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ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌を発生させますがその癌の起こる機序とヘルペスウイルスが癌を起こすのとどのように違いがあるのでしょうか?またHPVはワクチンが作られるので子宮頸癌は根絶できるのは何故でしょうか?更新2025.9.3

投稿日:2025年8月20日 更新日:

ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌(増殖過剰細胞)を発生させますがその癌(増殖過剰細胞)の起こる機序とヘルペスウイルスが癌を起こすのとどのように違いがあるのでしょうか?またヒトパピローマウイルス(HPV)はワクチンが作られるので子宮頸癌(増殖過剰細胞)は根絶できるのは何故でしょうか?

 

子宮頸部の細胞に感染したHPV (ヒトパピローマウイルス)は細胞のゲノムDNAに組み込まれたDNAから生成されるmRNAは、A、B、Cの3つのいずれかのパターンに分類されますが、いずれの場合も細胞の癌化(増殖過剰細胞化)に関わるE6とE7の2つの遺伝子のみが発現します。

E6とE7の役割とは何でしょうか?:①E6:p53という腫瘍抑制タンパク質を分解し、細胞の老化やアポトーシス(プログラムされた細胞死)を抑制します。これにより、細胞が異常に増殖しやすくなります。p53(ピー53)とは、細胞のがん化(増殖過剰細胞化)を防ぐ働きを持つ、重要ながん抑制遺伝子です。p53は、細胞がDNA損傷などのストレスを受けた際に、細胞周期を停止させたり、細胞死(アポトーシス)を誘導したりすることで、がん化(増殖過剰細胞化)を抑制する役割を担っています。p53の主な役割:①細胞周期の制御:細胞が異常に増殖するのを防ぎます.②DNA修復:DNA損傷を修復し、遺伝子の安定性を保ちます.③アポトーシス誘導:修復不能な損傷を受けた細胞を排除し、がん化(増殖過剰細胞化)を防ぎます.④血管新生の抑制:がん細胞の増殖に必要な血管の新生を抑制します.

②E7:Rbという腫瘍抑制タンパク質を分解して、細胞周期を制御するタンパク質の機能を阻害します。これにより、細胞が過剰に増殖しやすくなります。これらのE6とE7の機能により、HPVはがん化を促進することで良性腫瘍が生まれるのです。子宮頸部の良性腫瘍が子宮頸がんに悪性化するメカニズムは、主に子宮頸部異形成という良性腫瘍である前癌病変を経由することが多いのです。子宮頸部異形成は、子宮頸部の細胞が異常に変化した状態で、軽度、中等度、高度と段階があり、高度異形成になるとがん化のリスクが高まります。この異形成が進行し、がん細胞が子宮頸部の組織を侵襲するようになると、子宮頸がんと診断されます。子宮にできる良性腫瘍には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部高度異形成などがあります。このうち、子宮頸部高度異形成は、子宮頸がんの前がん病変として、がん化のリスクが高い状態です。がん化するまでの期間は子宮頸部異形成から子宮頸がんになるまでの期間は、数年から10年以上と長い期間を要することが一般的です。高度異形成からがん化するまでの期間は、数年程度とされています。Rbとは医学において「Rb」は、主に2つの意味で用いられます。一つは網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)という小児がんの略称、もう一つはがん抑制遺伝子Rb1(Retinoblastoma 1)の略称です。1. 網膜芽細胞腫(Retinoblastoma, Rb):網膜芽細胞腫は、網膜の細胞から発生する悪性腫瘍で、主に乳幼児期に発症します。がん抑制遺伝子(Retinoblastoma 1略してRb1,)の父からと母からの両方のRb1遺伝子に変異が生じることで発症します。片側性(片目のみ)と両側性(両目)のタイプがあります。2. がん抑制遺伝子Rb1(Rb1, Retinoblastoma 1):RB1遺伝子は、細胞周期を制御する重要な遺伝子で、がんの発生を抑制する役割を持っています。RB1遺伝子の変異は、細胞周期の制御がうまくいかなくなり、がん化を促進する可能性があります。RB1遺伝子の変異は、網膜芽細胞腫だけでなく、他の多くの癌腫(増殖過剰細胞)でもみられます。

