理論

老化現象の5つの説について

投稿日:2019年12月30日 更新日:

 人体の加齢によって様々な老化現象が起こるのはなぜなのでしょうか?老化の理論は大きく分けて、プログラム説、エラー説、活性酸素説、摂取カロリー説、糖化反応説の5つがあります。それぞれ説明していきましょう。

 ①プログラム説は、それぞれの細胞には、分裂できる限界がはじめから設定されており、その分裂回数を超えると分裂ができなくなり老化が発生するという説であります。人間の染色体にあるテロメアは分裂の度ごとに短くなるので、なくなれば分裂できなくなり、老化が生じるというわけです。このテロメアを伸ばすことができる酵素がテロメラーゼであります。従ってすべての細胞の幹細胞のテロメラーゼ活性を継続させることができれば不老不死の実現が可能なのではないかといわれています。

 ②エラー説は、細胞分裂の際に少しずつ発生する突然変異が、徐々に蓄積されていき、最終的に破綻するのではないかという説であります。ウェルナー症候群をはじめとする早老症ではヘリカーゼというDNA修復に関与する遺伝子に異常があったことから考えられました。DNA分子の損傷は1日1細胞あたり最大50万回程度発生し、細胞の加齢によって損傷されたDNA修復速度が低下したり、さらに環境要因によるDNA分子の損傷増大により、DNA修復がDNA損傷の発生に追いつかなくなると老化が生ずるのです。ちなみに人体においては、ほとんどの細胞が老化細胞の状態に達しますが、修復できないDNAの損傷が蓄積した細胞では、普通はアポトーシスが起こります。アポトーシスは体内の細胞がDNAの損傷により癌化しないための切り札として機能しているのです。

 ③活性酸素説は、代謝に伴い発生する活性酸素により身体がダメージを受け、老化が発生するという説であります。代謝率の高い(つまり活性酸素の発生量の多い)生物ほど寿命が短くなる傾向にあることから考えられました。また、この活性酸素がテロメアの短縮に影響しているという説もあります。

 ④摂取カロリー説は、低カロリーの食事や低炭水化物の食事は、平均寿命と最長寿命を延ばすと言われています。この効果は酸化ストレスの減少が関与しているとされています。

 酸化ストレスとはなんでしょうか?私たちはエネルギーを使う際、酸素を利用します。呼吸によって体内に取り込まれた酸素の一部は、通常の状態でも不完全に還元されたり、活性酸素やフリーラジカルになります。ほ乳類では摂取した酸素の数%が活性酸素に変化します。これら活性酸素やフリーラジカルの多くは寿命が短いのですが、さまざまな体の成分と反応し代謝を制御してくれます。例えば白血球は活性酸素であるスーパーオキシド・過酸化水素などの作用によって感染防御の重要な役割を果たしていますし、また活性酸素の一つである一酸化窒素は、血管を弛緩させ末梢の血流を確保する役割を持つ他に、シグナル伝達・排卵・受精・細胞の分化・アポトーシスの際に、生理活性因子として利用されています。一方で活性酸素やフリーラジカルはさまざまな生体成分と反応してしまいます。体内のタンパク質と反応するとタンパク質が変性したり、酵素が失活したりします。過剰に生じたものはさらに細胞傷害をもたらします。このような人体に悪影響を及ぼす活性酸素やフリーラジカルを酸化ストレスというのです。

 ⑤糖化反応説。糖化とは、糖がタンパク質や脂質と結合することであります。1971年から1980年のデータで糖尿病患者と日本人一般の平均寿命を比べると、糖尿病の男性で約10年、糖尿病の女性では約15年の寿命が短くなっていました。このメカニズムとして高血糖が生体のタンパク質を非酵素的に糖化反応を発生させ、タンパク質本来の機能を損なうことによって障害が発生するという説が糖化反応説であります。この糖化による影響は、コラーゲンや水晶体のクリスタリンタンパクなど寿命の長いタンパク質ほど大きな影響を受けます。例えば白内障は老化によって引き起こされますが、血糖が高い状況ではこの老化現象がより高度に進行してしまいます。同様のメカニズムにより動脈硬化も進行します。また、糖化反応により生じたフリーラジカル等により酸化ストレスも増大します。

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