コラム

自己免疫疾患はない part.4 2019.5.30更新

投稿日:2019年5月30日 更新日:

今日は、相も変わらず、世界中の医学者たちは、自己免疫疾患はフェイクな病気であるので、実際ないのですが、自己免疫疾患という病名だけが幽霊のように世界の医学界を飛び回っているだけです。何故ならば、自分を攻撃するような種は、生命の進化においては絶対に生じないからです。1859年に「種の起源」を書いたダーウィンは、墓場の陰で苦笑いしているでしょう。だって彼は種の起源という書物で、次のように言っています。

自然選択によって、人間を含めて全ての生物は常に環境に適応するように変化し、種が分岐して多様な種が生じ、生存競争とその生存競争に勝ち残った適者だけが生存し続けると説明しました。みなさん、「自分の免疫が自分を攻撃して最後には死ぬので、免疫を抑えるステロイドしか死を免れることはできない」という、自己免疫疾患論者の主張に対して腹を抱えて笑い倒すはずですね。アッハッハ!だって自分の免疫で自分を殺す種というのは、生まれることさえできないので、生きる死ぬという以前の問題ですね。競争以前の問題ですものね。アッハッハ!

にもかかわらず、自己免疫疾患の内容については、形や姿を変えて、変幻自在の医薬業界に利用されています。久しぶりに1番の難病といわれている自己免疫疾患が、最先端の医学においてどのように考えられているかを批判的に解説していきましょう。すでに私は「自己免疫疾患はない」という論文をpart.1〜3に分けて既に書ききっているのですが、その論文の正しさを補強するためにpart.4を書き足すことにしました。最新の自己免疫疾患のWikipediaの文章をたたき台にし、かつ参考にしながら、自己免疫疾患が存在するという主張の間違いを論理的に指摘し、正していきましょう。私のように自己免疫疾患はないという論陣を張っているのは世界で私だけですが、他の学者の論文は、自己免疫疾患があるという前提で書かれていますから、批判せざるをえないことをご理解ください。と同時に、自己免疫疾患はないということを証明するためには、自己免疫疾患は免疫学の全てに関わる病気ですから、必要に応じて免疫学の勉強を一緒にしていきましょう。

自己免疫疾患(Autoimmune disease)とは、異物を認識し排除するための役割を持つ免疫系が、(異物でない)自分自身の正常な細胞や組織に対してまで過剰に反応し攻撃を加えてしまうことで症状を起こす、免疫寛容の破綻による疾患の総称。(autoimmuneのautoは自己であり、immuneは免疫という意味です。免疫学者は「過剰に反応する」という言葉が好きなのは、アレルギー学者が「アレルギーは過剰反応で起こる」と主張するのと同じ構図です。だいたい過剰という言葉が出れば、眉唾ものです。何故ならば、その反対の過小反応という言葉は医学では出てきません。過小反応という現象がないからです。過剰や過小という言葉は、科学には全く無縁の言葉なのです。

さらに自己免疫疾患は、ナイーブT細胞が骨髄で作られた後、胸腺に出て自己と非自己を見分ける教育を施されると主張します。その教育の一つは自己に対しては免疫寛容を起こし、かつ異物に対して寛容を起こさないようにT細胞を教育し選択します。これをポジティブセレクションと言います。2つめは自己に対して過剰に反応するナイーブT細胞を除去するというわけです。これをネガティブセレクションと言います。ところが自分の組織や細胞を攻撃するのは、この胸腺におけるナイーブT細胞の教育にもかかわらず、自己の組織に対する免疫寛容が破綻してしまって自己を攻撃する病気を自己免疫疾患と名付けたのです。part.1やpart.2で書いたように、胸腺は単純にナイーブT細胞を成熟させ、ヘルパーT細胞とキラーT細胞などに分化させる機能があるだけです。例えば補助受容体(co-receptor)であるCD4という受容体を持たせたT細胞がヘルパーT細胞となり、補助受容体(co-receptor)であるCD8という受容体を持たせたT細胞がキラーT細胞となるだけです。ところが、自己免疫疾患論者は、自己免疫疾患を起こさないために、ネガティブセレクションとかポジティブセレクションとかという選択を行う特別な組織だと言い張っているのです。

元来、免疫寛容という意味は、免疫が異物に対して戦いをやめるという意味です。言い換えると、免疫寛容は、殺すことができない人体に無害な有機・無機化学物質に対して、戦いをやめるために生じる現象に過ぎないのです。私が常々言っているように、現代文明が作った膨大な化学物質に対しては、はじめは特定の化学物質を認識できるMHCⅡのタンパクを持っている人は、その化学物質をアレルゲンとしてIgEで戦うと、アレルギーになりますが、最後は無害な化学物質に対して無駄な戦いをやめて、自然後天的免疫寛容を起こして、化学物質と共存する場合にしか免疫寛容という言葉を使う必要はないのです。もちろんこの自然後天的免疫寛容を見つけたのも私です。

ついでに述べれば、アレルギーも自己免疫疾患も原因は化学物質なのです。化学物質をIgGで免疫が戦うと、これがいわゆる自己免疫疾患であり、IgGをIgEにBリンパ球のAID遺伝子をインターロイキン4(IL-4)によってクラススイッチ(アイソタイプスイッチ)によって変えてアレルギーにしてしまえば、免疫を抑えない限りは、後は自然後天的免疫寛容でいわゆる自己免疫疾患も治ってしまうのです。さらに詳しく述べれば、IL-4はどのようにして作られるのでしょうか?それは、アレルギーに関わる肥満細胞にはIgGレセプターが存在していることを知っておいてください。抗体を作るBリンパ球は、まず最初にIgMから殺しの抗体であるIgGにクラススイッチします。ところが化学物質は殺すことができないので、その化学物質に対して特異的なIgGが大量に作られると、作られ過ぎたIgGが、肥満細胞の数少ないIgGレセプターに結合し、初めて肥満細胞からIL-4が作られるのです。このアレルギーに絶対に必要なIgEを作り出すのにはIL-4がなくてはならないのです。このIL-4を肥満細胞が最初に作るということも私が世界で最初に発見しました。

なぜ私はこんなに世界で最初の発見が多いのでしょうか?それは他の医学者たちは症状が人間にとって不愉快であれば、それは悪いことだとハナから思い込んでいるからです。なぜそんな思い込みをするのでしょうか?それは免疫の働きを抑えれば、薬を作ることができるからです。しかしその薬は症状は良くしても、元の病気は良くしていないということに気がついていないのです。さらに、38億年かかって作り上げられた、免疫の自然な絶対的な最高の働きを認めないからです。だからこそ免疫の異常な過剰によって様々な病気が起こると思い込んでいるのです。

さて、ここでクラススイッチの意味を久しぶりに復習しておきましょう。クラススイッチは、英語でImmunoglobulin class switching”と書きます。異物が人体に侵入すると、免疫が働き出します。この免疫の反応でB細胞から生産される免疫グロブリンという抗体が生まれます。この免疫グロブリンはY字型になっているのはご存知ですね。1本足の部分を定常領域と言います。英語でFc領域といいます。上の2本の手を可変部といいます。この可変部に抗原がひっつきます。この可変部は特定の抗原しか結合しないのですが、抗原などの刺激や、抗原の種類により2本の手の可変部を変えずに1歩足のFc部分を変えることができます。可変部だけを変えることによって、IgMからIgGやIgEなどに抗体の種類が順番に変わっていくのです。

なぜ可変部は同じで、定常領域であるFc領域だけを変えるのでしょうか?それは可変部は敵を捕まえる仕事をしているだけです。ところが捕まえただけでは罰することはできません。捕まえた敵によって罰を与える(敵を処理する)やり方を変えるのが定常領域であるからです。敵の処理の仕方については、機会があれば必ずもう一度復習します。このように定常部を変えるのを、免疫グロブリンクラススイッチまたはアイソタイプスイッチまたはクラススイッチングともいいます。また定常領域(Fc領域)がクラススイッチを起こすとも言うことがあります。

