ヘテロ接合性状態の個体は、一方のアレル(対立遺伝子)がもう一方のアレル(対立遺伝子)に対して優性である場合、優性形質が現れます。

ヘテロ接合性の特徴①遺伝的多様性の源泉:異なる対立遺伝子を持つヘテロ接合体は、集団全体の遺伝的多様性を高め、環境への適応能力を向上させます。②優性・劣性の発現:一方のアレルが優性で、もう一方が劣性の場合、遺伝子座の形質としては優性の形質が表現されます。③共優性:一部のアレルでは、両方の対立遺伝子の形質が同時に、または一定の割合で発現する場合があり、これを共優性と呼びます。④ホモ接合性:2つのアレルが同一である(例: AA または aa)。ヘテロ接合性と対照的な概念がホモ接合性です。⑤ヘテロ接合性:2つのアレルが異なる(例: Aa)。⑥ホモ接合性とホモ接合性の違い:ヒトのABO式血液型:A型、B型、O型の遺伝子には、ヘテロ接合型(AO、BO、AB)とホモ接合型(AA、BB、OO)があります。⑦医学的・生物学的な重要性:ヘテロ接合性の理解は、遺伝性疾患の診断や治療法開発に不可欠です。⑧遺伝性疾患:病気の原因となる遺伝子変異をヘテロ接合性で持つ場合、発症しない「キャリアー」となることがありますが遺伝性疾患になりやすいのです。⑨進化への寄与:進化の過程で集団にヘテロ接合性が蓄積することで、新しい環境への適応や選択の基盤となります。

 

LOH(対立遺伝子喪失)が起こるプロセスの順序とは何でしょうか?
1. ヘテロ接合性:

正常な細胞では、同じ遺伝子座に両親から受け継いだ2つの対立遺伝子(異なる配列を持つ)が存在します。この状態をヘテロ接合性といいます。
2. 片方の対立遺伝子の変異:
遺伝性の病気などで、片方の対立遺伝子に病的な変異が生じることがあります。
3. 対立遺伝子の喪失:
がん細胞の発生過程などで、残っていたもう片方の正常な対立遺伝子が、欠失などによって失われます。
4. ヘテロ接合性の消失:
これにより、細胞内には変異した対立遺伝子だけが残る、あるいは全く対立遺伝子が存在しなくなるため、ヘテロ接合性が消失し、LOHが起こります。

LOHの重要性①がんの発生:LOHは多くのがん、特に腫瘍抑制遺伝子が関わるがんで一般的であり、がんの進行に深く関わっています。②がん抑制遺伝子の機能不全:腫瘍抑制遺伝子では、通常、片方の対立遺伝子が変異し、もう片方でLOHが起きることで遺伝子機能全体が失われる、いわゆる「二段階説」が提唱されており、遺伝性のがん細胞のみならず一般の癌の発生に不可欠なメカニズムの一つです。

 

このような人の癌は「遺伝性腫瘍」と呼ばれ、親から受け継いだ特定の遺伝子変異によって、がんにかかるリスクが高まることが原因です。遺伝性腫瘍では、体細胞のがん化に必要とされる追加の遺伝子変異のハードルが低くなっているため、後天的な遺伝子変異の蓄積が少なくてもがんが発症しやすくなります。

何故癌になりやすいひとが生まれるのか?①遺伝性腫瘍(先天的な遺伝子変異):生まれながらに持っている遺伝子に変異がある場合、その変異が親から子どもに50%の確率で遺伝します。この変異は、がん細胞に変わるために必要な遺伝子変異の「ハードル」を下げ、発がんを促します。
環境要因の蓄積:遺伝的な要因だけでなく、生活習慣や環境要因もがんの発症に影響します。喫煙や飲酒、感染症などが後天的な遺伝子変異の原因となり、がんのリスクを高めます。

LOHとは何か?
LOHは「対立遺伝子喪失(Loss of Heterozygosity)」の略称です。正常な細胞では、各遺伝子は2つの対立遺伝子を持っています。LOHは、染色体の片方から遺伝子全体または一部が失われることによって生じます。
遺伝性腫瘍を持つ人では、もともと片方に変異があるために、もう片方の遺伝子にLOHが起きると、その遺伝子が持つがん抑制機能が失われることがあります。これは、がん細胞が分裂を繰り返す過程で生じる体細胞レベルでの遺伝子の変化の一つです。

 

いいえ、LOH(片アレル不活化)は「親から子どもへ50%の確率で遺伝する」遺伝子病の例とは異なります。親から子へ「生殖細胞」を通じて遺伝する50%の確率は、特定の遺伝子変異が常染色体優性遺伝の形式で親から子に受け継がれることを指し、LOHとは、体細胞内で片方の遺伝子の働きが失われる現象です。

