なぜヘルペスウイルスが殺しにくいか?(なぜヘルペスウイルスに対してワクチンを打つ意味がないのか)
なぜヘルペスウイルスに対してワクチンを打つ意味がないのでしょうか?この話を進める前に免疫学的にワクチンというのは何をするのかを一度詳しく説明する必要があります。ただワクチンを打つ目的は本当の敵が来たときに、知らぬ間に免疫が侵入者を殺してしまい、病気を意識する必要がないためだということは全ての人は既にお分かりでしょう。それではどうしてワクチンを打つことが戦いの症状を意識しないで病気を治してしまうかについては、どの免疫学者も詳しく述べていません。それを例のごとく、世界で初めて皆さんに分かりやすく説明しようとしているのです。この話をし始めると、免疫が感染症を起こす侵入者をどのように認識し、どのように先天免疫を働かせ、さらに先天免疫のどの細胞がどのようにして後天免疫に橋渡しをし、ヘルパーT細胞がどのようにしてB細胞に抗体を作らせる液性免疫の話に加えて、さらにヘルパーT細胞がどのようにしてキラーT細胞に感染した細胞を殺すのかという細胞性免疫の話まで全て説明する必要が出てきます。それは長すぎて複雑であり、難しすぎるので次回にまわすことにして、結論としてヘルペスウイルスに対するワクチンが意味がないことをまず説明しましょう。
この問いに対する答えは実は極めて簡単なのです。だからこそ先に済ましてしまいたいのです。最初の最初に書いたように一度かかった感染症に対しては二度とかからないという話はしましたね。実は究極のワクチンは、実際にそれぞれのウイルス感染症や細菌感染症にかかってしまうことなのです。だからこそ幼児は保育園や幼稚園で何百種類の風邪のウイルスにかかって二度と同じ風邪のウイルスにかからないために免疫をつけているのです。元来、普通の風邪で正常な普通の免疫を持っている幼児は死ぬことはないので、普通風邪に対しては、誰もワクチンを打つことはしないのです。このように実際に風邪にかかることが、二度と同じ風邪にかからない免疫のつけ方の究極なのです。ところが風邪のウイルスのような死ぬことがない敵に対しては自分の免疫で風邪のウイルスを殺すことができるのですが、例えば日本脳炎や百日咳や麻疹や流行性耳下性炎や破傷風などは、ときには免疫が負けてしまうような怖い感染症にかかってしまうと、後遺症が残ったり、ときには死ぬことが過去にあったからこそ、ワクチンが使われ始めたのです。
1798年にワクチンを最初に作ったのはエドワード・ジェンナーであり、それが天然痘のワクチンであったのは皆さんご存知でしょう。ところが彼はワクチンの原理は何一つ知らなかったのです。経験的に牛痘の膿をジェームス・フィリップという子供に植え付け、その後に天然痘の膿をその子供に接種しても天然痘にかかることはないということを証明しただけなのです。どうしてジェームス・フィリップが天然痘にかからなくなったかの原理の全てを語ることは、ワクチンの原理の全てを語ることと同じなのです。しかしそれは後に回します。いずれにしろワクチンを打つよりも、本当の敵に感染した方が二度と病気にかからないわけですから、二度と感染症にかからないためには、“ワクチンよりもはるかに優れたワクチン”は一度感染症にかかってしまうことだということはお分かりでしょう。幼児が幼稚園で風邪のうつし合いをしているのは、いわゆる生の本物のワクチンを打っているといえるのです。
さぁ、もう頭のいい人で、何回もヘルペスウイルスにかかっている患者さんは、ヘルペスウイルスに対するワクチンを打つ意味がないことを既にお分かりでしょう。つまりヘルペスに一度かかっているのに、また何回も何回もヘルペスと戦い、同じような症状が出続けているのは、いわゆる免疫がついていないからだということはお分かりでしょう。だからこそヘルペスのワクチンが要らないということなのです。なぜならばヘルペスのワクチンを打ったことがない人が、一度ヘルペスウイルスに感染するという“強い生のワクチン”を打っているにもかかわらず、二度三度同じように症状が出てくるからです。つまり本当の病原性が強いヘルペスに一度かかって殺しているはずにもかかわらず、再び同じヘルペスにかかっているのは免疫ができていない証拠なのです。つまりヘルペスウイルスは免疫で殺すことができないということを証明しているのです。病原性の強い本当のヘルペスにかかっても免疫がつかないのに、病原性の弱い製薬メーカーが作ったヘルペスウイルスのワクチンをしても、免疫がつかないのは当たり前であるのです。病原性がはるかに弱いワクチンを打つ必要があるでしょうか?ありませんね。これが答えです。