それではB細胞は最初に作るIgM抗体の定常部を、どのようにして変えていくのでしょうか?骨髄にある造血幹細胞から成熟B細胞へと分化して、末梢の血液に流れ出たB細胞は、膜の表面にIgDかつIgMかつBCR(B cell receptor)を発現しています。さらにCD40という共刺激タンパク、英語でcostimulatory proteinも持っています。一方、ヘルパーT細胞はCD40LとTCRをT細胞の膜に発現しています。このB細胞が持っているCD40とBCRとT細胞が持っているCD40LとTCRと結びつきます。CD40はCD40Lと結びつき、BCRはTCRと結びつき、さらにIFN-γがヘルパーT細胞に結びつくと、B細胞とT細胞が相互作用を行い、B細胞にクラススイッチを命令するAID(activation induced cytidine deaminase)遺伝子がONになり、IgMからIgGへのクラススイッチをやれという命令が出ます。今上で述べたIgMからIgGへのクラススイッチは、T細胞依存性のクラススイッチであります。T細胞依存性のクラススイッチは、CD40依存性のクラススイッチともいいます。ところが、T細胞非依存性、言い換えるとCD40非依存性のIgMからIgGのクラススイッチの経路が別にあります。B細胞が持つBAFF-Rなどの受容体と樹状細胞や単球などに発現するBAFF/APRILとの相互作用により、T細胞との相互作用のようにAIDを活性化してクラススイッチを誘導できるルートもあります。ちなみにAIDはAICDということがあります。

BAFF-Rは、BAFF receptorであり、英語で、“B-cell activating factor belonging to the tumor necrosis factor family receptor”といいます。APRILは“a proliferation-inducing ligand”といいます。どちらもTNFα分子の仲間であります。B 細胞の生存や機能やIgMからのIgGのクラススイッチを調節することによって、自己免疫疾患の代表であるSLEの病態形成においてBAFF およびAPRIL が重要な役割を果たすという研究もあります。しかしながら、免疫の働きの出発点であるTNFαと同じ働きを持つBAFFやAPRILの働きを抑えるだけですから、結局はこういう研究は全く意味がないのです。症状が取れても病気が治らないという薬を作るだけです。

なお、そもそも免疫グロブリンはB細胞で生成され、またB細胞が最初に生成するヒトの免疫グロブリンはIgMであり、そこからクラススイッチによって、その他のIgG、IgA、IgEへのクラスの異なる免疫グロブリンに変化していくのです。

ここでヘルパーT細胞の持つCD40Lの重要性について追加しておきましょう。CD40LのLはリガンドという意味です。リガンドは、レセプターに結合する分子です。CD40リガンドは、別名CD154とも呼ばれます。CD40Lを欠損するX連鎖高IgM症候群ではクラススイッチが働かないのでIgMとIgD以外の免疫グロブリン(IgGやIgEやIgA)を産生できないために多様な抗体が作れない免疫不全になります。また、高頻度体細胞突然変異(somatic hyper mutation)を行うのは、実はクラススイッチを行うAID遺伝子ですから、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AICD)はクラススイッチにも関わっているので、このAID遺伝子を欠損するAID遺伝子欠損症でも、CD40Lを欠損するとIgMからIgGへとクラススイッチがうまくいかない時に生ずる、同じような高IgM血症を示すのです。皆さん、医学というのはとっても面白いでしょう。勉強すればするほど、医学に限りはないということがお分かりになるでしょう。付いてきてください。

ここでX連鎖高IgM症候群は、CD40L(CD154)欠損症のことであることはすでに述べました。この原因遺伝子であるCD40LがX染色体上にあるため、X連鎖といわれます。伴性劣性遺伝の先天性免疫不全症であります。つまり遺伝子病です。CD40Lは、B細胞のCD40に結合し、サイトカインの刺激とともに、免疫グロブリンのクラススイッチを誘導する分子であることも既に述べました。このヘルパーT細胞のCD40Lが欠損しているため、B細胞はクラススイッチできず、IgG、IgA、IgEが産生できないのです。また、CD40 Lは樹状細胞のCD40を刺激しIL-12産生を誘導します。IL-12はナイーブT細胞をヘルパーTh1へと誘導しますが、CD40L欠損症では、この経路が障害されるため、T細胞機能障害も起きてしまうのです。さて本論に戻りましょう。)

自己免疫疾患は、全身にわたり影響が及ぶ全身性自己免疫疾患と、特定の臓器だけが影響を受ける臓器特異的疾患の2種類に分けることができる。関節リウマチや全身性エリテマトーデス(SLE)に代表される膠原病は、全身性自己免疫疾患である。(なぜ自己免疫疾患は自分の組織を攻撃するにも関わらず、全身性の組織を攻撃する自己免疫疾患と、特定の臓器しか攻撃しない自己免疫疾患の2種類があるのでしょうか?これに対しても自己免疫疾患論者は一言も言及しません。何百回も書いたように、自己免疫疾患の原因は、はじめは化学物質との戦いで起こります。最初の化学物質との戦いは必ずIgEで戦うので、アレルギーになります。

ところがアレルギーを治療するのも、必ずステロイドでありますから、ステロイドは、すべての免疫の働きを一時的に止めますから、上に述べたように、IgMからIgG、さらにIgEへと順序よくクラススイッチができなくなります。アレルギーの治療をしているうちに、IgGで止まると殺しの世界、つまり炎症の世界が出現します。炎症が起こると痛みや熱が出現します。さらに免疫を抑えると新たなる病気の原因を作っていることに誰も気づきません。

免疫を抑えたら、何が増えていると思いますか?人類は、8種類の絶対に殺しきれないヘルペスウイルスに多かれ少なかれ、感染しています。というよりも生まれて初めて赤ちゃんがかかる病気はアトピーなのです。なぜ赤ちゃんは最初にアトピーになるのでしょうか?いうまでもなく、アトピーになりやすいMHCⅡ遺伝子を持っているお父さんとお母さんから生まれた赤ちゃんがアトピーになるのは当然なのです。お父さんとお母さんもアトピーの現代の治療をやってこられるので、当然ステロイド治療をやっています。ですからステロイドを使っている間に、お父さんとお母さんもヘルペスがあちこちに増殖していますから、そのヘルペスが知らぬ間に赤ちゃんに感染しています。

さらに赤ちゃんは化学物質がいっぱいの母乳をたっぷり飲まされます。すると、化学物質をIgEで戦いアトピーが出ます。アトピーが出ると痒みで苦しむ赤ちゃんの症状を取るために小児科や皮膚科に連れて行きます。小児科や皮膚科は症状を取るために当然ステロイドをたっぷり使わせます。ステロイドを塗ると赤ちゃんは痒みで苦しむことがなくなり、お父さんとお母さんはホッとします。既に父母から赤ちゃんに感染していたヘルペスも、ステロイドを使っている間にどんどん増え続けます。この治療が一生繰り返されるのです。

この悪循環を断ち切るために、つまりステロイドを使わないために私は33年間、松本医院の院長をしてきたのですが、その院長を息子に譲りました。私は保険では使えない、現代医療で増え続けるヘルペスの増殖を抑えるという治療を自由診療でやるために、2019年5月7日から松本漢方クリニックを開業しました。74歳の新規開業はおそらく世界新記録でしょう。引退すべき年齢になぜ新規に開業したのでしょうか?それは保険の中だけではアレルギーのみならず、いわゆる自己免疫疾患と呼ばれる病気を治すことができないからです。漢方風呂、消毒、抗ヘルペス剤、抗ヘルペス軟膏、漢方の塗り薬、さらに保険で使えない大量の漢方煎じ薬、痛みに対する鍼灸はすべて保険では用いることが許されていない治療法なのであります。残念ですが。

このようにステロイドを使えば元の病気は治らないどころか、新たに殺しきれないヘルペスが身体中の細胞に増殖しているというプロセスを全く理解していないのが現代の世界中の医学ですから、化学物質やヘルペスが原因であるにもかかわらず、原因不明の自己免疫疾患という病名がつけられてしまうのです。自己免疫疾患という病名がつけられると、必ずステロイドをはじめ、免疫抑制剤である生物製剤といわれる抗体を投与します。私の仕事はまさに病気を治すのは自分の免疫でしかないので、現代医学の標準医療であるステロイド療法や生物製剤療法の全てをやめさせます。すると使ってきたステロイドや生物製剤の量や種類によって様々ですが、リバウンド症状が必ず出ます。これを乗り越えると化学物質に対しては免疫寛容が起こり、ヘルペスに対しては増殖しないようにヘルペスに対する抑制療法を続けると、必ず病気は治ってくるのです。この後に続くwikipediaの文章に対するコメントは来週にします。乞うご期待!現代の病気は文明が作った化学物質と、ステロイドが増やしたヘルペスしかありません!!)