親から子への50%の遺伝とは何でしょうか?①メカニズム:多くの遺伝性疾患や遺伝性腫瘍は、常染色体優性遺伝の形式をとります。これは、両親の片方から病的変異を持つ遺伝子を1つ受け継いだだけで発症する、あるいはその疾患の発症に関わる遺伝子のことです。②伝わり方:この場合、変異を持つ親から子どもへは、子どもが持つ2つのうちどちらか1つの遺伝子を受け継ぐため、50%の確率でその変異が子どもに遺伝します。③50%の遺伝の例:遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のBRCA遺伝子変異や、リー・フラウメニ症候群の原因となるTP53遺伝子の病的バリアントなどが、この50%の確率で遺伝する例です。

LOH(片アレル不活化)と遺伝性疾患との違い:①LOHは、「生殖細胞」を通じて起こるのではなく体細胞の片方の対立遺伝子(アレル)が失われるか、または機能しなくなる現象です。親から遺伝するのではなく、生まれつきの遺伝子変異を持つ細胞が、がん化など何らかの要因で、残った正常な対立遺伝子の方も不活化させることで起こります。②遺伝性疾患との発生のタイミング:親から子へ50%で遺伝するのは「生殖細胞」を通じて起こることで、すべての子の細胞にその変異が共通して存在します。③LOH(片アレル不活化)の発生のタイミング:LOHは、がん細胞など「体細胞」で後天的に発生するもので、子どもに遺伝することはありません。

遺伝子病である遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)のBRCA遺伝子変異とは
遺伝性乳がん卵巣がん症候群(hereditary breast and ovarian cancerの略がHBOCで訳して遺伝性乳がん卵巣がん)は、BRCA1(breast cancer susceptibility gene I、乳がん感受性遺伝子I)またはBRCA2(breast cancer susceptibility gene2、乳がん感受性遺伝子2)遺伝子に変異があるために、乳がんや卵巣がんになりやすい遺伝性の疾患です。この変異は親から子へと50%の確率で遺伝し、男性・女性に関わらず伝わります。変異があっても必ずしもがんになるわけではありませんが、がんのリスクが高まります。1、BRCA遺伝子の役割BRCA1/2遺伝子は、体内のDNAの傷を修復する働きを持っています。この機能により、細胞ががん化するのを防いでいます。2、BRCA遺伝子変異による影響BRCA遺伝子に生まれつき変異があると、DNAの修復機能が失われます。そのため、がん(特に乳がん、卵巣がん)を発症しやすくなります。前立腺がんや膵臓がんなど、他のがんも発症しやすくなることがあります。3、遺伝についてBRCA遺伝子変異は、性別に関係なく、両親のどちらかから子どもに50%の確率で遺伝します。変異を受け継いでもがんが必ず発症するわけではありませんが、発症年齢は一般より若く、生涯発症リスクは高くなります。4、HBOCとBRCA遺伝子検査HBOCの診断は、BRCA1/2遺伝子の病的変異を特定することで行われます。
この遺伝子検査は、保険適用されており、検査結果に基づいて治療方針の決定や、血縁者への遺伝情報提供、そして予防的な手術や画像検査などが可能になります。

遺伝子病である遺伝性リー・フラウメニ症候群の原因となるTP53遺伝子の病的バリアントとは
遺伝性リー・フラウメニ症候群の原因となるTP53遺伝子の病的バリアントとは、TP53遺伝子に生殖細胞系列(親から子へ受け継がれる)の病的(疾患を引き起こす)な変化・異常が存在する状態を指します。TP53遺伝子には癌の発症を抑える働きがありますが、この変化によってその働きが失われ、がんを発症しやすくなることがリー・フラウメニ症候群の根本的な原因です。1、TP53遺伝子とリー・フラウメニ症候群の関係①TP53遺伝子の役割:TP53遺伝子は、細胞の増殖を制御し、DNAの損傷を修復する、がんの発生を抑制する重要な役割を担っています。2、病的バリアントの意味:生まれつきTP53遺伝子に変異(病的バリアント)があると、このがん抑制機能がうまく働かず、体内の細胞ががん化しやすくなります。3、リー・フラウメニ症候群のリスク:この病的バリアントを持つ人は、小児期から成人期にかけて、副腎皮質がん、乳がん、脳腫瘍、骨肉腫、軟部肉腫といった多様ながんを非常に発症しやすい特徴があります。
リー・フラウメニ症候群とは、TP53遺伝子に生殖細胞系列で病的バリアントを持つことが原因で、生涯にわたって様々ながんを発症するリスクが高まる遺伝性疾患です。

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