ここでどうしてヘルペスに対しては免疫ができないのかについて述べる必要があるのです。これに対する答えも極めて簡単です。人体に一度侵入したヘルペスウイルスを、自分の免疫で殺しきることができないからです。自分の免疫で殺しきれない敵を誰が殺してくれますか?皆さんの中にはワクチンが殺してくれると思い込んでいる人もたくさんおられるでしょう。全く違うのです。ワクチンは免疫を利用して、一度かかった同然の状態を免疫に覚えこませて、その免疫の記憶を利用して免疫が同じ敵をすぐに殺せるようにしているだけなのです。
さらに、私がワクチンがどのような仕事をしているかについての話を後回しにしようとしたのは、免疫の記憶についても語る必要があるからです。ワクチンに関係する免疫記憶に関わる細胞にはメモリーB細胞とメモリーヘルパーT細胞とメモリーキラーT細胞があります。このような免疫記憶細胞がどのようにして一度出会った敵を記憶し続けるかについて語ることはきわめて難しいのです。昔から現代免疫学の最も難しい問題は免疫記憶を解明することであったのですが、それが最近の研究によって徐々に徐々に明らかにされてきました。これらの話を全て語り尽くすつもりですから、ご期待ください!と同時に、ワクチンのメカニズムもできる限り分かりやすく詳しく書く予定です。
今日はここまでです。2013/02/14
なぜヘルペスウイルスが人間の免疫から回避して、いつまでもひとりの人間が死ぬまで人体に潜み続けるのみならず、現代文明に生きる人類に潜み続け、免疫が低下したときに全ての現代人の体内で増え続けるのか。さらに人間が免疫を回復したときに、再び戦いを行うときに出る不愉快な様々な症状が人類絶滅の最後まで残り続けるのかについて、詳しく説明していきましょう。同時に本論のヘルペスウイルスに対して、なぜヘルペスウイルスが持っている免疫回避機構のためにワクチンが作れないかを、免疫学に基づいて詳しく説明しましょう。文明に最後に残された人体の敵がなぜヘルペスウイルスであるかということもご理解できるでしょう。
ヘルペスウイルスが至上最強の狡猾なウイルスであり続けるのは、ウイルスの進化の過程で人体に寄生し続ける場所に偶然にも神経を選びとったためです。神経細胞に定着できる親和性を進化の中で獲得したのです。言い換えると、神経細胞の膜のレセプター(鍵穴)に結合できる鍵(リガンド)をあみ出し、この鍵を鍵穴に差し込んで、神経細胞のドアを開けて神経細胞内に入り込む特殊な能力を身につけたのです。鍵穴のことをレセプターと呼ぶことはご存知だと思うのですが、鍵の方を専門用語でリガンドといいます。今後、レセプターにリガンドが結びつくという話はいくらでも出ますから覚えておいてください。
それではなぜ1種類のウイルスは1種類の細胞にしか入れないのかご存知ですか?ウイルスは遺伝子しか持っていないものですから、自分自身が生き続け、増殖し続けるためには、設計図である遺伝子だけでは無理なのです。そのためには自分自身をコピーできるための材料が必要なのです。材料はウイルス以外の生命体にしかありません。しかも細胞の中にしかないのです。とすれば、例えば人体は210種類の細胞からできているといわれていますが、人間の210種類全ての細胞に入るリガンド(鍵)を持つように進化すれば、一番都合が良いと思われるでしょうが、実はそのようにはならなかったのです。なぜでしょう?答えは2つあります。1つは、リガンド(鍵)を多種類持つには小さすぎるし、さらにその鍵はタンパクでできていますから、そのタンパクを多種類作るには遺伝子が少なすぎるからです。2つめは、210種類の鍵穴の取り合いを他のウイルスとやらざるをえなくなることを避けたからです。つまり縄張り争いをして他のウイルスと戦うことを避けたからです。ウイルスはなんと控えめな生命といえるでしょうか!貪欲な人間とはまるで異なりますね。それでもウイルスの世界も独占と縄張りの世界であるようですから、やはりウイルスからエゴの世界が始まったといえるかもしれませんね、アッハッハ!もしウイルスが貪欲であれば、より高度な単細胞になり、多細胞になり、魚類になり、両生類になり、爬虫類になり、哺乳類になり、最後は人間になればよかったのです。実は人間の祖先はウイルスであるとも言われています。ウイルスの中で貪欲な進化を続けた特殊なウイルスが38億年かけて人間になったとも言えるのです。ワッハッハ!嘘ではないのですよ!
