ガン ガン 理論

ワールプルグ効果とは?更新2025.6.25

投稿日:

ワールブルグ効果とは、がん細胞が酸素が十分に存在する環境(好気的環境)でも、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化(OX-PHOS)を十分に利用せず、主に解糖系でATPを産生する現象を指します。この現象は、1930年代にノーベル賞受賞者であるオットー・ワールブルクによって発見されました。

解糖系と酸化的リン酸化:細胞はエネルギーを産生するために、主に解糖系と酸化的リン酸化という2つの経路を利用します。解糖系は酸素を必要とせず、グルコースを分解してATPを産生する過程です。一方、酸化的リン酸化はミトコンドリアで行われ、酸素を必要としますが、より効率的にATPを産生します。

エネルギー産生には解糖系と酸化的リン酸化以外にも、ATP-CP系(クレアチンリン酸系)や、嫌気性解糖系(乳酸系)やβ酸化などの5つの経路があります。これらの経路は、それぞれ異なる条件下でATP(アデノシン三リン酸)を再合成し、エネルギーを供給します。ATP-CP系(クレアチンリン酸系)とは:激しい運動の初期段階で、非常に短時間でATPを供給する経路です。クレアチンリン酸が分解される際に放出されるエネルギーを利用して、ATPを再合成します。嫌気性解糖系(乳酸系)とは:酸素がない状態で解糖系が働く経路です。グルコースを分解してATPを生成しますが、最終的に乳酸が生成されます。β酸化とは:脂肪酸を分解してATPを生成する経路で、ミトコンドリアで行われます。

癌細胞ではミトコンドリアは減っています。
癌細胞では、ミトコンドリアの数が減るだけでなく、質も低下することが知られています。また、ミトコンドリアの機能異常が、がん細胞の増殖や免疫細胞への影響、そしてがん免疫療法への抵抗性につながる可能性も示唆されています。
詳細:
ミトコンドリアの減少と機能低下:
がん細胞では、ミトコンドリアの数が減少し、機能も低下していることが研究で示されています。特に、ミトコンドリアが持つDNA(mtDNA)に変異が生じることが多く、これが機能低下の一因となっていると考えられています。
エネルギー代謝の変化:
正常細胞では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化によってエネルギーが産生されますが、がん細胞では、酸素がなくても利用できる解糖系を主に利用することが知られています。
免疫細胞への影響:
がん細胞は、異常なミトコンドリアを免疫細胞に送り込み、免疫細胞の機能を低下させることがあります。これにより、がん免疫療法が効きにくくなる可能性も指摘されています。
がん免疫療法への影響:
がん細胞のミトコンドリアの異常は、免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法に対する効果を弱める可能性があります。
まとめ:
癌細胞におけるミトコンドリアの減少と機能低下は、がんの増殖や転移、免疫システムへの影響、そして治療効果の低下に深く関わっていると考えられます。このため、ミトコンドリアをターゲットにした治療法や、がん免疫療法の効果を予測するマーカーとしての活用が期待されています。

がん細胞の異常な代謝:通常、細胞は酸素が十分に存在する場合は、酸化的リン酸化を優先的に利用します。しかし、がん細胞は酸素が豊富でも、解糖系を優先的に利用し、大量のグルコースを消費して乳酸を産生します。これがワールブルク効果です。ワールブルグ効果とは:がん細胞は、酸素が十分にある状態でも、正常細胞のようにミトコンドリアでの酸化的リン酸化をあまり使わず、解糖系を活発に利用してエネルギー(ATP)を産生します。この現象をワールブルグ効果と呼びます。がん細胞は、ワールブルグ効果によって酸素が存在する状態でも主に解糖系でエネルギー産生を行いますが、しかしそれでも好気的解糖(ミトコンドリアでの酸化的リン酸化)も十分利用しています。つまり一方で、がん細胞はワールブルグ効果によって解糖系を優先的に利用する一方で、好気的条件下では、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化も利用しています。つまり、両方の経路をある程度利用しているということです。

癌細胞が両方の経路を利用する理由とは:理由は、増殖に必要なエネルギーを効率的に確保するためです。解糖系は、酸素が不足している状況でもエネルギーを供給できるため、低酸素状態になりやすいがん組織内で生存する上で有利です。近年、膵臓がん、メラノーマ、脳腫瘍など、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化をより多く利用するがん細胞の存在も示唆されています。

