今日は、遺伝子的にAPOEε4の遺伝子がホモであれば、言い換えると父親と母親から同じAPOEε4の遺伝子を持ち、かつ1型単純ヘルペス(HSV-1)に感染している時にアルツハイマーをはじめ、てんかん、精神分裂症(統合失調症)が起こることを証明したいのです。同時に、他の脳の病気であるパーキンソン病、うつ病、躁うつ病、不安障害、その他あらゆる神経に関わる、言い換えると精神に関わる病気(精神病)の全ては中枢神経の脳に感染したHSV-1やHHV-6やHHV-7と、脳を病原体から守る3つの免疫細胞であるアストロサイトやミクログリアやオリゴデンドロサイトとの戦いの結果生じる病気であることも明らかにしたいのです。
人体に生じる病気の全ては遺伝子病でない限り、外部から人体に侵入した異物を免疫が排除する戦いによってしか病気は起こらないのです。人類最後に残った病気はヘルペスウイルスしかないのです。もちろんミコバクテリウム(マイコバクテリウム)という細菌の仲間である結核菌やらい菌や他に抗酸菌などは免疫で殺しにくいのでありますが、彼らは脳の細胞に入り込むことは滅多にありません。しかもほとんど全ての人が感染しているヘルペスウイルスとは違って、免疫を落としすぎたほんの少数の人たちだけに見られる病気に過ぎないのです。ちなみにミコバクテリウム(マイコバクテリウム)は、どんな細菌なのでしょうか?ミコバクテリウム(マイコバクテリウム)科に属するミコバクテリウム(マイコバクテリウム)属の非運動性で抗酸性の好気性細菌の一属なのであります。この属の代表が結核菌であり、この属の細菌は細長い抗酸菌であります。ついでに述べておきますと、動物の分類の中で一番下に分類されるのは種ですね。種の上が属、そのうえが科、その上が目、その上が綱、その上が門、その上が界です。まとめると小さい分類から大きい分類へと分けると、種・属・科・目・綱・門・界の7つであります。
忘れないうちに今日から始まる論文の結論を先に書いておきます。とにかく脳の全ての病気の原因はヘルペスと脳の免疫を司るミクログリアとの戦いであるのです。この脳のミクログリアはヘルペスとの戦いを休戦する平和条約であるPD-1がミクログリアの膜に表出されていないということです。
新しいMHCⅠに似た分子であるCD1分子が発見されました。そのCD-1分子は微生物の脂質をiNKT細胞に提示することがわかりました。このCD-1分子は樹状細胞や単球や胸腺細胞に表出されています。まずCD-1の話から始めましょう。
CD1遺伝子で作られたCD-1タンパクを持った樹状細胞や単球や胸腺にいる未熟なT細胞の仲間である胸腺細胞がCD-1タンパクと様々な糖脂質と結びつき、その糖脂質を提示できる能力を持っているということです。これは驚きですね!!何故ならばCD-1タンパクが発見される前は、抗原提示細胞であるAPCは、2つの条件を満たす必要がありましたね。その一つは、APCはMHCというタンパクを持っていなければならないという条件と、2つ目は、APCが取り込んだ異物はタンパクでなければならないという条件の2つです。ところが新たなる従来のAPCでない特殊なAPCが発見されたのです。特殊なAPCはMHCの代わりにCD-1を持ち、かつペプチドの代わりに脂質が抗原となっていることです。全く新しいAPCの発見に私は度肝を抜かれました。なぜこんな新種のAPCが必要であるのでしょうか?このようなAPCはどこで仕事をするのでしょうか?どこを探してもその答えは今はわからないというわけです。さぁ、私がこの答えを出してみましょう。結論を先に出しましょう。