しかしながら人体の免疫に殺されてしまうヘルペスウイルス以外のあらゆる他のウイルスは、住処を間違ったようです。神経細胞以外の他の細胞に住み着けば、必ず人間の免疫がウイルスを見つけ出し、殺してしまうからです。ところがヘルペスウイルスは偶然にも人体の神経が人間にとって最も大事であることを知らずして住み始めたことが、人類が滅亡するまで、というよりもあらゆる脊椎動物が滅亡するまで生き続ける保証を得たことになったのです。なぜならば神経細胞が戦場になり続ければ、脊椎動物は生き続ける意味がなくなるからです。脊椎動物も神経が最も重要な器官であることを重々わかっているので、神経細胞体の集合体である神経節をあらゆる障害から守るために、神経の防壁である外套細胞を何重にも巻きつけて保護したのです。ところが、神経に入り込んだヘルペスウイルスが免疫から逃れてこの神経節に逃げ込んでしまえば、免疫によって絶対に殺されない最適な住処となることを知ってしまったのです。いわば絶対安全な皇帝が住んでいる敵の陣地に、こっそり隠れ続けることができるというのが、免疫から回避できる最高の戦略になってしまったのです。ヘルペスウイルスが神経だけを住処にしたことが、ヘルペスを永遠に人類の敵にしてしまったことをまず知っておいてください。
さらに、下記にもっと具体的なヘルペスの免疫からの逃避戦術が、免疫を敵に回してどのように行われ、どのように抗体を作らせないか、かつキラーT細胞に殺されないようにしているのかを説明していきましょう。この説明が、とどのつまりはヘルペスに対するワクチンができない説明になることも分かっていただけるでしょう。
1、ヘルペスに対する防御免疫タンパクである抗体を作るために、人間が持っている遺伝子の発現をスタートさせるメッセンジャーRNA(mRNA)を分解させるタンパク質をヘルペスが持っているために抗体が作られにくいのです。
皆さん、人間の遺伝子は何のためにあるのでしょう。一言で言うと、タンパクを作らせる設計図なのです。ヘルペスウイルスを殺すのは、抗体とキラーT細胞(CTL)とナチュラルキラー細胞(NK細胞)です。抗体は血液に溶けているので、抗体の働きをまとめて液性免疫といいます。キラーT細胞(CTL)やナチュラルキラー細胞(NK細胞)は細胞ですから、これらの働きを細胞性免疫といいます。実は抗体自身が直接ウイルスを殺すわけではないことは知っておいてください。もちろん液性免疫と細胞性免疫はお互いに助け合っていることも知っておいてください。さらにどのように免疫がヘルペスウイルスをも含めたウイルスを殺すかはこちらを読んでいただければよく分かるはずです。いずれにしろ抗体はタンパクなのです。このタンパクを作らせる遺伝子であるDNAの塩基の配列を読み取るためには、まずメッセンジャーRNA(mRNA)に読み替える必要があります。さらにこの読み替えたDNAの命令をタンパクを作るリボソームという工場にまでメッセンジャーRNA(mRNA)に転写させます。ところが感染細胞に入り込んだヘルペスウイルスは、この出来上がったmRNAを分解させてしまうのです。従って抗体を作るどころか、リボソームというタンパクを作る工場まで運ぶことさえできなくなるのです。
2、ヘルペスウイルスはインターフェロンの働きを抑えます。皆さんがご存知のようにB型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスを殺すためにインターフェロンが使われています。ヘルペスウイルスはこのインターフェロンの働きを抑えるのです。