2019/05/16

20世紀初めには、パウル・エールリヒ(Paul Ehrlich)により提唱された、免疫系は自分自身を攻撃しないとする「自己中毒忌避説(Horror autotoxicus)」を代表とする考え方が主流であった。しかし、その後の研究により自分の体の構成成分を抗原とする自己抗体が発見されるにつれ、自己免疫疾患の存在が明らかになっていった。(自分の体の構成成分を抗原とした自己抗体が発見されたのではないのです。発見されたのは自己抗体ではないのです。ましてや自分の体の自己構成成分に対する抗体であるはずは絶対にないのです。それでは発見された自己抗体は一体何なのでしょうか?骨髄で最初に作られたBリンパ球は10億単位といわれる多種なB cell receptorというIgMを細胞の膜にIgM抗体の膜に表出しています。違うのは、衛生状態が良くなり環境にウイルス、細菌、カビなどが繁殖する事ができなくなり、このような膨大な種類のIgM抗体と結びつく病原体がなくなってしまいました。皮肉を言わせてもらえば、このようなIgMは自分の成分と結びつく為に作られているのではなく、検査試薬メーカの化学物質と結びつく為に作られているのです。アハハハ!自己抗体という自己免疫疾患と診断された患者から生検をやって取り出してきた自分の成分と患者が作ったIgMと反応させるべきなのです。自己免疫疾患がないという事を本当にないということを理解するために自己免疫疾患はないPart1、Part2、Part3を読んで下さい。)

炎症性腸疾患を除き、多くの自己免疫疾患は女性に多い。(炎症性腸疾患については男女差はほとんどない)理由は明らかになっていないが、ホルモンが関与しているという説がある。(なぜ自己免疫疾患が女性に多いのか説明しましょう。女性は初潮が10歳頃からはじまり閉経は50歳前後ですね。その間、約40年間女性は妊娠の着床の用意のために2週間の黄体ホルモンを作り出します。妊娠がないときには着床のために増殖した子宮粘膜が必要なくなり生理として体外に不必要な増殖した子宮粘膜が排出されます。妊娠着床のために作られた黄体ホルモンが必要なくなり、代謝されると、いわゆるステロイドホルモンの1つであるコルチコステロンになって処理されます。したがって、このコルチコステロンはわずかながらでも初潮から閉経までの長期に渡って免疫を抑え続けますから、化学物質をIgEで処理するのではなくてIgGで処理するはめに陥ってしまうことになります。もともとIgEを作りやすいMHCⅡの遺伝子を持っていると、それはIgGをIgEにコルチコステロンのためにクラススイッチが出来にくくしてしまうからです。化学物質をIgGで処理する働きを自己免疫疾患と間違ってしまうということはご存知ですね。)

また、マイクロキメリズムと呼ばれる「妊娠中に胎児と母体との間に胎盤を通して起こる微量の細胞のやり取り」があり、出産後(誕生後)、数十年を経過しても他者由来の細胞が存在していることが明らかになっている。「自己免疫疾患」と呼ばれている疾患の中にはマイクロキメリズムにより他者由来の細胞の影響で発生しているものも存在するとの研究結果がある。ブタの脳のエアロゾルを粘膜から吸収してしまい、自己免疫疾患を発症した例も存在する。(マイクロキメリズムは存在するかもしれませんが、マイクロキメリズムによって自己免疫疾患が起こるはずないのですから。何故ならば、妊娠中の胎児の成分は、自己の成分ではないわけですからね。)

オーストラリアのクイーンズランド大学医学部のマイケル・P・ペンダー(Michael P. Pender)によって2003年・2011年・2012年、9割以上の人間が感染しているヘルペスウイルスの一種、エプスタイン・バール・ウイルス(EBウイルス)による自己免疫疾患発症のメカニズム仮説が提示された。(いずれにしろ自己免疫疾患は存在しないのでペンダーの仮説というよりも、以下に記載されている病気はEBウイルスによる病気か、もしくは化学物質とIgGと戦っている病気か、もしくはEBウイルスと化学化学物質が同じ組織で免疫が戦っている病気というべきです。)

この仮説は「ペンダーの仮説(Pender’s hypothesis)」と呼ばれており、様々な自己免疫疾患とEBウイルスとの関わりが指摘されていることから、1)多発性硬化症、2)関節リウマチ、3)全身性エリテマトーデス、4)シェーグレン症候群、5)全身性強皮症、6)皮膚筋炎、7)原発性胆汁性肝硬変、8)原発性硬化性胆管炎、9)潰瘍性大腸炎、10)クローン病、11)乾癬、12)尋常性白斑、13)水疱性類天疱瘡、14)円形脱毛症、15)突発性拡張型心筋症、16)Ⅰ型糖尿病、17)バセドウ病、18)橋本病、19)重症筋無力症、20)IgA腎症、21)膜性腎症、22)悪性貧血、といった自己免疫疾患の発症に、どのように細胞傷害性T細胞の機能不全・ビタミンDの欠乏・EBウイルスがどのように関わってくるかを考察したものである。(私はペンダーが挙げた上の22種類の病気を全て見ました。まさにペンダーが指摘しているように、全てEBウイルスによるものであると、以前から言い続けていました。ペンダーは、細胞傷害性T細胞(CTL)の機能不全やビタミンDの欠乏が関わっていると主張していますが、そもそもCTLが機能不全であれば、必ずアポトーシスが起こります。ビタミンDの欠乏は自己免疫疾患には関係ありません。EBウイルス以外に免疫を抑えてRBウイルスを増やし続けると、EBウイルスはあらゆる細胞に感染し、免疫が正常である限りは感染細胞に環状のエピソームの形で隠れ続け、宿主細胞が増殖するときだけ自分自身も増殖し続けます。この時に、環状のエピソームから直線上の二重鎖になる時に、ホスト細胞に見つけられて、分断され、一部のペプチドと細胞のMHC1タンパクと結び付けられて複合体となり、この複合体を細胞の膜に提示して、キラーT細胞に見つけられ、細胞もろともヘルペスウイルスも殺される時に、アポトーシスを起こすのです。ところが好中球によって見つけ出されて殺される時には炎症を起こし、それが症状として認識され、殺される細胞の種類によって、上記の22種類の自己免疫疾患として認識されるのです。)

このペンダーの仮説は、遺伝等の原因によってEBウイルスに対するCD8+T細胞応答に何らかの不全が起き、EBウイルスに感染した自己反応性の記憶B細胞が抗原提示細胞として働き、通常は禁止された自己抗原のT細胞認識が可能となり、自己免疫応答が生ずるというものである。(自己免疫応答が生ずるのは、何も遺伝に原因があるわけでもなく、さらにCD8T細胞に不全があるわけでもないのです。ましてや通常は禁止された自己抗原のT細胞の認識が可能であったとしても、それだけで自己免疫疾患を起こすわけではないのです。自己免疫疾患論者に頼みたいことは、抗体を作るプロセスをもう一度いちから勉強してもらいたいと常々思っております。偉そうに言って、ごめんなさい!ワッハッハ!ただただ、ヘルペス8種類のうち4番目のEBウイルスが22種類の病気を起す細胞に入り込んで生じたものです。5番目のサイトメガロウイルス(CMV)も、一部自己免疫疾患といわれる病気に関わっていることを付け加えておきましょう。いずれサイトメガロウイルス(CMV)についても詳しく書くつもりです。

さて、それではどうしてEBウイルスやサイトメガロウイルスが細胞に入り込んでいわゆる自己免疫疾患になるのか、最後に一番大きなテーマでありますが、EBウイルスが癌を引き起こすメカニズムを詳しく述べていきましょう。何故ならばEBウイルスは、すでに医学会が認めているのですが、上咽頭ガンや胃ガンを引き起こすからです。しかもこの論文のテーマであるバーキットリンパ腫がそのように起こるのかを詳しく説明しましょう。

まずEBウイルスにしろ、サイトメガロウイルスにしろ、上にあげた22種類の自己免疫疾患といわれる症状が出るには、まずヘルペスウイルスに感染する必要があります。ヘルペスに感染するだけではいわゆる自己免疫疾患を起こす十分な条件にはなりません。細胞の核の中に入らなければなりません。エピソームという形でずっと隠れているのですが、隠れているだけではヘルペスが引き起こす自己免疫疾患やヘルペスに関わる他の病気は絶対に起こりえません。何故ならば、免疫がエピソームの形では絶対にヘルペスを認識できないからです。病気は免疫と病原体(ヘルペスウイルス)との戦いですから、敵を認識できない限りは戦えませんからね。

