症例報告13例目
治した病名:1)潰瘍性大腸炎2)アトピー性皮膚炎
患者:当時49歳、男性、会社員
2015年10月、会社の定期健康診断の大腸検診の結果、要検査となり、12月に地元の病院にて大腸内視鏡検査を行ったところ、潰瘍性大腸炎と診断され、ペンタサ坐薬1gを処方されました。しかしこの時、粘液とともに血便、時には出血する症状があったため、2日間のみ服用されたそうです
処方:ペンタサ坐薬1g。ペンタサとは、消化管の炎症を抑える薬で一般名がメサラジンであり、商品名としてペンタサやアサコールがあります。
今後の治療をどうしたら良いのかインターネットで調べていたところ、当院を見つけ、受診されました。
過去の病気の経緯などを説明していただき、今まで様々な薬により免疫を抑えられてきたことを知りました。また過去にうつ病になり多種多様の薬を大量に処方され、認知力の低下や統合失調症の誤診をされた辛い経緯により、薬の怖さは充分に知っており、現代医療に疑問を感じ、潰瘍性大腸炎の治療も自分の免疫力で治す当院の治療法でやっていくことを決意されました。当初、大きい声で他の患者さんを怒鳴ったりしているのを聞いて怖がっていたようですが、診察を受けてみて非常にあたたかみのある気さくな人柄に見え「必ず治るよ!」と握手し叱咤激励を受けたことで患者さんは安心されました。
血便と出血を止める漢方薬と免疫を上げるために漢方風呂と抗ヘルペス剤を処方し、発芽玄米を白米代わりに食べるように指示しました。
処方:漢方煎じ薬、漢方風呂、抗ヘルペス剤。
なぜ、白米の代わりに発芽玄米を食べるように指示したか説明しましょう。まず、発芽玄米は玄米を約1~2日ほど摂氏32度前後のぬるま湯に浸し、1㎜程の芽が出た状態のものです。元来、玄米は白米に含有されないビタミンB1やミネラルが豊富ですが、発芽玄米は発芽時の酵素の働きにより、玄米に元々含まれていた栄養成分が増え、玄米の状態では十分に消化吸収しきれない成分や新しく有効な成分が発生します。さらに玄米よりも消化も味も良いうえに、玄米を発芽させたことによって様々な酵素が活性化されるため、胚乳に貯蔵されているデンプンやタンパク質が分解され、甘みや旨味を多く感じられるのです。また、炊飯器で発芽玄米を炊くと玄米と比べ比較的に消化が良く、玄米よりも甘みや旨味が増すので食べやすいです。
発芽玄米の主成分は、1)ビタミンB1(チアミン)、2)ビタミンE、3)脂質、4)炭水化物、5)ナトリウム、6)食物繊維、7)カルシウム、8)γ-アミノ酪酸(GABA)、9)γ-オリザノール(ポリフェノールの一種)、10)IP6(フィチン酸)、11)イノシトール(ビタミンB群)、12)フェルラ酸(抗酸化作用を持つフィトケミカルの一種)、13)マグネシウム、14)カリウム、15)亜鉛の15種類の成分が含まれています。以下に簡単に主成分の働きを記述していきます。
1)ビタミンB1(チアミン)は、糖質の代謝促進、中枢神経や末梢神経の働きの正常化、脚気の予防、記憶力低下を抑制します。脚気とは、ビタミン欠乏症の1つであり、重度で慢性的なビタミンB1の欠乏によって心不全や末梢神経障害を起こす病気です。
2)ビタミンEは、抗酸化作用、老化防止の働きを起こします。
3)脂質と4)炭水化物は体内でエネルギー源となる大切な栄養素です。
5)ナトリウムは、神経伝達や筋収縮に関わる重要な栄養素であり、生命維持に必要不可欠なミネラルの一種です。
6)食物繊維は、腸内環境の調整、消化に関わる器官の運動の活発化、糖や脂質の消化吸収の抑制、高コレステロール血症の予防を行います。
7)カルシウムは、人体の骨や歯の99%を構成し、血液や軟質組織に残りの1%が存在するミネラルであり、生理学的に生命維持に極めて重要なミネラルであり、長年日本人が不足しているミネラルです。また血管収縮と血管拡張、筋肉収縮、インスリンなどのホルモン分泌を媒介する役割を持ちます。
8)γ-アミノ酪酸(GABA)は、血中コレステロール低下作用、抗肥満効果、血圧上昇抑制効果、アレルギー予防、アトピー性皮膚炎改善効果、精神安定作用、ストレス軽減の働きを起こします。
9)γ-オリザノール(ポリフェノールの一種)は、皮膚の老化防止、皮膚の血液循環促進、自律神経失調症の緩和、更年期障害やそれに伴い頭が重い、イライラする、疲労感が取れない、良く眠れないなど症状の緩和の働きを起こします。
10)IP6(フィチン酸)は、抗酸化作用や抗ガン作用を行います。
11)イノシトール(ビタミンB群)は、脂肪肝や動脈硬化の予防の働きを起こします。
12)フェルラ酸は抗酸化作用を持つフィトケミカルの一種であり、活性酸素の除去やメラニン色素の生成を抑制します。
13)マグネシウムは、全ての生合成反応や代謝反応に必須のミネラルです。
14)カリウムは、体内の細胞外液に存在するナトリウムとのバランスにより、細胞を正常に保ったり、血圧調節を行い、体内の状態を常に一定にさせる働きがあります。
15)亜鉛は、遺伝子発現やタンパク質合成を行い、細胞や髪の成長と分化の役割をもち、多くの酵素に含まれています。
