てんかん 意味論 熱性痙攣 疾患解説

てんかん・熱性痙攣

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てんかんの定義を見直してみましょう。原因不明の大脳神経細胞の過剰な電気的異常発射活動によって起こる発作の反復を主症状とする慢性の疾患です。つまり慢性であるというのは治らないという病気であります。私はこの世に原因のない病気はないと常々考えています。何も治らないとされているてんかんで苦しんでいる人に同情し、何とか助けてあげたいと思うために言っているのではありません。ただ真実を求め、その真実を述べているだけです。原因の分からない病気は、生まれ持った遺伝子病だけですから、生活をしている中で生じた病気は全て原因があると考えています。この世に生まれつきてんかんの人などは誰もいません。それではてんかんの原因は何でしょうか?

痙攣に興味を持ち始めたのは、熱性痙攣の原因がヘルペスであると分かったからです。熱性痙攣は風邪などをひいたときに38度以上に発熱に伴ってよく見られる小児の全身痙攣であり、一過性の症状です。通常、5歳以下の小児に生じやすく、ピークは1歳台であります。その中の数%はてんかんに移行し、一生治らない病気であるといわれていることを知ったからです。さらに熱性痙攣の再発に関する要注意因子として、両親または片親の熱性痙攣の既往があげられており、抗痙攣薬を熱の上昇時期に適当に投与したり、連日内服させる方法が行われていることを知ったのです。

以上に述べたことは何を意味するのでしょうか?まず第一に風邪を引いて熱が上がった時に免疫が上がっているということです。人類は母親や父親から何万年にもわたってヘルペスウイルスを子供達にうつし合ってきたのです。このヘルペスが免疫が上がる時に、当然神経に隠れています。乳幼児の頃はヘルペスの数も大人ほど多くありませんが、風邪のウイルスを殺す時に様々な免疫の力が上がります。ちょっと難しくなりますが、免疫を上げるということはどういうことか具体的に述べておきましょう。

風邪のウイルスが入ってきます。この風邪のウイルスを食べた大食細胞は、自分の遺伝子をONにして、やみくもに免疫を上げる様々なサイトカインを作り出して他の免疫細胞の働きを開始させる情報を作り出します。それがIL-1、IL-3、IL-4、IL-5、かの有名なTNF-α、GM-CSFなどであります。つまりこれらはまさに炎症を起こすサイトカインといわれるものであります。さらにこれらのサイトカインが様々な免疫細胞に働きかけて、炎症のメディエーターといわれるプロスタグランディンや、ロイコトリエンやNO(一酸化窒素)を増やします。このメディエーターというのは、細胞の遺伝子の転写調節因子の働きを仲介する因子という意味で、媒介者ともいいます。英語のメディエーターを日本語で媒介者と言いますね。皆さん、ステロイドがこの転写調節因子の働きを抑えることもご存知ですね。さらにこのようなサイトカインやメディエーターは炎症にかかわる様々な免疫細胞同士が結びつくための細胞接着分子を発現させます。この細胞接着分子を英語でadhesion molecules(アドヒージョン・モレキュール)といいます。これらのadhesion moleculesは、血管から様々な白血球やリンパ球を炎症の組織に呼び込みます。喉の細胞に入り込んだ風邪のウイルスを殺すためでありますが、実はこのとき周辺にいるあらゆるウイルスや細菌をも一緒に殺すことができるのです。まさにその周辺の神経に隠れているヘルペスウイルスは、その免疫の最高の標的となるのです。なぜならばあらゆる神経に潜んでいるヘルペスは、死ぬまで取り付いているので、風邪を引くたびに免疫が上がり、ヘルペスウイルスも同時に免疫の戦いの標的となるのです。

皆さん、免疫の話は極めて難しいのですが、理解してもらいたいことは、風邪のウイルスを殺すのと、ヘルペスウイルスを殺すのも、基本的な免疫の働きは同じであるということです。ただ一つだけ違いがあります。風邪のウイルスを認識するT細胞とB細胞は、ヘルペスウイルスを認識するT細胞とB細胞とは別であるということだけなのです。さらに言い換えれば、B細胞が作る抗体の種類が風邪のウイルスとヘルペスウイルスとは違うのであり、かつ風邪のウイルスを殺すT細胞とヘルペスウイルスを殺すT細胞も違うということです。つまり、人間の免疫機能が高度に進化したのは、ウイルスの仲間でも種類が異なれば、免疫がそれらのウイルスを殺すためには、それぞれの異なった個々のウイルスに対して特異的なT細胞やB細胞が進化によって生まれたということです。一方、大食細胞や好中球はこのようなT細胞やB細胞が持っている特異性を持っていないのです。好中球や大食細胞やNK細胞のように、特異性を持たないで、どんな細菌やウイルスでも食べようとする働きを先天免疫とか自然免疫といい、T細胞やB細胞のように、ウイルスや細菌をやっつけるときに、たった1種類のウイルスや細菌に対してしか戦えない免疫の働きを後天免疫とか獲得免疫とかいうのです。つまり免疫が上がるというのは、先天免疫に関わる免疫の働きが上昇することであるのです。従ってどんなウイルスや細菌でも人体に侵入してくると、常に先天免疫、つまり自然免疫は必ず刺激されるのです。従って風邪のウイルスが侵入した時には、既に人体の神経に潜んでいるヘルペスウイルスをも同時に先天免疫で殺しやすくなっていることを十分理解してください。この話はなぜ漢方が免疫を上げるのかという疑問に対する答えの一部になっていることを知ってください。結論から言うと、あらゆる漢方生薬は先天免疫を上げることによって免疫の働きを高めているのです。