インターフェロンは、耳にされたことがあるでしょう。ウイルスが人体の細胞に感染すると、その細胞(宿主細胞)が隣の正常な細胞に敵が来たことを伝えるために産生するサイトカインのひとつです。どんなウイルスに対しても、そのウイルスが増殖させないようにします。つまり感染細胞が分泌したインターフェロンは、まだ感染していない周囲の細胞が持っているインターフェロンレセプターに結合し、短時間でウイルスに抵抗できるようにするのです。特にウイルスの感染初期の防御因子として重要なのであります。この防御因子の働きは、ウイルスが自分のコピーを作るために必要なタンパク質を合成するのを阻害したり、従ってウイルスが増殖しないようにします。インターフェロンにも様々な種類がありますが、抗ウイルス作用以外にもNK細胞の活性を強めたり、CTL細胞の働きを強めたりするのです。インターフェロンの全てを語るのは不可能です!
3、樹状細胞の働きをヘルペスウイルスは阻害することができるのです。樹状細胞はヘルペスウイルスのタンパクの断片をT細胞に提示するために必要ですが、この仕事をできなくさせてしまうのです。
樹状細胞は、これを発見した医学者が2年前にノーベル賞をもらって有名になりました。樹状細胞こそが、人間が生まれつき自然に持っている先天免疫と、抗体を作る後天免疫とを仲介してくれる最も大切な免疫細胞の中枢のひとつであります。この樹状細胞の働きがなくなるとヘルペスウイルスを取り込んだ樹状細胞は、ヘルパーT細胞にヘルペスウイルスの断片を提示することができないので、後天免疫の発動が不可能になり、抗体が作られないのは、私のホームページを読んでいただいている皆さんは既にご存知でしょう。いうまでもなく樹状細胞のMHCⅡにヘルペスウイルスのペプチドが結合して、それをヘルパーT細胞に提示することができなくなってしまうからです。
4、ヘルペスウイルスは、補体作用を働かなくさせるのです。補体は敵であるヘルペスウイルスと結びつかなければ、Bリンパ球に敵であるヘルペスウイルスを提示することができません。
先天免疫の極めて大事な捕体については徹底的に詳しく分かりやすく書いてあげようと思っていますが時間がありません。先天免疫(自然免疫)である捕体はAIDSを起こすHIVウイルスをも殺すことができることを知っておいてください。このようなAIDSのウイルスさえも殺すことができる捕体の働きをヘルペスウイルスが奪い取ることができるので、この意味ではヘルペスウイルスはHIVよりも怖いウイルスといえます。ただヘルペスウイルスは人間の神経細胞に住み着くというすごい離れ業を持っているだけではないのです。だからこそ人類消滅まで人類を苦しめるのです。一方、HIVは後天免疫の中枢であるリンパ球に住み着くというすごい離れ業はできるので、AIDS発祥当時は、AIDSにかかると必ず命がなくなると恐れられたのですが、近頃HIVは、抗ウイルス剤を3剤投与することによって、AIDSのために死ぬことはなくなってしまいました。HIVも人を殺すだけの実力があるのですが、ヘルペスウイルスほどずる賢さがないので、結局は人間の免疫と人間が作り出した抗HIV剤で敗北をしてしまいました。AIDSは制圧されたといってもよい状態になりました。しかしヘルペスは人を殺さないけれども、人を永遠に苦しませ続け、しかも人間の免疫でも抗ヘルペス剤でも殺しきることができないので、永遠に人類にとって手ごわい敵となり続けるのです。皆さん、この意味でもHIVよりもヘルペスの方が恐ろしい敵だとお分かりになりませんか?このホームページを読まれている皆さんの神経で今も生き続け、今も増殖し続けているかもしれませんよ。もし皆さんがステロイドをはじめとする現代の免疫を抑制している薬を飲み続けている限りは、どんどん増殖し免疫を取り戻したときには、リウマチ性多発筋痛症や線維筋痛症や慢性疲労症候群や、さらにあらゆる難病の病名がつけられる病気になってしまうのですよ。現代の間違った医療、つまり免疫を抑える医療からできる限り脱却することしか、ヘルペスから逃れられませんよ。しかもそのような薬を止めたときのリバウンド症状というのは恐ろしいものであると知っておいてください。悲しいことです。