このように子宮頸部の良性腫瘍が癌になるまでに長期間かかるのでそれまでにヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンを接種しておけば癌(増殖過剰細胞)を作るヒトパピローマウイルス(HPV)を殺しきれるので子宮頸部がんにならないのです。

ヒトパピローマウイルスと子宮頸癌
HPV は 8000 塩基対の環状 2 本鎖 DNA をゲノムとする小型のウイルスで,エンべロープは無い.
表皮基底細胞に侵入し,核内エピゾームとして潜伏持続感染する. エピソームとは、細胞内で染色体外に自律的に増殖する能力を持ちながら、宿主細胞の染色体に組み込まれることもできる遺伝要素(DNA)のことです。この寄生因子は、核内の染色体以外の状態で存在し、プラスミドのような自律的に複製する「染色体外の状態」と、宿主の染色体に組み込まれる「組み込み状態」の両方をとりうるのが特徴です。ヘルペスウイルスも宿主の染色体に組み込まれる「組み込み状態」 エピソームの具体的な例として溶原ファージのDNAがあります。溶原ファージとは細菌に感染しても増殖せず、ゲノムDNAに取り込まれたり又はプラスミド状態になったりして、細胞を破壊することなく細胞と行動を共にするものがある。 このようなファージを溶原ファージという。 溶原化したファージをプロファージ、プロファージを持った宿主菌を溶原菌という。さらに細胞を殺して溶解させて子孫を残す溶解ファージもいます。ファージとはバクテリオファージとも言われ、細菌に感染するウイルスであり、細菌の細胞内を利用して増殖するウイルスです。遺伝情報を持つDNAとタンパク質の外殻で構成され、宿主となる細菌を破壊して新たなファージを放出する仕組みを持ちます。生物としての細胞構造を持たず、自己増殖能力を持たないことから、一般的には生物と無生物の中間的な存在とされます。
大腸菌の染色体上に組み込まれた状態(プロファージ)で安定した増殖をするなど、染色体内外で増殖できる状態をとるものがエピソームです。
F因子(性決定因子):大腸菌の接合性(性別)に関わるエピソームで、染色体外にも染色体上にも存在できます。
R因子(多剤耐性因子):細菌が複数の抗生物質に耐性を持つようにさせるためのエピソームで、プラスミドとして細胞内に広く存在する遺伝因子です。
主な特徴
自律的な増殖能:細胞の複製時に、エピソーム自身の複製も行い、娘細胞に引き継がれます。
組み込まれる能力:ある条件が整うと、宿主細胞の染色体に組み込まれることがあります。感染細胞が表皮形成の分化を始めると,HPV ゲノムの複製に利用するため,E6 蛋白質が p53 を分解し,E7 蛋白質が pRb の機能を阻害して細胞の DNA 合成系を再活性化する. pRbとはRb遺伝子のタンパク質です。Rb遺伝子はpRbというタンパク質をコードしており、このタンパク質は細胞周期の制御や細胞増殖の抑制に関わる「腫瘍抑制因子」として機能します。
通常は、ウイルス増殖後に感染細胞は死滅する.ごく稀に細胞DNA に E6,E7 遺伝子が組み込まれ,ウイルス増殖ができないにもかかわらず E6 及び E7 蛋白質が継続的に高発現することがある.このような細胞は不死化し,さらに変異が蓄積して癌化する.100以上の遺伝子型のうち,このような機構で子宮頚癌に関わるものは 16 型や 18 型等の 13 の型(高リスク型)である.主要キャプシド蛋白質のみを細胞で高発現させると,自律的に集合してウイルス様粒子ができる.6,11,16,18 型のウイルス様粒子を抗原とするワクチンの臨床試験が行われ,これまでの成績は型特異的な感染予防効果を示している