さあ、本題にいきましょう。なぜ発芽玄米が潰瘍性大腸炎やクローン病の症状を軽減する役割があるのでしょうか?それは10)IP6(フィチン酸)の働きによるものなのです。フィチン酸とは英語でphytic acidといい、phyticは「植物の」という意味があります。またフィチン酸の正式な化学名は、myo-イノシトール-1,2,3,4,5,6-六リン酸といい、英語では、myo-inositol-1,2,3,4,5,6-hexaphosphateとなります。略称を IP6というのは、IはinositolのIであり、Pはphosphate(リン酸)のPであり、6はリン酸が6つあるという意味です。フィチン酸は種子など多くの植物組織に存在する主要なリンの貯蔵形態であり、特にカルシウムやマグネシウムや鉄が結合した化合物であるフィチン(phytin)の形が多く存在します。フィチン酸はキレート作用が強く、多くの金属イオンを強く結合できるのです。キレート作用とは何でしょう?キレートは英語でchelateと書き、ラテン語のChela(キラ)、ギリシャ語のchelle(キレ)の「蟹のハサミ」という意味が語源となります。キレート作用は、体内の有害ミネラルや様々な化学物質をはさみ込むように結合し、解毒することが出来ます。従って、発芽玄米に含まれるフィチン酸はカルシウムやマグネシウムや鉄が結合した化合物であるフィチン(phytin)の成分によって、体内の有毒ミネラルと化学物質をはさみ込み(結合する)解毒、排出しているのです。発芽玄米に大量に含まれているフィチン酸が潰瘍性大腸炎やクローン病の症状を軽減しているのです。もっと詳しく詳しく説明している私の論文の「発芽玄米食がなぜCD(クローン病)やUC(潰瘍性大腸炎)の患者さんの免疫を上げるのか」もよろければ読んで下さい!
話が逸れてしまいましたが、症例報告に戻りましょう。
受診して1ヶ月後には排便時の下血が徐々に治まっていき、さらに2週間過ぎた2016年2月頃には排便時の下血と出血がほとんどなくなり、IgGがIgEへクラススイッチしているためにヘルペスウイルスによるアトピー性皮膚炎の症状が出てきたため、皮膚の治りを良くする漢方煎じ薬に変えて様子を見てみました。
さらに1ヶ月過ぎた頃、排便時の下血は全く無くなり、以前までは排便回数は1日に3回だったのが1日に1回になりましたが、リバウンドにより腹部や脚や背中全体から徐々に体全体へとヘルペスウイルスによって赤黒くなり痒みが出てき、特に両腕の皮膚がボロボロになりリンパ液が出てくる状態がしばらく続きました。あまりにもリンパ液が出てくるため、足ふきマットを両腕に巻いて寝ることもあったそうです。
良くなったり悪くなったりを繰り返し、現在では皮膚の状態も良くなり、また潰瘍性大腸炎の症状も特に異常なく、たまに風邪や花粉症などで通う程度までになりました。
以下に大体の症状と血液検査の値を載せます。
2015年12月29日初診時、病状は排便時に下血が有り、粘液も出てきました。
血液検査結果
・リンパ球:18.0
・IgE:284
・VZV IgG:(+)25.5
・TARC:321
2016年1月、排便時の下血があるも徐々に治まってきました。
2016年2月14日、病状:排便時の下血・出血が殆どなくなり煎じ薬をリバウンドによるアトピーに効くものに変更しました。また腹部、脚、背中のお灸のあとが赤く膨れ上がり始め、ヘルペスによる炎症が発症し始め治る兆しが見えてきました。
2016年2月25日、病状:排便時の下血は全く無くなり、以前は排便回数は1日3回の排便でしたが1日1回になりました。腹部、脚、背中のヘルペスによるもの炎症が上半身、脚、背中全体に広がっていき、腹部と脚からリンパ液が出てくるようになりました。
2016年3月4日、前回と同じく排便時の下血・出血は全くなく排便も1日1回でした。またリバウンドにより全身にヘルペスによる皮膚の炎症(赤いボツボツ)が広がっていました。
血液検査結果
・リンパ球:21.0
・IgE:370
・VZV IgG:(+)24.1
・TARC:8379
2016年3月23日、排便時の下血・出血は全く無く、排便も1日1回と潰瘍性大腸炎の症状はほとんど良くなりました。全身の肌が赤黒くなり痒みが出てくるようになりました。クラススイッチによりアトピー性皮膚炎がいよいよ本格的に発症しました。
2016年4月9日、全身アトピーであるが、特に両腕の炎症が酷く、皮膚がボロボロ、リンパ液が出てきました。また寝ている時にリンパ液が出ることが多く、足ふきマット等を両腕に巻き寝ることもあったそうです。
2016年4月30日、変わらず全身アトピーであり、両腕の炎症が酷い状態でした。
血液検査結果
・リンパ球:22.0
・IgE:12550
・VZV IgG:(+)23.4
・TARC:13292
◆2016年5月22日、変わらず排便時の下血・出血等は全く無く、下痢・軟便も無くスルスルとスムーズ出て良い状態でした。全身のアトピー性皮膚炎は一進一退を繰り返しながら少しずつ赤みが引いてきました。