ヘルペスに関連する病気が起こるのには4つの場合があります。

まず1つ目はホスト(感染している人)の免疫が落ちた時に初めてヘルペスウイルスが増殖できるようになり、感染した細胞から別の細胞に新たに感染しようとしたときです。

2つ目は感染した細胞が分裂して2倍に増える時に、その細胞の染色体(DNA)を2倍にする必要があります。このDNAは二重螺旋になっていますから、一重鎖にほどいてそれぞれをコピーしてDNAを2倍にする必要があります。二重螺旋が一重鎖にほどかれたときに自分の遺伝子の一部をコピーして、一重鎖にくっつけて自分のDNAに入れ込んでしまうチャンスが訪れるのです。ホストの新しい一重鎖にヘルペスウイルスが入り込み新しい二重鎖を作ってします。そうするとこの2重鎖をもった新しい細胞は元の正常な2重鎖螺旋と思い込んでいるのですが実は遺伝子の形質が変わってしまっているのです。これを英語でヘルペスのトランスフォーメーションといい、日本語ではDNAの遺伝子形質の転換といい、簡単に「形質転換」といいます。簡単にいうと、正常な遺伝子がヘルペスによって突然変異を起されてしまうのです。このためにさまざまな病気が引き起こされるのです。さらにガン増殖因子やガン抑制因子を変えたりして、最後にガンを作ったりすることもたびたびあるのです。ヘルペスウイルスによる胃がんや上咽頭癌やバーキットリンパ腫という悪性リンパ腫の原因ともなります。さらに新しい変異した遺伝子が発現されると、上に述べたようにCD40を自由に作れるようになり、自己免疫疾患の診断のために使われる試薬と反応するような抗体も作られてしまう事もあるのです。抗体のクラススイッチが簡単に行われ、しかもあらゆる種類の抗体をBリンパ球に作らせてしまうのです。たとえばその抗体は自己免疫疾患といわゆる抗体さえ作る事を可能にさせてしまうのです。上に述べたのですが、自己免疫疾患の試薬に対して抗体が出来てしまう人たちは、生まれつき多種多様なIgM抗体を作る以外に、このようにヘルペスウイルスによって試薬に対する抗体が出来てしまうこともあるのです。

3つ目の場合は、ヘルペスウイルスは人間の免疫から逃れられる数々の戦術を身に着けていますが、それでも細胞に感染したヘルペスウイルスが細胞の働きによってヘルペスウイルスは切り刻まれ、ヘルペスウイルスのペプチドを細胞が作るMHC1蛋白と結びつけて、それをキラーT細胞に提示して細胞もろともヘルペスウイルスはキラーT細胞に殺されてしまう事によってアポトーシスが起こります。このとき例えば、人体には血管内細胞に1千億個もあります。その量の細胞がアポトーシスが起こると他の細胞に迷惑はかからないのですが、内皮細胞がなくなるとその部分が赤くなったりします。また腎臓の様々な細胞、例えば足細胞や腎臓の間質細胞にヘルペスウイルスが感染すると同じように、キラーT細胞に殺されてしまうときにアポトーシスで死ぬ以外に、食細胞である好中球や大食細胞が殺されてしまうと二度と作られないので、一生治らない腎臓の病気だと診断されてステロイド治療を始めると、さらにEBウイルスが増殖し、最後は透析に頼らざるを得なくなってしまうことがあるのです。

さらに骨髄の中で全ての血球が作られています。その血球の元を骨髄造血幹細胞といいますが、その血球の幹細胞にEBウイルスやサイトメガロウイルスなどの様々なヘルペスウイルスが感染し、キラーT細胞や好中球や大食細胞に様々な血球の幹細胞が殺されてしまうと、白血球や赤血球や血小板の幹細胞が少なくなり、原因不明の貧血が起こったり、特発性血小板減少症のみならず、再生不良性の貧血が生じることがあるのです。とりわけ骨髄移植を行わざるを得ないときもあるのです。骨髄移植の適応となる病気には、1)再生不良性貧血、2)慢性骨髄性白血病、3)急性白血病、4)骨髄異形成症候群、5)悪性リンパ腫、6)多発性骨髄腫、7)原発性免疫不全症、8)ゴーシェ病などがあります。

殺された幹細胞が少なくなるばかりではなく、ヘルペス性幹細胞のトランスフォーメーションを起すと真性多血症(赤血球が増えすぎること)かつ白血病になったりすることもあるのです。実をいえば白血病がすべてヘルペスウイルスのトランスフォーメーションによって起こるガンの一つにすぎないのです。骨髄性白血病も急性白血病も慢性白血病もすべてヘルペスウイルスによるものなのです。白血病に関しては近いうちに詳しく詳しく書く予定です。

ここで「ユダヤ人がなぜ賢いのか」というコラムで、遺伝的にユダヤ人は髄鞘を作るスフィンゴミエリンという脂質が多いという話を書いたことがありますが、覚えておられますか?つまり髄鞘が長ければ長いほど、神経の電気信号の伝わりが早くなり、つまり跳躍伝導のスピードが速くなって情報が脳に伝わりやすいので、特別に賢くなれると書きました。ところが残念なことに、神は二物を与えずという言葉通りに、脂質を多く作る遺伝子病が随伴するのです。その一つがゴーシェ病であり、ニーマンピック病であり、テイサックス病などの遺伝子病がユダヤ人に多いのです。この8)ゴーシェ病についてちょっと勉強しておきましょう。ゴーシェ病は英語で“Gaucher’s disease”と書きます。遺伝病であり、グルコ-セレブロシドを分解してセラミドにするリソソーム酵素であるグルコ-セレブロシダーゼという酵素が生まれつき不足したり作れないときに、グルコ-セレブロシドが、肝臓、脾臓、骨や脳などに蓄積してしまいます。その結果、肝臓や脾臓の肥大や、骨髄のゴーシェ細胞が増加します。ゴーシェ細胞とは骨髄中の脂質を貪食した大きな特徴ある網内系細胞といわれる大食細胞です。その結果、造血能の低下や、脾腫による赤血球、血小板の破壊の亢進がみられます。骨が痛くなったり、弱くなって骨折したりします。発達遅延やけいれんなどの中枢経系症状は、グルコ­­-セレブロシドが、セラミドになる前のグルコシルスフィンゴシンで留まり、その結果、グルコシルスフィンゴシンが脳内に蓄積するためであります。またゴーシェ病は、ライソゾーム病、先天性代謝異常症、常染色体劣性遺伝に分類されます。世界で確認されている患者数は約5000人で、日本国内では100人に満たない程度という希少な難病であります。特にユダヤ系の人種に多く見られます。ゴーシェ病は終わって本論に戻ります。

4つ目の場合は、上に述べたように、ホスト(宿主)の細胞が増殖する時に、ちゃっかり環状になったエピソームが二重鎖螺旋形に戻った時に、自分自身を増やします。これを繰り返しやっているうちに、ホストの細胞がヘルペスを認識し、それをペプチドに変えてMHCⅠのタンパクと結びつけて、ホストの細胞に提示した時に好中球や大食細胞に見つけられた時に炎症が起こります。)

今日はここまでです。2019/05/23

特に、EBウイルスの潜伏感染遺伝子抗原のEBNA1(Epstein-Barrvirus-encoded nuclear antigen 1)と全身性エリテマトーデスの自己抗原とされているSmとの分子相同性(molecular mimicry)も明らかになっており、EBNA1に対して作られた抗体が自己抗原のSmに交叉反応(クロスリアクション)し、全身性エリテマトーデスの自己抗体の抗Sm抗体となっていることも示唆されている。

(抗Sm抗体は、Smithという名の全身性エリテマトーデス(SLE)患者血清中に見いだされた抗核抗体であります。非ヒストン核蛋白抗原に対する多数の自己抗体群のうち、この抗Sm抗体は最初に命名された抗体として知られています。抗Sm抗体の対応抗原分子は、UsnRNPに属するU1-RNP、U2-RNP、U4/6-RNP、U5-RNPであります。リボ核タンパク質またはリボヌクレオタンパク質(Ribonucleoprotein、RNP)は、RNAを含む核タンパク質、即ちリボ核酸とタンパク質の複合体であります。ペンダーの仮説で述べられているように、EBNA1に対して作られた抗体が自己抗原のSmに交叉反応(クロスリアクション)する事はありえますが、あくまでもSmは自己抗原ではないし、しかも細胞の中に潜伏感染しているEBウイルスが作るEBNA1を人間の免疫が作る抗体が細胞の中に入り込んでEBNA1という抗原と自己抗原という人体の抗原と認識してクロスリアクションを起すはずがないのです。いずれにしろ、あえていうならば自己免疫疾患はないわけですからあくまでもEBウイルスが起したEBウイルス感染症の一つにすぎないのです。それでは、EBNA1はEBウイルスの抗原としては極めて興味のある抗原ですからもう少し詳しく勉強してみましょう。