HPV による発癌のメカニズムとHPV に対するワクチンの開発。
HPV 感染細胞が分化し,小規模なウイルス増殖が起れ ば,細胞は死滅し発癌することは無い.HPV ゲノムが細胞 の DNA に組み込まれてしまい,組み込み部分でウイルス遺伝 子の一部が欠失する場合や,DNA のメチル化によってウイルスゲノムの後期遺伝子部分が不活化する等の機構でウイルスが増殖できないにも拘わらず,高リスク型 HPV の E6 及び E7 蛋白質の継続的な高発現が起こると,異常な増殖能 を持つ細胞となる.特に,E6,E7 遺伝子の過剰発現を抑 制する機能を持つ E2 遺伝子が,組み込み過程で不活化す ることは E6,E7 遺伝子の高発現に重要だと考えられている .いずれにしろ,E6,E7 蛋白質に 対する抗体は,子宮頸癌患者の血清中にのみ検出されるので,子宮頸癌で発現している E6,E7 蛋白質のレベルは, 通常の潜伏持続感染と感染細胞の分化に伴う増殖時に発現 するレベルよりはるかに高いのです。高レベルの E6 蛋白質の発現は,多くの癌細胞でみられる p53 の機能不全と同様な効果を持ち,アポトーシスの抑制と DNA に生じた損傷の固定化をもたらす様々な変異が蓄積し,悪性形質を獲得してしまうのです。癌抑制蛋白であるp53 や Rb 以外の様々な細胞蛋白質が E6 及び E7 蛋白質 の標的となりになるのです。E6,E7 蛋白質の発 現レベルによっては,それらの標的蛋白質の機能が修飾さ れ,発癌に寄与することになるのです。しかし,HeLa や SiHa などの子宮頸癌由来細胞株では,HPV18 や HPV16 の E6 及び E7 蛋白質の発現が続いており,その発現をアンチセンス RNA や siRNA を使って特異的に阻害すると細胞 増殖が抑制される.即ち,これらの細胞の増殖能は, 癌化した後でも E6,E7 に依存している.

アンチセンス RNA とは
mRNA (メッセンジャーRNA) と相補的な塩基配列を持つRNAのことです。通常、mRNAの翻訳を阻害することでタンパク質合成を抑制する役割を持ちますが、中には翻訳を促進する「SINEUP」と呼ばれるものも存在します。

SINEUP とは
「長鎖ノンコーディングRNA」と呼ばれる、核酸(DNAやRNA)の仲間で、生体内で遺伝子からタンパク質がつくられる途中の「翻訳」という過程で働きます。siRNA(small interfering RNA、略してsiRNA訳して低分子干渉RNA)とは、約21〜23塩基対の二本鎖RNA分子で、RNA干渉(RNAi)と呼ばれる現象を介して遺伝子発現を抑制するのに用いられます。
外科手術で切除 された子宮頸癌を調べると,E6,E7 遺伝子の発現が可能な状態で高リスク型 HPV ゲノムが存在している。子宮頸癌発症の必要条件となっている E6,E7 の継続的な高発現やそれらの機能を阻害することによって,患者体内の癌細胞の増殖を抑制できる可能性がある.また E6,E7 蛋白質発現細胞を標的とする免疫療法の開発も可能かもしれないと言われています。HPV16 で形質転換した細胞の移植で腫瘍を形成している動物に,E6,E7 蛋白質を発現する組換えワクチニアウイルスを接種したり,E7 蛋白質を標的とする細胞障害性 T リンパ球を誘導することで腫瘍の消失ないし縮小が観察されている からです。
ワクチニアウイルスとは
ワクシニアウイルスによる感染は極めて軽度であり、一般的には健康な個体では症状は出ないが、軽度の発疹と発熱が起こる可能性がある。 ワクシニアウイルスに対する免疫応答が、致死的な天然痘感染から保護する。 そのため、ワクシニアウイルスは天然痘に対する生ワクチンとして現在でも利用されている。