熱性痙攣はまさに風邪のウイルスをやっつけるときに、同時に生まれてから死ぬまで人体にとどまっているヘルペスウイルスをもやっつけようとしてしまうのです。それでは熱性痙攣において、免疫はどこにいるヘルペスウイルスと戦っているのでしょうか?それは左右の三叉神経節から出る一番上の上枝(眼枝)から出た神経が、脳の血管神経となっていることは既にお話ししました。この血管神経に三叉神経節に住んでいたヘルペスウイルスが眼枝に沿って、脳のあらゆる血管神経に潜んでいるのです。風邪をひいた時に上に述べたような形で免疫が上昇し、免疫はヘルペスウイルスを見つけ出しやすくなって、脳の血管においてヘルペスと戦い、頭痛が起こったり、この戦いが激しすぎると血管での炎症が脳に影響を与えて痙攣が起こるのです。これを熱性痙攣と古来から言い続けたのでありますが、実はヘルペスウイルス性脳血管炎と名付けるべきものなのです。皆さん、お分かりになりましたか?ついでに確認しておきましょう。風邪を引いた時に頭痛が起こるのは、何も風邪のウイルスとの戦いによって起こっているわけではないのです。今述べたように風邪にかかったために免疫が上昇し、既に隠れていた脳血管神経に隠れていたヘルペスとの戦いによって頭痛が起こったのです。この発見も世界で私が見つけたのです。数々の新しい発見による私の貢献に対して「ノーベル賞飴」ぐらいは授与されても良いのですが、ひとつも来ません。アッハッハ!それでは熱性痙攣とてんかんについて書き続けましょう。

さらにてんかんのことに興味を覚えたキッカケがありました。色々昔からてんかんの薬は作られていました。ところがてんかんの患者さんに治験で熱冷ましとして使われていたカルバマゼピンという薬がよく効いた事実を知ったのです。この薬は本来解熱剤であり痛み止めの薬であったのです。実際に三叉神経痛に対して用いられていた薬がカルバマゼピンであり、この薬がまさに抗てんかん薬の代表的な薬になっているということがわかったのです。さらに三叉神経痛に対して抗ヘルペス剤が原因療法として著効を示すということも知っていました。つまり三叉神経痛の原因はヘルペス性三叉神経炎であるので、抗炎症剤のひとつであったカルバマゼピンが効くのは当たり前なのです。このカルバマゼピンがてんかんに効くということは、その原因がヘルペスによる神経の炎症であることが分かり、てんかんは免疫とヘルペスとの戦いであるということも分かりだしたのです。脳の中にいつまでも居続けるてんかんの原因は、まさにヘルペスであるということがピンと閃いたのです。そこでヘルペスと免疫の戦いがどのようにして起こるのかを勉強し始めたのです。

長期にてんかんの人が飲まされている薬は、一般名カルバマゼピンのひとつである例のノバルティスが作った商品名テグレトールであります。テグレトールの効能は、脳の中枢の神経細胞のシナプスにおける電気的反復刺激された後に、神経伝達が増強され、同時的な多数の中枢神経細胞の電気的発射を抑制します。この発射が起こった時に生じるてんかん発作を止めるのです。もうひとつてんかんで最もよく用いられる薬は、一般名がフェニトインであり商品名アレビアチンであります。アレビアチンもテグレトールも同じ作用があるのです。

もちろん熱性痙攣になりやすい人は、脳の血管にヘルペスウイルスを増殖させていた子供たちですから、風邪が終わっても殺しきれないヘルペスウイルスはいつまでも脳血管神経に居座り続けるのです。それでは5歳以後は熱性痙攣が見られないのはなぜでしょうか?それは子供達の免疫が徐々に確立し、ヘルペスウイルスは三叉神経節のみならず、三叉神経節と繋がっている中枢の脳の中の神経核に隠れてしまうからです。これらの核を三叉神経核といいます。三叉神経核には5つあります。三叉神経運動核、三叉神経中脳路核、三叉神経上核、三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核の5つです。これらは脳の一部である中脳から橋、延髄にかけて存在しているのです。脳の話をしだすとまた難しくなりますがついてきてください。病気の真実を探るための医学は本当に面白いでしょう!!