EBNA1は英語でEpstein-Barrvirus-encoded nuclear antigen 1と書き、日本語でエプシュタイン・バール・ウイルスの遺伝子によって発現された核抗原であります。EBNA1の役割は自分の遺伝子の制御や染色体の複製やかつEBウイルスのエピソームの状態を維持するのに必須なものです。このようなEBNA1の働きは特異的なEBNA1のリン酸化が必要であります。EBNA1はoriPといわれる英語でorigin of plasmid replication、日本語で細胞質複製の出発点というエピソームの状態にあるウイルスの特異的な遺伝子配列に結びつきます。oriPは4つのEBNA1と結びつく遺伝子部位があります。その一つはEBウイルスのDNAがホストの染色体のDNAと結びつくことができるのです。それが出来るのはホストの細胞の分裂に際してでありエピソームが複製したり分裂したりすることを可能にさせるのです。この話はホストのDNAが複製する時に二重鎖スパイラルDNAを一重鎖にして、その一重鎖にエピソームにヘルペスウイルスの遺伝子がくっついてホストのDNAが2倍になるときにヘルペスウイルスのエピソームも分裂して2倍になっているのです。

さあ次に、EBウイルスがどのようにしてガンを起すのかについて勉強しましょう。特に悪性リンパ腫の一つであるバーキットリンパ腫には常に発現しているEBNA1があります。先程述べたようにEBNA1はEBウイルスの潜伏感染の間にEBウイルスの環状の遺伝子を制御しているようにEBウイルス関連のガンを制御しています。しかもEBNA1はいわばウイルス性の癌原遺伝子であり自分が感染したEBNA1の癌化形成に一役買っています。さて、バーキットリンパ腫は悪性リンパ腫の代表でありかつ悪性度が高い癌ですから、バーキットリンパ腫が何であるかを理解すれば悪性リンパ腫の本体が明らかになります。

バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma: BL)は、c-myc遺伝子と免疫グロブリン遺伝子の相互転座によって生じる高悪性度B細胞性腫瘍であります。悪性リンパ腫の分類は、WHO分類やFAB分類などがあります。それはEBウイルスの遺伝子が骨髄の白血球分化のどのレベルで白血球に侵入するか、どの遺伝子座に入り込むかなどによって、遺伝子の形質転換(トランスフォーメーション)が異なり、その結果、遺伝子の表現形質が異なるので、つまり白血球やリンパ球の遺伝子の発現がことごとく異なるのを白血病を分類する血液病学者によって異なるためです。実は、ヘルペスウイルスが上に説明したように、白血球の遺伝子の表現形質を変えているだけであることを知らないからです。現代の癌はすべて遺伝子異常だけでは説明できない癌があるのです。それはエピジェネティックな変化によって起こされた癌と言い、遺伝子の塩基の配列を変えない癌もあるのです。エピジェネティックな癌というのはiPS細胞から作った細胞によく見られる癌です。具体的には細胞の分化のためにメチル化した塩基を脱メチル化することによって分化を初期化に戻すことによって訳の分からない様々な癌を作ってしまうのです。

iPSと癌化について勉強しましょう。iPS細胞とがん細胞は無限に増殖する共通の性質を持っています。体細胞を初期化してiPS細胞を作るのは遺伝子を変異させて作るのではありません。山中4因子は転写因子でありOct3/4、Sox2、Klf4、C-Mycの4つの転写因子を分化した体細胞(線維芽細胞)に入れると分化が消され、初期化が起こります。細胞の分化が消されるというのは、DNAのシトシンのメチル化がランダムになくなってしまうということです。その結果、訳のわからないiPS細胞が生まれるのです。iPS細胞と癌化については、こちらを読んでください。

iPS細胞が癌になりやすいのは、体細胞の遺伝子配列が変わった結果生じたガン細胞ではないので、エピジェネティックな変化の結果であります。エピジェネティックという言葉は、日本語で「後成的」と訳します。後で出来上がったという意味は、遺伝子の配列が出来上がった後の変化の結果なので、エピジェネティックという言葉が付け加えられるのです。ところがゲノムの表現形質が変わったので、エピゲノムの変化ともいいます。ところが今なおiPSが抱える問題は、多能性幹細胞、時にはどんな細胞にも変えられるという意味で、万能細胞とはやし立てられることもあるのですが、様々な腫瘍さえもがiPSから生まれるので、万能細胞という言葉は言い得ていますね。アッハッハ!

どのようにしてガンが生まれるかは、完全には未だ解明されてはいないのです。例えば、iPSを腎臓の細胞に変えて生じた腫瘍は、普通に見られる小児腎臓ガンや腎芽腫と組織学的・分子生物学的特徴が似ているのです。iPSによって生じたこの腫瘍の細胞を調べたところ、遺伝子の変異は見つからず、エピゲノムの状態が変化し、多能性幹細胞と似た遺伝子パターンに変わっていることが明らかとなりました。しかしながら、腫瘍の細胞を初期化したiPS細胞からは正常な腎細胞も作られることもわかりました。これらの結果から、エピゲノムの制御が、腫瘍形成を促進する可能性が示されたのです。言い換えると、遺伝子の配列が変わらなくても、ガンが起こるということがわかったのです。

ここでiPS細胞のガン化と原癌遺伝子c-Mycの関わりについても勉強しておきましょう。iPS細胞作製に用いているレトロウイルス由来の転写因子であるc-Mycが原因で腫瘍を形成することはすでに知られていました。さらにレトロウイルス由来のc-MycはiPS細胞になる過程でその発現は抑えられているのですが、この発現抑制の度合いが高いiPS細胞がいわゆる質の良いiPS細胞の指標の一つとなっています。しかしながら、iPS細胞誘導に用いている山中4因子の一つである、レトロウイルスc-Mycがガン化の原因の一つであります。だからこそiPSは、常にガン化の危険があるのです。みなさん、iPSは再生医療の希望の星と言われていますが、実際は絶望の星、地上に落ちた星になりうるということを知っておいてくださいね。アッハッハ!

骨髄原発のバーキットリンパ腫は、アフリカのパプアニューギニアで多く発生します。疫学により、パプアニューギニアの患者は、EBウイルスが100%感染しているのが判明しています。c-Myc遺伝子と免疫グロブリン遺伝子の相互転座によりc-Myc遺伝子が過剰に発現し、細胞分裂を異常亢進させるからです。

相互転座とはなんでしょうか?英語でreciprocal translocationといい、reciprocal は「相互の」という意味であり、translocationは「転位」や「転座」と訳します。translocationを略して“t”で表現することがあります。非相同染色体間で相互に一部を交換する転座であります。相同染色体については後で詳しく書く有糸分裂と減数分裂の話の中で説明します。具体的には、相互転座というのは、23対の染色体の2本の染色体同士の、遺伝子が乗っている染色体の一部分(遺伝子座)をお互いに誤って交換し合うことです。特に今話題にしているc-Mycという遺伝子は、ほとんどの例で別の遺伝子である免疫グロブリン遺伝子(IG)との間で相互転座を行ないます。

それでは、ガン原遺伝子であるc-Mycの遺伝子座はどこにあるのでしょうか?8番目の染色体のqの2領域の4番目にあります。それを縮めて(8q24)と表記します。ついでにImmuno globulin(Ig)のheavy鎖(H鎖)を決める遺伝子座は14番目の染色体のqの3領域の2番目にあります。それを縮めて(14q32)と表記します。q24とかq32は何かと疑問に思われる人がいるでしょう。説明しましょう。そもそも染色体というのは、1本の棒のようですね。その棒は長いので、真ん中部分をセントロメアといい、そのセントロメアで2つの部分に分けます。長い方の部分を長腕といい、“q”で表します。短い方の部分を短腕といい、“p”で表します。さらにpやqを小さい部分に分けて領域と呼び、さらに領域を分割して番号をつけて遺伝子座の位置をするにわかるようにしたのです。つまりc-Mycが存在する遺伝子座は(8q24)ですから、8番目の長腕の染色体の2番領域の4番目となります。