HPV感染予防ワクチンの開発が終わり完璧なワクチンが世界中で使用されています。

HPV の感染をワクチンで予防できれば,子宮頸癌を根絶することが可能となりつつあります。HPV 感染予防ワクチン開発 の可能性は CRPV の感染実験で示された.CRPV によるウ サギの乳頭種から CRPV 粒子を回収し,それを皮膚にキズ をつけてウサギに感染させると 2~3ヶ月で乳頭種ができる.CRPVとは コオロギ麻痺ウイルスと言われるウイルスのことです。しかし,不活化した CRPV 粒子をワクチンとしてウサギに 接種しておけば,その後の CRPV 接種による乳頭種の形成 は起こらない.大腸菌で発現させた L1 蛋白質をワクチ ンとしても予防効果はなく,CRPV の L1 蛋白質による VLP は有効なので,VLP の構造が必要であることがわかった.
L1タンパク質とは、
細胞接着分子の一つで、神経系の発生や発達に重要な役割を果たす膜貫通型タンパク質です。特に、神経細胞の遊走や神経突起伸展に関与しています。また、ヒトパピローマウイルス(HPV)の主要な構造タンパク質でもあり、ウイルス粒子(ビリオン)の殻(カプシド)を構成します。

VLPとは
Virus-Like Particleで略してVLPで訳してウイルス様粒子のことです。 また,VLP(Virus-Like Particleで略してVLPで訳してウイルス様粒子⦆を接種したウサギの血清ないしIgG抗体を別のウサギに移入すれば予防効果が示され,IgG抗体が防御の主体であることがわかった.同様の成績はウシを用いたウシパピローマウイルス(BPV)1,2,4型の感染実験でも示されている.また,HPVに対する感染中和抗体を検出し定量するために,感染性偽ウイルスが作製されている.
感染性偽ウイルスとは
自身のエンベロープ蛋白質の代わりに、他のウイルスのエンベロープ蛋白質や特定の蛋白質を表面に一過的に発現させたウイルスのことです。L1及びL2遺伝子のコドン変異体からは,通常の培養細胞でL1タンパク質,L2蛋白質が高発現する.
L2蛋白質とは
ヒューマンパピローマウイルス(HPV)の構造タンパク質の一つで、ウイルスのカプシドを構成します。

HPVは、皮膚や粘膜に感染するウイルスで、一部の種類は子宮頸がんなどの原因となります。L2タンパク質は、ウイルスのゲノムを包み込み、感染を助ける役割を担っています。コドンとは遺伝子の塩基配列における3つの連続した塩基の並び(トリプレットレト)で、特定の アミノ酸を指定する遺伝暗号のことです。mRNA上ではコドンと呼ばれ、DNA上ではトリプレットと呼ばれます。そこで,L1,L2 コドン変異体の発現プラスミドと共に SV40 複製開始点を持つレポータープラスミドを SV40 T 抗原陽性の細胞に導入すると,複製したレポーターが L1/L2-キャプシドに取り込まれ,感染性偽ウイルスができる .
レポータープラスミドとは特定の遺伝子の発現を追跡・可視化するために用いられるプラスミドベクターのことです。レポーター遺伝子と呼ばれる、その発現が容易に検出できる遺伝子と、追跡したい遺伝子のプロモーター領域を連結させることで、プロモーターの活性や遺伝子発現の変化を調べることができます。
プラスミドとは細菌や酵母などの細胞内に存在する、染色体とは別の環状の二本鎖DNA分子のことです。細胞分裂の際に染色体と一緒に娘細胞に受け継がれ、染色体とは独立して複製されます。プラスミドは、細胞の染色体DNAとは別に、独自の複製起点を持っており、細胞内で自己複製することができます。
プラスミドとウイルスの違いはプラスミドは、DNAが環状に結合した二重らせん構造を持ちます。ウイルスは、DNAまたはRNAをカプシドで包んだ構造をしています。プラスミドは、細胞内で自己複製できますが、ウイルスは、宿主細胞に感染して、その細胞の複製機構を利用して増殖します。プラスミドは、細胞間を移動して遺伝情報を伝達することがありますが、ウイルスのように感染して増殖する能力はありません。プラスミドは、細胞に特定の機能(例えば、薬剤耐性)を付与することがありますが、ウイルスは、細胞を破壊したり、病気を引き起こしたりすることがあります。プラスミドは遺伝子の運び屋であるベクターになれます。分子生物学分野では、遺伝子を細胞内に導入するためのベクターとして利用されます。ベクターとは遺伝子を細胞に導入するための「運び屋」としての役割を担う「遺伝子の運び屋がベクター」です。