ちょっとここで脳の構造について触れておきましょう。いわゆる皆さんが一番ご存知である脳は、つまりは大脳のことです。ときに終脳ともいいます。さらに終脳のことを大脳半球ということもあります。終脳の下に間脳があります。間脳のことを視床といい、視床下部を含んでいるのは既に述べました。間脳の下に中脳、橋、延髄がある、脳は大きく5つに区別されます。中脳、橋、延髄の3つを合わせて脳幹ということがあります。なぜ脳幹というかというと、脳という大木を支えている幹のようであるから、脳幹というのです。いずれにしろ一番大事な脳の下には、つまり延髄の下には脊髄があるのはご存知でしょう。小脳は、脳幹といわれる中脳と橋と延髄の背部にひっついている脳部であります。

本論に戻りましょう。てんかん発作は脳の細胞の一部が電気的に異常に興奮し、その興奮が広く脳内に伝わります。そのため脳波を記録すると異常が見られます。実際的なてんかんの分類をしてみましょう。大きく3つに分かれます。1つめが焦点発作であり、2つめが全般発作であり、3つめがてんかん重積発作であります。意識がなくなるのが全般てんかん発作であり、意識がほとんどなくならないのが部分てんかん発作であり、さらにてんかん発作が連続的に反復して生じるてんかんを、てんかん重積発作といいます。次に、全般てんかんの中に大発作と小発作の2つに分かれます。上に述べたカルバマゼピンやフェニトインは全般てんかんでも部分てんかんでも用いられます。先ほど5つの三叉神経核である三叉神経運動核、三叉神経中脳路核、三叉神経上核、三叉神経主感覚核、三叉神経脊髄路核が中脳から橋、延髄にあることを述べました。これらの5つの神経核で受け取られた情報は、全てが中脳の上にある視床を通り、かつ視床の上にある大脳皮質にまで伝えられます。しかもそれぞれの三叉神経核にはあちこちからの感覚神経からの情報も入力されます。これらの5つの神経核のニューロンはお互いに情報を交換し、互いに影響し合っています。さらに三叉神経運動核や三叉神経上核は、口の開閉の筋肉に関係のあるニューロンの核もたくさん集積しています。ヘルペスとの戦いが三叉神経核のいずれかの神経回路で激しい免疫との戦いが起これば、その激しさの度合いに応じて焦点発作や全般発作や重積発作が起こるのです。

皆さんの中には小中学校の授業中にてんかんの持病を持っている友達が突然に全般発作を起こして、椅子から転げ落ちて床に倒れて、口から泡を吹き出した状況に遭遇したことがありませんか?舌を噛むと死ぬからといわれ、すぐにハンカチを口の中に入れてあげた経験を持っておられる人もいるかもしれませんね。時には白目をむき出して全般大発作を起こした患者の姿を見たこともあるでしょう。しゃべりもしないのに、口にものを入れている訳でもないのに、ガクガク口を開閉する状態を見たこともあるでしょう。まさに三叉神経運動核の異常な電気信号発射が何の前触れもなく突然に生じ、その電気信号が大脳皮質の全般に無秩序に伝わったために生じたのです。実は、このような発作が起こるのは、その発作が起こる前日までに睡眠不足が続いたり、強いストレスがかかって免疫を抑えている間に三叉神経核にどこかに潜んでいたヘルペスウイルスが増殖し、それを授業中に脳の免疫が見つけ出し、戦いを始めたために生じたのです。いずれにしろ原因の分からない病気はこの世にないのです。

「なぜ漢方は免疫をあげるのか?」のコラムで書いたように、銭乙(せんいつ)という北宋時代の中国医学者は、北宋の皇帝であった神宗の皇子のてんかんをよくしたことで、皇帝の寵愛を得ました。中国医学の小児科の祖といわれている人であります。銭乙が飲ませた薬はまさに漢方であり、もちろん彼が飲ませた薬は免疫を上げることができるのです。必ずヘルペスに対して、皇子の免疫は勝つことができるので、言い換えるとヘルペスを三叉神経核に押し込めることができるので治すことができたのです。原因も免疫のイロハも何も知らなかった銭乙は、漢方を飲ませるだけで皇子のてんかんをよくしたのです。というよりも、やはり皇子が自分のてんかん発作を治したと言った方が正しいかもしれません。

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