5、Bリンパ球がヘルペスに対する特異的な抗体を作ったとしても、この抗体のしっぽに大食細胞や好中球をひっつかなくさせてしまうのです。
ワクチンの目的は2つあります。最初に述べたように、病気を起こさずにワクチンを打つことによって、メモリーT細胞やメモリーB細胞を作って、本当の敵が来たときにすぐに抗体を作らせるためです。もうひとつはキラーT細胞(CTL)に敵を覚えさせ、病原性の強い本物の敵が来たときにすぐに殺してしまうためです。この2つがワクチンの大目的です。
たとえヘルペスワクチンによってその抗体を簡単にメモリーB細胞に作らせて、その抗体の“Y”という形の上の2本の手にヘルペスウイルスが捕まえられても、“Y”の一本足にくっつく大食細胞や好中球が引っつかない限りはヘルペスウイルスは食べられないのです。このような敵を捕まえる抗体の働きを抗体のオプソニン作用というのは皆さんご存知でしょう。いくら抗体が数多くのヘルペスウイルスを捕まえて大食細胞に食べさせようとしても、大食細胞が一本足に引っつかない限りは、大食細胞はヘルペスウイルスというご馳走があっても、見向きもしないし食欲も全く示さないのです。ワクチンで簡単に抗体を作るように前もって準備していても、ヘルぺスウイルスが好中球や大食細胞に食べられない限り何の意味もないことがお分かりでしょう。だからこそワクチンは意味がないという最も大きい根拠なのです。
詳細は分かってはいないのですが、ヘルペスウイルスが、ヘルペスに対する特異抗体である抗体の両手にヘルペスが引っついても、引っついていない抗体と同じ状態にさせるからではないかと考えられます。つまり抗体の両手に他のウイルスが引っ付くと一本足のしっぽに大食細胞や好中球が引っつきやすくなるのに、ヘルペスウイルスの場合だけがなりにくいと考えられます。
6、キラーT細胞の働きをさせなくします。キラーT細胞は別名、細胞傷害性T細胞ともいいます。英語でCytotoxic T Lymphocyte(CTL)といいます。キラーT細胞がヘルペスウイルスが感染した細胞を殺すときに、どの細胞にヘルペスウイルスが感染したかを知らせる情報が必要です。MHCⅡと似たMHCⅠというタンパクは全ての細胞にあります。(MHCⅡは4つの細胞しか持っていません。樹状細胞、大食細胞、B細胞、胸腺の上皮細胞の4つです。これらの4つはヘルパーT細胞に抗原を提示できる特殊な免疫細胞なのです。)この全ての細胞が持っているMHCⅠというタンパクにヘルペスウイルスの断片であるペプチドと結びついて、これをCTLの細胞に提示します。このMHCⅠ-ペプチド複合体を認識したCTLがこの自分の細胞もろともヘルペスウイルスを殺そうとするのですが、このCTLの働きをなくしてしまうのです。
5の項目でワクチンの効果のひとつである抗体が作られてもヘルペスウイルスは大食細胞や好中球に食べられにくくされてしまうことは述べましたが、さらに2つめのワクチンの効果である細胞性免疫で一番大事な仕事をしてくれるCTLの働きもヘルペスウイルスはさせなくしてしまうので、ワクチンを打つ意味がますますなくなってしまうのです。