HPV粒子の抗原性や感染中和抗体の解析は,これらの粒子を使って進められている.HPV6,11,16,18,31,33,45等のVLP(Virus-Like Particle)をマウスやウサギに接種して得た抗血清は,それぞれの免疫に使われた型のVLPにのみ特異的に結合し,それぞれの型の偽ウイルスの感染を特異的に阻害することが示された.VLP(Virus-Like Particle) とはVirus-Like Particleで略してVLPで訳してウイルス様粒子です。HPV16,18のVLPをマウスに免疫して得た複数の単クローン抗体の解析では,立体構造を認識する抗体が高い型特異性と感染中和活性を持つことが示された.これらの成績をもとに,メルク社ではHPV16,18,6,11のVLPを混合したワクチンを,グラクソスミスクライン(GSK)社ではHPV16,18のVLPを混合したワクチンを開発し,大規模な臨床試験を行っている.現在は完成して終わっています。16-23歳の女性にワクチン抗原をアジュバントと共に筋肉に3回(0,2,6ヶ月)注射し,被験者の血中抗HPVL1抗体の消長,子宮頸部擦過細胞の異常とHPVDNAの有無,子宮頸部異形成(CIN2/3)の有無,を調べている.これまでに,有害な副作用は報告が無い.極めて効率よく血清中に中和抗体が誘導され,その後徐々に抗体価は低下して1年半後に定常状態となるが,それでも自然感染で誘導される抗体価より数十倍高いと報告されている.プラセボ投与の被験者群ではHPV16,18型DNA陽性のCIN病変を生じるのに対し,ワクチン投与を受けた被験者にはHPV16,18型によるCINの発症が見られず,ワクチンによってHPV16,18型の感染を予防できる可能性が強く示されている.2006年6月には米国がメルク社のワクチンを,7月にはEUがGSK社のワクチンの市場導入を認めて現在使われています。しかし,未解決の課題は多い.どの程度の血清中の中和抗体価があれば感染阻害効果を持つかが不明なので,3回のワクチン接種が必要なのか,あるいは追加免疫が必要ないのか等のプロトコール(治験実施計画書)の最適化が残されている.効果判定の指標とされているCIN2/3は発症に時間がかかり,しかも頻度が低いため,実用的な代替指標としてはHPVのDNAの有無が考えられている.HPVのDNAの存在は感染の指標となるが,HPVのDNAを検出できなかったからといって感染を否定することはできないため,数ヶ月おきに連続して採取した試料を使うことが提案されている.しかし,どのような間隔で何回試料を採取すべきかはっきりしない.さらに思春期の女児を対象とすべきか,男児は接種対象とすべきか,胎児への影響はあるか,既感染者に効果はあるか,等々は今後の臨床試験のデータに基づいて議論しなければならない.特に,これらのワクチンは極めて型特異性が高い中和抗体を誘導するので,13の型が指摘されている高リスク群HPVの全てにどう対応するかが最大の課題である.現在ではこの最大の課題も克服されています。VLPワクチンを女性(平均20歳)に3回(0,2,6ヶ月)筋注し,接種後6ヶ月毎に子宮頸部の病変と頸部擦過細胞のHPVのDNAを調べた.接種から36ヶ月経過後の成績が公表された.HPVワクチンは感染そのものを防ごうとするもので,その成否が完全に明らかになるには長期にわたる臨床試験が必要である.L2蛋白質のN末端近傍領域はキャプシド表面に出ており,この表面領域のアミノ酸の欠失や置換変異を持つ偽ウイルスの感染性は著しく低下することから,この領域は感染に必須な役割を担っていることが示されている.大腸菌で発現させたHPV6,16,18のL2蛋白質をヒツジに免疫して得た抗血清は,それぞれHPV6,16,18の偽ウイルスの感染を阻害すること,CRPVのL2表面領域の一部で免疫したウサギは,CRPVの接種による乳頭種形成が無いことがわかり,L2蛋白質の表面領域に抗体が結合し,その機能を阻害すれば感染を阻止できることが示された.HPV16L2蛋白質の表面領域のアミノ酸配列を持つ合成ペプチドをウサギに免疫し,得られた抗血清の中和活性を調べたところ,アミノ酸56-81領域のペプチドを免疫して得た抗血清は,HPV16,18,21,58を効率よく中和することがわかった.この領域のアミノ酸配列は,高リスクHPV群で極めて良く保存されており,HPV各型に共通の機能を担っているらしい.この領域に対する抗体を効率よく誘導するワクチンを開発すれば,全ての高リスクHPV感染の予防が期待できる.