皆さんご存知でしょう。脳は1000億個の神経細胞で成り立っています。しかも1000億個の神経細胞の軸索は全て生体膜であるリン脂質で覆われています。これほどリン脂質で埋め尽くされている臓器はどこにもありません。軸索を覆っているのは髄鞘(ミエリン鞘)と言われることはご存知ですね。この髄鞘(ミエリン鞘)は電気信号(神経パルス)を伝える神経軸索から電気が漏れないようにするための絶縁体であることもご存知ですね。ここで少し髄鞘について復習しましょう。髄鞘は英語で“myelin sheath”といいます。コレステロールの豊富な絶縁性の髄鞘で軸索が覆われることにより神経パルスの電導を高速にする機能も持っています。髄鞘はグリア細胞の一種であります。シュワン細胞は末梢神経系の神経に髄鞘を形成するのはシュワン細胞であり、一方、中枢神経系の神経での髄鞘を形成しているのはオリゴデンドロサイトであります。大脳では外側に神経細胞体が集まっている大脳皮質があります。この大脳皮質から軸索が内側に伸びているので、髄鞘の多い軸索の線維が集まっています。髄鞘中には大量のリン脂質が存在しています。脂質は白く見えるので、白質と呼ばれます。ミエリンの主要成分は脂質であり、ミエリンの総重量の70~80%にのぼります。残りの約20%はタンパク質から構成されます。
実はこの絶縁性の高い髄鞘の機能は、髄鞘化された神経線維(有髄線維)に沿った電気信号(神経パルス)の伝導速度が速くさせることです。神経線維は完全に髄鞘に覆われているわけではなく、数十µm から数mm おきに存在する間隙を残して髄鞘化されています。この間隙はランヴィエの絞輪と呼ばれています。髄鞘化されていない線維では神経パルスは連続的に伝わりますが、線維がランヴィエの絞輪を残して、他の神経線維が髄鞘化され絶縁されることによって、神経パルスはこれらの間隙の間を跳躍的に伝導できます。これを跳躍伝導といいます。ランヴィエの絞輪にはパルスの伝導にかかわるイオンチャネルが特に多く存在しています。髄鞘が傷害される脱髄疾患では神経の伝導速度が低下するため、多様な症状が起こることとなります。
皆さん、脱髄疾患がどのようにして起こるか考えて下さい。私はアルツハイマーは、まさに髄鞘が傷つくことによって生じる脱髄疾患の一つと考えています。それではどのようにして髄鞘が傷つくのでしょうか?それは後で詳しく述べます。先ほど述べたように、ミエリンの主要成分は脂質であり、ミエリンの総重量の70~80%にのぼり、残りの約20%はタンパク質から構成されていることは知っていますね。スフィンゴミエリンの80%のスフィンゴリン脂質を認識するNKT細胞と、脳神経細胞に存在するヘルペスウイルスが戦った時にスフィンゴミエリンに含まれている20%のタンパク質の残骸がアミロイドβであり、タウタンパクではないでしょうか?この答えは後で出すつもりです。
この髄鞘(ミエリン鞘)はリン脂質から成り立っており、スフィンゴミエリンと言われ、人体で最も存在量が多いグリセロリン脂質と似ています。スフィンゴミエリンは、化学構造式はグリセロリン脂質とそっくりでありますが、由来は全く別なのであります。スフィンゴミエリンは、スフィンゴシンを骨格とするスフィンゴ脂質であり、グリセロリン脂質の合成とは全く異なります。難しいですがついてきてください。スフィンゴミエリンは、生体膜に最も多いスフィンゴリン脂質の代表格で、脳の神経軸索の膜の脂質成分であります。骨格になるスフィンゴシンはパルミチン酸という脂肪酸とセリンというアミノ酸から作られるアミノアルコールであります。3つの炭素の2番目の炭素にアミド結合で脂肪酸がつき、1番目の炭素に何もついていないのがセラミドであり、このセラミドが全てのスフィンゴ脂質の母体となっており、このセラミドから4種類のスフィンゴ脂質が作られます。皆さんには聞き慣れない名称ばかりですが、どうしてCD-1を持ったAPCができたかを説明するには通らなければならない関門ですからついてきてください。機会があれば生体膜の脂質について必ず説明してあげます。