例えば、相互転座をして、染色体異常のt(8;14)(q24;q32)が起こり、異常な染色体を持っている意味はなんでしょうか?c-Mycがある8番染色体のq24と14番目の染色体のq32の部分で、染色体がお互いに入れ替って相互転座したということです。それでは、14番目の染色体のq32は(14q32)と表すことができます。この遺伝子座は何をコードしている遺伝子でしょうか?これが先ほど述べたImmuno globulin(Ig)のheavy鎖(H鎖)を決める遺伝子座であり、14番目の染色体のqの3領域の2番目にあることを示しています。つまりc-Mycの遺伝子座とIgHの遺伝子座が相互転座したのを、t(8;14)(q24;q32)と簡潔に示しているのです。難しいですがついてきてください。

もう一つ例をあげましょう。染色体異常のt(8;22)(q24;q11)が起こり、異常な染色体を持っている意味はなんでしょうか?それは8番染色体のq24と22番染色体のq11の部分で、染色体がお互いに入れ替って相互転座したということです。22番染色体のq11の部分というのは、(22q11)と表記され、遺伝子 DiGeorge染色体領域(DGCR)をコードしています。

上にあげた2つの異常な相互転座は、バーキットリンパ腫(Burkitt lymphoma: BL)の約80%に検出される他、急性リンパ性白血病(ALL)や多発性骨髄腫(MM)にも認められる染色体異常です。バーキットリンパ腫(BL)では、全例に8q24転座が存在し、その約80 %をt (8;14)が占めています。また、急性リンパ性白血病(ALL)全体に占めるt (8;14) 転座の頻度は約5 %ですが、表面免疫グロブリン(sIg)陽性のB細胞系ALLに限れば、90 %に検出されます。多発性骨髄腫(MM)での頻度は20〜30%です。

繰り返しになりますが、(8q24)に位置するc-Myc遺伝子は、細胞分裂を促進する転写調節因子(転写因子)をコードしていますが、t(8;14)(q24;q32) 転座が認められ、癌遺伝子c-myc と免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH)との融合遺伝子形成が生じ、リンパ系細胞の腫瘍化をもたらすのです。具体的に言えば、相互転座に伴って(14q32)の免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH) 内の切断点と結合すると、免疫グロブリンエンハンサー領域による転写因子のc-Mycの発現亢進が誘導され、どんどんBリンパ球が増殖し、バーキットリンパ腫が生じるのです。t(8;14)とt(14;18)が同時に出現することもあります。8番目と14番目の染色体の相互転座と、14番目と18番目の染色体の相互転座が同時に起こることがあります。こんな時、c-Myc遺伝子、免疫グロブリン重鎖遺伝子(IgH)などがすべて転座し、それぞれの遺伝子同士が融合している場合もあります。融合が多いと予後が極めて不良となります。この転座に限らず、一般人の染色体に変化がみられる頻度は約0.9%といわれています。2回流産を繰り返した時には、約5%に夫婦のいずれかに染色体の変化があることがわかっています。

ついでに融合遺伝子を勉強しましょう。融合遺伝子は相互転座だけに見られるわけではありません。ガン細胞における染色体の相互転座、余計な遺伝子の挿入、逆位などの遺伝子の組換えの際に見られます。逆位という遺伝子の組み換えは、染色体上の遺伝子の配列順序が部分的に逆転することです。融合遺伝子は、複数の遺伝子が連結されて新たに生じる遺伝子であって、その結果、新たなる融合タンパク質をコードすることになります。融合遺伝子は細胞機能に対して明らかな影響を与えない場合が多いのですが、融合タンパク質が細胞増殖シグナルを活性化あるいは分化シグナルを抑制する場合などは、ガンの原因となります。細胞増殖シグナルが活性し続けられると、細胞が無限に増殖してガンの原因になります。細胞を分化させるシグナルが出なくなると、細胞の活性異常や遺伝子変異が起こり、細胞の運命を決める分化の制御の不全をもたらし、ガン化を起こす場合があります。

相互転座が生じる原因ははっきりしていません。相互転座の原因は、放射線や発ガン物質によるものと考えられていますが、説得力がありません。何故ならば、23対の染色体が後で詳しく説明する有糸分裂や減数分裂で染色体を増やしたり分離する際に、遠く離れた染色体番号の違った染色体同士の一部分だけを互いに入れ替えるかを放射線や発ガン物質で説明しきれないからです。

改めてまず相互転座が何かについて勉強した後、次に何がどのようにして起こさせるのかについて勉強しましょう。転座の「座」というのはどういう意味を持っているのでしょうか?遺伝子座の「座」という意味です。一個の遺伝子は染色体上の特定の部位に存在するDNAの配列であり、この特定の部位を遺伝子座といいます。ヒトのように父親から1本の染色体と母親から1本の染色体をもらって、二倍体の染色体を持っているときに、2本の染色体を並べた時に、それぞれを相同染色体といい、同じ部位を遺伝子座といい、その遺伝子座にある遺伝子を対立遺伝子といいます。それぞれの遺伝子座は特定の遺伝子を発現させて様々なタンパクを作ります。それぞれの遺伝子は、染色体のDNA分子の特定の領域にあり、特定の機能をもつタンパクとして、例えば酵素として遺伝子を発現します。この酵素を表現形質といいます。相同染色体の話は以下に書かれています。

今日はここまでです。2019/05/30

皆さんはご存知のように母親の卵子と父親の精子が結合して受精卵となり生命が誕生しますね。どのようにして精子と卵子が結合して生命が誕生するか後で詳しく書きます。ともかく10ヶ月間母体の子宮の中で1個の受精卵が2個、4個、8個…と細胞が増えていき分化していき完全な人間の姿になるまで分裂して10兆個の細胞を持った赤ちゃんとして生まれます。生まれた後、20歳になるまでその10兆個の細胞が更にコピーされて60兆個になるまで増えていきます。

受精卵がどのように分裂して赤ちゃんになるのかを語る前にまず皆さんに問いたいのです。どのようにして10兆個の細胞が分裂して60兆個の細胞になるのか考えた事がありますか?1個の体細胞の有糸分裂によって2個の新たなる細胞が生まれるからであります。その2個の新たなる細胞を娘細胞といいます。体細胞はこのように有糸分裂を繰り返しながら2個の娘細胞を作る事によって、必要に応じて欠如した細胞を新たに自分と全く同じ細胞のコピー(複製)を死ぬまでやり続けるのです。有糸分裂以外に、もう一種類の細胞分裂があります。生命が新たに生まれるために絶対に必要な細胞分裂であり、それを減数分裂といいます。その細胞は生殖細胞といいます。生殖細胞が精子と卵子になるための細胞分裂を減数分裂といいます。どのようにして赤ちゃんの元になる卵子と精子が作られるのか疑問に感じた事はありませんか?それは体の組織を作る体細胞ではなくて配偶子である精子と卵子を作る生殖細胞減数分裂によってであります。配偶子の細胞は精子と卵子であり、体細胞とは全く違うのです。なぜならば、子供を作る事ができない体細胞と子供を作る配偶子とは全く異なるからです。一方、配偶子といわれる精子と卵子は同じ精子と卵子を作るのではなくて精子と卵子とが結合して新たなる全く違った細胞(受精卵)を作るのです。従って、精子と卵子が受精することができるように色々準備をする必要があるのです。この準備をやるためには、精子も卵子も減数分裂を2回繰り返す必要があるのです。1回を第1減数分裂といい、2回目を第2減数分裂といいます。何故生命を生み出す精子と卵子がわざわざややこしい減数分裂を2回やらざるを得ないかを後で詳しく説明します。

まず始めに体の組織の細胞になる体細胞が全く同じ細胞をコピーするために行う有糸分裂について説明しましょう。体細胞の一個が全く同じ体細胞を作る為には2つの大きな仕事が必要です。1つ目は細胞の核に入っている23対の遺伝子(染色体)を2倍にし、細胞質も2倍にする必要があります。2つ目は2倍に増やした23対のDNAである染色体と2倍に増やした細胞質を均等に新しく作った細胞に分け与える必要があります。