現在のVLPワクチンを受けても女性は子宮癌集団検診を受ける必要があるが,L2ワクチンが実用化されれば子宮癌検診から開放されよう.ひとつの潜伏持続感染部位に由来するHPVの増殖は,あまり頻繁には起こらないと思われる.しかし,女性生殖器などでは,いったん増殖すれば新たな持続感染部位ができ,それらの部位からもHPVが増殖すれば,やがて高頻度でウイルス増殖が起こる状態となる可能性がある.従って,持続感染細胞の数を増やさなければ,HPVによる発癌リスクが下がることが期待できる.ワクチンによってHPV初感染の予防を目指すと共に,既感染者に対しても有効な中和抗体を誘導できれば,感染の拡大を抑制することができ,発癌を防ぐことに繋がると考えられ現在証明されつつあります。

おわりにウイルスは,強い感染力と高い増殖能を持つものか,あるいは潜伏持続感染して宿主と共存するものに分けられる.前者は宿主に強い病後免疫を残すことになり,2度目の感染は起こらない.従って,集団内で新たな感受性宿主である子供が一定の頻度で生まれ続ける場合のみ維持される.ワクチンで根絶に成功した天然痘ウイルスや根絶が近いポリオウイルスはこのような性質のウイルスである.後者は,いったん感染すれば宿主が生存する限りウイルスも維持される.性行為感染のように少量のウイルスで,個体から個体へと能率良く伝搬する経路を持てば,ヒト集団の中で安定に維持されるのであろう.HPVはそのようにして長い間ヒト集団に存在してきたと思われる.また,HPVの遺伝子型の多さは,このウイルスが宿主に免疫応答を誘導せず,免疫系による排除を受けにくいことと関連しているのかもしれない.今後,子宮頚部の角化細胞の分化による表皮形成の分子機構の理解がすすめば,高リスク型と低リスク型HPVの生活環の違いが明らかにされ,HPV持続感染の阻止や感染細胞排除の方法も開発されるに違いない.現在は子宮頚部癌を引き起こすHPVに対する完璧なワクチンが完成さでたので子宮頚部癌は完全に征服されてしまいました。
従って最後に残されたあらゆる癌の原因となっているウイルスがヘルペスウイルスだけになってしまいました。手ごわいヘルペスウイルスに対するワクチンを発見するために世界中の医学者と製薬メーカーが一致団結して協力すれば可能になるでしょうか??????となればこの世から癌は絶滅することになるでしょう。