CTLが感染細胞を殺しにくくなるのは、MHCⅠと結びついたヘルペスウイルスのペプチドが、MHCⅠを覆い隠すためだと考えられます。あるいは、このヘルペスウイルスのペプチドをCTLは正常な細胞自身がはじめから自然に持っているタンパク成分のペプチドだと思い込ませる性質を、ヘルペスウイルスのペプチドが持っているからかもしれません。
7、ヘルペスウイルスは自分が入り込んだ人体の細胞が自殺しないようにするのです。この自殺を細胞のアポトーシスといいます。人体の免疫はヘルペスウイルスを殺すために自分の細胞もろとも殺そうとするのですが、ヘルペスウイルスはそれをさせまいとするのです。このアポトーシスを起こす働きを持っているのもCTLであります。
CTLがパーフォリンという酵素で感染細胞に穴を開け、さらにグランザイムBという酵素を放り込んで感染細胞を自殺させることは皆さんご存知でしょう。つまりこの細胞自殺はヘルペスを直接殺すわけではないのです。感染細胞が自殺してしまうと、その細胞内に潜んでいるヘルペスウイルスをも同時に殺してしまうだけの話です。従ってヘルペスウイルスを直接殺すことができるのは、やはり貪食細胞である大食細胞(マクロファージ)と好中球しかないのです。だからこそ好中球を殺し屋専門の細胞といいます。一方、マクロファージのことを大食細胞、貪食細胞、大食球などというのは、単にウイルスをはじめ、様々な細菌などを食べ殺すだけではなくて、その分解した敵の情報をT細胞に提供できるので、好中球よりもはるかに多彩な仕事ができるのです。
6の項で書いたように、CTLの働きがなくなるのは、細胞自殺をさせないことになりますから、7の項も同じことを繰り返し言っていることになります。もちろん細胞自殺はCTLのみならず、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)も引き起こすことができるので、ヘルペスウイルスはNK細胞の働きもなくしてしまうことがお分かりになるでしょう。
(※ 補足 ヘルペスが神経節に潜んでいる場合、キラーT細胞はヘルペスを殺す事が出来ません。しかしヘルペスが他の細胞に入っている場合は、NK細胞やキラーT細胞により殺すことが可能です。)
以上、ヘルペスウイルスのワクチンを打つ意味が全くないことがお分かりになったことでしょう。にもかかわらず、医学会はヘルペスのワクチンを強く勧めているのは誰のためなのでしょうか?皆さん、考えてください!
今なお、さらに世界中のウイルス学者がヘルペスについての研究をしていますが、なかなかヘルペスに関わる真実が公表されません。なぜならば人類の最後の敵はヘルペスということが分かってしまい、かつ現代人が悩んでいる様々な神経症状のほんと全てが、ヘルペスと免疫の戦いであるということが分かってしまうので、明らかにしないのです。残念です。現代の臨床医学に必要な薬は、漢方煎剤と抗生物質と抗ヘルペス剤だけなのです。私はヘルペスの研究者ではないので、以上の程度のことしか書けないのが残念です。
私のような研究者でない一介の開業医でも、最も興味のある最も臨床に大切なウイルスであるヘルペスに興味を持たないウイルス学者はこの世に誰もいないはずなのです。にもかかわらずヘルペスの情報が公表されないのが残念至極です。抗ヘルペス剤が保険で長期に用いられない理由も全て分かっていますが、チャンスがあればいずれ書くつもりです。
次回はなぜクローン病(CD)や潰瘍性大腸炎(UC)が膠原病の中で最も治りやすい病気であるのかを論証してみせましょう。絶対に治らない病気であるといわれるCDやUCほど簡単に治る難病はないのです。医学会は簡単に患者の免疫で治せる病気を難病に仕立て上げ続けているのは許せない悪事です!
今日はここまでです。 2013/02/21