皆さん、なぜ23対の遺伝子があるのか知っていますか?ペアつまり対になっているのは、1つは父親から貰った常染色体であり、残りの1つは母親からの常染色体であります。それぞれの染色体を相同染色体といいます。新たに細胞を作るときにこの22対の常染色体と23番目の性染色体をそっくり同じものを作るために有糸分裂がおこなわれるのです。皆さんは23番目の性染色体同士がどうなるのか疑問に感じられるでしょう。つまりX染色体とY染色体は相同ではありませんね。したがってXYの染色体同士は相同染色体とは言えないのです。しかしながら、性を決めるという意味では性相同体と言えますね。アハハハ。一方、女性が持っているXX同士は相同染色体同士ですね。いずれにしろ、例えばXY染色体を持っている男性の場合は有糸分裂で元のXは2倍のXに増え、元のYは2倍のYになり、有糸分裂後にXの1つとYの1つがXYになって新しい娘細胞に分配され、残りのXとYがXYになって残りの新しい娘細胞に分配され2つの娘細胞とも元の細胞の性染色体XYを持った細胞になります。有糸分裂は1個の親細胞から2個の娘細胞へまったく同じ遺伝子を全てかつ平等に伝えるためにおこなうことです。言い換えると細胞がどんどん増えて増殖するために、有糸分裂が必要なのです。それでは女性のXX染色体がどのように有糸分裂をするでしょうか?女性の全ての細胞が核にもっている性染色体XXが有糸分裂したときにどのように新しい細胞に分配されるのかを分かりやすく説明するためにXXに番号をつけます。XXの左のXをX1と番号をつけ、右のXをX2と番号をつけて、XX染色体の有糸分裂の説明を始めましょう。X1とX2­­同士を相同染色体いいます。この相同染色体がコピー(複製)されて、2倍のX1X1とX2X2が作られます。X1とX1同士を姉妹染色分体といいます。同じようにX2とX2同士を姉妹染色体分体といいます。次に元の細胞が分裂して2つの娘細胞を作る時にX1とX2が一緒になって1個の娘細胞に分配され、残りのX1とX2もペアになって残りの娘細胞に分配されるのです。その結果、元と同じ細胞が2個出来ることになります。これを細胞の増殖といいます。生まれたときに赤ちゃんの人体にある10兆個の細胞が成人になるまで増殖を繰り返して60兆個になるのです。

遺伝学は医学の中で1番難しい分野であり、完全に遺伝学を理解するのは医者でも困難です。なぜ遺伝学が1番難しいのでしょうか?それは遺伝学の現象が複雑で、かつ精緻で、かつ覚える内容が無限というぐらいに多く、かつその意味や概念を体系的に理解する事が極めて難しいのです。したがってその概念を表す専門用語が莫大なので、素人の皆さんが理解されるのは不可能と思いながら自分の勉強のために復習しながら説明しているのです。興味ある人は付いてきて下さい。生命は遺伝子で成り立っていますから、遺伝子の全てを学べる遺伝学ほど面白い医学の分野は他にはありません。出来る限り、皆さんに分かりやすく説明する努力をします。

 

ちなみに有糸分裂という言葉がなぜ生まれたのかを詳しく説明しましょう。有糸分裂で出来上がった23対のDNA(染色体)を2つの娘細胞に均等に分けるためにいくつかの装置が必要です。その装置を紡錘体といいます。紡錘体は英語でspindleと書きスピンドルと読みます。紡錘体を構成する糸状のタンパク質を紡錘糸といいます。紡錘糸は微小管という細い糸状の管になった束が多数集まってできた構造をしています。微小管は英語でmicro-tubuleといいます。microは微細と意味で、tubuleは小さい管という意味です。このように倍になったDNAを2つの娘細胞に分配する時に紡錘糸や細い糸のような微小管が必要なので顕微鏡で見ると糸に引っ張られて分裂しているように見えるので有糸分裂という名がついたのです。

紡錘体はゲノム染色体(DNA染色体)を2個の娘細胞に分配するために必要不可欠であり、紡錘体の紡錘糸は染色体の動原体に結合しており、染色体を2つの娘細胞の両極と呼ばれる両端に引っ張って染色体を等分に分けるのに絶対に必要なのです。動原体というのは紡錘体が結合する染色体に存在する特殊構造であり、キネトコアと呼ばれます。動原体(キネトコア)という特殊構造が形成される領域全体が、セントロメアといわれます。セントロメアはDNAと複数のタンパク質から構成されています。

セントロメアと紡錘体の結合に異常がおこると、染色体の分配異常が誘発されます。例えば21番染色体が2つではなくて3つ分配される遺伝子病をダウン症といわれるのはご存知でしょう。あるいはフィラデルフィア染色体、英語でPhiladelphia chromosomeといい、略語でPhと書きます。PhはDNA(遺伝物質)が存在している染色体のなかで、22番染色体と9番染色体の組み換えが起こり、異常が生じた22番染色体です。この22番染色体の異常は、慢性骨髄性白血病や一部の急性リンパ性白血病などでみられる白血病の原因となっています。このような白血病もセントロメアと紡錘体の結合の異常のために生じるのですが、このようなセントロメアと紡錘体の結合の異常はヘルペスウイルスが白血球の遺伝子をトランスフォーメーションさせて生じると考えています。残念ながら、染色体分配機構の理解は極めて難しいのです。なぜならば、セントロメアの分子機構の解明は極めて難しいからです。なぜならばセントロメアが100万塩基対を超える長大なDNA領域と100種類以上の分子からなる複雑な巨大複合体を形成しているので解明が難しいのです。

 

次にさらに難しくなりますが、減数分裂がなぜ減数分裂といわれるのか、また何故わざわざ面倒な減数分裂が2回も必要なのか説明しましょう。減数分裂は上で説明した有糸分裂と違って減数分裂によって生まれる細胞の遺伝子は全てお互いに異なり、しかも親の配偶子である精子とも卵子とも異なっているのです。その違いは減数分裂で生み出されるのです。それでは減数分裂という言葉は文字通り数が減っている分裂ですから減数分裂といいますが、何の数が減るのでしょうか?分裂する前の細胞と減数分裂後の細胞の中に入っている染色体の数が減る事です。染色体とは、巨大なDNA分子と莫大な数のヒストン蛋白からできており、塩基性の色素で染色されることから染色体といわれるのです。父親から来た1本の染色体を1倍体といい、母親から来た1本の染色体を1倍体といいます。良く似た遺伝子をもった父と母からもらった1本の染色体同士が結びついた1対になった染色体を2倍体といいます。それぞれの染色体を相同染色体といいます。つまり、相似た同じ遺伝子をもった染色体同士が結び付いて対(ペアー)となり、1つの細胞にはそのような2倍体の染色体が23対あるのです。

減数分裂で最後に生み出される精子と卵子という配偶子の細胞に入っている遺伝子の数が2倍体から1倍体に減るからです。2倍体というのは父親からもらった1倍体の遺伝子と母親からもらった1倍体の遺伝子が2つになって1+1=2となり2倍体の染色体をもった正常な赤ちゃんとして生まれるのです。したがって、体細胞がもっている2倍体の染色体を1倍体の染色体に減らす必要があるのです。減らす為に減数分裂が必要なのです。2重鎖が精子と卵子が受精する前の染色体の数が第1減数分裂で減るのです。それでは、2つの減数分裂の1番目である第1減数分裂について説明します。非常に難しいですが着いてきて下さい。

第1減数分裂の特徴は、まず第1に父親と母親からもらった22種類の常染色体のバラバラになっていた相同染色体同士が全長に集まって寄り添って全長に渡って相対する、つまりペアになるのです。このような対合は有糸分裂では起こりません。2つ目の特徴は、対合して集まった相同染色体が分離するという事です。有糸分裂では、相同染色体同士が分離する事は絶対にないのです。今日はここまでにします。

2019/5/30

最近では、大阪大学微生物病研究所/免疫学フロンティア研究センターの研究グループは2015年、全身性エリテマトーデスや多発性硬化症といった自己免疫疾患との関わりが知られているEBウイルスによる自己免疫疾患発症のメカニズムを分子生物学的に示した。

通常、胚中心B細胞(成熟段階にあるB細胞)の表面に、排除する抗原に合わないB細胞受容体や、自分の抗原に反応するB細胞受容体があれば、そのB細胞はアポトーシスにより排除される。しかし、その胚中心B細胞がEBウイルスに感染すると、EBウイルスの潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP2AがB細胞受容体シグナルを模倣し、さらに形質細胞(抗体産生細胞)への分化を促進する因子(Zbtb20)が出現して、本来はアポトーシスにより排除されるべき自己反応性B細胞が生き残り(B細胞選択異常)、自己反応性受容体などの抗体を出し続ける形質細胞になる結果、自己免疫疾患が発症するということである。