ワールブルク効果の意義:
この現象の意義については、まだ完全に解明されていません。しかし、がん細胞の増殖や生存に重要な役割を果たしていると考えられています。
PKM2とワールブルク効果:
解糖系酵素であるピルビン酸キナーゼM(PKM)のアイソフォームであるPKM2は、ワールブルク効果に深く関わっていることが知られています。PKM2は、特定の条件下でのみ活性化され、ピルビン酸の生成を抑えることで、解糖系の亢進を促進する可能性があります。
ワールブルク効果の応用:
ワールブルク効果は、がんの診断や治療法の開発に利用できる可能性があります。例えば、がん細胞のグルコース代謝を標的とした治療法が研究されています。
まとめ:
ワールブルク効果は、がん細胞の代謝の特徴的な現象であり、解糖系への依存度が高いことが特徴です。この現象の意義やメカニズムを解明することで、がんの診断や治療法の開発に繋がる可能性があります。

リバースワールブルグ効果とは、ワールブルグ効果とは逆の現象を指す言葉です。ワールブルグ効果とは、がん細胞が酸素が存在する環境下でも、主に解糖系という経路でエネルギーを産生する現象のことです。リバースワールブルグ効果は、この現象とは逆に、通常は解糖系でエネルギーを産生する細胞が、何らかの理由で酸化的リン酸化(ミトコンドリアでのATP産生)を主とするようになった状態を指します。
詳細:
ワールブルグ効果:
がん細胞は、酸素が豊富にある環境でも、ミトコンドリアでの酸化的リン酸化を十分に利用せず、解糖系でエネルギーを産生します。これは、がん細胞の増殖に必要な物質を効率的に供給するため、あるいはミトコンドリアの機能を抑制するためなど、様々な理由が考えられています。
リバースワールブルグ効果:
一方、リバースワールブルグ効果は、通常は解糖系でエネルギーを産生する細胞が、何らかの理由で酸化的リン酸化を主とするようになった状態を指します。例えば、低酸素状態から酸素供給が回復した際に、一部の細胞ががん化して生き残る現象などが報告されています。
細胞の生存戦略:
これらの現象は、細胞が置かれた環境の変化に適応し、生存を維持するための戦略の一環と考えられます。
研究の重要性:
ワールブルグ効果やリバースワールブルグ効果の研究は、がん治療法の開発や、細胞の生存戦略を理解する上で重要な役割を果たしています。
例:
低酸素状態から酸素供給が回復した際に、一部のがん細胞が生き残る現象
特定の条件下で、通常は解糖系でエネルギーを産生する細胞が、酸化的リン酸化を主とするようになる現象

-ガン, ガン, 理論
-, , ,

執筆者:


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

関連記事

no image

副腎皮質ホルモンとヘルペスの関係 2019.4.30更新

私がなぜ自由診療の「松本漢方クリニック」を新規に開業せざるを得なかったかご存知でしょうか?あらゆる病気の原因は、100%ヘルペスが関わっているので、抗ヘルペス剤を患者に投与せざるを得ないからです。とこ …

no image

新新型コロナウイルスに対するmRNAワクチンは作ることができない 2020.1.1

8月ごろに書いた、「コロナウイルスの後遺症はなぜ起こるのか?」という論文の中に「阪大とアンジェスの開発する新新型コロナウイルスに対するDNAワクチンは作れない」という趣旨の文章を書きましたが、DNAワ …

no image

何故、どのようにして癲癇が起こるのでしょうか?④更新2022.7.10

まだまだ続きます!!専門的な内容なのでかなりものすごく難しいですが、詳しく説明しているので頑張って着いて来て下さい!!初めての方は以下の①から読み始めて下さい。「何故、どのようにして癲癇が起こるのでし …

no image

ヘルペスによって一個の癌細胞が生まれてから多細胞から成り立っている人の全身の組織のあらゆる臓器にヘルペスによって転移癌が生まれ癌死するまでのストーリを詳しく語りましょう。更新2025.4.22

ヘルペスによって一個の癌細胞が生まれてから多細胞から成り立っている人の全身の組織のあらゆる臓器にヘルペスによって転移癌が生まれ癌死するまでのストーリを詳しく語りましょう。癌について語る物語の主人公は「 …

no image

転移癌は存在しません。更新2025.1.14

転移癌は存在しません。原発巣不明癌とは何か?原発巣不明癌と転移巣癌は実は別々の細胞癌であって原発癌と転移癌とは細胞自身は異なった細胞であり全く関係がないのです。つまり原発巣の癌細胞に増えたヘルペスウイ …