ヒトパピローマウイルス(HPV)は子宮頸癌(増殖過剰細胞)を発生させますがその癌(増殖過剰細胞)の起こる機序とヘルペスウイルスが癌を起こすのとどのように違いがあるのでしょうか?またヒトパピローマウイルス(HPV)はワクチンが作られるので子宮頸癌(増殖過剰細胞)は根絶できるのは何故でしょうか?
ヒトパピローマウイルス(HPV)と子宮頸癌(増殖過剰細胞)関係とは?
子宮頸部の細胞に感染したHPV (ヒトパピローマウイルス)は細胞のゲノムDNAに組み込まれたDNAから生成されるmRNAは、A、B、Cの3つのいずれかのパターンに分類されますが、いずれの場合も細胞の癌化(増殖過剰細胞化)に関わるE6とE7の2つの遺伝子のみが発現します。
E6とE7の役割とは何でしょうか?:①E6:p53という腫瘍抑制タンパク質を分解し、細胞の老化やアポトーシス(プログラムされた細胞死)を抑制します。これにより、細胞が異常に増殖しやすくなります。p53(ピー53)とは、細胞のがん化(増殖過剰細胞化)を防ぐ働きを持つ、重要ながん抑制遺伝子です。p53は、細胞がDNA損傷などのストレスを受けた際に、細胞周期を停止させたり、細胞死(アポトーシス)を誘導したりすることで、がん化(増殖過剰細胞化)を抑制する役割を担っています。p53の主な役割:①細胞周期の制御:細胞が異常に増殖するのを防ぎます.②DNA修復:DNA損傷を修復し、遺伝子の安定性を保ちます.③アポトーシス誘導:修復不能な損傷を受けた細胞を排除し、がん化(増殖過剰細胞化)を防ぎます.④血管新生の抑制:がん細胞の増殖に必要な血管の新生を抑制します.
②E7:Rbという腫瘍抑制タンパク質を分解して、細胞周期を制御するタンパク質の機能を阻害します。これにより、細胞が過剰に増殖しやすくなります。これらのE6とE7の機能により、HPVはがん化を促進することで良性腫瘍が生まれるのです。子宮頸部の良性腫瘍が子宮頸がんに悪性化するメカニズムは、主に子宮頸部異形成という良性腫瘍である前癌病変を経由することが多いのです。子宮頸部異形成は、子宮頸部の細胞が異常に変化した状態で、軽度、中等度、高度と段階があり、高度異形成になるとがん化のリスクが高まります。この異形成が進行し、がん細胞が子宮頸部の組織を侵襲するようになると、子宮頸がんと診断されます。子宮にできる良性腫瘍には、子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部高度異形成などがあります。このうち、子宮頸部高度異形成は、子宮頸がんの前がん病変として、がん化のリスクが高い状態です。がん化するまでの期間は子宮頸部異形成から子宮頸がんになるまでの期間は、数年から10年以上と長い期間を要することが一般的です。高度異形成からがん化するまでの期間は、数年程度とされています。Rbとは医学において「Rb」は、主に2つの意味で用いられます。一つは網膜芽細胞腫(Retinoblastoma)という小児がんの略称、もう一つはがん抑制遺伝子Rb1(Retinoblastoma 1)の略称です。1. 網膜芽細胞腫(Retinoblastoma, Rb):網膜芽細胞腫は、網膜の細胞から発生する悪性腫瘍で、主に乳幼児期に発症します。がん抑制遺伝子(Retinoblastoma 1略してRb1,)の父からと母からの両方のRb1遺伝子に変異が生じることで発症します。片側性(片目のみ)と両側性(両目)のタイプがあります。2. がん抑制遺伝子Rb1(Rb1, Retinoblastoma 1):RB1遺伝子は、細胞周期を制御する重要な遺伝子で、がんの発生を抑制する役割を持っています。RB1遺伝子の変異は、細胞周期の制御がうまくいかなくなり、がん化を促進する可能性があります。RB1遺伝子の変異は、網膜芽細胞腫だけでなく、他の多くの癌腫(増殖過剰細胞)でもみられます。
このように子宮頸部の良性腫瘍が癌になるまでに長期間かかるのでそれまでにヒトパピローマウイルス(HPV)のワクチンを接種しておけば癌(増殖過剰細胞)を作るヒトパピローマウイルス(HPV)を殺しきれるので子宮頸部がんにならないのです。