 

herpesウイルスとヒトパピローマウイルスの違い。ヘルペスウイルスは、エンベロープ(外膜)に複数の糖タンパク質(グリコプロテイン)を持っていますがヒトパピローマウイルスはエンベロープ(外膜)を持っていません。

ヘルペスウイルスは、エンベロープ(外膜)に複数の糖タンパク質(グリコプロテイン)を持っています。これらの糖タンパク質は、人である宿主のすべての細胞が持っている特定の受容体であると結合し、細胞への侵入を可能にするなど、ウイルスが細胞に感染する上で必須の役割を果たしています。


ヘルペスウイルスのエンベロープにある糖タンパク質の主な役割①あらゆる人体にある細胞への侵入:
ヘルペスウイルスのエンベロープにある糖タンパク質は、あらゆる的となる宿主である人のあらゆる細胞の表面にある特異的なレセプター(PILRA受容体)を認識し、細胞内への侵入(感染)を可能にします。
②あらゆる様な疾患の原因:
単純ヘルペスウイルス(HSV)の場合、gpB(グリコプロテインB)などの糖タンパク質がウイルスの宿主細胞への侵入に不可欠な役割を担っています。③ヘルペスウイルスの構造:ヘルペスウイルス粒子は、ほぼ球状で、外側から順にエンベロープ(脂質二重膜)、テグメント、カプシドといった主要な構造から構成されています。エンベロープの表面には、herpesウイルスの感染に必要な糖タンパク質gp(グリコプロテイン)が埋め込まれています。 gp(グリコプロテイン)の意味は「糖タンパク」です。

何故herpesウイルスはあらゆる人の細胞に癌を作ることができるのでしょうか?
herpesウイルスの人の細胞感染に必要なエンベロープにある糖タンパク質gp(グリコプロテイン)が人のすべての細胞にある糖タンパク質gp(グリコプロテイン)と結合してあらゆる組織に癌細胞を作ることができるのです。

ヒトパピローマウイルスはエンベロープを持っていますか?
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、エンベロープを持たないウイルスです。エンベロープとは、ウイルスが感染した細胞から出るときに細胞膜を被ってできる膜のことです。HPVは、このエンベロープを持たないため、アルコール消毒液などによる消毒が比較的効きにくいとされています。ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸部の粘膜細胞だけでなく、皮膚や粘膜のさまざまな細胞に感染しますがherpesウイルスのようにすべての細胞には感染できません。子宮頸部粘膜以外にも、肛門や外陰部などの粘膜にイボ(尖圭コンジローマ)を引き起こしたり、肛門がんや陰茎がん、中咽頭がんなどの粘膜以外にも皮膚にも感染して、他の様々な粘膜や皮膚の癌(増殖過剰細胞)の原因となることがあります。
HPVの皮膚への感染:
大部分のHPVの型は皮膚の細胞に感染し、皮膚疣贅(いぼ)の原因となります。
HPVの粘膜への感染:
一部のHPVの型は粘膜上皮に感染し、子宮頸がん、肛門性器疣贅(尖圭コンジローマ)、中咽頭がん、外陰がん、膣がん、陰茎がんなどの原因となることがあります。
HPVの感染経路:
主に性交渉によって感染しますが、感染部位は性器周辺の粘膜や皮膚など広範囲に及びます。
エンベロープとは:
細胞で増えたウイルスビリオンが細胞から出るときに、細胞膜を被ってできる膜のことです。
HPVの構造:
HPVは、エンベロープを持たない、直径50-55nmのDNA正二十面体粒子です。一方herpesウイルスは直径100~200nmのDNA二重鎖直鎖粒子です。
エンベロープと消毒:
エンベロープを持つウイルスは、エンベロープがアルコールなどで破壊されやすく、消毒が比較的容易です。
HPVの消毒:
HPVはエンベロープを持たないため、アルコール消毒液による消毒が効きにくいのです。

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