このCD-1の遺伝子によって作られたCD-1タンパクは5種類あります。CD-1a、CD-1b、CD-1c、CD-1d、CD-1e、の5つです。CD-1タンパクは、T細胞に抗原を提示することができます。CD-1タンパク分子は、group1とgroup2に分けられます。Group1のCD-1は3種類から成り立っています。Group1は、CD-1a、CD-1b、CD-1cです。Group2は、ただ一つCD-1dだけです。Group1のCD-1a、CD-1b、CD-1cは、微生物の糖脂質やリン脂質やリポペプチドと結びつくことができます。スフィンゴ脂質の1番目の炭素に糖がついたものがスフィンゴ糖脂質です。動物で単に糖脂質といえば、スフィンゴ糖脂質を指すのです。単糖が一個ついた最も単純な糖脂質がセプブロシドです。オリゴ糖がついて電荷の無いものはクロボシドと呼ばれます。シアル酸と呼ばれるN-アセチルノイラミン酸を含む複雑な構造をした糖脂質がガングリオシドであります。スフィンゴ脂質というのは、60種類以上あります。ついでに言えば、ABO血液型の違いは、スフィンゴ糖脂質の糖の違いによるものです。
それでは微生物の糖脂質やリン脂質やリポペプチドなどは、どのような微生物の膜の成分となっているのでしょうか?その代表がミコバクテリウム(マイコバクテリウム)属の細菌の膜の成分であります。その成分にはミコリン酸、グルコースモノミコレート、ホスホイノシトールマンノシド、リポアラビノマンナンなどがあります。
寄り道は終わって、CD-1についての話に戻りましょう。CD-1の遺伝子によって作られた分子は、脳神経細胞の軸索の周りを覆っているスフィンゴ脂質や、ジアシルグリセロールのような自分の脂質抗原と結びつくことができるのです。自分の神経の脂質抗原と結びついたCD-1分子がCD-1と脂質抗原と結びついた複合体だけを認識するT cellの膜にあるT cell receptorによって認識させることができるのです。元来、T cell receptorは、CD-4と結びついたMHC-1の複合体しか認識できないのにもかかわらず、CD-1分子によって提示された脂質を認識するT cellはCD4やCD8を持っていないのです。さらに難しくなりますがついてきてください。
CD-1分子によって提示された脂質を認識するT cellの大部分は多様なαβreceptorを持っており、CD-1aとCD-1bとCD-1cによって提示された脂質に対して反応するのです。ところが、CD-1dしか認識できないT cellのT cell receptorは、上に述べた3つのCD-1a、CD-1b、CD-1cと違って、多様性は少なく、多くはTCRα鎖を持っているだけですが、それらはまた驚くべきことにNK細胞のreceptorをも表出しているのです。以上述べたCD-1dを持ったT細胞は、“invariant NKT cells”とも呼ばれます。“Invariant”は「不変の」という意味であり、“NK”は「natural killer」であり、“T cell”は「T細胞」の意味ですね。
ヒトインバリアントNKT(iNKT)細胞は、CD-1d分子と結びついた脂質複合体を持っているAPCに対して反応できる、新たなるTリンパ球の一種であります。これらのAPCによって、iNKT細胞が活性化すると、自然免疫応答を担当するNK細胞や樹状細胞あるいは獲得免疫応答を担当するB細胞やT細胞など、多くの細胞が迅速に活性化されるのです。また、iNKT細胞はTh1、Th2タイプの免疫応答を引き起こすのみならず、種々の免疫応答においても様々な重要な機能を持っています。iNKT細胞は、Th2応答を促進し、多くの臓器特異的自己免疫疾患発症の防止に関わっていますが、しかし一方では、iNKT細胞はTh2免疫応答を抑制し、IL-12によって誘導されるTh1免疫応答を促進し、腫瘍拒絶や感染防御などに関わっているとされています。これらの矛盾した現象は、異なる機能を持つiNKT細胞サブセットの存在に起因することされています。実際、iNKT細胞には、CD4+、CD8+、CD4−、CD8−、の種類が存在し、それぞれが産生するサイトカインが異なることが知られています。
皆さん、どうしてiNKT細胞は、このような矛盾だらけの機能を負わされているのでしょうか?これに対する答えは、次回お楽しみに。