症例報告1例目
完治された病名1)急性咽頭蓋炎
患者:20歳、男性
この患者さんは以前、潰瘍性大腸炎・クローン病で治療され完治された患者さんです。7月半ばあたりから風邪のような症状が起こりましたが喉が痛いだけだったので軽く考えていました。
大学の春学期末試験が迫っている中、休めない状況の中で喉の痛みが日に日に強くなっていきました。食べ物を飲み込むときに強い痛みが伴うようになり、喉に口内炎が出来ているのかと思った患者さんは、私の論文の中に口内炎や喉の痛みはヘルペスウイルスが原因であると書いていたため、余っていた抗ヘルペス剤を1日4錠ほど飲まれましたがどんどん痛みが増すばかりでした。余っていた抗生剤も1日3錠ほど飲まれましたがこちらも全く症状に変化は見られず、次第には飲み食いするたび、果てに唾を飲み込むだけで喉に強い痛みを感じるようになりました。さらに息苦しさも感じるようになりました。しかし喉を見てみても何も異変が見られなかったそうです。おかしいと思った患者さんは大学の試験が終わり次第すぐに近所の耳鼻科に行かれました。それが7月末のことです。
耳鼻科で鼻からファイバースコープを入れられ診てもらったところ、「開業医では手に負えないレベルの喉頭蓋炎」「このままでは命に関わる」と言われ、すぐに大きな病院で治療するようにとのことでその足で家の近くの大学病院へ向かいました。のちに患者さんの親御さんにその耳鼻科の医者から心配の電話が入ってくるほどのものだったそうです。
大学病院の耳鼻咽喉科でもう一度鼻からファイバースコープを入れられ診てもらったところ、やはり喉頭蓋が腫れてこのままだと窒息すると言われました。喉頭蓋は気管の入り口、つまり声帯の前についている弁のようなもので、食べ物や飲み物を飲み込むときに誤って気管に飲食物が入らないように気管の入り口をカバーし、食道に飲食物を通すためのものです。患者さんの喉頭蓋は腫れて膨らみ、気管を塞ぎかけている状態だったのです。このままでは命に関わるとのことでステロイド剤と抗生剤を併用して治療するために緊急入院せざるを得ませんでした。
ステロイドは50㎎から始めて1日10㎎ずつ減らし、1週間ほどの入院でステロイドと抗生剤の点滴をされました。1週間で腫れが引き、ファイバースコープで見ても正常な喉頭蓋の形に戻り、8月初め頃に退院することができました。
患者さんはステロイドは免疫を抑え、表面的に症状を良くしているだけだということを理解されていたので、また症状がぶり返す可能性が充分にあり得ると考え、退院してすぐに私の松本漢方クリニックの方へ連絡を入れました。喉頭蓋炎は細菌が感染することで起こり、通常はインフルエンザ菌 Haemophilus influenzaeb型が原因です。患者さん希望により抗生物質を処方しました。退院時に大学病院からもらった抗生物質も含めてしっかり毎3錠服用されていました。しかし、不安は的中し予測通りに症状が悪化していきました。退院して1~2週間後ぐらいに抗ヘルペス剤を1日10錠、喉の漢方煎じ薬として駆風解毒湯を処方してしばらく続けてもらいました。すると症状は悪化せず、しばらく平行線を辿りながら徐々に症状が良くなっていき喉頭蓋炎を完治することができました。
漢方煎じ薬はステロイドに負けないほど気管支を拡張することが出来る上に、免疫を抑制する作用は全くないものですから、最後は自然後天的免疫寛容をもたらすことができるのです。
何故、漢方煎じ薬が免疫を抑えないのか?理由を簡単に述べておきましょう。ステロイドを止めて漢方煎じ薬だけ用いると、初めは抑制されていたIgE抗体が必ず上昇していきます。これが漢方煎じ薬が免疫を抑制していない証拠のひとつです。プレドニンなどのステロイドを使えば、好きなようにIgE抗体を下げることができます。リバウンドというのはステロイドをやめた後に免疫の抑制がなくなると再びこのIgE抗体が上昇していきヘルペスウイルスや化学物質といった異物を排除しようと戦いが起こり症状として現れるのです。さらに漢方煎じ薬だけを使い続けると、最後に自然後天的免疫寛容を起こし、自然に必ずIgE抗体が下がってくるのも漢方煎じ薬が人体の免疫の働きをヘルプしているだけで、抑制しているわけではないことを証明しているのです。さらに詳しく漢方煎じ薬が免疫を上げる理由を知りたい方は「漢方はなぜ免疫を上げるのか? partⅠ」と「漢方はなぜ免疫を上げるのか? partⅡ」を読んでみて下さい。