また同様に、鳥取大学医学部医学科分子病理学分野の研究グループは2017年、EBウイルスに感染したB細胞から自己免疫性甲状腺機能亢進症であるバセドウ病の自己抗体である抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体(TRAb)が産生されることを分子生物学的に示した。

EBウイルスに感染したB細胞は自己反応性か否かによらず、EBウイルスの潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP1によるT細胞非依存性のCD40共刺激シグナルの模倣によるNF-κBの活性化で、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現が促進されT細胞非依存性にクラススイッチが可能となり、多クローン性にあらゆるアイソタイプの抗体の産生をし得る。EBウイルスに感染したB細胞が自己反応性の抗体の可変部を持っていた時、自己抗体を産生し得るということである。特に、バセドウ病を引き起こすのはIgG1のアイソタイプを持ったTRAbであり、そのためにはTRAb陽性B細胞で免疫グロブリン(抗体)のクラススイッチ遺伝子再編成を引き起こす活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現が必須となるが、EBウイルスの潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP1はT細胞非依存性にCD40のシグナルを模倣しNF-κBを活性化させることができ、NF-κBはAID遺伝子(AICDA)の転写を促進するので、バセドウ病を引き起こすIgG1のアイソタイプを持ったTRAbの産生が可能になるということである。

ペンダーの仮説「EBVの初感染時に扁桃腺の自己応答性のナイーブB細胞にEBVが感染し、それらのB細胞をEBVは胚中心に移行させ、そこでそのB細胞は分裂増殖しEBVの潜伏感染態にある自己反応性のメモリーB細胞となる。そしてそれらのEBV感染B細胞は扁桃腺を出て、血中を循環する。EBVに感染したB細胞の数は通常、増殖したり溶解感染状態にあるEBV感染B細胞を殺す、EBV特異的細胞傷害性CD8+T細胞によってコントロールされるが、もしこの防御機構に欠陥があるとするとそうはならない。生き残ったEBV感染自己応答性メモリーB細胞は標的とする臓器に侵入し、そこでそれらのB細胞は居着き、小クローン性のIgGや標的臓器の成分を攻撃する病原性のある自己抗体を産生する。外来抗原と交叉反応することで末梢のリンパ器官で活性化された自己応答性のT細胞は、血中を循環しそして標的臓器に入り、そこで主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex;MHC)に結合した標的臓器ペプチド(target organ peptides;Tp)を提示するEBVに感染した自己応答性のB細胞によって再活性化される。これらのEBVに感染したB細胞は共刺激生存シグナルをB7によって自己応答性のT細胞のCD28受容体に与え、それによって通常は自己応答性のT細胞が標的臓器に侵入した時にB7共刺激分子を発現していないノンプロフェッショナル抗原提示細胞(antigen-presenting cells;APCs)と反応することによって起こる活性化誘導性のT細胞アポトーシスを阻害する。自己応答性のT細胞がEBV感染自己応答性B細胞に再活性化されると、これらの自己応答性のT細胞はインターロイキン2(IL-2)・インターフェロンγ(IFN-γ)・腫瘍壊死因子β(tumour necrosis factor-β;TNF-β)といったサイトカインを産生し、そして標的細胞への自己免疫応答を指揮する(矢印5)。BCR;B cell receptor(B細胞受容体)、TCR;T cell receptor(T細胞受容体)」

自己免疫疾患の一覧表

臓器特異性自己免疫疾患

罹患臓器 疾患 標的臓器・組織 自己抗体 備考
神経・筋 ギラン・バレー症候群 ガングリオシド 抗ガングリオシド抗体 カンピロバクターなど細菌やウイルスの先行感染が関与
重症筋無力症 アセチルコリンレセプター 抗アセチルコリンレセプター抗体  
多発性硬化症 髄鞘 抗アクアポリン4抗体  
消化器 慢性胃炎
慢性萎縮性胃炎
胃壁細胞 抗壁細胞抗体 巨赤芽球性貧血に合併
自己免疫性肝炎 肝実質細胞 抗核抗体
抗平滑筋抗体
抗肝腎ミクロソーム抗体 等
 
原発性胆汁性胆管炎 肝小葉間胆管 抗ミトコンドリア抗体  
潰瘍性大腸炎 大腸 p-ANCA(抗HMG1/HMG2抗体)
リンパ球親和性抗体など
炎症性腸疾患
クローン病 食道〜大腸
原発性胆汁性胆管炎 胆管   IgG4関連疾患
自己免疫性膵炎 膵実質
循環器 高安動脈炎 大動脈 抗大動脈抗体  
グッドパスチャー症候群 肺胞・腎 抗基底膜抗体 急速進行性糸球体腎炎を合併
腎臓 急速進行性糸球体腎炎 腎糸球体 抗基底膜抗体
抗MPO-ANCA抗体
抗DNA抗体
抗P-ANCA抗体 等
 
血液 巨赤芽球性貧血 赤芽球系 抗内因子抗体 慢性萎縮性胃炎を合併
自己免疫性溶血性貧血 赤血球 抗赤血球抗体  
自己免疫性好中球減少症 好中球 抗好中球抗体
特発性血小板減少性紫斑病 血小板 抗血小板抗体  
内分泌・代謝 バセドウ病 甲状腺刺激ホルモンレセプター 抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体  
橋本病 甲状腺ミクロソーム
サイログロブリン
抗甲状腺ミクロソーム抗体
抗サイログロブリン抗体
原発性甲状腺機能低下症 甲状腺 抗ペルオキシダーゼ抗体
抗甲状腺刺激抗体 等
特発性アジソン病 副腎 抗副腎抗体
1型糖尿病 ランゲルハンス島 抗ランゲルハンス島抗体
皮膚 慢性円板状エリテマトーデス   抗核抗体 播種型で高い力価
限局性強皮症 抗1本鎖DNA抗体 斑状強皮症で高い力価
天疱瘡 表皮 IgG抗表皮細胞抗体  
膿疱性乾癬 TNF-α抗体  
尋常性乾癬 表皮 TNF-α抗体  
類天疱瘡 表皮基底膜 IgG抗表皮基底膜部抗体  
妊娠性疱疹
線状IgA水疱性皮膚症 IgA抗表皮基底膜部抗体
>後天性表皮水疱症 IgG抗表皮基底膜部抗体
円形脱毛症 毛母細胞 毛包周囲へのCD4陽性リンパ球浸潤 全頭型・悪性型で顕著
尋常性白斑
サットン後天性遠心性白斑・サットン母斑
メラノサイト 抗メラノサイト抗体 汎発型(A型)に顕著、サットン母斑の場合は色素性母斑の周りに白斑が、出現、母斑が消えることがある
原田病 ブドウ膜・皮膚・神経 病変部のリンパ球浸潤  
自己免疫性視神経症 視神経 抗核抗体
抗カルジオリピン抗体 等
各種疾患に合併
自己免疫性内耳障害 内耳 68kDa内耳自己抗体 他の自己免疫疾患の一部としても発症
男性生殖器 特発性無精子症 精巣 抗精子抗体  
>産婦人科 習慣性流産   抗β2-GPI抗体
抗カルジオリピン抗体 等

 

全身性自己免疫疾患

疾患 標的臓器・組織 自己抗体 備考
関節リウマチ 関節滑膜 リウマトイド因子
抗CCP抗体
 
全身性エリテマトーデス 多臓器 抗二本鎖DNA抗体
抗核抗体 等
 
抗リン脂質抗体症候群 動脈・静脈・子宮 等 抗リン脂質抗体  
多発性筋炎
皮膚筋炎
皮膚・筋・肺 等 抗アミノアシルtRNA合成酵素(ARS)抗体
抗Jo-1抗体
抗Mi-2抗体
抗155/140抗体
抗CADM-140抗体
 
強皮症 皮膚・肺・腎臓 等 抗トポイソメラーゼI抗体
抗RNAポリメラーゼIII抗体
抗セントロメア抗体 等
 
シェーグレン症候群 涙腺・唾液腺・多臓器 抗Ro/SS-A抗体 等  
IgG4関連疾患 多臓器    
血管炎症候群 血管 抗好中球細胞質抗体(ANCA関連血管炎) 一部公費対象
混合性結合組織病 多臓器 抗U1-RNP抗体

-コラム

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